高速連写対応デジカメ4機種の違いを検証する (2009年6月14日著)
カシオは最近「高速連写」を謳うデジカメを次々と発売している。「HIGH SPEED EXILM」というシリーズまで確立している。最初に発売したのは「EX-F1」という機種である。EX-F1は中型機と呼ばれるコンパクトデジカメと一眼レフデジカメの間に入るある程度大きな機種であった。その後発売された「EX-FH20」はEX-F1と同じ中型機ながら光学ズームが20倍となった。一方「EX-FC100」と「EX-FS10」はコンパクトデジカメとなり、EX-FS10に至ってはレンズの飛びでないカードサイズになっている。これら4機種は併売されているが、果たしてどのような違いがあるのだろうか。
まずは基本性能を見てみよう。
まず、本体サイズは「EX-F1」「EX-FH20」「EX-FC100」「EX-FS10」の順に小さくなっていく。「EX-F1」と「EX-FH20」を比べた場合、厚みがかなり減っている。「EX-FH20」と「EX-FC100」では、厚みもさることながら縦横も小さくなりかなりコンパクトになった印象である。「EX-FC100」と「EX-FS10」の比較では厚みがさらに減っている。またサイズが小さくなるにつれて重量も下がり、「EX-F1」と「EX-FS10」では6倍近い差がある。 画素数は初代の「EX-F1」を除いて910万画素に統一されている。最近のコンパクトデジカメでは1000万画素オーバーが珍しくない事を考えると控えめだが、910万画素もあれば十分である。また「EX-F1」の600万画素でもL判や2L判程度への印刷では全く問題がない。 ズーム倍率は大型の「EX-F1」と「EX-FH20」が高く12倍又は20倍である一方、コンパクトな2機種は低めで、「EX-FC100」は5倍、「EX-FS10」は3倍となる。この辺りが機種選択の一つの鍵となりそうである。 液晶ディスプレイはサイズが2.5〜3.0型と違いがあるものの、画素数は23万画素で統一されている。画素数が多いため高詳細な表示が可能で問題はない。さらに大型の「EX-F1」と「EX-FH20」には電子ビューファインダーも内蔵される。 内蔵メモリも31.9MBで統一、記録メディアもSDカードで統一となる。一方バッテリ駆動枚数は、本体の大きさに比例している。「EX-F1」「EX-FH20」「EX-FC100」の3機種は問題ないレベルだが、「EX-FS10」の160枚というのはかなり少ない。旅行などには予備のバッテリが必要になる場合もあるかもしれない。また、「EX-F1」、「EX-FC100」、「EX-FS10」が専用の充電池で動作するのに対して、「EX-FH20」は単三型のアルカリ乾電池かニッケル水素電池4本で動作する。「EX-FH20」にはアルカリ乾電池4本しか付属していないため、毎回乾電池を購入するか、単三型充電池と充電器を別途用意する必要がある。一方で旅行先などで急に電源が切れても、単三型アルカリ乾電池ならコンビニでも手に入るため、急な電池切れには対応しやすい。
写真撮影に関するスペックとしては、画素数は初代の「EX-F1」のみ600万画素、その他は910万画素となる。また、いずれも撮像素子にはCMOSを採用している。おもしろいのは撮像素子のサイズである。EX-F1以外の3機種は画素数が同等であるのは前述の通りであるが、撮像素子のサイズも同じなのである。つまり、同じ映像素子を使ってサイズの異なる3機種を作ったという感じだ。しかしコンパクトデジカメにも入るようにするためか、撮像素子サイズは1/2.3型と小さめである。「EX-FC100」と「EX-FS10」のサイズならば納得であろうが、「EX-FH20」は本体サイズが大きいだけに、もう少し大きめのCMOSを使って欲しい所だ。一方EX-F1は1/1.8型と比較的大きめのCMOSを採用する。撮像素子はサイズが小さくなると1画素のサイズが小さくなり光に対する感度が弱くなりノイズが発生しやすくなると言われている。それに加えて同じ撮像素子サイズでも画素数が多くなると、1画素のサイズは小さくなる。つまり、EX-F1は他の3機種より撮像素子が大きい上に画素数も少ないため、2重にノイズは少なくなると言え、画質面では有利と言える。ただし、一眼デジカメと比べれば映像素子はかなり小さいので、一眼デジカメほどではない。 F値は中型機の「EX-F1」と「EX-FH20」は広角側でF2.7と比較的明るいため、暗い場面でも強いと言える。一方コンパクト機の「EX-FC100」と「EX-FS10」はそれより暗く、広角側でF3.6/F3.9となっている。また「EX-FS10」は望遠側でF5.4となっており、コンパクトにするための影響が出ていると言えそうだ。 光学ズーム倍率は、「EX-F1」が12倍、「EX-FH20」が20倍、「EX-FC100」が5倍、「EX-FS10」が3倍となっている点は前述の通りだ。しかし、もう少し詳しく35mm換算の焦点距離で見てみるとおもしろいことが分かる。「EX-F1」が36〜432mm、「EX-FH20」が26〜520mm、「EX-FC100」が37〜185mm、「EX-FS10」が38〜114mmである。この中では「EX-FH20」だけが広角側に強く、部屋や飲食店の中などの建物の中や乗り物の中でも広く撮れる。一方、「EX-FH20」は20倍ズームと言ってもその広角側の値から20倍ズームなので、実際に他機種のズームを20倍にしたよりは弱くなる。35mmを1倍に換算して計算すると、「EX-F1」は1.03倍〜12.34倍、「EX-FH20」が0.74倍〜14.85倍、「EX-FC100」が1.06倍〜5.29倍、「EX-FS10」が1.09倍〜3.26倍となる。これを見ると「EX-FH20」が広角側からズーム側まで全てに優れており、使い勝手は良さそうだ。 撮影可能最短距離は「EX-FH20」のみスーパーマクロを備え、1cmまで近づける。他機種はマクロ機能となり、3cm〜10cmとなる。とくに「EX-FS10」は10cmとなっており、花や食事など近くで撮りたい場合には注意が必要になる。「EX-FS10」は薄型化するためか、広角側、ズーム側、撮影可能最短距離の全てが最近の機種の中では弱い。 シャッタースピードはオートの設定では1〜1/2000秒から1〜1/1000秒と大きな差はない。一方マニュアル設定にすると、中型機の「EX-F1」と「EX-FH20」は60秒又は30秒までの長時間露光が行え、暗い場所での幻想的な写真を撮ったり、ノイズの少ない明るい写真を撮ることも出来るだろう。また「EX-F1」は1/40000秒という高速シャッターも切れる。一方、コンパクト機の「EX-FC100」と「EX-FS10」は夜景モードにすることで4秒までのシャッタースピードを伸ばせるが、他の2機種と比べると弱い。 次に手ぶれ防止機能である。ISO感度は全機種ともISO1600まで上げることが出来るため、暗い所での動く被写体のブレを防ぐことが出来る。一方、CMOSシフト方式の光学式手ぶれ補正は「EX-FS10」以外の3機種が備えている。光学式手ぶれ補正は被写体ブレは防ぐことは出来ないが、手ぶれなどの写真全体のブレをある程度防いでくれる機能だ。ISO感度は上げるとノイズが発生するが、光学式手ぶれ補正は画質の低下が無く補正できる。一般的には動かない被写体や風景では光学式手ぶれ補正のみを使い綺麗な画質で、被写体が動く場合はノイズが載ってしまうがISO感度を上げる。しかし、「EX-FS10」では光学式手ぶれ補正がないので、被写体が動かない場合でもISO感度を上げて手ぶれを抑える事になりノイズが載ってしまう(またはカメラが動かない方法を考える)。最近では比較的安価な機種でも光学式手ぶれ補正を搭載しているため、「EX-FS10」は残念である。
では、今回の4機種の特徴の1つである連写性能を確認してみよう。まず注意したいのは、「EX-F1」以外の3機種は、最高画素数で高速連写が出来ないことである。「EX-FH20」は30枚/秒なら800万画素、40枚/秒なら700万画素に落ちる。また「EX-FC100」と「EX-FS10」は30枚/秒で600万画素になる。つまり、カメラ自体はEX-F1が600万画素、その他の機種は910万画素であるが、高速連写で考えると、「EX-FH20」が700万画素、それ以外が600万画素で同一となることから、画素数の違いは少ないと言えるのだ。逆に連写速度は、「EX-F1」は60枚/秒、「EX-FH20」は40枚/秒、「EX-FC100」と「EX-FS10」は30枚/秒となり、小型の機種ほど連写速度は遅くなる。連写スピードも選ぶ事が出来るが、機種により選べる設定が異なる。また「EX-F1」はレンズの周囲のファンクションリングを回すことで、枚数を素早く変えることが出来るメリットがある。 連写可能な枚数は、各機種とも最高連写速度で1秒間連写した時の枚数である。つまり「EX-F1」は60枚、「EX-FH20」は40枚、「EX-FC100」と「EX-FS10」は30枚である。つまりEX-FH20で、40枚/秒で撮影すると1秒間、10枚/秒で撮影すると4秒間、5秒/枚で撮影すると8秒間撮影できるわけである。 また「EX-F1」と「EX-FH20」はフラッシュを光らせながらの連写が可能である。「EX-F1」は7枚/秒まではフラッシュを光らせて連写が可能であり、それ以上の速度の場合でもLEDライトを点灯させて連写が可能である。LEDライトまで搭載することで、どんな場面でもできるだけ良い状態で連写ができるよう工夫されているわけである。「EX-FH20」は5枚/秒で10枚までと制限はあるもののフラッシュ連写が可能で、フラッシュ連写ができない「EX-FC100」と「EX-FS10」に対してメリットとなっている。 また、シャッターボタンを半押しすることで仮撮影をしておき、全押しした時点で指定した枚数さかのぼって記録することが可能な「パスト連写」機能を備えている。決定的瞬間を撮ろうとする時に、瞬間に気づいてからシャッターを押しても一瞬のタイムラグにより撮り逃すため、この機能が便利である。連写可能枚数は、通常の連写の時と同じである。またシャッターボタンを全押しした時点で何枚さかのぼるかも指定が可能である。4機種ともパスト連写機能は備えているが、その内容には差がある。「EX-FC100」と「EX-FS10」は3、5、10、15、20、25枚前から選択となっているため、連写可能の30枚全てさかのぼることは出来ず、最大でもシャッターボタンを全押しした25枚前までしかさかのぼれない。例えば25枚前の設定の場合、シャッターボタンを全押しした時点より25枚前と5枚後を撮影する形となる。「EX-FH20」は1〜39枚前が設定できるため、枚数の自由度もある他、シャッターボタンを全押しした時の1枚とその前39枚を撮影できる。「EX-F1」は1〜60枚前で設定が出来るため、シャッターボタンを全押ししたより完全に前の60枚を撮影できる。 その他、連写機能を活用した機能「ハイスピード手ぶれ補正」「ムーブアウト連写」「ムーブイン連写」は4機種とも備えている。「ハイスピード手ぶれ補正」は高速連写した複数の画像を、位置あわせしながら合成する事で、ブレを抑えた写真が撮影できる機能である。「ムーブアウト連写」は被写体がフレームアウトする瞬間に、その前後を自動的に高速連写する機能であり、「ムーブイン連写」は逆に被写体がフレームインする瞬間に、その前後を自動的に高速連写する機能である。前者は鳥が飛び立つ瞬間など、後者はゴールインの瞬間などを撮影しているのに向いているという。さらに、被写体の一連の動作の軌跡を一枚の写真の中に写し込む「マルチモーション」機能も「EX-F1」を除く3機種が搭載しており、いろいろと楽しめる。
もう一つの特徴である動画撮影機能を見てみよう。動画は通常のフレームレートだがハイビジョンで撮影できるモードと、解像度は低くなるが高いフレームレートのハイスピード動画を撮影できるモードを備えている。 まずハイビジョン動画であるが、「EX-F1」のみ「フル」ハイビジョンの1920×1080ドットの動画が撮影できる。それ以外の機種は最大が1280×720ドットのハイビジョンとなる。最新のデジタルビデオカメラ並の高画質で撮影するなら「EX-F1」となる。また「EX-F1」も1280×720ドットを選べるほか、全機種スタンダード画質の640×480ドットでの撮影も可能である。 ではハイスピードムービーの方を見てみよう。こちらも「EX-F1」が優れている。「EX-F1」の最大のフレームレートが1200fpsなのに対して、それ以外の3機種は1000fpsとなるだけでなく、解像度も異なる。例えば「EX-F1」は300fpsの場合512×384ドットで撮影できるのに対して、それ以外の3機種は210fpsと「EX-F1」より低いにもかかわらず480×360ドットとドット数は12%少なくなる。最高のフレームレートでも「EX-F1」が336×96ドットなのに対して、その他は224×56ドットと約3分の1になってしまう。ハイスピード動画も綺麗な画質で撮りたいなら「EX-F1」となる。特に、高フレームレートだと差が大きくなるため注意が必要である。 最大撮影時間は、「EX-FS10」以外の3機種は1回4GBまでであるのに対して、「EX-FS10」は1回10分までとなっている。なぜか「EX-FS10」以外はファイルサイズ制限、「EX-FS10」のみ時間制限となっている。ちなみに4GBで撮影できる時間を見てみよう。「EX-F1」の場合、フルハイビジョン動画なら36分44秒、1200fpsのハイスピード動画なら29分12秒となり、「EX-FH20」と「EX-FC100」の場合、ハイビジョン動画なら17分28秒、1000fpsのハイスピード動画なら20分56秒となる。3機種とも「EX-FS10」の10分よりは長く撮影ができる事になる。ちなみに「EX-F1」の方が高解像度、高フレームレートであるにもかかわらず録画時間が長いのは、「EX-F1」がH.264/AVC準拠のMOV形式であるのに対して、他の3機種はMotion JPEG準拠のAVI形式となっており、ファイル形式が異なる事がある。「EX-F1」は4機種中唯一フルハイビジョンで撮影が出来、ハイスピード動画もフレームレート・解像度共に高く、録画時間も長いという事になり、他の3機種に対して圧倒的に機能が優れている。動画撮影を重視するなら「EX-F1」がオススメとなる。また「EX-F1」のみマイクがステレオになっている点もメリットである。 4機種ともパストムービー機能を備えている。撮影ボタンを押す数秒前から撮影が出来るため、撮影開始のタイミングを逃さないようになっている。 このように高速連写対応デジカメとひとくくりに言っても、4機種には様々な差がある事が判る。また初代の高速連写対応デジカメである「EX-F1」は画素数こそ新機種の3機種に劣るが、それ以外の高速連写の速度や機能、フルハイビジョン動画の撮影、ハイスピード動画のフレームレートと画素数など、むしろ他の3機種より勝っている部分も多い。高速連写やハイスピード動画を本格的に使うなら、「EX-F1」がオススメである。一方、高速連写やハイスピード動画も楽しみたいが、本体が大きいのはちょっとと言う人には、「EX-FC100」がオススメである。一通りの高速連写機能とハイスピード動画機能を持ち、光学ズームも5倍、光学式手ぶれ補正もあり、機能面ではさほど劣らない。さらに手軽に持ち運びたいなら「EX-FS10」もいけるが、光学式手ぶれ補正がないことに加えて、動画の録画時間やズーム倍率、マクロ時の接写可能距離、バッテリ撮影枚数など他機種と比べて様々な点で制限があるだけでなく、一般的なデジカメと比べても劣る部分もある点は注意が必要だ。一方「EX-F1」では大きすぎるが、「EX-FC100」よりはもう少し高性能な方が良いという人や、高倍率の光学ズームに惹かれるなら、「EX-FH20」がオススメである。 (H.Intel) 今回の関連メーカー カシオ http://casio.jp/ カシオデジタルカメラオフィシャルWEBサイト http://dc.casio.jp/
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