4k91:切った。見られた。――勝った?
いわゆるひとつの「あの出口」の横が腫れている。 立っていても座っていても、寝ていても痛い。自慢にもならないが、人一倍痛みに耐性が無い私である。 そしてとにかく病院なのである。嗚呼ついに、痔で病院なのである。 しかし転勤して来たばかりであるので病院がわからない。急遽出張先から会社の医務室に電話して教えてもらった。これが金曜の話。 駐車場で待っている人間を見て気を使ってくれたのか、早めに入口を開けてくれた。そこで又看護士さんと目が合う。にっこり笑って貰う。ちと恥ずかしい。 受付にて初診である旨を告げる。 「どうされました?」 指し示された方向にはドーナツ型のクッションが。 アレに座って(中央部に空間があったとしても、座る時にはやはり痛いと思われるが、勧められたからには座らなければなるまい)、問診表を記入し終わった頃にはすぐに呼び出しがあった。一番乗りで、他に患者がいないのであった。早く治してください先生。 新しい病院で、院長(若い男性)を除くスタッフは全て女性。しかも若い。 診察を受ける。 「ああこれはすぐ切って膿を出しましょう」 その間5秒。素晴らしい。 甘かった。 嘘。今考えた事は嘘です先生。 麻酔という奴は痛みを感じ無いようにする為に打つものであると私は認識していたのです。 術前に、人一倍痛みに弱いのですと伝えてはいたものの、それでは痛くないようにしましょうとはいかないもののようで(あたりまえ)、患部に何度も刺す注射が痛くないはずがないのである。 何かする度に痛い痛いと騒ぐ私を叱るでもなく淡々と手術は進む。 とある私の知人は同様の手術を経験されているが、 いや確かにそうなのだろうが、それを男性に言わないでいただきたい。体験不可能なのであるからして、それを言われたら返事のしようがないのである。 あ、そうそう。どこかで聞いたところによると、出産時にはなにやら脳内で麻薬物質が生成されるらしい。 結局手術の間中ずっと痛い痛い言っていたのだった。しまいには気分が悪くなって休ませてもらった(献血などでも前科あり)。血圧まで測られた。 この一件のせいか、私は病院ではすっかりお馴染みの顔となってしまったようで、以後の通院(傷口に詰めたガーゼの交換。これも痛い)時からはなんだか受付嬢(?)もクスクス笑いながらの応対のような気がする(考えすぎ)。すっかり人気者。うきうき。 ――ここが肛門科でさえなければ。 さて傷も少しずつ治り始めた先日、妻がテレビの野球中継を見ながら言った。 「ねえ。日ハムに『セギノール』って人がいるでしょう?」 テレビにはちょうど電光掲示板の映像が映っていた。ファイターズの打順が表示されている。 「あれをパっと見た時、『ぼらぎのーる』に見えるんじゃけど(笑)」 ……。 いや、私には見えない。
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