1年生の練習内容 2001年7月号@ 作成:平成13年7月30日(Rev.A) |
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目 次 |
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スーパースターと言われた選手達は殆どがドリブラーだ。古くはジョージ・ベスト、ペレ、ケビン・キーガン(ちょっと古過ぎるかな?)、ジーコ、マラドーナ、ロナウド、オルテガ、リバウド、ジダン、・・・。到底突破出来そうにない密集した敵の中でも、急激なスピード変化、瞬間的な方向転換等を織り交ぜた華麗なフェイントで瞬時に抜き去り、直後にシュートチャンスを作ったり、自らシュートをしたりする。それを見たら誰でもドリブラーにあこがれてしまうだろう。近代サッカーでは単独ドリブルだけでは簡単に突破されないように守備がより組織的・システム的になっている。攻撃もそれに対抗するため、組織プレーを優先するようになった。その分ドリブラーの活躍する場面が減って面白みも少なくなってはいる。それでも応援するチームに天才的なドリブラーがいれば1対1の場面はもちろんそれ以上でも何かやってくれるのではと終始期待に胸を膨らませていられる。 攻撃側が数的優位(相手より人数が多いことで攻撃などを優位に進められる)になっていたら、マークのついていない味方選手にパスを出せば決定的な(例えばキーパーと1対1というような)形を作れる。数的優位を作るにはパス回しだけでは困難だ。やはりドリブルで人を抜くことが必要になる。こうした点からもドリブルが上手になることは極めて重要なことだ。 理想的なドリブルは、 @ドリブルしながら常に周囲の状況判断が出来ること。 Aボールが足元から離れないこと。 Bいつでも周囲の要求(パス、シュート、フェイント等)に応えられること。 である。 常に最善の状況判断をするためには、ボールをほとんど見ずにドリブルが出来ることが必要で、それには常に顔を上げて遠くを見渡せる姿勢を心掛けることが大事である。また、ボールが足元から離れないようにするには、絶対にボールを蹴ってはいけない。足のインフロントやアウトフロントを使ってやわらかなタッチでボールを“こする”あるいは“舐める”感じで行うとよい。 |
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ドリブルを上手にさせるにはできるだけ動きながらボールを触る時間を多くすることと、全力でやらせることである。1年生には、まずは単純なドリブル競争から始めた。15〜20m離してラインを平行に引き、その間を全員でドリブル競争させるという単純なものである。ただし、ボールが足元から離れない癖をつけるため、「ドリブルをして向こう側のラインまで行ったら足の裏でボールをライン上に止めてください」というルールにした。全員がスタート・ラインに並んだのを確認した後「ヨーイ・ドン」と合図をすると、すぐに全員が全力ドリブルで向こう側のラインまで走っていった。しかし、勢い余って大半がラインを越えてしまった。「はーい。1着は***、2着は***、」と次々に着順を言うと行き過ぎた子も必死になって頑張り出す。戻る時に慌ててボールを勢いよく蹴ってしまい最初よりもっと遠くにボールを転がしてしまう子もかなりいたが、何とか1回目が終了。これを3回繰り返した。3回目にはさすがに大幅に越えてしまう子はいなくなり、大半はライン手前でスピードダウンしてすんなりライン上にボールを止めようという意識が見えた。この練習は、まだ練習を開始した元気なうちにやらせると良いと思う。 |
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Nコーチが開発した?ゲーム形式のドリブル競争は、子供の競争心をうまく煽るように出来ていて、誰もが一生懸命やるので、昨年の6年生の練習でもよく使っていた。これを早々と1年生にも試してみた。ドリブル競争といっても、最初に個人戦で予戦を行い、その結果で決まったチームで対抗戦を行う、という2段階制になっているので、勝負がつくまで子供達の集中力は途絶えない。 @まず、始める前に以下のようにコーンを2列並べる。人数が多い場合は3列にする。
Aコーンの後ろに子供達を同じ人数になるように並ばせる。用意が出来たら並んだ順に個人戦を行わせる。ドリブルのルートは、下の図の通りである。前方と後方の大きなコーンをUターンして、最後に円の中でボールを止めたらゴールである。これでまず順位を決めて、順位通りにコーンの後ろに並ばせておく。
B個人戦が終わったら、順位を考慮して力がある程度同じになるようにチーム分けを行う。 例えば、1位チームの2番目、3番目を2位チームの2番目、3番目と入れ替える等。 C各チーム内で順番を決めてもらう。その際、アンカーにはビブス(ゼッケン)をつけてもらう。 D今度はチーム対抗ドリブル・リレーを行う。スタートは円からとする。前の人がスタートしたら、次の人は円の中で待つ。最後のコーンを回ったところで次の人にパスをつないでいく。最後のアンカーだけは、円の中にボールを止めることでゴールとなる。 ただし、このリレーは2ラウンドで勝負するので、1回目のアンカーはトップにボールを渡すことになる。 さて、初めての1年生はどうだったか?まだドリブルがうまく出来ない子が混じっているのでどうかと思ったが、皆競争ということで必死にやっていた。最初の個人戦である程度技術レベルのランク付けが出来、それを考慮してチーム分けをしたのが効を奏して、チーム対抗戦は接戦となった。上手な子が一人いるだけでは勝てないチームゲームであるのと、上手な子でもあせって失敗すると取り返しがつかないほど遅れてしまう要素をもったゲームなので、最後まで皆があきらめずに頑張るようだ。 メンバーを見たら優勝しそうなチームが結果はラストとなり、勝ったチームはうれしさをそのまま出してはしゃいでいた。 |
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・足の裏と両足インサイドで「コローン、チョン、チョン」 6月号で紹介した「B足の裏で横にボール引き」は、中途半端な内容だったが、今回からは本来のやり方まで進めた。すなわち、 前回:右足の裏でボールを横にころがし、左足のインサイドで止める。(この後逆も行う) 今回:右足の裏でボールを横にころがし、左足⇒右足の順にインサイドでタッチする。この際 「コローン、チョン、チョン」という掛け声(Nコーチ開発)をかけると分かりやすい。 これを右足、左足と交互に行う。 ・立ち足の後ろを通す 4,5,6月と早3ヶ月経過したので、新しいボールタッチを追加した。それは、 “右足の裏で引いたボールを、右足のインサイドで立ち足(左足)の後ろを通す。 通した後、体をボールのころがった方向(左横)に向ける” というものである。これは、足の裏で引くのとインサイドで方向を変えるという2つの動作を、連続して行わねばならない。すばやく見本を見せたところ、誰もやり方が分からなかったようなので、ゆっくりやって見せた。すると皆真似をし出した。次にうまくできたか確認してもらおうと思って「こう?」「こう?」と次々にコーチに聞いてくる。しかし、殆どの子は連続技が出来ないようだった。しばらく個別指導をしていたら、数人がゆっくりだが出来るようになってきた。ボールタッチは将来のフェイントの習得をにらんで行っているが、なかなか大人でも難しいものが多い。しかし、この学年で覚えてしまえば、後ですごく楽になるはず。まだ、やる前から出来ないものとあきらめてしまう子はいないし、何でも興味を持って真似したがるので、今が教える絶好のチャンスだと思う。こうした体力を伴わない技は、できるだけ早いうちに覚えさせる予定だ。 |
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トラップとは、簡単に言えば自分の所に転がってきたか、空中を飛んできたボールを、楽に次のプレーができるようにコントロールすることである。子供のサッカーの技術レベルがどんなものか把握するには、ドリブルやシュートなどを見るよりは、浮き球のトラップの仕方を見た方が早い。それほど技術的に難しい要素を含んでいる。 低学年の子にとって特に難しいのは、空中を飛んできたボールや、大きくはずんできたボールの処理である。その理由は、動態視力がまだうまく機能していないので、スピードのあるボールや空中を長く飛んでくるボールには、目で完全に追随できないからだと思われる。そこで、1年生には次の様な極めて基礎的なトラップから教えることにした。 @胸のトラップ Aインステップのトラップ(クッション・コントロール) Bインサイドのトラップ(ウェッジ・コントロール) トラップの練習は、実はボールリフティングやインサイドキックの練習で、無意識にやらせてはいるのだが、そういう練習では出来ない内容に絞った。この練習をいつやればよいかというと、まだ疲れが出ていない練習開始直後の時間帯、すなわち「ボールリフティングの練習」(6月号で紹介)の後にやるとすんなり行くようだ。 @胸のトラップ 「手で投げ上げたボールを、胸に当ててから手で掴んでください。」と言って見本を見せる。この時、ボールが当たる瞬間に、胸を幾分後ろにそらして行うことが必要だ。胸をそらして失敗する子は、ほとんどがあごを引いていなかった。胸と一緒にあごまで後ろにそらしてしまう。そういう子にはやはり、あごを引いた動作を何回も見せた方がよい。見せても出来ない子には「自分のヘソを見てやりなさい。」と言うと分かりやすいかも知れない。これが出来た子には、「胸でトラップした後、“もも”または足に当ててから手で掴んでください」と言ってやらせるとよい。 Aインステップのトラップ(クッション・コントロール) 「手で投げ上げたボールを、インステップに当てて、ボールがはずまないようにしてください。」と言って見本を見せる。ボールリフティングの練習では、ボールを軽く蹴っていた。しかしこの場合はボールの落下に合わせて足を軽く引くという、全く逆のことをしなければいけない。コーチがやるのを見ている子供たちは皆、ボールがほとんどはずまないのを見て不思議がるが、手の甲で同じことをやると納得するようだ。専門用語では足の甲をクッションのようにするのでクッション・コントロールという。半数はうまく出来なかったが、今回きっかけをつくってやらせたので、そのうち自分でこつを掴んでくると思う。 Bインサイドのトラップ(ウェッジ・コントロール) このトラップは、大きくはずんだボールや、ふんわり飛んで来て目の前でバウンドしそうなボールをトラップするのに便利だ。やり方は、ボールが地面に落ちて弾む瞬間にボールの端に足のインサイドをもって行くだけである。弾むボールを、上から押さえつけてボールの勢いを殺すのはかなり難しいが、ボールのサイドぎりぎりに当てると、ボールがはずんだ勢いの分逆スピンがかかって、それだけでボールは弾む勢いをなくしてしまうから不思議だ。このトラップ練習は、本当は誰かに投げてもらったボールの方がやりやすい。しかし、1年生同士でやらせるとまだうまく投げられないので練習にならない。最初は、投げてもらったボールで見本を見せる。次に自分で上に投げ上げたボールをトラップするところを見せる。「さあ、やってみよう」と言って何回も見本を見せると皆真似をしだす。しかし殆どの子ははずんだボールに触れられないか、上から押さえつけるかのどちらかであった。そういう子のそばにいって何回か見本をみせていたら、時々出来る子もでてきた。これも今からやっておけば、後で楽にボールを処理(トラップ)できるようになると思う。
バウンドするボールのサイドぎりぎりに足のインサイドを持っていくのがコツ。地面に落ちる前に触ってはいけない。 地面からボールが跳ね上がる所に、足のインサイドで上から下にカット気味に当てると、ボールに逆スピンがかかり、自然とボールの勢いがなくなる。 |