4k39:意外に見られている

 

人は、自分が思っている以上に見ているものである。
何をって、それは自分のことをである。

 高校生の頃、知らない人が自分のことを知っている状態というのに何度か遭遇している。
これは原因に心当たりがあるのだが、別に野球部で大活躍して母校を甲子園に導いたとか生徒会長を務めたとかそういう輝かしいやつではなく、私につけられたあだ名が一人歩きした結果であるだろうと思っている。他に心当たりがないのでこれはまず間違いない。
 そのあだ名というのが「トイチ」というのである。別に私は人に高利で金を貸したり、闇金融を経営したりはしていない。奈良漬けも作っていない。このあだ名を強いて漢字表記するならば「都一」なのである。
 由来についてはあまり書きたくは無いのだが、この際勢いで書いてみると以下のようなことである。

 私は小学校から中学校卒業にかけての数年間を東京で過ごし、高校入学時に九州へと移った。中学時代の友人、知り合いのいない九州の高校へ行ったのだった。
 高校へ入ってからしばらくしてバレーボール部に入部した。ちなみに中学までの運動歴は全く無い。当時の身長は155cmである。背の順でズバリ一番前であった(なぜ学校というのは背の順で生徒を並べさせるのであろうか。幼稚園から高校2年までずっと背の順一番前だった私はそのコンプレックスでかなりひねくれた)。
 今思えばなぜ入部する気になったのか、自分でもさっぱり思い出すことは出来ないのだが、バレー部の先輩方はさらに訳がわからなかったものと思われる。(背が伸びるとでも思ったのだろうか。確かに背は169cmまで伸びた。現役の頃はあまり伸びていないが、その後いつの間にかであった)
 母校のバレー部は県立高校にしてはかなり強い方で、県大会でも上位に食い込む位置にいた。先輩方もみんなでっかかった。そこに頭ばかりが大きく、貧弱で背もおそらく学年で一番低い、地元の方言を使わない新入部員がやってきたのである。すっかり謎である。私とてわからないのであるからして、先輩方は首をひねるしか無かったはずである。
 そんなところで一人の先輩が勘違いをしたそうである。


「東京から新入部員がやってきた」

「えらく痩せていて背がものすごく低い」

「きっとセッターだ」 (もうここで間違っている)

「凄い実力らしい」 (何でそうなるのか)

「東京都一のチームから来たらしい」 (あららら)

という勘違いをし、その話をしたところ他の先輩が実物(私)とのギャップで大笑いしたというエピソードから生まれたあだ名。それが「トイチ」なのであった。
その呼びやすい音と、面白がって言いふらす同級生のおかげで、しばらくすると先生方まで私のことをあだ名で呼ぶ様になってしまった。こうなるともはや本人があがいてもどうしようもないのであきらめた。そういうことである。

そのうち話したこともない女の子がいきなり自分のことをあだ名で呼んだりして、それはあなた本名知らないんだろ、私の。

というような経験があったという話である。本題から随分ずれてしまい、暗い過去の話になっているではないか。

ちょっと話を元に戻そう。

 最近では会社で同じように「こっちは覚えていない顔から親しげに挨拶されちゃったりして、慌ててこっちも
『ああ、あなたのことは覚えておりますよ』的表情を作ってみたりする状態」になることがある。

この場合もわかりやすい心当たりとして、組合の執行委員などというものをやったということがあげられる。きっとそうである。認定。
たまに工場に出張してみるとそういうことになるのは、多分全社集会なんかの場でシドロモドロの発言をしている私を見ていた人なのだろうと思われるのである。

他にもこんなのがある。

 サイトを運営(というほどの事はやっておらず、日々駄文を垂れ流している訳だが、他に適切な言葉が見つからない)していると気になるのはアクセス状況である。
駄文、とか垂れ流す、とか言ってみてもそこはそれ、読んでもらえればうれしいし、それなりに認めてもらったり批評を頂いたりしながらリンクなんかされちゃったりするととても浮かれてしまっちゃったりするのである。であるからしてアクセス状況などはちょくちょくチェックしてみる。
 すると見たこと無いURLからリンクで飛んできているケースがあったりして、そこを辿ってみると普段好きで良く読んでいるサイトであったり、リンク集の様なものに追加して頂いていたり、愛用しているソフトの作者さんのページに行き着いたりとそれはそれは嬉しすぎる状況に至ったりしちゃうのだ。いや滅多にないのだが。


だからうかつに変なこと書けないなと思ったり。

その辺にガムを吐き捨てたり、人の傘をちょっと拝借したり、電話口で怒鳴ってみたり、人の悪口を言ってみたり、そういうことをしないように気をつけようと思ったり。

するのであった。

いつ何処で見られてもいいようにね。


他の4kコラムへ

はらたまhomeへ