プリンター徹底比較
2005年末のプリンタ(前編)
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2004年10月1日著)


 エプソンとキャノンから、2005年年末商戦向けのプリンタが発表された。これらの製品をプリンタ、複合機、ダイレクト印刷対応プリンタの3種類を価格帯別に比較していこう。なお、機種数が多いので、とりあえず今回は単機能プリンタとダイレクト印刷対応プリンタの比較を行い、複合機に関しては次回比較してみたいと思う。

今年のプリンタの傾向は?
 
 今年はエプソン、キャノンに共通して面白い傾向が見られた。それはプリンタ単機能の機種の新機種が大幅に減ったことだ。去年あたりから、複合機に力を入れる傾向はあったが、それでも去年はプリンタ単機能の機種がエプソンから3機種、キャノンからは7機種も発表されていた。ところが今年は、エプソン、キャノン共に2機種ずつしかなくなってしまったのだ。それに対して複合機は大幅な機能強化や機種の増加などが見られる。では、メーカー別に見てみよう。

エプソンのプリンタの傾向は?
 
 まずエプソンから。今年の目玉の一つの機能は、Epson Colorである。画質補正機能がオートフォトファイン!EXに変わっており、人物の写った写真で顔の部分を自動認識し適切な明るさに修正してくれたり、風景写真も好ましい色合いに修正してくれるようになった。100%という訳ではないが、逆光や色かぶりをした写真が綺麗になるのは嬉しい所だ。また、CD/DVDレーベルコピー時に内外周や印刷位置の調整が可能になったり、手書き合成シートでは手書き部分に写真が薄く印刷されるようになり場所あわせが楽になったほか、手書き部分の飾りが行えるようになるなど、着実に使いやすくなっている。それではより細かく見てみよう。
 単機能プリンタは、PM-G720とPX-V630の2機種だ。PM-G730はPM-G720の後継機だが、デザインや画質面での変更はなく、印刷速度が向上した事とEpson Colorに対応したにすぎない。PX-V630はデザインこそ変更され上位機種に近くなったが、機能的にはPX-V500と比べて印刷速度の若干の改善と解像度アップくらいのものだ。ただ、写真用紙への印刷が可能になり写真印刷にもとりあえず対応した。また最上位モデルのPX-G920は引き続きホームページに掲載されているが、その下のPM-G820は姿を消しており、染料インクの上位機種が無くなってしまった。
 一方の複合機は大きく進化している。CCDスキャナの上位2機種とCISスキャナの下位2機種という組み合わせは変わらないものの、従来のCCDスキャナの機種は3200dpiと2400dpiの2機種、CISスキャナは1200dpiと600dpiの2機種という組み合わせだったのが1段ずつアップし、CCDスキャナは4800dpiと3200dpi、CISスキャナは2400dpiと1200dpiとなった。そのためCISスキャナにもフィルムスキャン対応機が登場している。CD/DVDレーベル印刷機能も2機種、手書き合成シートも3機種、ディスプレイ搭載機も3機種となり、従来より下位機種に広がった。また、印刷速度やインク滴にも向上が見られる。
 一方のダイレクト印刷対応プリンタも2機種に増やされ、インク数や付加機能等に差が付けられているが、どちらも液晶ディスプレイが搭載されている。

キャノンのプリンタの傾向は?
 
 キャノンは印刷画質の改善に力を入れた。最小1plのインク滴と9600×2400dpiの解像度になっており、粒状間が軽減されている。ただし1plのインク滴は全弾ではなく5plと1plのノズルを備える形となる。その他としては、一部の機種だがEPSONに追従する形で「CD/DVDレーベルコピー」や手書き合成を行う「手書きナビシート」機能を搭載している。この手書きナビシートは印刷枚数や用紙サイズ、多分割印刷、フレームなどの設定が出来る点がメリットだが、逆に去年のエプソンにあった手書き部分の場所あわせがしにくいという問題を持っている。
 単機能プリンタはPIXUS iP7500とiP4200が発表されており、それに最上位のPIXUS iP8600と最下位のPIXUS iP1500は残っており、4機種体制となる。PIXUS iP7500とiP4200はどちらも今年の特徴であるインク滴最小1pl、解像度を9600×2400dpiという特徴を備える。iP7500は標準6色に顔料インクの黒を足したモデル、iP4200は前機種iP4100同様、標準4色+顔料黒になっている。
 複合機は、エプソンほどの機能アップはなされておらず、スキャナ解像度は最上位機種で3200dpi、一つ下で2400dpiと前機種と同じであるが、従来、2番目の機種のPIXUS MP770で出来ており、最上位機種のPIXUS MP900で出来ないという変な状態になっていた、前面給紙や自動両面印刷に最上位機種も対応した。また、例によってプリンタ部は最小1plインク滴&9600×2400dpi化されている。また、1200dpiのCISスキャナ搭載の下位機種が追加され、全4機種となっているのも見逃せない。これにより幅広い価格帯に複合機が投入された。
 ダイレクト印刷対応プリンタは1機種のままだが、こちらも最小1plインク滴&9600×2400dpi化されている。

単機能プリンタ
 
 単機能プリンタはエプソン、キャノンを併せても4機種しかないので、まとめて比較してしまおう。エプソンからはPM-G730とPX-V630、キャノンからはPIXUS iP7500とPIXUS iP4200の2機種ずつである。価格としてはPM-G730とPIXUS iP4200が2万円で同価格、PX-V630はそれより安く1万2千円、PIXUS iP7500は逆に高く3万2千円である。

メーカ エプソンエプソンキャノンキャノン
品番 PM-G730PX-V630PIXUS iP7500PIXUS iP4200
品番
予想実売価格 20,000円12,000円32,000円20,000円
最大解像度 5760×1440dpi5760×1440dpi9600×2400dpi9600×2400dpi
インク色数 6色4色7色5色
顔料/染料系 染料系(PM-Gインク)顔料系(PX-Vインク)染料系/顔料系(黒)染料系/顔料系(黒)
カートリッジ構成 各色独立各色独立各色独立各色独立
色詳細 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
ブラック(染料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック(顔料)
ブラック(染料)
シアン
マゼンタ
イエロー
最小インクドロップサイズ 3pl3pl1pl/5pl1pl/5pl
ノズル数 540ノズル 357ノズル 3584ノズル 1856ノズル
90ノズル×6色 180ノズル(黒)
59ノズル×3色(カラー)
512ノズル×7色 256ノズル×2色(イエロー・染料黒)
320ノズル(顔料黒)
512ノズル×2色(シアン・マゼンダ)
特殊機能 DVD/CDレーベル印刷
自動両面印刷
前面給紙
PictBridge
インターフェイス USB 1.1USB 1.1/パラレルUSB 2.0USB 2.0
外形寸法(横×奥×高) 462×263×196mm460×242×192mm444×309×160mm419×299×160mm
重量 5.2kg4.2kg7.4kg6.5kg
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
45秒201秒39秒42秒

 まずは同価格のPM-G730とPIXUS iP4200の比較をしてみよう。それぞれPM-G720、PIXUS iP4100の後継機種だが、PM-G720が不得意とした印刷速度、PIXUS iP4100の不得意とした画質をそれぞれ改善してきており、より完成度が高まっている。PM-G730は、インク滴3pl、解像度5760×1440dpiという部分は変わっていないが、印刷速度はL版写真1枚で45秒まで高速化されている。一方、PIXUS iP4200は印刷速度のL版写真1枚42秒という点は変わっていないものの、インク滴が最小1pl、解像度が9600×2400dpiまで高められている。
 印刷速度面ではほぼ互角になったといえる。画質面ではPM-G730の方がインク滴も大きく、解像度も低いが、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローのライトシアンとライトマゼンダを足した6色構成となっており、その分画質は高い。PIXUS iP4200は5色であるものの黒が2種入っているので、実質4色印刷である。その代わりインク滴は最小1plと極小で十分な超写真画質といえる。細かく見れば違いは出るだろうが肉眼で判別できるレベルではないだろう。ちなみに、PIXUS iP4200には顔料の黒インクが搭載されており、普通紙へ高画質印刷が行えるのもミソだ。
 その他の機能ではCD/DVDレーベル印刷はどちらも可能だが、自動両面印刷と前面給紙、PictBridge対応はPIXUS iP4200しか出来ない。付加機能の面ではPIXUS iP4200の方が上である。特に前面給紙は、ホコリが入らないよう背面の蓋を閉めておくことも出来るし、前面・背面両方に紙をセットすることもでき、なかなか便利である。ただ、ローラー跡が付く場合があるので、前面と背面をうまく使い分けする必要がありそうだ。価格は同じなのだから、6色印刷であるということと、各種付加機能のどちらに魅力を感じるかが選ぶ焦点となりそうである。
 一方PIXUS iP7500はPIXUS iP4200の上位機種である。最小1plインク滴&解像度9600×2400dpiという点は変わらないものの、インクが7色構成になっている。PM-G730同様ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダの6色に、キャノンお得意の顔料ブラック搭載で、1plの極小インク滴と併せて画質は最高峰である。顔料ブラックのおかげで普通紙への印刷画質も高い。ただ印刷速度はPIXUS iP4200と比べて3秒ほどしか速くなっておらず(L版写真の場合)、インクが2色増えただけで1万2000円増しとも言える。7色インクに1万2000円の価値を見いだせれば、PIXUS iP7500という選択しもあるが、実際はPIXUS iP4200でも十分といえる。
 一方のPX-V630は、PXという品番が表すとおり、全インクが顔料インクのPX-Vインクである。EPSON写真用紙(光沢)への印刷も可能としているが、顔料インクのため光沢感は抑えられてしまう。「普通紙くっきりプリンタ」をうたっている所を見ても、普通紙への印刷が主だろう。ただキャノンと比べてカラーインクも全て顔料インクだから、普通紙への印刷は鮮明だし、水にも強い。普通紙への印刷が目的ならおすすめといえる。それでいて写真用紙への印刷も出来るから、とりあえずは安心だろう。ただ、問題も見え隠れする。まずインク滴がPM-G730と同じ3plでありながら4色構成であることだ。そのため画質面ではPM-G730よりも若干落ちるだろう。といっても十分高画質だからそれほど問題ではない。大きな問題は印刷速度だ。カラーインクのノズル数不足から、L版写真1枚が201秒と非常に遅い。価格はPM-G730より8千円安いが、それ以外にもCD/DVDラベル印刷が出来ないなど、機能面でも劣るため、顔料インクに拘らないならPM-G730はPIXUS iP4200の方が良いだろう。

ダイレクト印刷対応プリンタ
 
 デジカメ用メモリカードのスロットを備え、パソコンなしで写真印刷が行える「ダイレクト印刷対応プリンタ」はエプソンから2機種、キャノンから1機種発売されている。エプソンのPM-D800が2万3000円、PM-D600が1万8000円、キャノンのPIXUS iP6600Dが3万2000円となっている。

メーカ エプソンエプソンキャノン
品番 PM-D800PM-D600PIXUS iP6600D
品番
予想実売価格 23,000円18,000円32,000円
最大解像度 5760×1440dpi5760×1440dpi9600×2400dpi
インク色数 6色4色6色
顔料/染料系 染料系(PM-Gインク)染料系(PM-Gインク)染料系
カートリッジ構成 各色独立各色独立各色独立
色詳細 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
最小インクドロップサイズ 3pl2pl1pl/5pl
ノズル数 540ノズル 360ノズル 3072ノズル
90ノズル×6色 90ノズル×4色 512ノズル×6色
特殊機能 DVD/CDレーベル印刷
自動両面印刷
前面給紙
PictBridge
カードスロット 対応カード SD/MS/CF/SM/xDSD/MS/CF/SM/xDSD/MS/CF/SM/xD
(xDはアダプタ必要)
PCからドライブとして利用
ROMドライブ/USBメモリへ保存
ROMドライブ/USBメモリから印刷
赤外線通信 △(アダプタオプション)
Bluetooth通信 △(アダプタオプション)
液晶ディスプレイ 2.4型1.5型3.5型
インターフェイス USB 2.0USB 2.0USB 2.0
外形寸法(横×奥×高) 483×300×188mm436×269×173mm429×304×183mm
重量 6.0kg5.0kg7.2kg
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
45秒37秒39秒

 面白いことに、EPSONの2機種とキャノンの機種で価格帯が異なっている。価格順に考えると、PIXUS iP6000Dが最も高く、続いてPM-D800、PM-D600の順になる。実際に機能や印刷画質はこの順になっている。
 画質面ではPIXUS iP6600Dが最高峰だ。最小1plの極小インク滴と9600×2400dpiの解像度となっており、今年のキャノンのプリンタの特徴をこの機種も備えているのである。さらに6色インク構成となっているので、画質は非常に高い。ただ、PIXUS iP7500のように顔料ブラックは搭載されていない。第一の目的が写真印刷になるであろうこの機種なので、とりあえずは問題ないだろうが、せっかくなので搭載して欲しかった所だ。一方のエプソンの2機種も決して悪くはない。インク構成はPM-D800が6色構成で3plのインク滴となっており、問題ない。PM-D600は4色構成にはなるものの、インク滴を上位機種PM-D800より小さい2plにしているので、十分写真画質だ。実際にこの3機種の差は小さいと言える。
 印刷速度はPIXUS iP6600Dが42秒、PM-D800が45秒、PM-D600が37秒でほぼ並んでいる。面白いのはPM-D800とPM-D600で、インク滴と印刷速度で下位機種の方が優れているという現象が起こっている。
 その他、付加機能を見てみよう。PIXUS iP6600Dは他のキャノンの機種と同じく、前面給紙や自動両面印刷、CD/DVDレーベル印刷、PictBridge対応などの機能を備える。もちろんメモリカードスロットを備えるが、xDピクチャーカードはアダプタは必要になる点は注意が必要だ。このカードスロットは、パソコンからドライブとして利用できるので、パソコンにデーターを転送したり、逆にパソコンのデーターをカードに転送することが出来る点も特徴だ。写真や設定確認用に3.5型液晶ディスプレイを備える。これはエプソンの2機種よりもかなり大きいので、写真確認なども見やすい。赤外線通信も可能である。このように機能的には価格が高いだけの事はある。
 PM-D800は、CD/DVDレーベル印刷やPictBridgeには対応しているものの、前面給紙・自動両面印刷機能はエプソンの他のプリンタ同様備えていない。赤外線通信もオプションとなっている。一方でPM-D800にはPIXUS iP6600Dにもない機能がある。まずメモリカードスロットがアダプタなしでxDピクチャーカードに対応している点だ。このカードを使用している人はそれだけでエプソンを選ぶ意味がある。また、カードの画像データーを外付けのMO、CD-R、DVD-RドライブやUSBフラッシュメモリに保存したり、逆にこれらからダイレクト印刷したり出来る。デジカメの画像の印刷だけでなく、バックアップからバックアップ後の再印刷までパソコンなしで行えるのである。画面サイズは2.4型とPIXUS iP6600Dよりは小さいが、許容範囲だ。
 PM-D600はかなりシンプルで、PictBridgeには対応するものの、CD/DVDレーベル印刷も外付けドライブの接続も何も行えない。画面サイズも1.5型とかなり小さく、画像確認に苦労する大きさだ。ただ、価格はかなり安くPM-G800と比べても5000円、PIXUS iP6600Dとなら1万4000円も差がある。とりあえず、パソコンなしで綺麗に写真が印刷できればという人向けとなる。
 メーカー間で価格帯がかぶっていないため、純粋に機能差を考えて決めればよい。画質や画面サイズなどとにかく最高を求めるならPIXUS iP6600Dで決まりである。ただ、インク構成などが違うとはいえ、もう数千円出せば上位の複合機が買えるこの値段は微妙とは言える。一方とりあえずCD/DVDレーベル印刷が出来れば良い場合ならPM-D800でも全く問題はない。価格差9000円は結構大きいはずだ。また、PM-D800にしかない機能もあるので、ここに惹かれる場合もあるだろう。CD/DVDレーベル印刷などの付加機能が一切いらないなら、PM-D600でも画質も印刷速度も問題ない。ただ3機種で画面サイズに結構差があるので、実際に見てから決めて頂きたい。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/