恥の文化


日本人の美徳である恥の文化が、ここ何年かで急速に失われて来ている。

研究者に限って言えば、学術論文や報告書を書く人間はデータに対して正直でなければならない。ある値が飛び抜けて高く、その値を入れるとデータに「ばらつき」が出るとき、それを黙って除くか、理由を述べた上で除くか、棄却検定をしてから除くか、対処の仕方は研究者によって様々である。場合によっては「除かない」という選択肢も、あるかもしれない。研究者にとっては、常に気を配らなければならない行為である。

その一方で、ねつ造したデータを文部省(当時)の科研の報告書に記載し、そのことを恥とも思わないで生きている人間がいる。それが誰かを告発するつもりはないが、自らの行為を少しでも恥だと思う気持ちがあれば、定年退官後は表舞台から遠ざかり、どこか人目に付かないところで隠匿生活を送るのが筋だろうと思う。だが、彼は「厚顔無恥」と言おうか、その後も自らの活動を自粛することもなく、色んな方面に影響力を残したまま、のうのうと暮らしている。


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