自由市場???


どの新聞にも、必ずと言っていいほど「読者欄」というものが設けられている。読者欄には、読者から寄せられた様々な意見が掲載され、紙面をにぎわしている。これらの意見を採用し、それぞれに効果的な見出しを付けるのが、読者欄担当者の腕の見せどころである。

過日、某新聞で「自由市場」という面白い見出しを見つけ、その意見を読んでみた。何のことはない。ただの「フリーマーケット」のお話であった。フリーマーケットは英語で「flea market」と書き、日本語では「のみの市」と訳される。「のみ」は、それこそ人間にたかるノミである。

カタカナで「フリー」と書けば、英語の「free」の意味で使われるのが普通である。だから、この読者欄担当者は、カタカナで書かれたフリーマーケットという言葉を、英語で「free market」と書くものだと思い込んでいたに違いない。なるほど、これだと確かに「自由市場」という訳にはなる(1)。しかし残念ながら、問題の意見そのものには、自由市場という言葉は見当たらない。

翻って考えてみれば、私たちの祖国である日本には、街中にカタカナ言葉があふれている。いわゆる外来語を、なんでもかんでもカタカナ言葉に置き換えて済ませてきたつけがまわり、言語本来の持つ意味を理解不能にさせている。意味不明なカタカナ言葉をなくすためには、昔からなされてきたように、外来語には適切な日本語訳を付けることが必要である。そうでなければ、外来語のまま表示してもらったほうが、よっぽど理解しやすい。

[脚注]
(1) 英語の「free」は、物に関しては「持ち主がいないから貰っても構いませんよ(無料ですよ)」という意味で使われる。


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