1年生の練習内容 2001年10月号 作成:平成13年10月13日 |
目 次 ●ターン |
・ボールリフティング 大事な基礎練習なので、練習開始時には必ずやるようにしている。連続回数は、出来る子でもまだ3,4回なので、意識的に違う部位の組み合わせをやらせて集中力を持続させている。 @“もも”とインステップの組み合わせ A頭と“もも”またはインステップの組み合わせ B胸と“もも”またはインステップの組み合わせ ・トラップ つづいて、インステップのトラップに移る。手で頭上に投げ上げたボールをインステップに当ててトラップする。足首の力を抜いて正確にインステップに当てることができればうまくトラップできる。見ていると、出来ない子の大半は、インステップではなくつま先やすねに当てていた。 |
1年生には、色々な練習の中で意識的に全員にキーパーの機会を与えている。そうしないと、将来やれるメンバーが限られてしまい、非常にやっかいなことになるからである。キーパーとしてすぐに役立つ技術は、基礎練習の中に組み込んで自然に覚えさせておいた方がよい。それは、高く上がったボールのキャッチングとパントキックだ。 高いボールをキャッチさせると、ほとんどの子は手先でつかもうとする。そして取りそこなって落してしまう。試合でやったら致命的だ。この練習は、次の様にやってみた。 まず、コーチからボールのキャッチングのやり方を見せてやる。やり方は簡単だ。ボールを手で投げ上げた後、掌を上に向け両手を揃えて前に出し、ボールを胸で抱きかかえるようにキャッチングする。この時、手先ではなく腕全体を使うようにする。以下はその手順だ。 @全員に手で投げ上げたボールを抱きかかえさせる。大事そうに体を丸めた方がよい。 A次に、頭上にパントキックをさせる。最初は軽く蹴らせる。そして、その蹴ったボールをワンバウンド以内でキャッチングするように言う。これも、最初にコーチが見本を見せたほうがよい。 B慣れてきたら、出来るだけ高くボールを蹴らせて同様のことをさせると実戦的だ。 |
9月下旬から以下の順にボールタッチの練習を行っている。ちょっと基本動作を確認した後で、「7人抜きをしたら座ってください。」と言って、競争させる。 @両足インサイドでボールタッチしながら、相手の所に行ってぶつからないように脇を抜き去る。 A相手の正面に行ったら、足の裏でコローンと横に転がしてから、逆足インサイドで縦に抜けていく。 B右足でボールを引いてからインサイドで90度右に進行方向を変える。 C右足でボールを引いて立ち足の後ろを通し90度左に進行方向を変える。 D相手の前に行ったら、まず自分のボールを引いて相手に取られないようにし、その後で相手のボールにタッチする。 上記で、C、D項は以下の様に行った。@〜Bは9月号で紹介したのと同様なので省略する。 ・ボールを引いて立ち足の後ろを通し、進行方向を変える 敵の前に行ったら足の裏でボールを引き、引いたボールを同じ足のインサイドで、立ち足の後ろを通して90度方向転換する(右足で引いたら左に90度)。 「次は、他の子の前までドリブルで行ったら、ボールを引いて方向を変える競争をします。7人分やったら座ってください。誰が1番に終わるかな?誰がラストになるかな?よーいスタート!」と言って全員に競争をさせる。 ・ボールを引いてから相手のボールにタッチする 「今度は相手のボールにタッチする競争です。ドリブルして相手に近づき、向かい合ったらまず自分のボールを引いて取られないようにしてから、スキを見つけて相手のボールにタッチしてください。蹴ってはいけません。また、後ろからこっそり行って蹴るのもダメです。それは卑怯者です。7人分タッチしたら座ってください。誰が1番に終わるかな?誰がラストになるかな?よーい、スタート!」と言って、全員に競争をさせる。この練習は、一番盛り上がるので必ず最後にやるとよい。 |
●ターン ・クライフターンの追加 9月号では、3つの基本ターンを使った練習内容を紹介したが、ほとんどの子が出来るようになったので、少し難しい部類のクライフターンを追加した。これは、オランダのスーパースターだったクライフがよく使っていたターンである。インサイドターンとよく似ているが、立ち足の位置が異なる。ターンする時の立ち足をボールの一個分前に置き、インサイドで立ち足の後ろにボールを通す。 |
6月号で紹介したボールの奪い合いの練習内容に、“股抜き”を加えた。 ・ルールの説明 まず、「好きな子と組んでください。」と言って、2人1組にさせる。「今から2人でボールの取り合いをします。ペナルティエリアから外にボールが出たら、出た所からキックインで再開します。その時は、出した相手の子のボールになります。1分位経ったら、コーチがカウントダウンをします。『シュート』と言ったら、シュートが打てます。シュートは、必ずゴールエリアの外から蹴ってください。ゴールエリアの中から蹴ったシュートは、ゴールとは認められません。シュートを入れられた子は、罰として腕立て伏せ1回をしてください。」 「シュートをするまでの間は、できるだけ逃げずに正面から“股抜き”を狙ってください。相手の股の間にボールを通した後、相手より先にさわれたら、“股抜き”をやられた子はその場で腕立て1回をしてください。」 ・スタート 「それでは、まず2人でじゃんけんをしてください。勝ったほうが最初にボールをキープする方です。準備できたかな?」と言って、準備が出来たのを確かめてから『ピーッ』と笛を鳴らす。すぐに、鬼ごっこみたいなボールの取り合いが一斉に始まった。皆必死だ。そこには技術も戦術もない。まさに、サッカーの原点がそこに見えてくる。 時々、「ボールを持っている子は逃げてばかりいないで、正面を向いて股抜きをするか、ボールを引いて取られないようにしよう。」と言って、逃げ廻る子に勝負をさせるようにする。 頃合を見計らってカウントダウンを始めると、ボールが取れなくてあきらめていた子も、にわかに元気になった。次に、シュートの合図をすると、ボールを持った子は一斉にゴールを狙いだした。 次に相手を変えさせて2ラウンド目を行う。この練習は3ラウンドが限度である。 |
9月号で紹介した“ドリブルシュート競争”に守備エリアを加えてみた。この練習の目的はあくまでも、ドリブルからシュートに至るまでをできるだけ早くプレーするように習慣づけることにあるが、途中にディフェンスを入れることで、より実戦に近づけた。単調でハードな内容にならないように、以下の2点を練習の条件に入れることはこれまでと同じだ。 1.勝ち負けがはっきりしていること。 2.得点をしたことが、自分のチームの勝利に貢献すること。 ・チーム分け まず全員を集合させて一列に並ばせる。「前から順番に番号を言ってください。番号を言った子はすぐに座ってください」。こうすると、たちまち順番が決まってしまう。そこで、たとえば12人いたら、「1,3,5,7,9、11番の子はゼッケンをつけてください。」と言って、ゼッケンをつけさせる。 ・準備 ミニゴールを2つ作る。ターンするライン、シュートする範囲を示すラインを引く。ドリブルコースの途中に守備エリアをつくり、コーン4つで囲う。互いのゴールの脇に一列に並ばせる。スタート地点に大きなコーンを置く。得点用の小さなコーンをゴールの脇に置く。 ・ルール説明 次にルールを説明する。 「各チームから一人ずつ出て勝負します。コーチの合図で同時にスタートし、向こうのラインを越えてから戻って来てシュートをします。先にゴールに入れた方を勝ちとします。途中に守備エリアがありますが、この中に各チームから1人ずつ入って相手チームの攻撃を防いでください。味方チームの子が抜けない時は、パスを交換して助けてあげてもいいです。その後シュートをしますが、シュートが打てるのはこのラインとこのラインの間だけです。勝負はどちらかがゴールに入れるまでなので、失敗してゴールを外れてもやり直しができます。得点したら、小さなコーンをここ(白線で書いた得点エリア)に入れてください。ゼッケンチームは赤いコーン、ゼッケン無しチームは緑色のコーンです。先に10点取ったチームが勝ちです。スタートする時は、必ずコーンを片手で触っていること。」と言ってから始める。 ・この練習に含まれている要素 この練習には、サッカーで大事と思われる要素が自然と身につくように仕組まれている。 @早くシュートを打とうとして、ドリブルやターンを早くやろうとする。 A守備エリアの子は、守るためには敵の選手のドリブルコースに入ればよいという概念が次第に身につく。 Bドリブル突破が難しい時は、守備エリアにいる味方の子を使ってパス交換(ワンツー)をするようになる。 Cシュートエリアを設けたことで、ボールが自分の体から離れないドリブルをするようになる。むやみに遠くから蹴らなくなる。また、ゴールに近づき過ぎてからのシュートは無効にして、できるだけ早めにシュートを心掛けさせている。 Dシュートを失敗しても、相手がまだゴールに入れていなかったら、外したボールを取りにいってやり直す機会を与えている。完全に勝負がつくまで頑張るようになる。 ・思わぬ効果 守備エリアを設けてそこに敵味方を一人ずつ入れたことが、思いもよらない練習になることがわかった。それは、集中力のつけ所の練習とでもいうのか、練習ではちゃんと守れるのに試合になるとなぜかよそ見をして簡単に抜かれてしまう子が多い理由がわかってくる。 通常、守備一人を抜いてシュートという練習をすると、守備の子はそれだけをやればよいのでなかなか抜けない。ところが、同じエリアに敵のチームの子が入ったことで、敵のチームの子のドリブル突破を阻止すること以外に、 @味方の子がドリブル突破するのを眺めてしまう A敵の子と守備エリアでよい位置取り等をしようと、邪魔をし合う B味方チームの子を助けてあげようとする という様な、よけいなことに神経が行って集中力が欠けてしまい、守備をまったく忘れてしまう。また、上手な子の方がいろいろなことが出来る分、色気を出して守備をおろそかにする傾向がある。通常の練習では、やる前から勝負は見えていたのに、この練習ではやってみるまでわからなくなる。実力とは反対の結果がでてくることも多い。これは、下手な子のやる気を向上させ、底上げの練習にもなる。たくさんの選択肢のある複雑な状況下で、どこに集中すればよいかという判断力養成に大きな効果があると思われる。コーチとしては、次の様な極めて基本的な指示をするだけなので、すごく楽だ。 @ドリブルしている敵の子に集中しろ!よそ見をするな! A敵のドリブルコースに早く入れ!(ボールとゴールの間に入る練習になる) Bゆとりがあったら、味方を助けてあげよう(同時に2つのことを優先度をつけて考えさせる) |
最近実施した休憩前の課題を紹介する。 @手で投げ上げたボールをヘディングで前に落とし、それをワンバウンド以内でシュートする。 A手で投げ上げたボールを胸で前に落とし、それをワンバウンド以内でシュートする。 B“もも”でリフティングし、ボールを落とさずにシュートする。 Cジャンプした(両足が空中にある)状態でシュートをする。右利きだったら、右足で踏み切り、左足を前に上げて反動をつけて右足のインステップに当てる。 これは将来の、ジャンプボレーとオーバーヘッドキックをにらんで行っている。 D手で投げ上げたボールをバックヘッドでゴールに入れる。距離は1m位。 E一定の距離からパントキックでゴールラインを越える。 Fヒールキックで、ゴールから5m位離れた所からシュートする。 右足で蹴る場合は、立ち足(左足)をボールの右側に置き、右足をクロスさせて右足のかかとで後ろに蹴る。見本を見せると、子供たちは次々に見よう見まねでやり出し、「こう?」、「こう?」、と確認してくる。 このように、新しい技を覚えさせるには、休憩前を狙って興味があるうちに教えてしまうのが一番早道ではないかと思う。 |