1年生の練習内容 

2001年6月号B         作成:平成13年6月23日(Rev.A) 

目   次

1対1のシュートゲーム

ディフェンスを抜くゲーム

ワールドカップという名のミニゲーム

練習終了時の挨拶

1対1のシュートゲーム

「サッカーで一番気分が良いのは何?」と尋ねたら、ほとんどの子は、「シュートを打ってゴールを決めること。」と答えるであろう。子供達にゴールを与えておくと、何も言わなくてもシュート練習を始めることでも分かる。誰かがキーパーになってゴールを守り、交代で一定の距離からシュートを打つ、という単純なのが多い。これに近い練習だったら、1年生でも一生懸命やるであろうと考えた。

 単純にシュートを狙うだけでは盛り上がりがないので、合計得点を競わせる形式にした。とにかく、何でも勝負形式にしないとそのうち飽きてしまい一生懸命やらなくなる。また、遠い所から蹴って入れた方が得点を高くした。こうすることで、レベルの差を吸収するようにした。上手な子は遠くから狙って失敗し、そうでない子は近くから確実に入れる、ということで点差はあまり離れなくなる。

@まず、全員を一列に並べて前から順番に番号を言わせる。これで、キーパーをやる順序が決まる。

この時、「キーパーは、一回りしたら次の人と交代します。」と言っておく。子供達は、自分の番号はなぜか忘れないので、言わなくても順番に交代してくれる。

A次に、「スタート地点から順番にシュートをして、合計10点を取った人がチャンピオン。」と言う。

B得点エリアに0,1,2と書いておき、「ゴールエリアの中から蹴って入れても0点です。」と言っておく。あまり近くで蹴っては面白みが無くなるので、0点エリアを作った。

Cスタート地点から1〜2mの所にコーンを2個置き、コーン間にボールを通した後、コーンの外側を回ってシュートに向かうようにする。右足で蹴ったら左側を、左足で蹴ったら右側を回ると良い。これは将来役に立つと思われる、パス・アンド・ゴーの基本動作や敵をかわす動作を無意識のうちにやらせているものだ。しかし、パス・アンド・ゴーどころか、最初のキックがコーンの間を通らない子が数人出てきたのにはまいった。まずは、こういう所から指導が始まるものだということを実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ディフェンスを抜くゲーム

キーパーとの1対1のシュートゲームが終了したら、今度はディフェンスをドリブルで抜いてからシュートをするゲームに移った。

始める前に次の様に説明した。

@まず、一列に並べて前から順番に番号を言わせた。これでディフェンスをやる順序が決まる。ここで、「守りの人は一周したら次の人と交代します。」と言っておく。

ゴールから10m位の距離の所に長方形を書き、四隅にコーンを置く。コーンは高さのあるものが分かりやすくて良い。

A「守りの人はコーンで囲まれた長方形の中に入ってください。ドリブルで突破に来るのでその中で防いでください。ボールを取る時にそこからは出てはいけません。」

B「攻める人はこの長方形の中をドリブルで突破してシュートをします。シュートは長方形の中に入ったら打ってもかまいません。シュートは全て1点です。順番にシュートをして、合計10点を取った人がチャンピオンです。」と言う。

Cスタート地点から5m位の所に円を書き、次の順番の人がコーンの間から円の中にパスを出してやる。これを、走りながらトラップしてディフェンスのところに向かう。これは将来役に立つであろう、前方に走っている味方への加減したパスと、それをもらう動きの基本動作を、無意識のうちにやらせているものだ。パスする人がちゃんとやらないと、次のドリブル突破に大きな影響を与える。子供達も、パスを失敗すると目に見えてほかの子に迷惑を掛けるということを、この段階で覚えられる。

 

 


 

 

ワールドカップという名のミニゲーム

練習にきたからには、サッカーの試合をやりたいと思うのは大人も子供も同じ。基本的な練習だけでは満足せず、最終的に練習した内容が試合でどれだけ役立つか試したくなる。実戦で役立たなければ練習の意味がない。子供達も実戦のゲームを楽しみに来ているので、たとえ本格的なものではなくても相手ゴールにシュートをして点を入れるという、最低限ゲームらしきものを組んでやることが大事だ。そうでないと、ストレスが発散出来ないまま家に帰すことになる。

1年生といっても、皆同じレベルではない。やはり、それまでにどれだけサッカーをやってきたかで、既に相当のレベル差がついている。ただ、単にチームを2つに分けて試合をやっても、人数が多すぎて一人一人がボールを触る機会が少なくなるだけでなく、特定の子ばかりがボールを扱ってしまい、元々ついていた格差が開くだけだ。これは上手な子にとっても、そうでない子にとってもあまり良い練習とはいえない。人数が多いゲームをやるのは、多少なりとも全員がボールを自力で扱えるようになってからだ。1年生のうちは、1対1または2対2の試合を多くして、少ない時間でも出来るだけボールに触る機会を増やしてやらなければいけない。たった2,3分の練習でも、その間はずっとボールを取るか取られるかの戦いをさせなければ、全く時間の無駄だ。しかし、1年生の子にそれほどの集中力を維持させることができるだろうか?

Nコーチが低学年向けに開発?した、“ワールドカップ”という名のミニゲームが、まさにこの目的にぴったりの練習方法だ。これは、一度やると子供達は「今日、ワールドカップやる?」と言ってくる。大人からみれば他愛もないことのようだが、子供達はなぜか“ワールドカップ”を目指して夢中になって頑張る。ゲーム中は誰もさぼろうとしない。

以下に1年生向けのやり方を紹介する。

@まず、7〜10m四方のコートを必要分作る。

例1)人数が12人で1対1のゲームの場合は、コートを6個つくる。

例2)人数が12人で2対2のゲームの場合は、コートを3個つくる。

  各コートにはコーンでゴールを作る。最初はコーン間を広くしてその間にボールを止める“ラインストップゲーム”を行う。しばらくしたらゴールの幅を狭くして通常のシュート形式にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


A1対1の場合は、全員のジャンケンで順番を決める。人数が多い場合は、一斉にジャンケンをさせ、皆と違うのを出した子(例えば、パーを出した子の人数が一番少なかったらその子達になる)を負けとすれば早く勝負が終わる。

2対2の場合は、先に2人1組になってもらう。1年生なので、まだずる賢い子はいないと判断したら、「好きな子と組んでください」と言えばよい。次に、各組の代表に出て来てもらいジャンケンで順番を決める。

B勝った方から“ワールドカップ”⇒“Jリーグ”⇒“神戸リーグ”⇒“少年リーグ”というような順番でコートに入ってもらう。コートの数がもっと多くいる場合は、J1,J2、K1,K2等、数字で区分する。コートの名前は、頭文字をコート内に白線で書いておくと分かりやすい。

C「それではルールを説明します。相手陣地のコーン間(のライン上)にボールを運んで、それを足の裏で止めたら1点です。点が入ったら、入れられた方のボールで開始しますが、必ずボールを相手にパスし、相手がそれをリターンしてから再開してください。途中でボールが横のラインから出たら相手ボールになり、出た所からキックインで始めます。ボールがゴールラインから出た場合は、相手が蹴ったらゴールキック、自分のチームが蹴ったら相手のコーナーキックになります。

それではボール・ジャンケンをしてください。勝ったチームは、始める前に相手に一度ボールをパスします。相手がそのボールをリターンしたら試合開始です。それでは笛がなったら始めてください。」と言って、合図の笛を鳴らす。

D試合時間は2分位で良い。合図の笛を吹いてから、「ハイッ。終わりー。勝った子は上に上がって、負けた子は下に下がってください。引き分けたらジャンケンで勝敗を決めてください。」と言う。

E2ラウンド位したら、コーン間を狭くして通常のシュート(ボールがラインを越えたら得点)形式にする。最初からこのルールでやると、たまたま遠くから蹴ったシュートが入ってしまった場合、気を良くしてむやみにボールを蹴る癖がついてしまうのではと考え、今のうちは敢えてラインストップゲームを先行させている。

F4ラウンド位したら、ワールドカップチャンピオンを発表し、休憩させてからチーム換えをして、、またはじめればよい。

練習終了時の挨拶

試合開始及び終了時は、全員が相手チームと向かい合ってお辞儀をする。これは、どんなスポーツでも共通していることで気持ちが良い。ただ、少年サッカーでは、例えば練習試合があって相手チームのグランドに行ったら、最初に全員揃ってグランドに挨拶をするのが暗黙のルールになっている。なぜグランドに挨拶をしなければいけないのか分からないが、野球の流れからか大昔からどこでもやっていることで、それをしないと相手チームからコーチとしての常識を疑われるようだ。そういうこともあって、全員並んできちんと挨拶することを低学年の時に習慣づけていないと、思わぬ恥をかくことになる。

こういうことは、早くからやっておいた方がよいので、他の学年と同じ様に練習が終了して帰る準備が出来てから、挨拶をさせるようにした。通常、キャプテンが声を掛けるが、当面はやりたい子に掛け声を掛けさせることにした。「せいれーつ。と言ったら横を見て出っ張ったり、引っ込んだりしていないことを確認してから、「れいっ」と言います。お辞儀をしたら、頭の中でゆっくり1,2,3と数えてから顔を上げるようにして下さい。グランドに挨拶したら、回れ右して今度はコーチに礼をします。」

何度かやり直しをさせて、ようやく出来るようになった。何でも最初が肝心である。