4kのできるまで〜社会科見学

 

 

「おはよう 、おねえさん」
朝からパソコンに向かっている女性に向かってピンク色の生物、カバとも犬ともつかぬ不思議なモノが話しかけた。
「おはよう、モコタン」
女性が答える。そうか、このピンク色のはモコタンという名前なのか。
「どうしたの。朝からパソコンなんか」
やはり毎朝やっている訳ではなさそうだ。
「うーん。ちょっと読んでるサイトがあるんだけど、暇つぶしにもならないんで、ブックマークから外しちゃおうかと思ってる所なのよねえ」
モコタンが画面を見るとそのサイトは「はらたまhome」である。由々しき事態である。ブックマークから外されようとしているのである。
「お、おねえさん。じゃあこのサイトがどうやって作られているか見に行ってみようか」
「え? それ面白そう。行ってみようよ、モコタン」
とりあえずブックマークの件は保留となったのであった。

場面は変わる。

「ここがはらたまhomeを開発、製造しているところだよ」
「へええ、結構というか予想通り小さなところねえ」
入り口前に噴水がある白い建物なのである。
無意味に白衣姿のおねえさん、モコタンと一緒に建物に入っていくのであった。

「ここが開発部だよ」
「なんかお兄さんが暇そうにしているわね」
「ちょっと話を聞いて見ようよ」
暇そうなおにいさんに話を聞いてみることに。

「やあ、ようこそ開発部へ」
「ここでは何をしているの。おにいさん」
「『はらたまhome』のメインコンテンツである『4k』の構想を練っているんだよ。モコタン」
何故名前を知っているのか。まあお約束なので気にしてはいけないのである。
「4kはどうやって作られるの?」
「我々開発部のメンバーが通勤電車の中で思いついたバカバカしいことをここにある携帯情報端末にチョイチョイと書いておくのさ。とにかく何でも書いておく。そしてその『ネタ』を製造部に渡すんだよ」
「そうなんだあ。暇そうに見えて結構頑張っているんだね」
「……やっぱり暇そうに見えるけど」
「そ、それじゃあ次に行ってみようよ。おねえさん」

場面は変わる。

「ここが製造部だよ」

工場なのである。

「『はらたまhome』って工場で作ってるの?」
「これは視聴者にわかりやすくするためのイメージだよ、イメージ」
「何視聴者って」
モコタン。答えてくれないのである。
「さあ、中に入ってみよう」
工場の中ではベルトコンベアに乗った紙切れが続々と流れているのである。
「これが原稿だね」
「結構たくさんあるのね。どれどれ。あれ? 『進退伺いについて』。『よっきゅー』。『ライターズ・ハイ』全然進んでないのもあるわ」
「おねえさん、あそこにいるオジサンに聞いてみようよ。」

溜まった原稿の前に立ち、何やらやっているオジサンがいるのである。モコタンが話しかける。

「なにをしているの? オジサン」
「やあモコタン」
やはり名前を知っているのである。どういうことだ。気にしてはいけない。

「ここは検査ラインだよ。読者の方々に楽しく読んでもらえるように原稿をある程度寝かせて品質をチェックしているんだ。」
「へええ〜」
「どういう基準で原稿のチェックをしているんですか?」
おねえさん、結構まともな質問をするのである。

「うん。時事ニュースを題材にしているようなものについては寝かせているうちに時期を逸してしまう場合がある。そういう原稿はボツになる。他にも、書いているうちに本人ですらあまり面白くないと感じられたものについてもボツとなる。あと、短すぎるものなど4kにはならない原稿は日記の方に回すこともあるね」
「それって、4kのできそこないが日記になるってこと?」
「い、いやそれは……」
「お、おねえさんあまり痛いとこついたらだめだよ」

そうこうしている横で没原稿が自動でシュレッダー処理されているのである。
「すごいアウト率だね」
「一応厳選してアップしているんだよ」
「その割りにはショボイ内容のような気がするけど」
「(ギクギク)そ、そんなことはないよ。おねえさん。もっと厳選してアップしたいところだけど、更新頻度があまりに低くなると折角読みに来てくれた人たちが離れてしまうんだ。趣味でやってても結構厳しい世界なんだよ」
「それって基準を下げてアウト率を調整している訳ね。メーカーとしては最低の選択よね」
「お、おねえさああん」

場面は変わる。

お姉さんの部屋なのである。
「お、おねえさん。どうだった? 殺風景なサイトでも作るのには幾つかの工程を経て更新されているんだよ」
「そうね。読んでるときは一瞬で斜め読みだけど、書くときにはもう少し時間がかかってるとこがわかったわ」

な、斜め読みって……。

とりあえず今日のところは「ブックマークから削除」を回避したのである。
が、モコタンの苦労は続くのであった。


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