流行の低価格モバイルノート 20機種を比較する (2008年9月29日著・10月11日追記)
【N10J】 Eee PCを発売しているASUSからEee PCでないAtom搭載パソコンが発売されたので今回の趣旨とは若干ずれるが参考に紹介したい。この機種はCPUと液晶は低価格モバイルノートと同じだが、それとはアンバランスなほど他のパーツは高性能になっている。 CPUはAtom N270(1.6GHz)を採用している。他のスペックから見るとCPUが弱い様に感じるが価格を考えれば妥当なところだろう。ビジネスアプリケーションはもちろん、ある程度は動画も楽しめるだろう。メモリは2GB搭載しており余裕がある。ハードディスクも160GBと十分だ。ディスプレイは10.2インチと大きめだが画面解像度は1024×600ドットと、5万円前後の機種と変わらないのは若干弱く感じる。おもしろいのはグラフィック機能でIntel 945GSE Expressチップセット内蔵に加え、GeForce 9300M GSを利用できる点だ。GeForce 9300M GSといえばGeForce 9Mシリーズ中では下から2番目とは言っても、DirectX 10世代のもので圧倒的に3Dグラフィック性能は高い。専用グラフィックメモリも256MBも搭載している。この価格にしては異例な性能の高さだ。 130万画素Webカメラはもちろん、1000BASE-Tの有線LANとIEEE802.11nに対応した無線LAN、Bluetoothなど全体的に高性能なパーツで占められている。映像出力はD-Sub15ピンに加えHDMI端子が搭載されているのも価格を考えれば驚きである。さらに指紋認証装置も備えており、モバイルでの使用時のセキュリティ面でも優れている。カードスロットはSD/MS/xD共用スロットに加え、ExpressCard/34スロットもあるため本体サイズを考えると拡張性も高い。 キーボードは18.5mmキーピッチを確保しており、大型ノートパソコンの19mmに迫るサイズであるため、長時間タイピングも出来るレベルだ。バッテリ駆動時間も7時間と長めだ。しかしながら比較的大きな液晶ディスプレイに加え、高性能なので、本体サイズは大きめだ。重量も1.5kgと今回紹介する機種の中では最も重い。とは言っても、持ち運べない重量ではない。 Atomという低価格CPUを採用しながら他のスペックはかなり高性能なもので固められており一見するとアンバランスに見える。しかし、EeePCなどの低価格パソコンでは少し物足りない人には意外と良い選択肢になるかもしれない。 【FMV-BIBLO LOOX U/B50】 参考として、富士通のAtom搭載の超小型パソコンも紹介しよう。LOOX U U/B50は129,800円と他機種の1.5〜2倍の価格であるがどのような違いがあるのだろうか。まず、小型である事が挙げられる。そのために特殊なパーツが必要になりコストアップに繋がっているはずだ、CPUもAtomのNシリーズではなく、Zシリーズを採用している。ただし、クロックは1.6GHzのものを採用しており他機種と同等の処理性能を実現している。 ディスプレイも特殊で、5.6インチとかなり小さいが1280×800ドットの高解像度を実現している。他の低価格モバイルノートより高い解像度だ。この画面サイズでこの解像度だと文字がかなり小さくなるが、一覧性はよく、写真などを表示した場合も詳細に見える。さらに液晶ディスプレイを180度回転させて裏返すことでタブレットPCとして使用できる。液晶がタッチパネルになっている上に、この形状でも使えるようにスティックポイントが配置されているため、様々な使い方が可能だ。 端子は本体サイズが小さいため最小限だが、1基のUSBとイヤホン、マイクとなる。無線LANはIEEE802.11n/a/b/gに対応しているため高速通信が可能だ。また、付属のアダプタを接続する事で、ディスプレイ出力と有線LANが使えるようになる。メモリーカードスロットはSDとCFの2種類が搭載されるため、CF型の通信カードなどを挿せ、出来る限りの拡張性を備えている。 キーボードもかなりの試行錯誤が見られ、キーの並びが特殊であったり、F7〜F12がFn+F1〜F6になっているなど使い勝手は落ちるが、主要キーは出来るだけデフォルメなしになるよう努力の跡が見られる。また、この本体サイズで15mmのキーピッチを実現しており、できる限り使い勝手を追求している。キーボード形状も、キートップを小さめにすることで隣接するキーを押してしまわない配慮がなされている。またキーボードライトを搭載しているのがおもしろい。 バッテリ駆動時間が5.5時間と長いのもうれしいところだ。171×135×26.5〜33.0mmで565gと非常に小さく軽量なので、カバンに常に入れておく事もできるほどだ。 Atomの低消費電力という事を利用して、小型化を追及していること、そしてその中でできる限りの性能と使い勝手を求めているところが低価格モバイルノートとの違いといえる。キーボード形状やスティックポイントの位置など様々な部分にこだわりが見える。 【VAIO T VGN-TT50B】 モバイルノートとして完成度が高いといわれているVAIO typeTの最新機種の下位機種を見てみよう。価格は239,800円とEee PC 901-Xの4倍の価格である。どれほどの違いがあるのか見てみよう。 まずは処理性能面から見てみよう。CPUはCore 2 Duo SU9300(1.20GHz)である。クロックこそAtom N270の1.6GHzより下だが、もともとCore 2シリーズはクロック当たりの性能がAtomより高いうえにデュアルコアであるため、性能はかなり高いといえる。メモリも3GB搭載しWindows Vista Premiumも余裕である。ハードディスクは120GBと多めである。本体サイズは279×199.8×23.5〜30.7mmで重量も1.27kgなので数字だけ見ると大きく、重く感じるが、なんとこの大きさでDVDスーパーマルチドライブを内蔵しているのである。むしろ、内蔵していながらLuvBook Uと同等の重量になっている事が驚きである。ディスプレイは11.1インチのクリアソリッド液晶(リッチカラー)を採用する。輝度・コントラスト比共に非常高くNTSC比100%まで表示できるため色再現力が高い上に、8ビットパネルなので1677万色をディザリング無しに表示できる。解像度が1366×768ドットと特殊だが、これはDVDなどのワイド映像の16:9に合わせた比率になっているためだ。せっかく光学ドライブを内蔵しているため、全画面でDVDなどを鑑賞できるのである。もちろんワンセグチューナも内蔵しており、屋外でテレビを見ることも出来る。 続いて端子類を見ていこう。有線LANは1000BASE-T対応、無線LANはIEEE802.11n/a/b/g対応と個人向けパソコンでは最高のものだ。その上Bluetoothも内蔵する。USBは2基と少なめだが、IEEE1394とディスプレイ出力が内蔵されている。さらにExpress Card/34スロットがあるので、拡張性は高いといえる。SDカードスロットとメモリスティックスロットを別々に備えているのも面白いところだ。もちろんWebカメラも内蔵している。また、イヤホン・マイク端子があるのは当然として、イヤホン端子はノイズキャンセル機能を搭載している上に、13.5mmドライバーユニットを採用したインナーイヤホンが付属しているため、うるさい環境でもDVD等を集中して見られる。その他、指紋認証やFelicaポートなども備える キーボードは17mmキーピッチとなっている上に、キー1つ1つが独立した形状になっており、タイピングしやすいよう工夫されている。 特筆すべきはバッテリ駆動時間で、なんと10時間となっている。これほどの長時間なら、内臓のDVDスーパーマルチドライブと美しい液晶を利用して屋外でDVDを観たりワンセグを見たり、Express Card型の通信カードを挿してスマートにネットをすることもできるだろう。 このようにモバイル機ながら処理性能も画面の美しさもドライブや各種端子、キーボードなどの使い勝手もどれも捨てることなく、さらに長時間バッテリ駆動も実現している。低価格なモバイルノートと比べると価格は雲泥の違いだが、それだけの格の違いがあるといえる。さらにBlu-rayドライブを搭載した上位モデルVGN-TT70Bもラインナップされている。 (H.Intel)
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