小ネタ集
流行の低価格モバイルノート
20機種を比較する
(2008年9月29日著・10月11日追記)

この記事のトップページはコチラです。

低価格モバイルノートのCPU

 低価格モバイルノートでは、普通のノートパソコンとは異なるCPUが採用されている。初代Eee PCこそ、Celeron Mを通常よりダウンクロックして使用していたが、現在はAtomとC7-M ULVの2種類が主流となっている。

【インテル Atom】
 インテルが低価格モバイルノート向けに新たに開発したのがAtomである。基本的にはCore 2 Duoなどの互換CPUであるが、Core 2 DuoやCeleronと比べて低TDP(設計上想定される最大放熱量)、低コストになるように開発されている。TDPは0.65〜4Wであり、ノートパソコン向けCore 2 Duoが通常電圧版で35W、超低電圧版でも10Wである事を考えるとかなり低い。また、トランジスタ数も4,700万個とかなり少ないため、コアサイズが小さくかなり低コストで製造できる。ラインナップは以下の通りである

動作クロックHyper-ThreadingFSBTDP
Atom Z5401.86GHz533MHz2.4W
Atom Z5301.6GHz533MHz2.0W
Atom Z5201.33GHz533MHz2.0W
Atom Z5101.1GHz×400MHz2.0W
Atom Z500800MHz×400MHz0.65W
Atom N2701.6GHz533MHz2.5W
Atom 2301.6GHz533MHz4.0W

 全機種ともシングルコアとなる。AtomはZシリーズとNシリーズ、無印シリーズがあり、ダイは同じものだがパッケージサイズとTDPが異なる。最も低発熱なのはZシリーズで、同じ1.6GHzの比較でN270は2.5W、230は4Wなのに対して、Z530は2Wである。いずれもシングルコアであるが、Hyper-Threadingに対応しており、擬似的に2コアとして動作するため、ただのシングルコアCPUよりは性能が高い。ただし、Z510とZ500という低クロックの2機種はHyper-ThreadingがオフになっているほかFSBも400MHzに抑えられており、性能面では劣る。
 今回の比較対象の機種では比較的低価格なN270を採用した機種がほとんどだ。しかし特に小型のWILLCOM D4 WS016SHと工人舎のSC3KP06A/SC3WP06AではZシリーズが採用されている。

【VIA C7-M ULV】
 VIAが発売しているC7-M ULVも採用機種がある。元々C7はインテルのCPUと比べて消費電力が低く、そのため発熱も小さかった。また低価格であった。そのC7をさらにモバイル向けにしたのがC7-M、さらに低消費電力にしたのがC7-M ULVである。残念ながら性能は同クロックのCeleron Mと比べても、整数演算で50%、浮動小数点演算性能で40%程度とかなり低く、C7/C7-M/C7-M ULVを採用するパソコンはほとんど無かった。しかし、低価格モバイルノートの登場により、その低発熱ぶりと低価格ぶりが再評価され複数の機種で採用されている。Atomと比較しても、同クロックで60%程度の性能であり、性能は高いとは言えない。しかし、高解像度の動画再生や、画像編集などは厳しい性能であるがオフィスアプリケーションなら問題ない性能と言える。

低価格モバイルノートのハードディスク・メモリ

 ほとんどの機種では通常のノートパソコン用のハードディスクを搭載しており、容量も80〜120GBと「若干少ない」程度である。特殊なのはEee PCの4機種とInspiron Mini 9で、4GB〜16GBのSSDを採用している。SSDとはフラッシュメモリを用いるストレージデバイスで読み書きが速いのが特徴だ。しかし、残念ながら低価格モバイルノートに内蔵されるSSDは、高価な機種に採用されているSSDほど高性能ではなく、Eee PCに採用されるSSDは一般的なHDDより遅く、Inspriron Mini 9は読み込みは速く書き込みは遅いようだ。しかし、駆動系がないので衝撃に強いというモバイルノートに適した特徴は健在である。データの断片化が起きないのでデフラグをしなくても速度が低下しない、動作音が静かという特徴もある。ハードディスクかSSDかは購入時に気をつけたいところだ。
 メインメモリは一般的なノートパソコンと同じDDR SDRAMを用いる。512MBから1GBが一般的なようだ。本体が小型であるため、メモリストロットは1基しかない事が多く、増設には標準のメモリと交換する必要がある。またオンボードとなっており、全く増設が不可能な機種もあるので気をつけたい。Windows XPでは512MB〜1GB、Windows Vistaでは1GBは搭載されており、全ての用途に十分とは言えない物の、通常は十分な性能が搭載されている。

低価格モバイルノートの光学ドライブ

 DVDスーパーマルチドライブなどの光学ドライブは搭載していない。本体サイズと価格を考えると内蔵するのは難しいようだ。アプリケーションのインストールなどは、ネットワーク上の別のパソコンの光学ドライブを利用するか、USB接続の外付けドライブを別途用意することとなる。外付けドライブの場合、パソコンと一緒に持ち運ぶというのならノートパソコン用のDVDスーパーマルチドライブを購入する事になる。安い製品なら1万円程度で購入できる。一方、アプリケーションをインストールするだけなら、デスクトップパソコン用のドライブを購入する方が安い。安い製品なら7,000円程度で購入できる。

低価格モバイルノートのディスプレイ・グラフィック性能

 ディスプレイは本体の大きさに依存する傾向があるが、Eee PC 4G-XUなどのように価格の面からかなり小さめの機種を搭載する事もある。どの機種もワイド液晶になるが、解像度が大きく異なる。Eee PC 4G-XUは800×480ドットとなり、かなり小さめだ。ホームページ閲覧でも横方向のスクロールが必要になる場合が多くなる。そして大半の機種では1024×600ドットとなる。一般的なノートパソコンでは1280×800ドット以上である事を考えると小さいが、ホームページの横方向のスクロールはほぼ不要になるなど、なんとか使えるレベルである。そして、低価格モバイルノートで異例なのがHP 2133 Mini-Note PCとM912Xであり、1280×768ドットと、一般的なノートパソコンと同等の解像度を備えている。
 また、それ以外の違いもある。液晶の輝度やコントラスト比はスペックからは分かりにくいが、表示の美しさに大きな影響がある。購入前に一度店頭で比較した方がよいだろう。また、液晶は今流行の表面が光沢した「光沢液晶」と、光沢していない昔ながらの「ノングレア液晶」がある。光沢液晶の方が表示が綺麗に見える一方で、低反射処理をしていないと外光が映り込み見にくくなる。このあたりも併せて店頭で確認したいところだ。
 ゲームをするという場合気になるのが3Dグラフィック性能である。しかし残念ながら性能は高いとは言えない。CPUにAtom N270を採用する場合はIntel 945GSM/Intel 945GMEチップセット内蔵のグラフィック機能Intel GMA950を、CPUにAtom Zシリーズを採用する場合は、Intel US15Wチップセット内蔵のグラフィック機能Intel GMA500を、CPUにC7-M ULVを採用する場合はVIA CN896/VX800チップセット内蔵のグラフィック機能を使う事が多い。この中ではAtom+Intel GMA950性能が最も高いが、CPU性能がそれほど高くないこともあってどちらにしても高性能とは言えないレベルである。

低価格モバイルノートのカードスロット・各種端子

 カードスロットは本体サイズが小さいこともあってそれほど多くはない。通常はSDカードスロットかSDカード/メモリスティック共用スロットのみ内蔵されることとなる。PCカードスロットやExpressCardスロットなどは内蔵されない事がほとんどであるため、通信カードなどを利用する場合はUSB接続タイプを利用することになるだろう。そんな中、HP 2133 Mini-Note PCがExpressCard/54スロットを、工人舎のSC3KP06A /SC3WP06AとCloudBook CE1221J、M912XがExpressCard/34スロットを搭載するのは大きなアドバンテージだろう。また、工人舎のSA5KL08AはCFカードスロットを搭載するので、通信カードを挿すことが出来る。
 端子は各製品で様々だが、通常はUSBが2〜3基とD-Sub15ピンのディスプレイ出力、イヤホン出力とマイク入力という事が多い。USB端子の数などは、接続する予定のUSB機器によっては気にした方が良い場合もある。

低価格モバイルノートの通信機能

 通信機能としては一般的には有線LANと無線LANの両方を内蔵する事が多い。有線LANは100BASE-TX止まりが多いが、HPの2機種とDC101のみ1000BASE-Tに対応している。無線LANはIEEE802.11b/gのみの対応である機種が多いが、IEEE802.11a/b/g対応、又はIEEE802.11n/b/gに対応しており、一段上の機能を備えている機種もある。どちらにしても、この価格を考えれば無線LANと有線LANの両方を搭載しているだけで十分と言える。Bluetooth機能を内蔵している機種もあるため、徐々に増えつつあるBluetooth対応周辺機器を接続できる。
 また、WILLCOM D4 WS016SHはウィルコムの通信端末という位置づけであることから、4XのW-OAM(最大204kbps)のPHS通信が行える。

低価格モバイルノートのOS

 OSはWindows XP Home EditionかWindows Vista Home Basic/Home Premiumを採用する機種が多いがWindows Vista Business搭載機もある。Windows XPはWindows Vistaと比べると軽いため、高いとは言えないスペックを考えると最も適していると言える。しかし、最新のパソコンを購入するのだから最新のOSをというのであればWindows Vistaの機種を選ぶのも良い。Windows Vista Home Basicは3D表示によるウィンドウ切り替えやタイトルバーの半透明化、最小化したウィンドウを縮小表示する機能など、Windows Vistaの特徴となる機能の一部が使えない。Windows Vista Home Premiumの方がVistaらしいが、その分メモリ消費量も多く注意が必要だ。Windows Vista Businessはビジネス用途に向いたバージョンのVistaだが、それよりもWindows XPにダウングレード出来るのがメリットである。ユーザが選べるという点で良いと言える。
 また、Microsoft WordやExcelをはじめとするMicrosoft Officeは付属していない。かと言って購入するとなると、せっかくの安価な本体が意味をなくすほど高く付いてしまう。場合によってはOpenOffice.orgなどのフリーのオフィスアプリケーションを利用するなどの工夫をする必要があるだろう。

低価格モバイルノートのキーボード・付加機能

 キーボードは本体サイズに影響を受ける部分と言える。最小で12.2mm、最高で17.5mmのキーピッチとなっている。大型ノートパソコンは19mmなので、いずれにしても小さいと言えるが、とりあえず17mm以上あると問題ない大きさである。15mm程度では長時間タイピングは若干つらくなり、それ以下だとかなりつらいレベルだと言える。また、一部デフォルメの激しい機種があるほかファンクションキーが他のキーと兼用になっている機種もあるので注意が必要だ。また、キー中央部の「たわみ」があるとキータッチ感を損ねるが、スペックでは分からないため、ぜひ店頭で触れて確かめていただきたい。
 その他、各製品とも特徴的な機能を備えている場合がある。最も多いのがWebカメラである。また工人舎の2機種やM912Xのように液晶ディスプレイを180度回転させる事が出来る機種や、タッチパネル液晶の機種もある。その他HP 2133 Mini-Note PCはキーボードに特殊コーティングを施すことでキー印字のはがれ・かすれに対して通常の50倍の耐久性をもたせている。各製品のスペックを見て、それほど差がないと感じる場合は、この付加機能を見てみるのも良いだろう。

低価格モバイルノートの本体サイズとバッテリ駆動時間

 本体サイズ・重量とバッテリ駆動時間は携帯性に大きな影響を与える。本体サイズ・重量は大きな差があり、最も小さく軽い機種は、SC3KP06A/SC3WP06Aで、189×155×25.4〜33mm で798gである。一方、最重量はM912Xで、235×180×42mmで1.3kgである。ただし本体が小さければそれだけディスプレイもキーボードも小さくなり使い勝手が悪くなる。携帯性と使い勝手のバランスを考えて、ぴったりの1台を選んでいただきたい。またバッテリ駆動時間も大きな差があり、短い機種では2.5時間程度、長い機種では8.3時間となっている。持ち運んで、コンセントの使えるところで使用するのか、持ち運びながらバッテリで使用するのかによって考える必要がある。


(H.Intel)


今回紹介した商品や、その他のハードやソフトの
ご購入はコチラでどうぞ!