4k37:商品を信用しない (裏)

 


「新企画商品のプレゼン資料を持ってきました」

「どれどれ、見せてくれ」

「はい。まずは体験者の声です」

『競馬やパチンコ、各種ギャンブルに負け続けたオレはいつしか借金も膨らみ、さらに3年間付き合ってきた彼女にも振られてしまい、ホントに最悪の状況でした』

「なんだか自業自得やなあ。なんだ、写真も有るのか」

「はい。どうですか、ついて無さそうでしょう」

「これは君の写真やないか。散らかった部屋にいるってだけの」

「表情作って見たんですけどね。ま、サンプルですよサンプル」

『そんな時、どうせ駄目だろうと思いながらこの商品を試して見た所、オレの人生は180度変わりました』

「……」

『この商品を手にしてすぐに宝くじの1等に当選。一挙に2億円を手にすることができました』

「すぐに当ったということは、宝くじを買ったのは運勢が変わる前にならんか。ちょっとおかしいぞ」

「細かい所は気にしないでも大丈夫ですよ。後で修正もできますし。ここはロト6あたりにしておきましょうか」

『金が入って来たからか、急に女の子にもモテ始め、内緒ですが3人の女の子と付き合っています』

「それは明らかに金目当てやないか。余り羨ましくないな」

「課長はそうかもしれませんが世の中には色々な人がいるんです。ほら、写真もありますよ。これ見たら羨ましいと思う男も多いはずです」

「隣の課のケイコちゃんやんか。なんで君とくっついてる。それに君、札束を頭に挿してるのはなんだか頭が凄く悪そうに見えるで」

「サンプルですよ、サンプル。頭は悪そうでもいいんです。世の中金と女、っていう人が注目すればいいんですから。そういう意味では頭悪い人向けかもしれません。うまいこといいますねえ課長」

『愛車も早速ベンツに買い替えました。ちょっと擦っちゃったんでまた新しく買おうと思っています』

「金と女の次は高級車か。わかりやすいなあ」

「いいんですよ。わかりやすくて。実証データも掲載しますよ」

「どれどれ。なんやこの部分はわかりにくいな。なんで遠赤外線やマイナスイオンが沢山出ていたら幸運になるんかわからん」

「ここのところはあくまで実測値の表示ですから、従来品との比較で何百倍とかなんとか言っておいてなんだか凄そうだという印象があればいいんです。『運勢との関連は現代科学では解明出来無い神秘的な力であると思われる』って書いてあるでしょう」

「体験者の声は他にも有るんか」

「良くぞ聞いてくれました。ありますよ女性サンプルが」

『素敵なカレができたんです。しかも宝くじの1等も当たってブランド物のバッグも買い放題』

「なんか女もおんなじ感じやなあ。あれ、上の階のクミちゃんやんか。くっついてる男は君やな。顔にモザイクがかかってるけど」

「そうです。女性の方は男性と違って好みが細分化されていますから、顔はモザイクかけた方が良いとマーケティング部から言われたもんですから。僕はいけると思うんだけどなあ」

「あかんで。君あんまりもてるタイプと違うやろ」

「いえ、これからは違うんですよ。私もモテモテ(死語)になる予定なんですから。ほらこれ見てくださいよ」

「なんや変な腕輪つけて。まさか君」

「広告にはなんだか凄い効果があるって書いてあったもんでつい買っちゃいましたよ。これで幸運になるらしいですから安いもんですよね」

「君アホやろ」

「冗談ですよ。冗談。これはうちの昔の商品です」

「なんやもう。それで今回の商品はどこにあるんや」

「まだ何も出来てません。実は試作に150万円程かかるんです。絶対売れますからなんとかしてもらえませんか」


「ワシ、今騙されてないか?」


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