4k43:たぬきはraccoon
立ち食いそば(うどん)は良い。
なにより美しい。
駅のホームにある奴など、電車の時間を気にしながらすばやくエネルギーを補給せねばならないというニーズに対応して、様々な機能が追及されている。
早い。
うまい。(くない場合もある)
安い。(くない場合もある)そんな立ち食いそば(うどん)店に入った時の話である。
今日は東京出張であり、用事(講習)を終え、帰るところだ。帰りが遅くなる為、新幹線が来るまでに何か食べねばと考えたのである。
しかも麺大好きな私なのだ。そんな立ち食いの店で。
紳士がそばを食している。
高そうなかばんを足元に置き、センスの良さそうな(本当に良いかどうかはセンスの悪い私にはわからない)コートを脱ぐこともなく、直立不動で姿勢よく、脇を絞めた美しいスタンスで構え、慌てず騒がずサラサラと軽快にそばを食している。
どことなく貧乏臭い(失礼)雰囲気漂う立ち食いの店であるが、ここまでスマートに利用されると店自体の雰囲気も一変する。
どこぞのコーヒーショップにて、折角の店の雰囲気をぎゃあぎゃあ騒ぐ連中に打ち壊しにされることを思えば何と落ち着いたこの空間。
もちろん無用に長居する客などいない。ここは駅なのである。立ち食いの店なのである。そこ行くと私なんぞは暖かいものを食べるとすぐ汗をかいてしまうので、上着は丸めてカウンターの下にある棚に詰め込んである。
今日受けた講習のテキストやら資料を雑多に詰め込んだユ二ク□鞄はヨタっという感じでカウンターにもたれかかっている。
万が一電車に乗り遅れてはかなわないので、時計がわりに携帯電話をカウンターの上に乗せ、横目で見ながらせかせかとそばをかきこんでいる。まだまだ修行不足である。そんなよくある風景に来客あり。
いや客は入れ代わりに来る訳だけれども、今回の客は黒人のオトウサンだ。しかも日本語を喋ることが出来ない様子。
なにやらカウンター内のオッチャンオバチャンと話しているが、オッチャンオバチャンは「No,No」と繰り返すのみ。
オトウサンの方も要領を得ず、「Only soup? Only soup?」などと聞いていた様だ。
横では我々がそばやらうどんを食しているのだから、ここが「Soup Bar」で無いことは明白であるし、第一そんなものは我が国には無い。いやどっかにあるかも知れないが少なくとも駅には無い。
あれと思ったときには紳士も立ち去った後であった。さすが紳士。去り際もさりげない。感心している場合ではなく、何を聞いても「No」しか言われなかったオトウサンもあきらめてどこかへ行ってしまった。
さすがに首都の新幹線駅ホームの立ち食いそば(うどん)店なのだから、オッチャンオバチャンに英語を覚えさせないまでも、食券の自動販売機の操作説明とか、おすすめメニュー(せいぜい2、3点だし)の英語表記くらいはしてみてはどうかと思った次第。
さっきのオトウサンも、立ち食いそば(うどん)店に立ち寄っているんだから、お腹すいてたんだろうに。その前に。
もしも私に英語力があったら。あのオトウサンにStanding Japanese noodle(正しくはどの様に言えば良いか不明)の魅力を伝えることができたのに。ヘイミスタア。
ジャパニーズヌードルは、このディスポーサブルチョップスティックスをエレガントにパキイっとやるところからスタートアルよ。セブンテイステッドジャパニーズスパイス(※1)はレッドペッパーベースだからかけすぎにビーケアフルよ。
ヘイミスタア。
ジャパニーズヌードルには大きく分けてイースタンスタイルとウエスタンスタイルがアルよ。
ウエスタンスタイルならフォックスヌードルがメジャーね。
ウエスタンジャパニーズはイースタンスタイルをバカにしてるね。スープがストロングだってだけで(※2)。ワタシに言わせればヘンケンね。どっちもデリシャスよ。えーとたぬき。たぬきって何て言うんだっけ。
えーとにかくウエスタンスタイルにはえーとタヌキソバヌードルというのが無いのよ。
あれ。そばとうどんって英語では何て言うんだろう。
えーとウエスタンスタイルのタヌキソバヌードルはイースタンスタイルで言うフォックスウドンヌードルなのよ。
だからとにかくトウキョウに来た時くらいイースタンタヌキソバヌードルを食べるのよ。ワタシ(※3)。
イッツテンカス。テンカスね。私が英語に憧れるのは、間違いない。こんなときだ。
※1 七味唐辛子のつもりらしい。
※2 関西人が関東のうどんだしが黒いことについて「あんなの食われへん」と言っていることらしい。そう言い切る私も関西人に対して未だに偏見を持っていると言える。
※3 書いていて自分でもわかりにくい。
要するに、たぬきそばは東京では天かすの入ったそばをいい、大阪ではあげののったそばを言うのである。って、皆知ってるか。はらたまhomeへ