4k80:アヲジル効果



 

「うーん。まずーい。もう一杯!」
とやる例のCMを最近見なくなったように思うが、どうだろう。最近テレビでは放送されていないのだろうか。
うまいCMだと思った。
あの手の商品(健康になるという効果をうたった食品)は、味という点では大抵普通の食品に劣るものだと思われ、「美味い!」とアピールしてみたところで、わずかな不安感が残るものであると思うのは私だけであろうか。
そこで、どうせならば「マズイ」という事実をはっきりと知らせておいた方が潔いかも知れないと考えたのだろうか。幸い我が国には「良薬口に苦し」という都合良い言葉もあることであるし、さらに「そんなに不味いなら一度飲んでみよう」というネタ体質の人にも受けが良いかも知れない。

このCMのように、「あえてマイナスイメージを強調し、プラスイメージを押さえ気味にしておくことで受け手側が想像力を刺激され、かえって良いイメージが残る現象」のことを、

アヲジル効果

と仮に呼んでみる事にする。
(実際にはちゃんとした手法が存在し、名前があるのかも知れないがとにかくこのように呼ぶ)

この「アヲジル効果」、意外に有効だと思うのだが、どうだろうか。
特に私のようなプラスイメージを素直に受け取ることができないひねくれ者にとっては有効だと思う。
例えば「美味しく健康! アヲジル最高!」と普通にアピールしたコマーシャルがあったとしても、私などは
「美味しい上に健康だなんてそんなうまい話があるはずがないではないか」

などと口走りそうである。自分でも気持ちが悪いくらいに予想がついてしまう。ああいやだ。

そんな私にアヲジル効果。

いかに酷いものであるかを事前情報として受け取っておけば、飲んだ後に多少まずくても許せるというもの。あくまで主目的は自分が健康になるという効果なのだ。美味しいものが飲みたければ健康を犠牲にしてでも毎日発泡酒を飲めば良いのである。現に私はそうしているのである。

さて、正があれば逆がある。

「あえてマイナス面を全てさらけ出して納得させ、プラス面は受け手の想像力で補ってもらう」のが「アヲジル効果」の主なところだが、「逆アヲジル効果」はその反対、

「当たり前に存在すると受け手が想像しているものをあえて積極的にアピールすることによって、宣伝効果を半減させてしまう」

そういう効果のことである。

わかりにくいと思うので具体例を挙げてみよう。

先日、ある展示会に行く機会があった。

展示会とは要するに展示会であるので、出展企業はそれぞれに自社の製品、テクノロジーを様々な形で披露するのである。ピチピチヒラヒラのオネエサン方もオロナミンC片手に私をアンケートへと誘うのである。

思わず用事の無い企業のアンケートに答えて名刺をばらまいてきてしまったではないか。後日少々鬱陶しいことになってしまう予定である。
しまった。本題はオネエサンではないのであった。逆アヲジル逆アヲジル。

展示会の会場は広い。メインストリート(?)沿いは大企業が大きなブースで派手にピチピチヒラヒラやっているのだが、路地裏というか、会場の隅っこ壁際のあたりで細々と出展しているブースもあるのだ。
大概は「○○町なんとか業組合」とか「△△国」のブースだったりするのだが、たまに「△△国」のブースをチラッと覗いてみると、

「日本語対応可」

と書いてあったりするのだ。嗚呼これは「逆アヲジル」だ。

日本国内で行われている展示場なのである。なのであるからして、こういったことはわざわざ書かずに普通に日本語対応していただきたい。確かに場所は「国際展示場」なのだから英語くらい使う準備が当方にも必要だと拙者も同意するのでござるがここは一つ、あえてその札を外してみてはどうだろうか。貴国の為にもなると思うでござるがいかがでござろう。
わざわざ「日本語対応可」と書いて(微妙に汚い字で)、黙って待っておられたのでは、拙者としてはわざわざ話しかける気にはなれないということでござるよ。不安になるのでござるよ。シャイシャイジャパニーズ。

ござるはもういいとして、もう一つ。

展示会は2日間かけて回ったので、宿泊の予約を取っておいたのである。
酒を飲む約束もあったので経費を浮かせるべくカプセルホテルなのである。
実は私、カプセルホテルなるものに宿泊するのは初めてなので、少々不安があった。何だか怖くないか。カプセルホテル。
ネットで宿泊予約をとるのである。空室状況を見ながら、最寄の駅から検索できるので便利なのである。いやはや便利な世の中に。

「安全。清潔。快適なカプセルホテルです」

わざわざ書かれると一抹の不安が。

何しろ安全で清潔なのだから、このカプセルホテルを選択しても問題はないはずなのである。

が、しかし。いやしかし。

本当に安全なのか。清潔なのか。
(泊まってみると何ということもないのだった。わざわざアピールしなくても)

「うーん。ふけーつ。もう一回」

ならんてそんなことには

 

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