4k46:野球的表現の普及を

 

 私は野球好きである。サッカーよりは野球だ。これは間違いない。好みの問題というより慣れの問題かも知れない。サッカーが嫌いな訳ではない。割とミーハーな面も持っていて、ワールッドカップの時などは盛り上がったものだ。野球の方が好きだというだけである。

さて、そんな私は日常的に野球的表現を多用してしまう。癖だ。

 わかりやすい例からあげていこう。

 よく好みの女性が云々といった話をする男どもの中で「ストライクゾーン」という表現が使われる。説明は不要ではないかとも思われるが、あえて説明する。
 自らを打者に例えて、来た球を出会う女性に例える、考えてみれば女性に対して大層失礼な表現である(どうでしょう、女性はこんな表現使いますか)。
 惚れっぽい男性というか、様々なタイプの女性を恋愛対象に出来るタイプの男性は「ストライクゾーンが広い」と表現される。これは広い範囲に手を出す(ヒッティング動作に入る)という事である。
 考えてみればこれは少々間違った表現ではないだろうか。何故ならストライクゾーンというものは本来不変(審判による誤差などは考慮から除く)のものであるから、この場合なら「ヒッティングゾーンが広い」と表現すべきではないかと思ってみたりする。きっと誰もついてこないのでイチャモン付けるのはこの辺でやめておくが。
「ストライクゾーン」の応用として「高め」、「低め」というさらに女性に失礼な表現もあって、高め狙いの大振りばかりしている打者は良く凡退するということである(ホームランバッターを除く)。
さらに失礼な方向に応用すれば「ボール球に手を出す」とか「選球眼が云々」といった表現も使えそうだ。どこで使うかは置いといて。
 昔から飲んだ席などで女性の話ばかりするのは少々苦手であって(嫌いではないのだが)、「ストライクゾーン」の話を自分に振られたときは、自虐的に「俺はローボールヒッターだ」と話してウケを取り、逃げることにしていた。
これも今考えてみれば大変に失礼な話であるが。悪気はないのだ。許してくれ、Q。君が「低め」であるとかそういうことでは決してない。本当だ信じてくれ(じゃあ書くなよ)。

 他にも野球的表現は様々な場面で活用される。
 仕事でも何でもピンチに見舞われる事は誰にでもあることだ。そんな人に「二死満塁やな」などといって追いつめてはいけない。「一打サヨナラのチャンスやないか」などと妙な励ましも効果は薄いと思われる。
 ここは「調子が悪い時に悪いなりのピッチングが出来るかどうかがエースの条件やぞ」とか何とか言って混乱させておくのはどうだろうか。「スランプがあるのは大打者の証明や」とか言って変におだててみるのもいいかも知れない。

そんなピンチをボロボロになりながらも脱した友人の肩を叩く事が出来たなら、労いの意味を込めて「12安打完封やな」と誉めてあげるのが良いだろう。

 さて、私の手元に報告書が届くのである。先日頼んでいた試験の報告である。
「はらたまさん、これ。出来ました」
「ああ、あれね。どうだった?」
「思ったより数値は出てなかったんですけど」
「……渋くライト前に持っていったなあ」
「え? 何ですか」
「ああ、いや何でもない」

 野球的表現は通じる相手にだけ使いたいものである。ちなみに左打者のレフト前より右打者のライト前の方をより「渋い」と感じるのは私だけだろうか。

 そんな私を投手に例えるならば、右の軟投派。持ち球は140キロそこそこのストレートと切れないスライダー、ストレートが遅いので効果の薄いチェンジアップ、制球難に拍車をかけるナックルボールだ。

他の4kコラムへ

はらたまhomeへ