「#」という記号は、電話機やPCのキーボード、或いはドアロックシステムなどで普通にみられる。これは一般に「ナンバー(number)」と読み、もちろん「番号」の意味で使われる。例えば「No. 5」は「#5」というふうに表す。私たち研究者に馴染みなのは、国際専門誌に学術論文を投稿すると、編集部が審査のために付ける「原稿番号(manuscript number = MS #)」であろう。
その一方で「論文のゲラ刷りを校正するときに使う記号(marks in correcting proofs)」の中にも、この「#」がある。これは「insert space」を意味する記号として使われている。つまり、この記号を本文中に示すことで、印刷会社の技術者に対して「ここはスペースを空けなさい」という指示を与えたことになる(校正記号は、日本と欧米とで異なっているようである)。
「#」という記号は、果たして、どう読むべきなのか? もしかしたら、ここで私が示した「ナンバー」という読み方も、本当は正解ではないのかもしれない。
[脚注]
(1) 英和辞典で「sharp」を引くと、あまたある意味のひとつとして「嬰記号、シャープ: 半音高める記号(#)」と書かれている。だが「逆は必ずしも真ならず」である。音楽以外で「#」とあったとき、この記号を「シャープ」と読むのが正解であるのならば、同時に「フラット」という記号が使われてしかるべきである。しかし、そうはなっていないことに着目すれば、音楽以外では自ずと「#」の読み方が異なることにも気付くだろう。「#」という記号の「シャープ」という読み方は、音楽に限定して使ったほうがいいと思う。