2005年末のプリンタ(後編) 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2004年10月1日著) エプソンとキャノンから、2005年年末商戦向けのプリンタが発表された。これらの製品をプリンタ、複合機、ダイレクト印刷対応プリンタの3種類を価格帯別に比較していこう。後編の今回は、複合機の比較を価格別に行ってみたいと思う。
エプソンのPM-A950、キャノンのPIXUS MP950のそれぞれ最上位機種はどちらも5万円の価格設定となっている。どちらも最高レベルの性能となっているが、どの程度の差があるのか比較してみる。
この2機種はまず大きく違って見える部分にスキャナ解像度が挙げられる。PM-A950は4800dpiだが、PIXUS MP950は3200dpiである。PM-A950は前機種PM-A900の3200dpiからアップして、単体の個人向けスキャナの最高レベルと同じ4800dpiにまで達している。これならばフィルムスキャンにも十分な解像度になっているだろう。6コマ連続読み取りも出来るので、ネガからのプリントも手軽に行える。さらにスキャン画像をメモリカードに保存することも出来る。一方のPIXUS MP950は前機種同様3200dpiになっているため、スキャンの細かさは一歩劣る。ただし全く改良されていないかと言えばそのようなことはなく、3200dpiのCCDと800dpiのCCDのデュアルCCDになっている。つまり、800dpiのCCDも搭載することで、低解像度時の高速化を計ったわけである。フィルムスキャンは連続12コマまで読み取り出来るので、交換の手間は少ない。 プリンタ部にも差がある。PM-A950は染料インク6色構成、PIXUS MP950は染料インク6色に顔料ブラックを加えた7色となっている。PM-A950は5760×1440dpiのインク滴1.5plとなっており、単機能プリンタより高性能なものが搭載されている。一方のPIXUS MP950は今年のキャノンの例に漏れず9600×2400dpiでインク滴最小1plとなっている。差はあるものの、どちらも十分な性能となっており、差は判別しにくいと思われる。言えることは、どちらも最高レベルに達していることだ。このレベルに達していればどちらも画質に不満は出ないだろう。ただ、キャノンの顔料ブラックは普通紙印刷時の印刷品質向上に役立つのという点でPIXUS MP950は優れていると言える。一方、PM-A950はEpson Color対応で、補正機能ではリードしていると言える。これはダイレクト印刷時も利用できる。印刷速度は、L版写真の縁なし印刷を例にすると、PM-A950が20秒、PIXUS MP950が39秒とかなりの差が付いている。これまではキャノンは印刷が早いというイメージがあったが、今年はエプソンが改良を行い、20秒という驚異的なスピードを実現している。 その他の機能も思ったより差が少ない。キャノンお得意の自動両面印刷はやはりPIXUS MP950のみ対応であるが、前面給紙に関してはPM-A950はA4サイズの普通紙のみなのに対して、PIXUS MP950はA4普通紙からL版写真紙まで幅広く対応できるという差はあるもののどちらも対応している。PictBridgeやCD/DVDレーベル印刷はもちろんどちらの機種も行えるし、去年エプソンが採用した手書き合成シートやレーベルコピー機能を、今年はキャノンでも搭載しており(キャノンは手書きナビシート)機能面で似通った部分が増えた。ただ、エプソンの手書き合成シートは手書き部分にうっすらと写真が見えるようになりより位置あわせがしやすくなるなど改良もなされている。 ダイレクト印刷関係の機能として、まずメモリーカードスロットを見てみよう。どちらもパソコンからカードドライブとして使用できるようになっており、ダイレクト印刷だけでなく、パソコンへのバックアップなども行えるようになった。ただ、注意が必要なのは、PIXUS MP950はxDピクチャーカードを使用するにはアダプタが必要と言うことだ。PM-A950のみの機能として、メモリカードのデーターを外付けのMOやCD-R、DVD-R、USBフラッシュメモリに保存できる機能や、逆にそれらからのダイレクト印刷が行えるという点がある。逆にPIXUS MP950は赤外線通信でのダイレクト印刷に標準対応している(PM-A950はオプションの赤外線通信カードが必要)。画像確認のための液晶はPM-A950が3.5インチ、PIXUS MP950が3.6インチとほぼ同じサイズで、角度調整できる点も同じだ。ただ、PIXUS MP950の液晶と操作パネルは蓋の部分に搭載されている。蓋が閉められるという利点はある一方で、分厚い本など蓋を開けて手で押さえながらコピーする場合などは、操作パネルの位置が仇となり非常に使いにくいという問題が発生してしまう。 それ以外に特筆する機能としては、PM-A950のみ前面からインク交換が出来ることだ。複合機はどうしてもインク交換が大変になる傾向があるので、この機能は有り難い。 2機種を比べてみて、全体的な機能はPM-A950の方が多い。印刷速度やメディアへのダイレクト保存、前面インク交換などに加えて、特に4800dpiのスキャナはフィルムスキャンを考えている人にとってはかなり魅力的だろう。単純に「何でも出来る」事を考えるならPM-A950が良いだろう。一方顔料ブラックや前面給紙や両面印刷といった機能に惹かれる所があり、フィルムスキャンが主な目的でないなら、PIXUS MP950という選択肢も悪くない。
エプソンのPM-A890、キャノンのPIXUS MP800は3万円台後半から4万円の価格設定となっている。PM-A890が3万6000円、PIXUS MP800は4万円である。同レベルの2機種を比較してみる。
PM-A890はPM-A950の下位機種に当たるが、プリント画質面では同等になっている。1.5plのインク滴で5760×1440dpiの解像度、6色インクというのは全く同じである。ただノズル数が半分になっているために、印刷速度がL版縁なし印刷で32秒と若干遅くなっている。ただ、これでも十分高速なので問題はないと思われる。スキャナもPM-A950よりは1ランク落とされて3200dpiとなっているが、前機種PM-A870よりは良くなっており、キャノンの最上位機種と同等になっているのは嬉しい所だ。また前機種は対応していなかったCD/DVDレーベル印刷にも対応している。 一方のPIXUS MP800はPIXUS MP950の下位機種である。まずインク構成が、シアン、マゼンダ、イエローと染料ブラック、顔料ブラックの5色構成となった。PIXUS MP950と比べてフォトシアン、フォトマゼンダが無い分画質に影響があるだろうが、最小1plのインク滴と9600×2400dpiの解像度はPIXUS MP950と同じなので、画質は問題ないレベルだ。顔料ブラックが搭載されているため、普通紙の画質はPM-A890より上だ。ただしPM-A890はEpson Color対応なので、ダイレクト印刷時に手間無く適切な色合いになるのは嬉しい所だ。印刷速度は奇しくもPM-A890と同じ32秒となっている。CD/DVDレーベル印刷にはもちろん対応しているし、前面給紙と自動両面印刷はPM-A890にはない特徴だ。一方のスキャナはPIXUS MP950から1ランク下げられ2400dpiとなっている。PM-A890と比べても低いのが気になる。特にフィルムスキャン時の画質が気になる所だ。 ダイレクト印刷部を比較してみよう。どちらもカードスロットは搭載しており、SD、MS、CF、SMは両機種とも搭載しているが、xDピクチャーカードはPM-A890のみスロットを持っている点は注意が必要だ。両機種ともPCからメモリカードドライブとして使用することも出来るし、PictBridgeにも対応している。PM-A890のみの機能としては、メモリカードのデーターを外付けのMOやCD-R、DVD-R、USBフラッシュメモリに保存できる機能や、逆にそれらからのダイレクト印刷が行えるという点、手書き合成シートである。赤外線通信はどちらの機種も対応している。エプソンは上位機種PM-A950ではオプション扱いだった赤外線通信をPM-A890は標準対応している点は面白い。さらに、特定の携帯電話から写真に文字入力を行う機能も搭載されている。 もちろんコピーも行える。CD/DVDレーベルコピーにも対応だ。液晶ディスプレイも搭載しているが、PM-A890が2.5インチの固定式、PIXUS MP800が3.5インチの可動式と大きな差がある。各種設定内容の確認などはPIXUS MP800の方が優れていると言えそうだが、表示の美しさはエプソンの方が上になる。 結果的にスキャン解像度、インク数、ダイレクト印刷機能などの機能を考えると、PM-A890の方が上と言える。それでいて、価格が4000円安いのは魅力的だ。PIXUS MP800は操作性の良さ(前面給紙・大型液晶)と顔料ブラック、という特徴があるが、スキャナ解像度の問題は大きい。操作性の良いPIXUS MP800を取るか、基本性能の良いPM-A890を取るかと行った所だ。
エプソンのPM-A890、キャノンのPIXUS MP800は2万円台後半から3万円の価格設定となっている。PM-A890が2万6000円、PIXUS MP800は3万円となっており、PM-A890とPIXUS MP800の時と同様4千円の価格差が付いているが、同価格帯の機種として比較してみよう。
2機種は同価格帯だが、大きく違う所がある。PM-A750はフィルムスキャン対応だが、PIXUS MP500は対応していない。これは、上位機種から段階的にスキャナ解像度が下がっているが、エプソンの方がキャノンより常に1ランク上の解像度になっているためである。そのため、エプソンは上から3番目のPM-A750でも2400dpiなのでフィルムスキャンが行えるが、キャノンのPIXUS MP500は1200dpiになるので、フォルムスキャンには対応できないのである。ちなみに、この価格帯からどちらもCISスキャナになっているので、上位機種のCCDスキャナと比べて立体的なものは苦手だ。例えば、分厚い本の間のページは、綴じ目の部分が浮いてしまうと読み取れない。 プリンタ部を見てみよう。PM-A750はエプソンの上位機種とは異なり、4色インクになっている。また、インク滴も若干大きくなり2plになっている。ただ、このレベルなら肉眼では全く問題ないレベルだろう。印刷速度はL版縁なしが38秒と特に問題ない。Epson Colorには非対応だが、これはダイレクト印刷時にオートフォトファイン!EXが働かないためで、パソコンから印刷時は上位機種と同じように利用できる。ただ、CD/DVDレーベル印刷機能は搭載されていない。一方のPIXUS MP500はPIXUS MP800と同じ染料4色+顔料ブラックの組み合わせとなっている。インク滴が最小1plとなっている点も変わらない。そのため画質面ではPIXUS MP800と変わらない十分な画質である上、顔料ブラックのおかげで普通紙印刷の画質も高い。ただノズル数が少なくなっているため、印刷速度が若干遅くなっておりL版縁なしで42秒である。ただ、これでも遅いというわけではない。こちらはCD/DVDレーベル印刷や前面給紙、自動両面印刷機能を備えている。 今度はダイレクト印刷機能を見てみよう。PM-A750とPIXUS MP500は共にカードスロットを持っているが、他機種同様xDピクチャーカードをPIXUS MP500で使う場合はオプションのアダプタが必要になってしまう点は注意が必要だ。カードドライブをパソコンに接続する事でカードドライブとして使用できる機能も両機種とも備えているので便利だ。ただし、上位機種の持っていた、メモリカードのデーターを外付けドライブに保存する機能や、逆にそれらからのダイレクト印刷が行える機能は省かれている。手書き合成シートはPM-A750のみ備えている。赤外線通信はPIXUS MP500のみ対応だ。このように上位機種では備えていた機能の一部が省かれているが、メーカーによって省いている機能が異なるのは面白い点だ。 最後に液晶ディスプレイである。どちらも備えているが、コスト削減のためサイズが小さくされている。PIXUS MP500は2.5インチだから何とかなるサイズだが、PM-A750は1.5インチとかなり小さい。 結局、画質面や印刷速度ではそれほどの違いがないから、付加機能のどちらに魅力を感じるかが選択のポイントとなる。例えばスキャナ解像度やフィルムスキャン、手書き合成シートに魅力を感じるならPM-A750である。一方レーベル印刷や画面サイズ、赤外線通信、顔料ブラックなどに魅力を感じるならPIXUS MP500だ。価格差も4000円あるので、そのあたりも考慮に入れて比較して頂きたい。
エプソンのPX-A650、キャノンのPIXUS MP170は共に2万円の価格設定となっている。
2万円の機種はかなり機能が省かれているが、それでも最低限の性能は備えている。まず、PX-A650だが、1200dpiのCISスキャナを備える。PX-A650よりさらに低くされ、フィルムスキャンは行えないが、紙原稿では問題ないレベルだ。ただしCISスキャナだからガラス面から浮く原稿は苦手である。プリンタ部の方は4色構成でインク滴が3plとなっており性能的には悪くなっているが、十分写真画質だ。それよりもインクが顔料系のPX-Vインクになっているのが特徴だ。カラーもブラックも全て顔料系なので普通紙の印刷画質や耐水性は非常に高い。ただ、エプソンの写真用紙への印刷は行えるとされているが、光沢感が若干失われてしまうのは残念だ。いざ写真印刷時には写真用紙も使えるので、普通紙印刷が基本という場合は非常に便利だ。印刷速度も、L版縁なしで66秒と、上位機種よりは遅いものの、価格を考えれば遅くはない。 PIXUS MP170も1200dpiのCISスキャナを備える。フォルムスキャンは行えず、CISスキャナだから分厚い本の綴じ目など、ガラス面から浮く原稿は真っ黒になってしまうが、紙原稿は1200dpiあれば問題ない。プリンタはインク滴は2pl、解像度は4800×1200dpiと一世代前の性能だが、画質は十分高い。ただ、顔料ブラックを入れて4色構成となっているため、染料ブラックは搭載されず、光沢紙・写真用紙印刷時はブラックインクが使えない問題がある。普通紙の白黒印刷時の画質は高い代わりに、写真印刷時などのメリハリが若干無くなってしまう。印刷速度はL版縁なし印刷で45秒と価格を考えれば早い。写真印刷もストレス無く出来るだろう。 どちらの機種もCD/DVDレーベル印刷機能は持っていないし、キャノンお得意の前面給紙や自動両面印刷も、どちらの機種も備えていない。あくまで、紙原稿への印刷と紙原稿のコピー・スキャンのみとなる。 両機種ともカードスロットは備えているが、液晶ディスプレイは搭載されない。メモリカードの写真を印刷する場合は、エプソンは「オーダーシート」、キャノンは「フォトナビシート」と呼んでいるシートを用いるのが簡単な方法だ。A4用紙に印刷するマークシート方式のもので、写真とマーク欄が印刷されるので、用紙サイズや縁なしの有無をマークし、さらに印刷したい写真にマークする。あとはスキャンするだけというものだ。ちなみに、PIXUS MP170はxDピクチャーカードスロットは搭載されず、アダプタが必要である点には注意が必要だ。両機種ともパソコンに接続することでカードドライブとして利用することが出来る点は便利である。また、PictBridgeには両機種とも対応している。一方、赤外線通信機能は備えていない。 このように付加機能がかなり省かれているが、基本的なコピーや印刷の画質は悪くないのがこの価格帯の特徴だ。普通紙主体ならPX-A650、写真主体ならPIXUS MP170がおすすめだ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ |