名は体をあらわすと思われる
休日にもかかわらず用事があり、電車に乗っているのである。
土日の電車は普段と客層が異なりこれはこれで面白い。オシャレしておる女の子が3人組で楽しそうにおしゃべりしている所なぞ、通勤電車ではまずお目にかかれない。
それから競馬のオトウサンである。競馬新聞をじっくり読んで、時折何か印を付けておられる。
ほほう、オトウサンそのレースは2-5ですか。全部知らない馬だけど。
私は基本的にギャンブルはやらない。馬券を買ったこともあるし、パチンコも年に一回位何かの拍子に行くことがある。
ところが熱くなれない。これはきっと子供の頃、祭の縁日で「亀掬い」にのめりこんで小遣いを使い切ってしまい、家に帰ってから母にこっぴどく叱られた記憶のおかげであろうと思う。ああ恥ずかしい。
さて競馬新聞をちらと覗いてみると、馬の名前と丸やら三角やらの印が書かれている独特のレイアウト。ついつい馬の名前を読んじゃったりして。
グレードの低いレースでは不思議とショボイ(失礼)名前が多いような気もするが、これは気のせいだろうか。
目に付いた名前を幾つかあげてみよう。
「ホシニネガイヲ」
やはり願うのはこの馬の勝利であろう。気持ちはわからないでもない。
「チチンプイプイ」
おまじないで勝とうといったところであろうか。語感は速そうな感じがしないのだが。
「ローリングサンダー」
格好いい名前ではある。しかし今までこの名前は使われてなかったのかというのが気になった。そう、馬の名前を決めるときには、まず今まで使われなかった名前にしなければならないはずである。膨大な数にのぼる馬名を検索し、重複を防がなければならない。きっとそのためのデータベースのようなものがあるに違いない。そう思った。
さらに馬の名前というのは確か9文字以内という決まりがあったはず。あとテレビで明石屋さんまが誰かと(多分所ジョージと)喋っていたが「ハナサデニチャク」などまぎらわしい名前はつけられないことになっているそうだ。
さて隣のオトウサンを見ているうちに私は妄想モードに突入してしまい、いつもの如くバカバカしい空想に耽るのであった。
私は空想する。
「馬主。今度の新馬ですが、名前はどう致しましょうか」
「『グレートハラタマ』で頼む。今度の馬は血統も良いし、期待しておるのだ。以前から決めておった」
「かしこまりました(リングネームみたいだなあ)」
秘書は傍らの端末にカタカタと名前を打ち込むのであった。これは馬名の重複を防ぐために行うデータベースへのアクセスなのである。重要な作業なのである。
「馬主。その名前は過去使用されています。使うことはできません」
「なに。これしかないと思っておったのに。うーむ……これならどうだ」
幾つか格好いい名前を考える馬主。しかしどの名前も過去において使われており、そのうち考えるのに疲れてしまうのであった。
「もういい。もうやだ。名前は『プルプルプリン』にでもしておいてくれ。これなら文句ないだろ」
言いおわると同時に秘書は端末を操作。めでたく(?)名前は決定した。
デビュー以来プルプルプリン号は快走。勝利を重ねるのである。しかしそれとともに馬主は喜びと後悔を抱えることになった。
そう。ついにプルプルプリン号はGIレースに勝利してしまうのである。
オグリキャップ、シンボリルドルフ、トウカイテイオー。名だたる名馬たちは王者に相応しい名前を持っている。このままプルプルプリン号が勝利を重ねるのは嬉しいが、名付け親として自分の名前も競馬史に残ってしまう。プルプルプリンとともに。とかなんとかいったことを想像していたわけであるが、実際どうしてるんだろう。馬の名前。
昔、競争馬の育成ゲームをやっていたときに、段々名前を考えるのが面倒になってしまい、今いち期待できそうにない馬なんか「バニク」とか名前つけちゃったりして。
そしてバニク号。よく走っちゃったりして。はらたまhomeへ