4k65:儀式
バッターボックスに入る。 ホームベースをチラと見ながらバットを振り子の様に動かし、その後おおよそ一回転させる。その時ヘッドは投手→ホームベース→捕手と審判→上空の順に向けられる。 かの天才打者に限らず、一流のスポーツ選手はちょっとしたおまじないというか、自己流の儀式を持っているという。それは自分ルールほどの拘束力を持たないが、日々マイナーチェンジを繰り返しながらあなたの身体にも染み着いているはずである。 私はゴルフをやらない(幾度か試みたが、どうやら無理らしい)のでわからないのだが、あのスポーツは儀式満載なのではないかと想像する。 私ももちろん「儀式」を持っている。 「儀式」の内容を忘れてしまっているのである。 サーブ動作は連続したものなので、手順を確認しながら再現するわけにはいかない。今までの私は動作の合間に仕込んでいた「儀式」によって動作全体の再現性を得ていたのだ。きっと。 コートの外に立つ。ボールを2回パシパシと叩く。あ、えーとこの後で少し腰を屈めて足元を確認して。あれ?いつもより立ち位置が前にあるような。ん?何だかコートが小さく見えるような気がする。ネットも高いような。えい。打ってしまえ。ポコ。 恥をかくのである。 スポーツだけではあるまい。 私の「儀式」を紹介しよう。 ロッカーの前で作業服に着替える。おはようございまーすとか言いながら席に着く。机の上に乗っているノートPCを開き、電源を入れる。 これで脳は仕事モードに切り替わるのである。 あ。室長、この前頼まれていた書類作成を忘れていたのはマジックペンがどっかに行っちゃったからです。 一本追加するのに一ヶ月以上かかっているこの「4k」にも儀式の導入が必要か。 |
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