プリンター徹底比較
2007年末のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2007年12月12日著)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
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4万円以上の複合機
 
 エプソンのPM-T990、キャノンのPIXUS MP970という4万円以上の機種を比較する。PM-T990は2006年末に発表されたモデルであり価格は下落しているが、ラインナップでは最上位機種であるため、PIXUS MP970と比較する。PM-T990は現在は43,200円前後で、PIXUS MP970は40,000円前後となっている。どちらも薄型テレビと接続し地上デジタル放送のデータ放送の印刷コンテンツをプリントできる点で共通である。ではそれ以外の差はどの程度あるのだろうか。

メーカ エプソンキャノン
品番 PM-T990PIXUS MP970
製品画像
予想実売価格 43,200円前後40,000円前後
プリンタ部 最大解像度 5760×1440dpi9600×2400dpi
インク色数 6色7色
顔料/染料系 染料系(PM-Gインク)染料系/顔料系(ブラック)
カートリッジ構成 各色独立各色独立
色詳細 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック(顔料)
ブラック(染料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
最小インクドロップサイズ 1.5pl
(Advanced-MSDT対応)
1pl
ノズル数 1080ノズル3584ノズル
180ノズル×6色 512ノズル×7色
特殊機能 DVD/CDレーベル印刷
自動両面印刷
前面給紙 △(A4普通紙のみ)
顔の明るさ補正 ○(オートフォトファイン!EX)○(自動写真補正)
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
19秒29秒
スキャナ部 読み取り解像度 4800dpi4800dpi
センサータイプ CCDCCD
ネガ読み取り機能 ○(連続6コマ)○(連続6コマ)
スキャンデーターのメモリカード保存 ○(JPEG/PDF)
ダイレクト
印刷部
カードスロット 対応カード SD/MS/CF/xDSD/MS/CF/xD
(xDはアダプタ必要)
PCからドライブとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
CD/DVDドライブ内蔵
外付けドライブ/USBメモリから印刷
動画から印刷 ○(1コマ/12コマ)
手書き合成シート ○(CDレーベル対応)
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信 △(アダプタオプション)△(アダプタオプション)
携帯電話から写真に文字入力
テレビ接続
機能
データ放送から印刷
テレビでメモリカード内の写真表示
コピー部 拡大縮小コピー機能 ○(25〜400%・1%刻み)○(25〜400%・1%刻み)
CD/DVDレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(退色復元対応)○(色あせ補正対応)
その他の機能 液晶ディスプレイ 4.0型
角度調整可能
3.5型
角度調整可能
前面インク交換
インターフェイス USB 2.0
有線LAN(100BASE-TX)
無線LAN(IEEE802.11b/g)
USB 2.0
有線LAN(100BASE-TX)
外形寸法(横×奥×高) 450×438×227mm471×396×214mm
重量 14.2kg11.9kg

 まずはプリンタ部から見ていこう。最上位機種と言うだけあって、プリンタ部分に関しては両機種とも最高のものを搭載している。PM-T990は6色インクで1.5plのインク滴、5760×1440dpiの解像度となっている。また、5種類のドットサイズを打ち分ける「Advanced-MSDT」対応となっており、よりスムーズな階調表現が行える。一方のPIXUS MP970は6色+顔料ブラックの7色で、1plのインク滴、9600×2400dpiの解像度となっている。インク滴や解像度はPIXUS MP970の方が上だが、このレベルになるとどちらも「最高に綺麗」となり、ほとんど変わらない。ただし、PIXUS MP970は写真用6色に加えての顔料ブラックを搭載しているので普通紙へのモノクロ印刷や、普通紙コピーのモノクロ文字などがくっきりし、水に強いという利点があるため、この点はPIXUS MP970の方が優れているだろう。逆に写真の「保ち」に関してだが、PM-T990はアルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性25年の「つよインク200」、PIXUS MP970はアルバム保存100年、耐光性30年、耐ガス性10年の「ChromaLife100」であり、PM-T990の方が色あせは少ないという結果である。両機種とも画質は最高でPIXUS MP970は顔料ブラックという点が、PM-T990は保存性の点で優れている。
 写真の補正機能としてPM-T990は「オートフォトファイン!EX」を搭載している。今年の機種は、オートフォトファイン!EXが進化し、より補正能力がアップし、ナチュラルフェイス機能も搭載されているが、PM-T990は去年のモデルの継続販売なのでこれらの進化はない。ただし、去年から補正能力は高いものだったので、それほど問題ではないだろう。一方のPIXUS MP970は去年のモデルから大きく進化し「自動写真補正」となり、顔認識→シーン分類→補正という流れをとるようになったため補正能力が格段に向上している。その上に従来はダイレクトプリント時しか利用できなかったが、今回からPCからとダイレクトプリントの両方で使えるようになった。つまりエプソンと同等レベルに引き揚げられていると言える。印刷速度はL版縁なしで、PM-T990が19秒、PIXUS MP970が29秒とそれなりの差があるがどちらも十分高速であることに代わりはない。ただ、PM-T990なら1分で3枚、PIXUS MP970は1分で2枚と考えると結構な差なので、写真印刷が主なら保存性と併せてPM-T990の方がよいかもしれない。
 給紙機構に関してはPIXUS MP970の方が便利だ。キャノンお得意の前面給紙カセット対応なので、前面と背面に同時に用紙がセットでき、使い分けられて便利だ。また、自動両面印刷機能も搭載している。一方のPM-T990も前面給紙には対応しているものの、カセットではなくトレイとなっており、A4普通紙のみの対応となる上に、用紙をセットしたまま排紙トレイをしまう事ができない。このあたりはPIXUS MP970の方が便利だ。
 次にスキャナを見てみよう。解像度はどちらも4800dpiとなっており、フィルムスキャナにも対応している。ネガフィルムの場合、連続6コマスキャンが可能という点も同等だ。もちろんCCD方式のスキャナなので分厚い本の綴じ目の様にガラス面から浮いてしまう場合でも安心である。一方スキャンデータの取り扱いという点ではPM-T990が便利だ。PIXUS MP970はスキャン後はパソコンにデーターを送るしかないが、PM-T990はパソコンに繋がなくても、メモリカードやUSBメモリなどにJPEG又はPDF形式で保存できるのである。
 続いてダイレクト印刷機能を見てみよう。カードスロットからの印刷、PictBridgeによる印刷、赤外線通信による印刷の他、オプションでBluetoothによる印刷が行えるのは共通だ。ただし、PIXUS MP960では、xDカードには直接対応せず、CF型のアダプタを別途用意する必要があるのは注意が必要だ。写真の印刷はどちらも行えるが、加えてPM-T990は動画から写真印刷が行える点が便利だ。最近はデジカメで動画が撮れるのが一般的になってきているが、動画で撮影するのは後で見る時は動きがあって良いが、いざ印刷となると非常に手間である。PM-T990は1コマ又は12コマの連続写真を印刷できる。簡単な機能な様で、非常に便利だと言える。
 また、メモリカード関連の機能としてPM-T990にはCD/DVDドライブが内蔵されているのが面白い。正確には書き込みはCDのみでDVDは読み込みだけなので、「CD/DVDコンボドライブ」内蔵という事になる。このドライブを利用して、パソコン無しでメモリーカードの写真をCD-R/RWへの書き込みが行えるのである。またCD/DVDに書き込まれた写真からの印刷も行えるのである。つまり、デジカメで写真を撮ったら、メモリカードから写真を印刷し、CDにバックアップし、さらにバックアップ後に再度印刷といった作業がパソコン無しで行えるのである。パソコンを持っていない人や苦手な人にはもってこいの機能だろう。また、PX-T990は外付けのDVD書き込みのドライブやMOドライブ、USBメモリへ写真を写したり、逆にこれらから印刷も行える。
 写真と手書きの合成はどちらも対応しているが、PIXUS MP960では写真やはがきなどに加えて、CD/DVDレーベル印刷にも対応したのが利点である。CDやDVDにデジカメの写真を入れたけど、レーベル面をデザイン出来ないという人にとって、手書き合成によってレーベル面が簡単に作れるのは便利だろう。
 もちろん両機種ともコピーが行える。25〜400%の拡大縮小コピーも行えるほか、CD/DVDレーベルのコピーも行える。このあたりは完全搭載と言った感じである。
 では、操作に関する部分を見てみよう。液晶ディスプレイはPM-T990は4.0インチ液晶、PIXUS MP970は3.5インチ液晶と十分大きい。どちらも角度調整が行えるので非常に見やすいといえる。一方、操作パネルは、それぞれのメーカーの独自の部分が現れている。PM-T990はボタンを一列に並べており、一連の作業は左から右へ順に進んで行くことで行える。一方のPIXUS MP970はクルクル回してボタンを押すのが基本操作の「イージースクロールホイール」を備えている。液晶ディスプレイや操作パネルはどちらが優れているか実際に実機に触れて試して頂きたい。ちなみに、PM-A970はスキャナのフタの前(本体の前寄り)に付いているが、PIXUS MP960ではフタの前の方に付いている。PIXUS MP970の位置だと大型の本など、スキャナからはみ出す原稿でも操作パネルが隠れない反面、蓋を開けて手で押さえてスキャンする場合に操作が行いにくいという問題がある。これ以外にPM-T990は前面からインクを交換できるというメリットがある。
 そのほかの特徴として、どちらの機種も対応のデジタルテレビへ接続できる点が挙げられる。例えば地上デジタル放送のデータ放送の印刷コンテンツを印刷するといった事が行える。さらに、PM-T990ではメモリカードの写真を内蔵の液晶ではなくテレビに映して確認できるようになっているのも便利だ。
 接続端子はUSB 2.0に加えてLAN接続ができるようになっている。そのため家庭内でネットワークをくんでいれば、複数台のパソコンから利用できるという事である。今では家の中に2台以上のパソコンがあり、ルータを利用して同時にインターネットが利用できるようになっている家庭も多いだろう。その場合はルータにプリンタを接続すればインターネットだけでなくプリンタやスキャナもどのパソコンからも利用できるようになるのである。PIXUS MP970は有線LANのみだが、PM-T990は有線LANと無線LANの接続ができるのでより便利だ。ちなみに、無線LANの設定は、WEPキーなどの入力は上下左右のカーソルキーだけで行わないといけないためパソコンに比べて大変だが、「煩雑」なだけで「難しく」はない。無線LANの設定をした事があるなら、説明書を見なくても設定できてしまうほどだ。またAOSSに対応しているため、バッファロー社の無線LANルータとは簡単に接続できるようになっている。

 結局の所、どちらもこの価格にふさわしい性能を持っているといえる。若干の違いはあるが、プリント・スキャナ・コピーの性能は十分なレベルに達しているといえる。大きな違いといえば、CD/DVDドライブやと無線LAN、動画印刷やスキャン結果のUSBメモリへの保存と言った機能が魅力的に感じればPM-T990を、顔料ブラックインクによる文字印刷の綺麗さを魅力的に感じればPIXUS MP970を購入するという事になるだろう。価格差が3000円あるが、最上位機種を購入するのだから3000円に惑わされず、気に入った機能の機種を購入して頂きたい。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/



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