小ネタ集
超高速対応デジカメ
CASIO EXILM PRO「EX-F1」
(2008年2月22日著)


 カシオから発売されたEX-F1はEXILMシリーズの中でも「PRO」を冠した、少し上位の機種である。一般的には中型機と呼ばれる機種であり、コンパクトデジカメと一眼デジカメの間の機種となる。この機種の特徴は、最高画質の600万画素で毎秒60枚の高速連写ができ、さらに1秒間に1200コマのハイスピードムービーも撮影できる高速撮影機能である。

高速連写機能

 この機種の特徴として高速連写機能が挙げられる。試しにコンパクトデジカメの連写機能を調べてみると、同じカシオのEX-Z1200は1.6秒に1枚(0.625枚/秒)であり、PanasonicのDMC-FX33の場合1秒に3コマの撮影ができるが、最大4コマ(ファイン画質時)で止まってしまう。機種によって若干の違いはあるものの、この程度が一般的だ。それに対して、このEX-F1は1秒間に60コマの撮影が可能なのである。もちろん最高画質の600万画素でこの連写速度が出せるのである。これはコンパクトデジカメと比べて圧倒的であるだけでなく、民生用デジカメとして世界最高であり、同じ中型機や一眼レフデジカメをも凌ぐスピードだ。この連写スピードがあればスポーツや運動会、発表会の演技など、動きの速いシーンでも一瞬のベストショットを撮影できるというわけだ。
 単に連写が速いだけではなく、使いやすさも備えている。連写中にレンズの周囲の「ファンクションリング」を回してスピードを自在にコントロールでき、1 〜7、10、12、15、20、30、60fps(fpsは1秒の撮影枚数)から選ぶことができる。また、急に来た決定的瞬間にシャッターボタンを押すのが間に合わない場合もあるだろう。その場合でも、シャッターを半押しして準備しておけば、全押しした瞬間より前から撮影することが出来るのである。つまり、いつ決定的瞬間が来るか分からない場合は、とりあえず半押しで被写体を追っておき、決定的瞬間がきたらすぐに全押しするという使い方になるだろう。戻って撮影できるのは60コマ前までなので、最高速の60fpsなら1秒前、10fpsなら6秒前から記録することになる。
 では暗いところではどうなのだろうか。暗いところではフラッシュを光らさなければならないため連写は不可能な機種もあるが、EX-F1の場合はこの点も抜かりない。1〜7fpsの場合はフラッシュを光らせて20枚まで連写が可能である。ではそれ以上の連写は出来ないかというと、10〜60fpsの場合はLEDライトが点灯するので明るく撮影できる。しっかり明るくしたい場合は7fpsまでを、連写スピードを重視したい場合はLEDライトを利用する事になる。

ハイスピードムービー機能

 静止画の高速連写だけでなく、動画も超高速に撮影できる。例えばDVDは29.97fps(1秒に29.97コマ)となっている。通常の動画として見る分にはこれでも十分スムーズに見える。しかし、水滴の動きやゴルフのスイングなど、より細かい動きをゆっくり見たい場合は29.97fpsでは一般的に言う「コマ送り」状態になってしまう。そこで、EX-F1は1200fps(1秒間に1200コマ)という通常の40倍以上のコマ数で撮影が可能なのである。逆に言えば、40分の1倍速で見ても30fpsのスムーズな映像として見ることが出来る。今まで業務用の映像機材でしか撮影できなかった超スロー映像を、手軽に記録することができるという訳だ。人間の能力を超えたスピードで記録しゆっくり再生できるので、何気ない事がドラマチックに見える他、スポーツの技術向上のための分析や昆虫観察など幅広く活用できる。
フレームレート撮影解像度
1200fps336×96ドット
600fps432×192ドット
300fps512×384ドット
 注意が必要なのは1200fpsでは解像度がかなり低くなる点だ。1200fpsでは336×96ドットとなってしまう。DVDは720×480ドットなので、それと比べるとかなり小さい。これを600fpsにすると432×196ドット、300fpsでは512×384ドットとなり、DVDほどではないが解像度は高くなる。600fpsや300fpsでも十分スローに見えるので、場合によってフレームレート(fps)と解像度を選ぶと良いだろう。
 カシオの公式ホームページのEX-F1のページの「ハイスピードムービー」のページにはハイスピードムービーのサンプル動画が多数掲載されているので、一度見ていただきたい。その美しさに驚くのではないだろうか。

フルハイビジョンムービー撮影機能

 高フレームレートより高解像度の綺麗な動画が撮りたい場合もあるだろう。そういった場合の機能として、フルハイビジョンの動画が撮影できる機能もある。フルハイビジョンは1920×1080ドットという通常のDVDの最近の6倍の解像度であり、かなりの高画質の動画となる。しかもその解像度でも最大60fpsというフレームレートで撮影が出来る。フルハイビジョンはビデオカメラが最近になってようやく対応したようなものであり、デジカメでの対応は非常に珍しい。動画の圧縮はH.264を利用している。この動画はパソコンに保存したり、EX-F1内蔵の液晶ディスプレイで見ることはもちろん、HDMI端子を内蔵しているので、ハイビジョンテレビで高画質のまま見ることも出来る。デジカメといえども動画関係の機能に手抜きはないのである。ただしフルハイビジョンは通常よりもファイルサイズが大きくなるので、長時間撮影をするなら大容量のメモリカードを用意しておいた方が良いだろう。

その他の基本機能

 ではその他の基本機能を見てみよう。有効画素数は600万画素で、CCDではなくCMOSを採用している。600万画素とは最近のデジカメとしては低めだが、L判や2L判、A4サイズ程度までの印刷なら問題はないだろう。対応メモリはSDカードである。もちろんSDHCカードにも対応しているので、4GB超のカードも利用できる。内蔵メモリ量は現時点では未定となっている。
 光学12倍ズーム(35mm判換算で36〜432mm)と比較的高倍率のズームを搭載しているため、スポーツや運動会、舞台発表などの場合でも近くに寄ることが出来る。一方広角側が35mm判換算で36mmなので、最近の28mmなどのデジカメと比べると狭いところでの撮影は苦手だ。CMOSシフト方式手ブレ補正付きなので、暗いところやズーム時にも画質の低下なく手ぶれが補正が行える。さらに最大ISO感度も1600となっているので、CMOSシフト方式手ぶれ補正では補正できない、被写体が動く場合のブレも軽減できる。さらに顔検出によるオートフォーカスと明るさ補正が行えるため、失敗はかなり少なくできるだろう。ベストショット機能を搭載しているので、シーンサンプルから選択するだけで最適な設定にしてくれるなど、自動でもかなり美しい写真が撮影できる。
 一方でマニュアル設定も簡単に行う事が出来る。上部のモードダイヤルを「A」に合わせると絞り優先、「S」に合わせるとシャッター速度優先、「M」に合わせるとマニュアル露出と簡単に切り替えられる。シャッター速度優先ではシャッター速度は60〜1/40000秒と、オートよりも高速シャッターを切ることが出来る。マニュアル露出では-2EVから+2EVの間で1/3EV単位で設定できる。露出などの設定を自動的にずらしながら連写するブラケット撮影機能も備えるなど、オートでもマニュアルでもかなりの機能を備えている。
 液晶ディスプレイは2.8型のワイドタイプが搭載されている。液晶の画素数は23万画素と高詳細なので撮影した写真の表情や手ぶれの確認も行いやすい。それとは別に電子ビューファインダーも搭載しており、こちらも20万画素と高詳細だ。
 電源は専用リチウムイオン充電池である。ただし現時点で撮影可能枚数は未定となている。重量は本体だけで671g、サイズも大きめなので気軽にポケットに入れて持ち運べるサイズではないが、その分ホールドはしやすいだろう。

 この機種は3月下旬発売予定となっており、店頭価格は13〜14万円前後になると予想される。金額的には決して安い機種ではないが、これまでのデジカメにはない高速連写とハイスピードムービーが撮影でき、それに加えて実用性の高いと思われるフルハイビジョンムービーも撮影できる事を考えると安いとも思える。ズーム倍率や手ぶれ補正機能など、他の機能も決して手を抜いてはいない。これらの機能に惹かれたなら、十分に価値のある機種だと言えるだろう。





(H.Intel)

今回の関連メーカー
カシオ http://casio.jp/
カシオデジタルカメラオフィシャルWEBサイト http://dc.casio.jp/




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