1KW変更計画・申請から落成検査までの日記 その6

2001年10月24日。
いよいよ、検査の当日です。

2001年10月24日 いよいよ、検査当日です。
 前日の雨に変わって、朝から秋晴れの快晴。北よりの風が少し強目。
 目印に、クランクアップタワーをフルアップしておく事を伝えていましたが、横に川が流れているようなロケーションで
すので、南北の風は良く通り、少しの風で、クランクダウンします。当日も朝から、何度もクランクダウンしていましたの
で、タワーの状態を注意していました。
 昭和55年に100Wの検査を受けた事もありましたので、だいたいの検査要領は掴んでいました。
 午後1:00にRIG、リニアの電源をONして暖めておきました。
 午後1:10頃、大き目のワゴン(ワンボックス)車に運転手を含めて、4名の検査官の訪問。

・まず遠方からお越し頂いた、お礼と挨拶を行いました。

・挨拶の後、住所、設置場所の確認があり、間違いない事を伝えました。その後、検査官の自己紹介がありました。
 総務省技官1名、事務官2名の計3名で検査にあたられました。車を運転された方は、多分、技官だと思いますが、
 検査には立ち会われませんでした。

・シャックまで案内し、今日は、この後予定があるのですか?と質問。長谷川さんのみですよ。との事で、雑談を少々
 行いました。

・OM諸氏からアドバイス頂いたように最初のかしこまって「ただいまより、電波法第?条に基づき、JF3KONの落成
 検査を・・・」があるのかなと心準備をしていましたが、雑談の延長から、それでは、そろそろ始めましょうか?。で、
 検査の開始。

・まず、無線従事者の免許証の提示を求められ、変更許可証、業務日誌の確認、無線検査簿、電波法令集等の書類
 の確認がありました。

・JJYを受信して下さいとの事で、同時に時計の確認がありました。

・引続いて、機器関係の説明を求められ、申請された無線機を確認します。
 まず、ICOM IC-756PROはどれですか?。HENRY 3KPREMIRはどれですか?。HENRY 2006Aはどれですか?。
 それぞれ、機種名称と実機の確認が行われました。

・接続していた、BIRD43 POWER計と検査官が持参したBIRDの通過型POWER計と入替えを行います。このPOWER計
 の操作は、全て検査官が行います。

・ダミーロードを接続して、1.9MHz〜50MHzまでの中心周波数で、CWの連続トーンで、最大出力を測定し、検査官が
 検査シートに記載します。
 1KWの申請でも、600W以上あれば、1KWの免許になります。但し、1KWを超える事は、NGです。600W以上で1KW
 より少ない出力については、当然の事ですが問題ありません。

・次は、アンテナを接続して、同様に1.9MHz〜50MHzまでの各周波数での、出力と反射波を測定し、同じように検査
 官が検査シートへ記載します。この時のチューニングは、あらかじめダミーを接続して調整を行い、試験電波を発射
 しますので、電波法に従って、VVV EX DE JF3KON 受信を何度か繰り返し、妨害を与えていない事を確認した後、
 最良の状態に調整を行います。SWRは、限りなく1:1に近い方が良いのは言うまでもありませんが、アンテナチュナ
 ーを接続して、SWRを見かけ上、落としても問題ありません。私の場合、1.9MHzがそうでした。また、周波数は、中
 心周波数での指定はありませんから、SWRが一番低い周波数で良いとの事でした。

・通常であれば、上記と同時にTVIの調査を行って終りなのですが、私の場合、最初につまずいた、電磁波が人体に
 及ぼす電波防護指針の基準値を計算上では、超えていましたので、いよいよその検査です。最初の説明通り、厳し
 く計算すると14MHz以上は全てNGでした。

・それでは、タワーを一番低い位置まで下げて下さい。

・技官の一人と事務官の一人が外に出て、電界強度計を持ち、電界強度の測定にあたります。やり取りは、特定小
 電力トランシーバーを使いながら実施です。
 50MHzは500Wでしたのでクリアしている事は予測していたのですが、問題は、28MHzのFMでした。事前に検査官
 へ28MHzが一番心配だと伝えてありましたので、28MHzの測定完了後、範囲内との結果を教えて頂き、ホットしまし
 た。

・ところが、予想外の展開で24MHzを何度も電波を出すように指示されました。その理由は、24MHzがギリギリの範囲
 内との事でした。クランクダウンしていますので、同軸ケーブルの近く(アンテナ直下)に寄ると超えるとの事で通常、
 他人が出入りする場所ではないので、問題ないとの事でした。
 よく考えて見ると、24MHzに対応するアンテナの設置位置は一番下の位置。しかも、逆VタイプのCD社の830-V1で
 したので、エレメントの先が地上に近くなる事に気付きました。思うには、エレメントの先は地上7mぐらいではないか
 と予測します。また、拍車をかけて出力も24MHzが一番高率良く出ていて、960Wぐらいでした。

・同時に隣の部屋のテレビをONにして、検査官がテレビのリモコンを片手に特定省電力トランシーバーでやり取りしな
 がら、TVI調査も同時に行いました。

・この途中で、ハプニングがありました。突然、焦げ臭い匂いが立ち込めました。長時間のキーダウンが原因なのか分
 かりません。しばらく、冷却期間を設けると匂いが消えました。2.5KW PEPのリニアを20〜30秒の1KWのキーダウン
 程度では、余裕があるはずなのに、原因が分かりません。検査後、リニアの内部をくまなく調べたのですが、何処に
 も、こげ跡、焼け跡は見当たりません。以後、難なく動作していますので、当日は、窓を開けていたので外からの匂
 いだったのかも知れません。

・最後に計算上は問題無かったのですが、傾斜型にしていた1.9MHz用のフォールデットダイポールの低い位置での調
 査です。もう一度タワーを伸ばして1.9MHzの電波を出せる状態にして下さいとの指示。検査の開始。電界強度の範
 囲内。特に問題なし。

・検査も終りに近付き、パートに出ている妻にお茶を入れてもらうように依頼していたのですが時間になっても帰宅しま
 せん。慌てて、コーヒーメーカーを取り出し、準備。その途中に、「長谷川さん、少しよろしいでしょうか?。」

・「ハイハイ、何でしょうか?。」「検査簿は、これですね。」「ハイそうです。すみません。最初にお渡ししておかなけれ
 ばいけませんでしたね。・・・。」また、台所に行ってコーヒーの準備。10分後ぐらいに、「長谷川さん、・・・」と呼ばれ
 ました。「 ハイ・・・。」

・検査官全員キリッツして、事務官より、「本日の検査について説明します。」「検査結果は、電波法第?条に基づいて
 検査の結果、全て満たしていましたので、指定事は特にありませんでした。結果は合格です。但し、少し注意して頂
 きたい事があります。タワーから傾斜型でのフォールデットダイポールですが、タワーがダウンすると、下に垂れ下が
 り第3者が触れる事が出来ますので、その対策はどのようにされるのですか?」と質問されました。「元々、アンテナ
 を梱包してありました、筒がありますので、それに巻き取って、タワーの根元に置いておくつもりです。」と答えたので
 すが、「それでは、非常に危険です。人の手が届かない場所に置く方法を取って下さい。」「分かりました。それでは
 タワーの中途で、クレモナロープで縛るようにするか、必要な時に上げるようにして、普段は撤去するようにします。」
 「そのようにして下さい。」

・その後、事務官より無線局免許状を手渡されました。
 最後に、電波障害についての注意があり、「検査前には、ご近所を訪問されて調査を行なわれたと思いますが、1K
 Wと言う強力なエネルギーを放出しますから、検査前以上にご近所への気配りと配慮を忘れないように運用して下
 さい。」と検査の時の定番?の注意事項がありました。


クランクダウンした時のフォールデットダイポールの状態です。黄色の円は地
面ぎりぎりになり、白い円は給電部です。この状態では危険です。注意されて
当然でしょうね。検査対応で軽く考えていましたので、この対策は必要でした。

・時間を見ると、午後3:30でした。
 検査対象の周波数が多かったのと、電界強度の測定などで、通常の倍以上の時間がかかったようです。

・最後に、お茶を飲みながら雑談し、「関西地区での1KWの検査は多いですか?。」と質問したところ、「1年間通し
 て、パラパラ程度です。やはり、最初の電波防護指針で諦められる方が多いようですね。長谷川さんのようにダメも
 とで受けられても、実測するとクリア出来ている事が多いですよ。」との事でした。
 持参された電界強度計は、すごく高価な物だそうで本体よりアンテナの方が高価だそうです。また、電波を出してい
 ない状態でも、少しですが常時電磁波を検出しているのを見せて頂きました。この電磁波は携帯電話の基地局や、
 微弱コードレス電話、地磁気等の影響だそうです。

 最近の検査では、電話、ラジオ、ステレオ等も調査されるとうわさを聞いていましたが、テレビの調査のみでした。
総合的な感想ですが、私の場合、常置場所の変更でしたので、アンテナの設営、リグ、リニアの調整、インターフェア
対策等、全て、変更届けを提出後に行いましたので、変更許可から工事落成まで、7ヶ月かかりました。更にその間、
リニアの24MHzで同調が取れない問題や、1.9MHzのアンテナをUSAのショップに注文2日後に同時多発テロ事件が
発生し、アメリカ全土の空港閉鎖などで商品の納期が遅れるなど、ハプニングがありました。
 すでに設備が整い、インターフェアの対策が取れていれば、1ヶ月もあれば検査に挑むことが出来ると思います。
 私の場合、1.9MHzから28MHzまでを1KWとして、50MHzを500Wとしましたので、全ての周波数に対するアンテナの
準備が必要となりました。垂直系のアンテナで、3.5MHzと3.8MHzを考えていましたが、インターフェアの問題で諦めま
した。検査では、1.9MHz用に準備したフォールデットダイポールで受けました。このアンテナ1本あれば、1.9MHz〜
28MHzまでカバーできますので、不足アンテナを補う事も出来ます。長さも、7MHzのダイポールより少し長めなので、
7MHzのフルサイズダイポールを設営出来る環境にあれば問題ありません。もし、タワーの地上高が20mを超えていれ
ば、タワーの頂部から傾斜型(私の場合)にすればそんなに、敷地面積は必要としません。但し、高い周波数を乗せる
場合は、最下部が人体に近い場所になるので電波防護指針の基準値の注意が必要です。

 最後に、電波防護指針いついては、計算結果と比較して思っていたより、同軸のロスやアンテナの打ち上げ角など
で、通常の設置状態でクリア出来る事、ご近所周りのインターフェアは勿論ですが、万が一発生した場合でも、根気
よく対応すれば、必ず解決できる事を実感しました。

1アマ以上の資格を所持されているOM諸氏も1KWの検査を受けられる事をお勧め致します。電波防護指針は、思っ
ていたよりクリア出来ます。むしろ、インターフェアの対策をしっかり取っておくほうが重要に思えました。また、インター
フェアーに対する、資料を集めていると、電波を出すのが怖いぐらいに思えました。

最後に、今回の検査に合格出来た事は、愛知タワー工業のほりべ社長、ICOMアイユーズご担当の三木様、1KW
検査の経験で相談にのって頂いた、JA3NTE森OM、そして、検査にあたり、何かと相談にのって頂いたり、アドバイ
スを頂いた近畿総合通信局のN担当官に対して、厚く御礼を申し上げます。

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2001年11月7日より 回目の1KW検査日記の閲覧者です。