3年生の練習内容 2003年12月号 作成:平成16年2月5日 |
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●ワンタッチで前を向く練習 毎年楽しみにしているトヨタカップは例年通り12月に行われたが、この試合を見てまたしても今のJリーグが2回以上世代交替しても追いつけないレベルであると感じた。決定的な違いは、身体能力の高さとボールコントロールのレベル以外に2つあった。それは、@個人個人が常に360度を見渡せるように視野の確保をしながらチーム全体のバランスを考えて最適なポジショニングをしていること。Aチーム全体でハチの群れのように一つの意思でプレーしていることである。こうしたことは、レベルの高いサッカーを長くやってきた歴史が大きな要因のひとつであると思う。つまり、上手な大人のプレーを見て育った子供が大きくなってもっと上手になり、それを見た子供が大きくなって・・・・という具合に何世代にもわたるサッカーの歴史を感じてしまう。日本は最近になってプロが出来たばかりでまだまだである。個々には良い判断をしているものの、せいぜい3,4人の連携までしかできない。チームとして11人が一つの意思にはなりきれていない。だから、いつもトヨタカップを見るたびに数10年のレベル差を感じてしまうのだろう。 今から30年位前に当時のサッカーの名解説者岡野俊一郎氏が次のように言っていた。「ブラジルの選手は後ろから来たボールをワンタッチでコントロールすると同時に前を向く。同じことをヨーロッパの選手は2タッチ、日本代表は3タッチしないとできない。ボールをコントロールする技術においてこれだけの差がある。」なるほどとは思ったが、当時はブラジルの選手は何をやらしてもうまいのでそんなことは小さいころから大人の真似をしているうちに覚えたのではないかと考え、早く前を向くということがそれほど重要なことだとは思わなかった。しかし、6、7年前のことだが神戸市の指導者講習会でブラジルチームの選手全員が試合中に徹底してすばやく前を向いている例をあげてこの技術の重要性を教えられた。日本サッカー協会が子供の時に覚えさせなければいけないことであると最近になって気づいたことを、ブラジルでは30年以上前から徹底していたのではないかと思い直している。 そんなことから、今月より広い視野を確保するための基本技術の練習をすることにする。まずは、ワンタッチで前を向く練習を行ってみた。10年位前までは日本代表選手でも全員が意識してやっていなかった。しかし、今年の全国高校サッカー選手権を見ていると、どのチームもこの原則をやろうとしていた。日本サッカー協会が少年サッカー指導者へこの課題を徹底してきたことの現れであると思う。 準備 3年生は人数がいつも20人を超えているので、A・Bチームの2つに分かれてもらい、センターサークル付近に置いた2個のコーンの所に2列に並ばせた。また、それぞれのゴールを用意した。次に、ハーフターン(半回転)をさせる位置として、ペナルティエリアのすぐ前位にコーンを置いた。 説明 最初は口頭だけではすぐに理解できないと思い、実際のプレーの見本をコーチが見せながら説明した。 「今から後ろから来たボールをワンタッチですばやくコントロールしながら前を向く練習をします。センターサークル側にいる子は、コーンの前で待っている子にパスをします。パスしたらダッシュしてコーンの所に走ってタッチしてください。コーンの前で待っていた子は、パスされたボールをワンタッチでコントロールすると同時に前を向いてください。その後すぐにドリブルで持ち込みシュートをしてください。シュートをしたら、1回だけキーパーをしてからもとの位置に戻ること。次の子は、前の子がコーンにタッチして振り向いたらすかさずパスを出してください。その時にじっとしていないでダッシュしてコーンに向かうこと。合計で先に7点を入れた子が優勝です。それでは、始めーっ。」 結果 ハーフターンは結構難しい技術なので、どのくらい出来るか見ていたが、結構すぐにできている子が多かった。やはり見本を見せることが大事だ。子供たちは見て覚えるのはすごく早い。 修正 ハーフターンだけではなく、パスアンドゴーの練習も同時にやらせたのだが、大半の子ができなかった。ほとんどの子は何も言わなかったらパスした後その場に突っ立ってボールの行方を見ているだけ。何度も「走れー」と言ってようやくやるようになった。この動作は試合中とまったく同じだった。ボールを出した後は無意識にダッシュするようになるまで、この類の練習は続けようと思う。 @ |
●休憩前の課題(浮き球のシュート練習) 浮き球の処理がうまくできるか否かは実際の試合の勝ち負けを左右するほど大事なことだと最近特に感じるようになった。だから、最近は休憩前の課題に浮き球のシュート練習を取り入れる回数が多くなった。やり方は簡単である。センターサークル付近に並ばせ、順番に斜め前にいるコーチにインサイドでパスを出させる。それをコーチが拾い上げてペナルティエリア内に放り投げ、「2バウンド以内にシュートしてください」と言うだけである。さらに「2点以上ゴールすれば休憩できます。」と言えば皆張り切ってやるし、ヘタな子は何回も何回も出来るまでやることになり、全体の底上げとレベルアップが図れる。 |