電気の無駄遣い=税金の無駄遣い


大学構内の建物には、夜中遅くまで電気が点いている部屋がある。これを見ると「頑張って仕事をしているなあ」と、つい感心させられてしまう。でも鍵が掛かっていて、室内に人の気配がしない部屋が、少なくないらしい。

私がいる部屋の斜め向かいの部屋には、現在は助手が3人いる。かつて助手が1人しかいなかったとき、その部屋の鍵が掛けられた状態で、5日間、ずっと電気が点いていたことがある。当初、私は「この部屋でフリーランの実験でもしているのかな?」と単純に考えていた(1)。本当のところは、部屋の電気を点けたまま、どこかへ遊びに行っていたらしい。

また某教官の部屋は、夜通し電気が点いている日が多いのだが「彼が部屋にいたためしがない」という、もっぱらの噂である。もう、かれこれ30年以上も在職している人のことだから、これが常態となっていて「塵(ちり)も積もれば山となる」のことわざ通り、これまで彼が一体どれくらい電気の無駄遣いをしてきたのか、私には想像もできない。これが税金の無駄遣いであることは、明々白々である。

私がいる部屋は、大学院生・研究生・留学生を合わせて、総勢12名の大所帯である。だから朝から晩まで、入れ替わり立ち替わり何らかの人がいて、この部屋の電気が消えることは滅多にない。これは電気の無駄遣いではないだろう。でも、たった一人で部屋を使用している人は、部屋にいないときくらい電気を消しても、罰は当たらないと思うのだが......。

私は昼間でも、人がいない部屋を見つけると、その部屋の電気を消すことにしている。また私が最後に部屋を出るときは、人がいない部屋の電気をフロアの端から端まで消してまわり、廊下も含めた全体を真っ暗にしてからエレベーターに乗ることにしている。こんなとき、鍵が掛かっていて電気が点いている部屋があると「鍵が欲しい。その鍵でこの部屋を開けて、電気を消したい」という衝動に駆られてしまう。

最初の頃、電気を消さないで部屋に鍵を掛けて外出する人や、部屋にいないのに電気を点けっぱなしにする人の行為が、不思議でたまらなかった。でも、ある人から「それは仕事をしているように見せかけるパフォーマンスだよ」と教えられ、その行為を漸く理解することができた。それで騙される人が多いから、やる人も多いのだろうけれど、そういう人に限って研究業績が少ないんだよね(だから、やるのかな?)

研究費の半分を光熱費で吸い上げられ、研究費が少なくて困っていると、いつも嘆いている、そこのあなた。嘆く前に、自分の行為を見直してみるのも、得策かもしれませんよ。

[脚注]
(1) フリーランの実験には、電気を点けっぱなしにして一日24時間を明期の状態にしておき、生物本来の体内リズムを呼び起こそうとするものが多い。


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