小ネタ集
SONY バイオノート505EXTREME
「PCG-X505/P」
(2003年12月2日著)



初代505の路線に戻った、PCG-X505/P
 
 皆さんは、初代バイオノート505である「PCG-505」を覚えているだろうか。10.4インチ液晶を搭載しつつ259×208×23.9mm、重量1.35kgを実現した高い実用性を持ったモバイルノートだ。しかも、薄いながらもマグネシウム合金を使うことで高い強度と質感を持っていた。この薄さ・軽さに加え、デザインのすばらしさによって、大ヒットとなった製品だ。
 ところが、その後しばらくは同じ路線を続けていた物の、途中から液晶が12.1インチへと大型化し、さたにスペックの向上に伴って少しずつ重量が増加し、2kgが目前という所まで迫ってしまった。最近ではCD-ROMドライブを内蔵するなど、同じ「505」を名乗るのはおかしなほど、初代バイオノート505とかけ離れていた。

 しかし今回、初代505の路線、つまり10.4インチ液晶を搭載しつつ極限まで薄く・軽くという路線を受け継いだ製品が発表されたのだ。それが。「バイオノート505EXTREAM PCG-X505/P」(以下PCG-X505/P)である。しかも単に元の路線に戻っただけでなく、初代505の様なインパクトを市場に与える製品へと進化しての登場である。

厚さ1cmを切るPCG-X505/P
 
 PCG-X505/Pの本体サイズはフットプリントが259×208mmとなっているが、これは初代505と全く同じなのである。ところが、薄さという点において大きく進化しており、なんと最薄部で9.7mmと1cmを切っているのは驚きである。しかも、液晶を閉じた状態でこの数値なので、本体+液晶の厚さを足して9.7mmしかないのである。本体後部の最も厚い部分でも21mmしかない。最薄部では初代505より14.2mmも薄く、つまり半分以下になったのである。写真を見てもらえばその薄さがおわかりいただけると思う。つまり初代505と同じ表面積で、極限まで薄くしたと言う事だ。また、重量も825gと1kgを大きく下回り初代505よ500g近く軽くなっているのである。

右側面から見た写真である。写真を見ても薄さが分かるだろう。

 デザインも非常に美しい仕上げある。ブラックに近い本体は、凹凸をできるだけ無くしたシンプルでなめらかな物になっている。ねじ穴や蓋などを目立たないよう処理してあるほか、本体底面にも蓋がいっさい無いというコダワリようである。液晶背面(液晶を閉じた際に表になる面)にあしらわれた「VAIOロゴ」は鏡面仕上げの「ブラックルミナスロゴ」となっている。しかも、それだけではなく、本体底面には「シルクプリントロゴ」が、キーボード脇には「ステンレスミラーロゴ」があしらわれているのである。初代505と同じく、本体と液晶のヒンジ部に円柱状のバッテリを搭載する。その左側面に電源ケーブルを接続するようになっており、右側面には電源ボタンを配置するなどデザインを追求している。デザインはすばらしく美しいのだ。

左側面のヒンジ部。黄色いコネクタに電源ケーブルを接続する。電源ケーブルのプラグは、電気供給時緑色に光るようになっている。ヒンジ部の奥の円柱形の部分はバッテリである。

 ところでこの薄さ、マザーボード、HDD、PCカードスロット、キーボードなどを重ならないように配置している事も大きいが、新たに開発されたマザーボードの効果もある。このマザーボード「高密度実装10層基板」というもので、サイズがMDディスクとほぼ同じという小ささなのである。
 ボディ素材にも全く新しい物が採用されている。キーボード面と液晶ディスプレイ面は従来通りのマグネシウム合金だが、外装面にはニッケル強化カーボンモールドを採用している。これはプラスチックにカーボン繊維を加えて成形した厚さ0.8mmのカーボンモールドに、厚さ20μmのニッケル強化コートを施したというものだ。プラスチックをベースに成型したカーボンモールドはしなやかで折れにくく、これをニッケルコーティングすることでマグネシウム合金と同等の耐衝撃性を持たせたという。
 こういった「こだわり」が十分な剛性を持ちながら、超薄型軽量を実現したのである。

液晶背面(液晶を閉じた際に表になる面)にはVAIOロゴが配置されている。しかも、鏡面仕上げの「ブラックルミナスロゴ」で非常に美しい。


PCG-X505/Pの基本性能
 
   ここまで薄く軽く作られている機種に、さらに性能を求めるというのは酷とも言えるが、パソコンである以上性能も気になるだろう。確かに、大型ノートと比べると劣ってしまうが、モバイルノートとしては十分なレベルに達している部分も多い。
 CPUは超低電圧版PentiumM-1GHz、チップセットはIntel855GMが採用されており、薄型ノートとしては最高の物である。メインメモリは増設不可能だが、初めから512MB(PC2100のDDR SDRAM)が搭載されており、取りあえずは十分だろう。グラフィック機能はチップセット内蔵の物を利用し、ビデオメモリはメインメモリから最大64MBを割り当てる。高い3Dグラフィック性能を要求するゲームは難しいが、簡単なゲームであれば動作できる。一方、HDDの容量が20Gバイトとかなり少ない点は気になる。1.8インチ、厚さ5mmの小型薄型ドライブを採用しているために仕方がないとも言えるが、最近ではソフトやファイルの容量はかなり大きくなっているため、さすがに少なすぎるだろう。少しでも使わないデーターは外付けHDDやCD-Rなど外部ストレージデバイスに移動させ、最低限のデーターだけを保存するなどが必要だろう。
 ディスプレイは前途の通り10.4インチ、解像度はXGAの液晶を内蔵する。最近のSONY製パソコンに広く採用されており、高輝度・高視野角を実現した「クリアブラック液晶」は厚いため、PCG-X505/Pには採用されていない。
 拡張性はUSB 2.0×2、IEEE1394、PCカードスロット(Type II×1)、100BASE-TX/10BASE-T対応有線LAN、外部ディスプレイ出力と最小限だ。また、有線LANと外部ディスプレイ出力は本体には直接用意されず、専用端子に接続する「ディスプレイ/LANアダプタ」で変換し利用すると少々面倒だ。本体にはメモリースティックスロットが用意されていないが、付属の小型マウスにはメモリースティックスロット(メモリースティックPRO、マジックゲート対応)が用意されており、メモリースティックを利用する事も可能だ。薄型の本体でありながら、マウスに搭載したり変換ケーブルを利用するなどして、拡張性を高めているのはすばらしい。

付属の小型マウスにはメモリスティックスロットが用意されている。本体にメモリースティックを用意されないが、マウスを使ってまで対応しているのは嬉しい点だ。メモリースティックPROにも対応している。

 残念なのは、無線LANが内蔵されていない事だ。その代わり、PCカードタイプの無線LANカード(IEEE802.11b/g対応)が付属する。このカードはPCカードスロットから横方向にほとんど出っ張らない形状をしている上、液晶を閉じた場合に上にもはみ出さない。引っかかるような出っ張りがないため、カードを挿したままで収納出来る。またデザインも本体と違和感が無いように作られており、PCカードスロットに挿してしまうと元から内蔵されていたように思えてしまうほどだ。1基しかないPCカードスロットが埋まってしまうのは残念だが、デザイン面では内蔵されているものと遜色ない点は評価出来る。

付属の無線LANカードを挿したところ。無線LAN機能が本体に内蔵されず、さらに1基しかないPCカードスロットが埋まってしまうのは残念だが、デザインは本体に合うように作られており、また出っ張りも少ない。液晶を閉じても上に飛び出すことがないため、常に挿していても違和感なく使える。このようにできるだけ本体に内蔵した場合と遜色ないようにする努力がなされている。


キーボードとポインティングデバイス
 
 次にキーボードを見てみよう。手前寄りに設置されている上、一見電卓のボタンのような一つ一つのキーが離れた形状をしており、これまでのキーボードとは随分違った印象を受ける。また、第一印象では打ちにくそうに感じるだろう。しかし、実際に使ってみると、普通のキーボードと変わらないのだ。しっかりしたクリック感もあり、この薄さの本体にこのキーボードであれば十分合格だ。キーピッチは17ミリ、ストローク1.5ミリとサイズ的にも問題ない。第一印象と異なり、キーボードの使用感は悪くない。また、Enterキーが一番右端に配置されているなど、キー配置にも問題は見られない。

キーボードとポインティングデバイス。キーボードは一見ゴム製の打ちにくそうなキーに見えるが、使ってみると普通のキーボードとほとんど変わらない。ポインティングデバイスは、キーボードが手前にある為かパットタイプではなくスティックタイプを採用する。

 キーボードが前寄りに設置されているため、キーボード前面にパームレスト部が無い事が気になるかもしれない。しかしキーボード前面の厚さは5mmを切っている(厚さ9.7mmというのは液晶を閉じた場合、つまり本体+液晶の厚さで、本体のみでは5mmを切る)ため、机をパームレスト代わりに使っても何の問題もない。むしろ、キーボードが奥にあっても厚みのあるパソコンでは、机との境に結局違和感を感じる事もあり、こちらの方が楽とも言える。また、マザーボード部はかなり発熱するが、キーボードより上の部分に設置されているため、操作時にも熱く感じ不快感を覚える事がないという利点もある。ただし、膝の腕使う場合や、新幹線のテーブルなどテーブルのサイズが本体サイズに近い場合、キーボード手前にパームレストとして使う机がないため使いにくい。使う場所によっては使いづらい事もあるだろう。
 ポインティングデバイスにはスティック型を採用する。また、前記のようにメモリースティックスロットを備えた光学式小型USBマウスが付属する。机の上などではこちらを利用しても良いだろう。
 
バッテリとACアダプタ
 
 バッテリはそれほど大きくなく、カタログ値で2.5〜4時間となっている。実際のテストでも3時間程度の駆動時間である。最近のPentium M搭載機としては物足りないが、本体の軽さを考えると妥協できるかもしれない。問題はACアダプタだ。バッテリ駆動時間が3時間ほどでは、ACアダプタを常に持ち歩くという人も出てくるだろう。ところが290gと重くサイズも大きいため、持ち運ぶとせっかく本体が軽く小さいのにもったいないと感じてしまう。

価格とスペシャルモデル
 
 さて、気になる「PCG-X505/P」のお値段はというと、店頭価格が30万円とかなり高価だ。スペックだけを見れば高いと感じるだろう。しかし、それ以外の「こだわり」を知ってみると、決して高いともいえない。とりあえず、少しでも気になったのなら店頭で実機を確認してみよう。実際に見るとそのすごさがおわかりいただけるはずだ。
 ハードディスクは20GBしかない点や、無線LANが内蔵されないにもかかわらずPCカードスロットが1基しかないなど、細かな部分に不満を感じるかもしれない。しかし、薄さや軽さ、そしてこの素晴らしいデザインに惚れたのであれば、そう言ったちょっとした不満は関係ないだろう。価格が高くても、「欲しい!」と思わせる魅力がこの機種にはあるのだ。

 また、X505シリーズには、一般に販売される「PCG-X505/P」以外にに、ソニーの通販サイトである「ソニースタイル」でのみ販売されるスペシャルモデル「PCG-X505/SP」が用意される。最も、スペシャルモデルと言ってもマシンの基本スペックは全く変わらない。しかしボディ素材として、なんと高級スポーツカーや戦闘機の翼などで利用されている「カーボンファイバー積層素材」を使用しているのである。0.1mm厚のカーボンシートを6枚貼り合わせたこのボディは、独特の炭素繊維の線ができ、これが光沢のある黒に映えて非常に美しい。PCG-X505/Pでも素晴らしいと思えた質感よりさらに高級感が増している。また、このボディ素材の変更に785gという更なる軽量化を実現しているのも特筆できる。価格は5万円も跳ね上がり35万円となるが、真の軽量モデルとこの素材に魅力を感じるならコチラも候補に入れてみても良いだろう。

(H.Intel)


今回の関連メーカー
ソニーhttp://www.sony.co.jp/
VAIOホームページhttp://www.vaio.sony.co.jp/
ソニースタイルhttp://www.jp.sonystyle.com/index.html