小ネタ集
2012年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2012年8月19日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


3万円台のA3単機能プリンタ
 
 A3対応の単機能プリンタで3万円台中盤というと、購入しやすい価格帯と言えるだろう。エプソンのEP-4004とキャノンのPIXUS iX7000がこの価格帯の製品となる。2機種とも上位機種とは異なる本体デザインだが、EP-4004は下位機種PX-1004の色違いとも言える本体なのに対して、PIXUS iX7000は前面給紙も行える大柄な機種であり、見た目からして大きく異なる。EP-4004は34,400円、PIXUS iX7000は32,600円と価格はほぼ同じであるが、どのような違いがあるのだろうか。

メーカ
エプソン
キャノン
品番
EP-4004
PIXUS iX7000
製品画像
予想実売価格
34,400円
32,600円
プリンタ部
インク
色数
6色
5色+クリア
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンダ
ブラック
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
クリア
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料
(LUCIA)
ノズル数
540ノズル
3584ノズル
全色:各90ノズル
C/M:各1024ノズル
Y/染料Bk/顔料Bk:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
カード〜A3ノビ
名刺〜A3ノビ
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(普通紙以外)
前面
○(カセット・普通紙のみ250枚・A3まで)
○(手差し・普通紙のみ10枚)
その他
自動両面印刷
○(ハガキ非対応)
特殊機能
CD/DCD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
パソコンから印刷時のみ
特定インク切れ時印刷
PictBridge
メーカー公称印刷速度
L判写真(縁なし)
37秒
38秒
A4普通紙
カラー
N/A
8.1ipm
モノクロ
N/A
10.2ipm
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
616×322×215mm
647×519×260mm
重量
11.8kg
19.8kg

 まずはインクを見てみよう。EP-4004はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダインクを加えた6色構成となり、最小インクドロップサイズは1.5plである。複合機やA4単機能プリンタの最上位機種と同等の画質であるため、非常に高画質である。写真印刷を行っても、粒状感などはほとんど感じられないだろう。インクは全色染料の「つよインク200」であり、アルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年と耐保存性は高い。また、染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。一方で普通紙などへ印刷ではシャープさが弱くなる他、耐水性は弱いのは染料インクの宿命と言える。 一方、PIXUS iX7000はインクは5色構成となる。構成はフォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンダ、イエローとなり、ブラックは2種類搭載されるが、写真時はフォトブラック、普通紙モノクロ印刷時はマットブラックと使い分けられるため実質4色印刷となる。また最小インクドロップサイズは2plとなるため、色数と最小インクドロップサイズの両方でEP-4004より劣る。EP-4004と比べると若干粒状感が出てしまうが、最小インクドロップサイズが2plというのは十分に小さいため、比較すればわかる程度である。インク自体は、全色顔料のLUCIAインクを使用する。そのため、普通紙印刷では染料インクに比べシャープな印刷が行える点はメリットだ。普通紙への印刷画質は高く、場合によってはEP-4004より綺麗に見える場合もあるだろう。さらに水に強いという特徴もあるため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないという特徴がある。これらの特徴は普通紙への印刷だけでなく年賀状への印刷でも重宝するだろう。そして、PIXUS iX7000では、顔料インクの得意とする普通紙印刷画質をさらに高めるためにクリアインクと「PgR」テクノロジーを搭載している。これは、インクの染み込みやすい普通紙の表面全体にこのクリアインクを塗布することで、顔料インクを用紙に染み込ませず表面近くに定着させるという技術である。これにより、顔料インクの特徴であるシャープで発色の良さがさらに際だつこととなる。雰囲気としては、普通紙でもファイン紙のようなコーティングをした用紙のような印刷が可能になるわけである。クリアインクは用紙全体に塗布するため、通常のインクを搭載する所とは別の所の本体左奥に、かなり大型のものを搭載する。塗布もプリントヘッドを左右に動かす方式ではなく、印刷前に塗布用ローラーを通過させ、そこで塗布する形となっている。一方でクリアインクの塗布は用紙設定を普通紙以外に設定すると一切行われないため、写真用紙への印刷では光沢感が失われてしまい、ポストカードのようなくすんだ光沢になってしまう点は従来の顔料インクと変わらない。
 染料インクと6色インク、極小のインクドロップサイズにより写真印刷が最高に美しいEP-4004と、元々普通紙への高画質・高耐水の印刷が行える顔料インクに、さらにクリアインクの採用により、普通紙への印刷画質を追求したPIXUS iX7000という正反対の2機種と言えよう。
 対応する用紙は、EP-4004がカードサイズからA3ノビ、PIXUS iX7000が名刺サイズからA3ノビとなっており、両機種とも最大サイズがA3ノビと言うだけでなく、L判より小さなサイズに対応する点でも同等だ。給紙に関しては、EP-4004が背面のみ、PIXUS iX7000が背面給紙と前面給紙カセット、前面手差し給紙となる。EP-4004は背面給紙のみとシンプルで、セットできる枚数もA4普通紙が100枚と特に多くはないが、背面給紙・前面排紙であるため用紙が内部で大きく曲げられることがなく、厚紙への印刷も安心で、写真用紙などにもローラー跡が強く付く心配もない。またセットも簡単だ。一方、PIXUS iX7000も背面給紙が可能だが、注意点として背面には普通紙をセットすることができない。代わりに普通紙は、前面給紙カセットにセットすることになる。前面給紙カセットは最大A3ノビ用紙までセットできるだけでなく、普通紙で250枚という大量の用紙をセット可能である点は便利だ。ただし、前面給紙カセットはハガキや写真用紙には対応せず普通紙のみである。よって前面給紙カセットには常に普通紙をセットしておき、背面は写真用紙をセットしておいたり、封筒やハガキなどに印刷するために空けておくという事になるだろう。使い分けが可能なのは便利だし、背面給紙があるため、厚紙やラベル用紙や封筒などへの対応も安心だが、セットできる用紙の制限は多く、両方にA3普通紙をセットして、給紙枚数を増やすことができないのは残念だ。PIXUS iX7000ではこれ以外に、排紙トレイ部分から手差しによる普通紙の給紙にも対応する。A3用紙までで最大10枚となるが、例えば前面給紙カセットにA3用紙をセットしている状態で、数枚のA4原稿の印刷を行う必要が出たといった状況でも、前面給紙カセットの用紙を入れ替えずに対応できるのが非常に便利である。ただし、前面給紙カセットは、A3などの大きな用紙をセットすると、本体より前方に大きく飛び出す点は注意が必要だ。実際に使用するときは排紙トレイを開けるため、使用時には気にならないが、使用しないときでも設置面積が必要だ。また、用紙サイズに合わせて長さは短くできる物の、本体に完全に収まる所までは短くならない。給紙に関する部分では、セット枚数は少ないがシンプルなEP-4004と、複雑で前方に飛び出すが、様々な用紙を同時にセット可能なPIXUS iX7000といった構図である。
 自動両面印刷機能はPIXUS iX7000のみ対応する。前面給紙カセット対応と併せて、家庭向けA3プリンタでは非常に珍しい機能だ。ただし、ハガキには対応していないため、年賀状の通信面と宛名面を自動で印刷させることはできない。一方CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEP-4004のみ対応である。手軽に写真印刷が行えるよう、写真の自動補正機能としてEP-4004は「オートフォトファイン!EX」を、PIXUS iX7000は「自動写真補正II」を備えている。「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる機能である。一方「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる機能である。つまり、両機種とも高精度で自動補正をする機能を搭載している。
 EP-4004は1.5plと最小インクドロップサイズが非常に小さが、5つのサイズのインク滴を打ち分ける「Advanced-MSDT」に対応しており、必要に応じて大きいサイズのインクを打つことでL判縁なしで37秒とA3プリンタとしては比較的高速だ。ノズル数が全色90ノズルと、複合機の上位機種などと比べると半分しかないため、それらと比べると遅く、また同じノズル数、最小インクドロップサイズの複合機EP-704AやA4単機能機EP-302の22秒と比べても遅いが、問題ないレベルだろう。一方のPIXUS iX7000も2plと最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることでL判縁なしで38秒と、EP-4004とほぼ同じ速度である。インク構成が写真印刷に向いているかどうかはさておき、写真印刷速度ではEP-4004とPIXUS iX7000は互角である。一方A4普通紙への文書印刷速度だが、EP-4004は公表されておらず、PIXUS iX7000のみA4普通紙カラー原稿で8.1ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロ原稿で10.2ipmとなっている。この速度は1万円台中盤の複合機「PIXUS MG5330」よりはやや遅く、1万円を切る複合機「PIXUS MG4130」よりは高速だ。非常に高速という訳ではないが、ストレス無く使用できる速度だ。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えてネットワーク接続が可能だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には、家庭内のどのパソコンからでも印刷できるため非常に便利だろう。ただしEP-4004は無線LANのみ、PIXUS iX7000は有線LANのみの対応となる点は注意が必要だ。EP-4004の無線LANはIEEE802.11nに対応しているので、無線LAN接続時でもストレス無く使用できるが、無線LANルータとEP-4004の距離が離れている場合は接続が不安定になる可能性があり、一方PIXUS iX7000は安定して接続出来るがLANケーブルが必要なので、ケーブルレスで接続という事が出来ない。それぞれ一長一短がある。
 本体サイズは、EP-4004が616×322×215mm、PIXUS iX7000は647×519×260mmである。縦・横・高さ全てがEP-4004の方が小さい事になるため、EP-4004の方が設置しやすい。EP-4004は下位機種のPX-1004と同サイズであるため、A3プリンタとしてはコンパクトな部類だ。一方のPIXUS iX7000は前面給紙や自動両面印刷機能を備えている事もあって、かなり巨大だ。店頭で見ても、かなりの威圧感である。PIXUS iX7000は特に、購入前に一度店頭でサイズを確認した方が良いかもしれない。
 この2機種を見ると、写真印刷が最高レベルの画質になるようなインク構成や最小インクドロップサイズになっているが使い勝手の面ではシンプルなEP-4004と、普通紙への印刷画質を普通の顔料インクの機種よりもさらに高め給紙に関しても便利になっているPIXUS iX7000という正反対の機種であることが分かる。この2機種から選ぶなら、EP-4004が一般向けだろう。写真印刷が美しく、普通紙へも十分高画質に印刷でき、本体もコンパクトだ。様々な用途に高いレベルで満足のいく機種であり、一般家庭に置いて写真印刷から年賀状印刷、文書印刷まで様々な場面で使える機種である。一方のPIXUS iX7000はインク構成や本体サイズにクセがあるので、この普通紙への高画質印刷や、A3プリンタながら前面給紙と自動両面印刷に対応した点が気に入ったなら、そしれ本体の大きさが問題ない場合はPIXUS iX7000がオススメと言える。ただ、顔料インクや染料インクという事だけで選んでいるなら、これよりさらに下の価格帯にはエプソンからは逆に顔料インクのPX-1200とPX-1004が、キャノンからも逆に染料インクのPIXUS iX6530がラインナップされているので、そちらも一緒に検証してはいかがだろうか。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-4004
PIXUS iX7000