Thank you for your queries. Although I have a question about how you have known of me, I understand the worldwide circumstances of Salamandrella keyserlingii well. So, I believe I can answer your queries. First, because autumnal-nonbreeding immigration towards terrestrial hibernacula near a breeding location would occur at Kushiro (Hasumi and Kanda 2007), you will be able to find wild individuals during hibernation around the breeding location. However, I do not know any person who is raring this species in the laboratory in Japan. Next, natural freezing tolerance is well known in this species (see Hasumi et al. 2014), and there are some studies to freeze and defrost individuals of this species. Since the original paper dealing with natural freezing tolerance of S. keyserlingii is written in Russian, I provide you another paper of its sibling species written in English (Berman et al. 2010). I hope you will find these papers useful to your film work.
(補足): 諸般の事情で更新が遅れたが、これは2014年3月21日付の回答である。
・Berman, D. I., A. N. Leirikh, and E. N. Meshcheryakova. 2010. The schrenck newt (Salamandrella schrenckii, Amphibia, Caudata, Hynobiidae) is the second amphibian that withstands extremely low temperatures. Doklady Biological Sciences 431: 131-134.
In S. keyserlingii, actually the problem of animal welfare is a big issue, but a more problematic issue is that this species is protected to be designated as a natural monument by the Government of Hokkaido Prefecture. I am very sorry to say that I have not yet experienced to freeze and defrost individuals of this species in my laboratory. I have heard of no Japanese researchers to do so. If you want to learn a freezing and defrosting method, please contact Dr. Berman. He is undoubtedly the best scientist who performs this work although he is nearly 80 years old.
(補足): 諸般の事情で更新が遅れたが、これは2014年3月25日付の回答である。
まず最初のご質問ですが、基本的にアホロートル(axolotl)は変態しません。アホロートルに両生類の変態を促進する甲状腺ホルモン(thyroid hormone)を生成する能力があり、なおかつ甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone = thyrotropin)も正常に働くことから、アホロートルが変態しないのは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone)に問題があるからだと考えられています(for details see Tompkins, 1978)。その証拠に、甲状腺ホルモンを含む飼育水で育てると、アホロートルは変態します(e.g., Page et al., 2009)。つまり、アホロートルが飼育されている水温が高くとも、甲状腺ホルモンが作用しなければ、変態しないのが普通です。
その一方で、アホロートルが棲息するソチミルコ(Xochimilco)湖は、年間を通しての水温が10℃以下と低く、湖内にヨウ素も少ないことから、甲状腺ホルモンが生成できないと一般的には考えられていて、これらが変態しない要因とされているようです(日本人の悪い癖で、この湖の名称が「ソチミル湖」だと思い込んでいる人が多いようですが、正しくは「ソチミルコ湖」です)。しかし、世間一般に流布されている、それらの要因は、150年にわたる研究者の様々な実験によって、アホロートルが「強制的に」変態させられた実験結果に基づいたものではなく「たぶん自然界では、そうだろう」という推測に過ぎないのです。
問題は、ウーパールーパーとして市場に流通している個体の中に、アホロートル以外のペドモルフォシス(paedomorphosis: paedo = child, morph = form)をする種(e.g., Ambystoma tigrinum)が含まれていることです。これらの種は、アホロートルとは異なって容易に、棲息する環境条件の違いによって、また飼育条件の違いによって、幼生の形態を保ったまま性成熟したり、性成熟した次の年に変態したりします(世間一般では「トラフサンショウウオ科(family Ambystomatidae)の種で、幼形成熟(neoteny)する個体をアホロートルと呼ぶ」という誤解が数多く流布されていますが、学術的には「メキシコサンショウウオ(Ambystoma mexicanum)で、幼形成熟する個体をアホロートルと呼ぶ」が正解です)。
次に二つ目のご質問に関してですが、市販されている「ウーパールーパーの餌」の材料に海草類が使われていることは、今回、初めて知りました(調べてみると、海藻粉末が配合されているようですね)。これは、程度にもよりますが、余り良くないと思います。なぜなら、海草類に多く含まれるヨウ素の過剰摂取は、アホロートル以外のペドモルフォシスをする種の変態促進どころか、甲状腺の濾胞の肥大から来る病気(ヒトで言えばバセドー病)を引き起こす原因になってしまうからです。しかし、配合されている海藻粉末は、甲状腺に影響を及ぼさないほどの微量だと思いますので、それほど気にする必要は無いでしょう。
アホロートルを研究用に飼育している場合、一般にはサケ・マス飼育用の配合飼料が餌として与えられていて、これらに海草類は使われておりません(緑藻類の天然色素である、アスタキサンチンやカンタキサンチンなどは、発色を良くするための飼料添加物として配合されているようですが......)。市販されているウーパールーパーの餌で、海藻粉末の使用が気になるようでしたら、サケ・マス飼育用の配合飼料を与えてみて下さい。
(補足): これは2013年7月16日付の回答である。
・Tompkins, R. (1978) Genic control of axolotl metamorphosis. American Zoologist 18: 313-319.
・Page, R. B., J. R. Monaghan, A. W. Walker & S. R. Voss (2009) A model of transcriptional and morphological changes during thyroid hormone-induced metamorphosis of the axolotl. General and Comparative Endocrinology 162: 219-232.
先の回答でも申し上げましたように、(○○さんが示されたような飼育環境で)普通に飼育していれば、アホロートル(axolotl = Ambystoma mexicanum)が変態することはありません。○○さんが書かれたような変態の兆候(外鰓の退化、尾ひれの消失、眼球の突出、脱皮[薄皮のはがれたようなものが体に付着している現象]、等々)が飼育個体に観られたのであれば、考えられることはただひとつです。
それらの個体はアホロートルではなく、トラフサンショウウオ科でペドモルフォシス(あえて訳せば「幼形保持」[どこかの辞書にある「幼形進化」という訳語には違和感があって、この用語は使わないことにしています])をする他の種(e.g., A. talpoideum, A. tigrinum)の幼生が、ウーパールーパーとして販売されていた可能性が高いと思います(何度も言うようですが、ネット上には「幼形成熟するトラフサンショウウオ科の個体はアホロートルと呼ばれる」といった誤った記述が多く見られます)。
このように断言する根拠は、ウーパールーパーを飼育・販売している方々が「ウーパールーパーとアホロートルは同じものではない」という言葉を当たり前のように口にすることです。彼らとしては「我々はアホロートルを販売しているわけではなく、ウーパールーパーを販売している。だから、ウーパールーパーが変態しても、変態する途中で死亡しても、我々に責任は無い」と、初めから買い手に対して予防線を張っているのだろうと思います(○○さんの場合、変態不全で死亡というよりも、変態する途中で溺れて死亡した可能性があります)。
(補足): これは2013年7月17日付の回答である。トラフサンショウウオ科の中でペドモルフォシスをする個体が、すべてアホロートルと呼ばれているものだと信じ込んで、飼育・販売している方々も少なくないようである。
「別メールでお知らせいただいた写真のサンショウウオ成体が、アカイシサンショウウオかどうか?」という点ですが、お写真を拝見した限りでは、おそらくアカイシサンショウウオで間違いないだろうと思います。「おそらく」と言葉を濁すのは、サンショウウオ属の場合、形態的特徴だけで種を同定するのが困難とされているからです。しかしながら、発見場所は、この種の分布域とも重なっているようですし、他に適合する種が見当たらないようです(メールには「(発見場所が)赤石山脈に属する山ではない」と書いてありますが、ここで示されている「水窪町」という地名は、アカイシサンショウウオの分布域として有名です[様々な文献に出ています])。このサンショウウオは、私の記憶では、確か卵嚢も幼生も発見されていない、つまり産卵場所が見つかっておらず、従って止水繁殖性なのか、流水繁殖性なのかも分かっていなかったはずです。ですから、近くに沢が見つかったとしても、そこで繁殖しているとは限らないわけです。おそらく、ハコネサンショウウオと似たような繁殖生態を採っているのだろうと推察されますので、是非、アカイシサンショウウオの産卵場所を発見して下さい。
(補足): 諸般の事情で更新が遅れたが、これは2012年12月3日付の回答である。