2009年4月時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2009年5月1日著)
1万円台前半の複合機にはPX-401AとPIXUS MP480の2機種が該当する。上位機種から純粋に機能を削減したPIXUS MP480と、普通紙印刷に特化したPX-401Aと性格が異なる2機種だが、比較してみよう。
プリンタ部を見てみよう。PIXUS MP480は上位機種の5色から4色にインク色数が減っている。この際に削られたのは染料ブラックインクである。つまり顔料のブラックインクと染料のカラーインク3色となる。そのため、写真印刷時はカラー3色での印刷となり、メリハリが若干弱くなると言う問題がある。インク滴も2plで解像度も4800×1200dpiと上位機種より落とされているため、画質面では若干劣る。といってもよく見なければ充分に写真画質と言える。また、顔料ブラックのおかげで、普通紙へのモノクロ文字などの画質は高い。インクは、「ChromaLife100+」で「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年を実現している。ただし、その他の用紙ではアルバム保存100年となる。 一方のPX-401AもPIXUS MP480と同じく4色構成になっている上に4plのインク滴と5760×1440dpiの解像度となっており、上位機種よりも画質が落ちる。特徴は4色とも顔料インクとなっていることだ。そのために普通紙への印刷はカラー・モノクロを含めてメリハリがある印刷が行える。普通紙へのコピーなどで重宝するほか、耐水性も高いため水に濡れたりマーカーを引いてもにじむことが無く安心だ。また、写真用紙への印刷も行えるが、顔料インクであるため光沢感が薄れ、ポストカードのような雰囲気になる点は注意が必要だ。画質面はブラックインクが使える代わりにインク滴がPIXUS MP480より大きいため同等レベルと言える。上位機種よりは粒状感があるが、目をこらして見なければ充分綺麗な画質である。インクは「つよインク200X」でアルバム保存200年、耐光性45年となり保存性は高い。 それ以外にも上位機種より劣る部分もある。例えばPX-401Aは上位機種と同じ各色独立インクであるが、PIXUS MP480はカラーは一体型となっており、1色が無くなると全部替えなければならない。印刷コストの面では不利となる。一方、印刷速度はPIXUS MP480はL判1枚38秒と価格を考えれば充分高速だが、PX-401Aは144秒とかなり遅くなっている。上位機種のEP-901A/801Aでは14秒なので、PIXUS MP480で1枚印刷する間に上位機種では2.7枚、PX-401Aに至っては1枚印刷する間に上位機種では10枚以上印刷できる。印刷枚数が多いという人は気になるかもしれない。また両機種とも背面給紙のみとなり、PX-401Aは名刺・カードサイズには対応しない。顔を認識し自動的に明るさを補正したり、色かぶりを補正する機能は両機種とも備えるが、パソコンからの印刷時のみ使用でき、ダイレクト印刷時は使用できなくなっているのも上位機種との違いである。 スキャナはPX-401Aが600dpi、PIXUS MP480が2400dpiの解像度となっている。PIXUS MP480の方が有利であることは確かだが、紙原稿なら600dpiでもそれほど問題ないためPX-401Aも使えないレベルではない。また両機種ともCIS方式なので、分厚い本のとじ目のように浮いてしまう原稿は苦手である。またスキャンしたデータをメモリカードに保存する機能はPIXUS MP480のみ備えている。 ダイレクト印刷機能はPIXUS MP480のみ備えている。対応メモリカードはSDカード、メモリースティック、コンパクトフラッシュとなり、xDピクチャーカードは直接対応していないので注意が必要だ。またPictBridgeにも対応している。ただし、手書き合成機能やメモリカードのデータをUSBメモリや外付けドライブに保存したり、逆にこれらから印刷する機能、赤外線通信機能など、上位機種の備える機能が省略されている。 コピー機能は、両機種とも搭載しているが、機能には大きな差がある。PIXUS MP480は25%〜400%の間で1%刻みで拡大・縮小印刷が行えるため不満はない。コピー枚数も指定できる。ただし、写真を複数枚置いて、焼き増し風コピーを行う機能は、PIXUS MP480では省略されている。一部だけを拡大印刷する「トリミングコピー」機能や任意の箇所を消してコピーする「マスキングコピー」にも対応していないが、厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能は搭載している。また、PIXUS MP480単体でリポート用紙や方眼紙、チェックリスト、五線譜、写真入りの各種カレンダーの印刷機能も備えている。 一方のPX-401Aは液晶ディスプレイを備えていないことから、機能はかなりシンプルである。拡大縮小は等倍とオートフィットしか選ぶ事が出来ない。また、スタートボタンが3つ用意され、それぞれ「L判写真カラー」「A4普通紙モノクロ」「A4普通紙カラー」である。つまり用紙設定やモノクロ・カラーの設定項目もなく、直接目的のスタートボタンを押すことになる。もちろんこのボタンにない「B5サイズ」や「ハガキサイズ」、「A4の写真用紙」や「スーパーファイン用紙」は選べない。またこれらのボタンを押すと等倍コピーになるが、3秒以上押すとオートフィットになる。さらに、PX-401Aの前機種のPX-A601にあったLEDの数字1桁表示もなくなり、コピー枚数設定が表示できなくなったが、「L判写真カラー」を押しながら、「A4普通紙」のスタートボタンを押すことで20枚連続コピーとなる。最低限の機能は備えていると言えるが、本体にオートフィットや20枚連続コピーに関する表記がないため、使い勝手は悪いと言える。 操作パネルは、PX-401Aは先程の3つのスタートボタンの他、電源ボタンとストップボタン、エラーとインク残量の警告ランプしかないため非常にシンプルだ。等倍コピー1枚などの場合はダイレクトにボタンがあるため迷うことなく操作できる反面、少し特殊な操作になるとボタンの同時押しなどが発生してしまい不便である。一方のPIXUS MP480は本体上面の右側に液晶ディスプレイと操作ボタンを配置する。液晶パネルは1.8型と小さいが角度調整可能も可能である。操作ボタンは上位機種のような「イージースクロールホイール」ではなく、ボタン操作となるため操作性は落ちる。しかし、PX-401Aと比べると液晶ディスプレイがあるだけで大きな違いがある。 接続インターフェースはPIXUS MP480がUSB2.0、PX-401AがUSB1.1となる。本体サイズは、PX-401Aの方が横幅が10mm、奥行きが4mm小さく、高さが31mm大きいが、両機種ともコンパクトであるため、設置しやすいと言えるだろう。 この2機種は比較的性格が異なる機種だが、一般的な用途ならばPIXUS MP480がオススメである。印刷画質も速度もそれほど悪くなく、染料インクが使用でき、メモリカードからのダイレクト印刷やコピーも一通りの機能が揃っている。この価格を考えれば十分である。PX-401Aは全色顔料インクであるメリットは大きいものの、写真用紙への印刷時の光沢感や印刷速度、コピー機能や操作性の問題、ダイレクト印刷が出来ないなどクセが強い機種である。普通紙への印刷に特化した機種が欲しいという場合はPX-401Aを、それ以外はPIXUS MP480がオススメである。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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