小ネタ集
2015年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2015年12月09日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


コンパクトプリンタ
 
 コンパクトプリンタといっても、大きく見ると違いがある。エプソンのPX-S05とキャノンのPIXUS iP110はA4サイズまで印刷が可能で、バッテリ駆動が可能という製品だ。つまり、一般的なA4プリンタを持ち運べるようにした機種と言える。一方エプソンのPF-70は最大サイズがA5までであり、代わりに液晶ディスプレイとメモリカードスロットを搭載している。つまりL版や2L版の写真のダイレクト印刷を行うのがメインのプリンタと言える。そして液晶を大型化しキーボードをつけ、年賀状の作成が可能になったのがエプソンPF-81である。つまりA4印刷まで行うPX-S05とPXISU iP110、写真やはがき印刷用のPF-70とPF-81という構図だ。価格もPX-S05が27,980円、PIXUS iP110が24,200円、PF-70が19,980円、PF-81が54,980円となり、価格もばらつきがある。それぞれ、どういった用途に向いているのか見ていこう。

メーカ
エプソン
エプソン
エプソン
キャノン
品番
PX-S05
PF-81
PF-70
PIXUS iP110
製品画像

実売価格(メーカーWeb/税込み)
27,980円
54,980円
19,980円
24,200円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
4色
5色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成

カラー3色一体
全色一体
全色一体
顔料黒
染料黒&カラー3色一体
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
染料
(つよインク200)
染料
(つよインク200)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
ノズル数
357ノズル
720ノズル
720ノズル
1856ノズル
カラー:各59ノズル
黒:180ノズル
全色:各180ノズル
全色:各180ノズル
C/M:各512ノズル
Y/染料BK:各256ノズル
顔料BK:320ノズル
最小インクドロップサイズ
3pl
2pl(Advanced-MSDT)
2pl(Advanced-MSDT)
1pl
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
5760×1440dpi
9600×2400dpi
給紙・排紙関連
対応用紙サイズ
名刺〜A4
フチなし印刷はL判/KG/ハガキ/ハイビジョン/名刺のみ
カード・名刺〜A5・2L版
カード・名刺〜A5・2L版
(0.6mm厚対応)/60mm幅ロール紙
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(20枚・はがき5枚)
○(A5普通紙50枚・はがき20枚)
○(A5普通紙50枚・はがき20枚)
○(50枚・はがき20枚)
前面
その他
○(60mm幅ロール紙)
自動両面印刷
用紙種類・サイズ登録
○(用紙差し込み連動)
○(用紙差し込み連動)
排紙トレイ自動開閉
自動電源オン/オフ
−/○
○/○
○/○
−/−
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(カラー・モノクロの一方が切れた場合にもう一方で印刷可)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
63秒
30秒
30秒
44秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
4.0ipm(AC電源)
2.0ipm(バッテリ)
N/A
N/A
5.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
7.0ipm(AC電源)
3.5ipm(バッテリ)
N/A
N/A
9.0ipm
スキャナ部
読み取り解像度
センサータイプ
ADF
スキャンデーターのメモリカード保存
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD
SD
PCからドライブとして利用
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリへ保存
−/−/−
○(外部機器共有対応)/○/○
○(外部機器共有対応)/○/○
−/−/−
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリから印刷
−/−/−
○/○/○
○/○/○
−/−/−
手書き合成シート
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 7.0以降)
Android 4.0以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 7.0以降)
Android 4.0以降
(USB接続)
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 7.0以降)
Android 4.0以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 7.0以降)
Android 2.3.3以降
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
コピー部
倍率指定/自動変倍/オートフィット
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
2アップ/4アップ
−/−
−/−
−/−
−/−
バラエティコピー
はがき作成部
はがき作成機能
○(通信面/宛名面)
内蔵デザイン
テンプレート:1,500種
パーツ:3,535種
記憶件数
通信面:30件
宛名:1000件
FAX部
受信ファックス最大保存ページ数
データ保持(電源オフ/停電)
−/−
−/−
−/−
−/−
ワンタッチ/短縮ダイヤル
−/−
−/−
−/−
−/−
グループダイヤル/順次同報送信
−/−
−/−
−/−
−/−
自動リダイヤル
PCファクス
液晶ディスプレイ
1.44型
9.0型(角度調整可)
タッチパネル
縦長ワイド
2.7型(角度調整可)
操作パネル
ボタン式
ワイヤレスキーボード・タッチパネル
ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(アクセスポイントモード対応)
有線LAN
電源
AC電源
バッテリ
USB(1.5A未満は充電)
AC電源
AC電源
AC電源
バッテリ
バッテリ
バッテリ駆動
○(内蔵)
○(オプション)
印刷可能枚数
100枚(モノクロ)
50枚(カラー)
240枚(Wi-Fi)
290枚(USB)
充電時間
2.5時間(AC電源/USB 1.5A)
10時間(USB 0.5A)
3時間
外形寸法(横×奥×高)
309×154×61mm
187×278×100mm(液晶収納時)
187×278×338mm(液晶スタンド時)
249×176×85mm
322×185×62mm
重量
1.6kg
2.6kg
1.9kg
2.0kg
 

 まずはプリンタ部から見ていこう。PX-S05は4色インク構成となる。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色である。全色顔料インクを採用するため、普通紙への印刷では文字が滲んだように太くなることもなくくっきりしており、また白抜き文字などがつぶれることもなく、画像などもメリハリが出るのが特徴だ。そのため、普通紙への印刷画質はかなり高いと言える。また、耐水性も高くぬれた手で触ったり、マーカーを引いてもにじまないというメリットもある。反面、写真印刷は苦手で、写真用紙に印刷しても光沢感が薄くなり、ポストカードのような半光沢になってしまう他、発色もそれほどよくない。また、最小インクドロップサイズが3plと比較的大きめで、インクも4色構成であるため、粒状感がある程度感じられ、写真印刷をうたうプリンタと比べると画質面では劣る。とはいえ、細かく見なければ十分に写真印刷が行えるレベルではある。ちなみに、インクは「つよインク200X」でありアルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年である。光沢感が薄くなることさえ気にならなければ、写真を印刷した際の色あせなどの問題はクリアしている。とはいえ、やはり普通紙印刷主体のインク構成と言えるだろう。
 一方、PF-81とPF-70は同じく4色構成だが、写真印刷や年賀状印刷をメインと考えているため染料インクを採用する。最小インクドロップサイズも2plと比較的小さめだ。複合機の上位機種の6色で1.5plと比べると劣るが、印刷結果はそれほど劣るものではない。色の薄い部分で若干粒状感を感じる程度だ。また、染料インクであるため、用紙本来の光沢感が出る他、発色も良いため、写真印刷に非常に向いていると言える。また、インクも「つよインク200」を採用しており、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となるため、耐保存性も問題ない。一方で、普通紙への印刷はPX-S05と比べると高画質ではなく、耐水性もないが、あくまで顔料インクと比べた場合であり、一般的な用途であれば問題ないレベルだ。
 最後にPIXUS iP110だが、5色インクとなっている。内訳はブラック、シアン、マゼンダ、イエローというのは他の3機種と同様だが、ブラックのみ染料インクと顔料インクの2種類を搭載している。カラーは染料インクとなる。そのため、写真印刷時は染料インクにより発色が良く、用紙本来の光沢感がでる印刷が行え、一方で普通紙への文書印刷は顔料ブラックインクによってメリハリがある印刷が行えるというわけである。普通紙印刷でメリハリがある印刷が行えるのは純粋な黒色部分だけでグレーは染料のカラーインクで表現するし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定がある点は注意が必要だが、文書の場合黒文字などが多いため、効果は高い。このように写真印刷、文書印刷の両方が綺麗に行えるインク構成となっている。最小インクドロップサイズも1plと非常に小さく、PF-81やPF-70と同じ4色印刷ながら、より粒状感の少ない写真印刷が行える。インクは「ChromaLife100」で、アルバム保存100年、耐光性30年、耐ガス性10年と他の3機種と比べると若干劣るが、十分な耐保存性となっている。最も写真が高画質なのはPIXUS iP110と言えるだろう。
 ちなみにインクカートリッジは、本体がコンパクトということもあり各色独立というわけにはいかない。PF-81とPF-70は4色一体で、4色のうちいずれかが無くなると交換となる。黒も一体になっているが、元々写真印刷や年賀状印刷がメインの機種だけに、文書印刷ほど黒に偏るということは無いだろう。それよりも、インクが無くなったら交換という簡単さを重視していると思われる。PX-S05はブラックインクが独立、カラー3色が一体となっている。PX-S05は文書印刷の可能性も大きくブラックインクだけは独立した形となっている。PIXUS iP110は顔料黒インクだけが独立しており、染料ブラックを含む染料4色が一体となる。文書印刷時は顔料ブラックを使用するため、これだけ独立し、染料ブラックを使用するのは写真やファイン紙へのカラー文書などの印刷の可能性が高く、カラーインクも一緒に使う可能性が高いため、こちらを一体型にした形となる。4機種とも各色独立では無いが、機種の使用目的に合ったカートリッジ構成になっていると言える。
 印刷速度を見てみよう。まずは写真印刷速度である。PX-S05は63秒とやや遅めだ。複合機の上位機種が13秒であることを考えると4倍以上かかる事になる。最小インクドロップサイズは大きめではあるものの、ノズル数が少なく、特にカラーインクのノズル数が少ない事が原因だろう。また、全色顔料の機種は印刷が遅い傾向にあるのも影響していると思われる。一方、染料インクを採用するPF-81とPF-70は共に30秒だ。複合機の上位機種よりは遅いが、十分実用的な速度と言える。残るPIXUS iP110は44秒とちょうど中間ぐらいの速度だ。画質的やインクの種類的には写真印刷が行える機種だけに、遅めと言える。ノズル数は1856ノズルだが、キャノンの複合機で同じインク構成のPIXUS MG5730の半分以下しか無く、さらに同機種より最小インクドロップサイズが小さいため、遅くなったと思われる。一方A4普通紙への文書印刷速度を見てみよう。A4サイズのプリントできるPX-S05とPIXUS iP110のみ、速度が公表されている。PX-S05ではカラーが4.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが7.0ipmとなっている。バッテリ駆動の場合は、それぞれ半分となる。据え置き型の顔料4色のプリンタPX-S740ではそれぞれ10ipmと19ipmであることを考えるとかなり遅めと言える。また、同じノズル数のPX-105がそれぞれ4.7ipmと9.0ipmである事を考えると、小型化のためにやや遅くなっている。一方PIXUS iP110はそれぞれ5.8ipmと9.0ipmでPX-S05よりは少し早めだが、それでも据え置き型の機種と比べると遅めだ。いずれにしても、コンパクトな機種であるため、印刷速度はある程度妥協しなければならないといえる。
 対応用紙は、PX-S05とPIXUS iP110が最大A4サイズまでとなる。最小サイズは名刺サイズであるため、手軽に名刺作成も行える。ただしPX-S05はフチなし印刷が行えるのはL判、KG、ハガキ、ハイビジョン、名刺サイズのみで、たとえばA4用紙にフチなし印刷はできない。フチなしのポスターなどを印刷しようと思う場合はPIXUS iP110しかできない点は注意が必要だ。用紙のセットはいずれも背面となる。PX-S05はA4普通紙で20枚、はがきは5枚と、据え置き型のプリンタと比べるとかなり少なめだ。携帯性を重視した結果と言える。一方PIXUS iP110はA4普通紙で50枚、はがきで20枚となり、据え置き型よりは少ないが、PX-S05よりはかなり多い。印刷枚数が多い場合はこちらの方が便利だ。このあたりも機種を選ぶ上での決め手の一つとなるだろう。一方PF-81とPF-70は写真やハガキ印刷やがメインの機種であるが、一般的なものよりやや大きめの2L版までの写真用紙に対応する。また、普通紙への印刷も可能でA5サイズまで印刷可能なので、A4の半分だが、ホームページや文書の印刷が行える。最小サイズは名刺・カードサイズなので、名刺を手軽に印刷することもできる。また、PF-70は0.6mm厚までの用紙に対応しているため、写真店に依頼した年賀状のような写真を貼り合わせたハガキや厚紙などにも対応できる。さらに、PF-70は60mm幅のロール紙を後方につけることが可能で、そうするとパノラマ写真などの印刷も行える。現状ではシール用紙しか販売されていないが、他機種には無い機能と言える。セット可能枚数はA5普通紙で50枚、はがきで20枚とPIXUS iP110並となっており、コンパクトな割には給紙枚数は多めだ。PX-S05とPF-81、PF-70は用紙登録機能を備えており、セットした用紙を登録しておくと、印刷時に設定と異なった場合に警告メッセージを表示してくれる。用紙とインクの無駄が出ないよう細かな配慮がなされている。また、PF-81はハガキの向きや裏表を検知する機能があるため、間違えてセットしてもハガキが無駄にならないような機能まで搭載されている。ちなみに背面給紙と書いたが、PF-81は形状としては背面給紙前面排紙だが、液晶ディスプレイ(後述)の関係上90度回転しており、右側給紙左側排紙という特殊な向きとなっている。
 そのほかの機能として、設定した時間で自動で電源をオフにする機能はPX-S05とPF-81、PF-70が搭載する。また、PF-81とPF-70は自動電源オン機能も搭載している。無線LAN(Wi-Fi)接続に対応しているため、スマートフォンやパソコンからのワイヤレスプリントを行う場合にわざわざPF-81やPF-70の置いてある場所まで電源を入れに来る手間が無く、自動で電源が入り、指定した時間がたつと自動で電源が切れるようになっている。

 それではプリント機能以外の部分を見てみよう。メモリカードからのダイレクトプリントはPF-81とPF-70が対応している。両機種ともSDカードのみ対応となるが最近ではSDカードに統一されてきているので問題ないとも言える。念のため、持っているデジカメのメモリカードは確認した方が良さそうだ。また、両機種ともメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、ネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。そのほか、両機種とも赤外線通信による印刷に対応しているため、従来型の携帯電話からのプリントも行えるほか、さらにPF-70はPictBridgeにも対応おり、ダイレクト印刷機能に手抜きは無い。

 スマートフォンとの連携機能も全機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらに、ドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージにアクセスし印刷することができる。さらに、PF-81とPF-70、PIXUS iP110はSNSからの印刷にも対応しており、写真をコメント付きでも印刷が可能な他、PIXUS iP110は写真共有サイトからのプリントにも対応している。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、PX-S05とPF-70は印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」機能と、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のPX-S05/PF-70で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。

 PF-81のみの機能として、はがき作成機能がある。大型のタッチパネル液晶とキーボードを搭載しており、宛名面と通信面の両方を作成できる。デザイン面ではテンプレートとして1,500種類、パーツが3,535種類が内蔵、又は付属しており、それらを組み合わせて年賀状などを作成できる。もちろんメモリカード内の写真と組み合わせることもできる。十二支すべてが内蔵されており、4月1日になると次の干支に切り替わるようになっている。そのうちテンプレート1,000種類とパーツ2283種類が内蔵されており、テンプレート500種類とパーツ1252種類はSDカードが付属している。来年以降もSDカードは発売予定であるため、内蔵のテンプレートでは気に入ったものが無い場合は購入して追加できる。また、文書は自由に書き換えられるので、オリジナルの文章を入れることもできる。画像や文書の追加もできるほかサイズも変更できるため、レイアウトの自由度は高い。作成したデザインは30件まで内蔵メモリに保存できる。一方の宛名面は、一般的なパソコン用の年賀状ソフトと同じようなもので、名前、住所などの情報の入力から、喪中設定やグループ分けも行えるなど、基本的な機能はそろっている。1000件まで内蔵メモリに保存できるほか、メモリカードやUSBメモリにバックアップをとることもできるため、買い換えた場合も引き継ぐことができる。逆に、パソコンや旧機種で作成した住所録や、スマートフォンのアドレス帳のデータをインポートすることもできるため、非常に便利だ。

 操作パネルと液晶ディスプレイを見てみよう。PX-S05は1.44型の液晶ディスプレイと操作ボタンを搭載している。液晶ディスプレイは小さいが本体サイズを考えれば仕方の無いことで、エラーメッセージやインク残量、Wi-Fiダイレクトの設定などが行えるため、有ると無いとでは大違いである。PF-81は前述のように年賀状作成機能を搭載しているため、9インチと大型の液晶を搭載しワイヤレスのキーボードが付属する。液晶ディスプレイは縦長のワイドで、ボタン部分を除いても年賀状が原寸大表示ができるため、年賀状の各パーツのサイズ調整に便利なサイズとなっている。また、ある程度の角度調整も可能である。キーボードは一般的なパソコン用キーボードをベースに「ヘルプ」や「保存」「設定」といったボタンを搭載し、カーソルキーも円形として中心に「OK」ボタン、左下に「戻る」ボタンを搭載している。文字キーの部分は一般的なQWERTY配列でテンキーもある。一方ひらがな入力は50音順で、キーボードに慣れていない人での探しやすいよう工夫されている。PF-70は2.7型の液晶ディスプレイと操作ボタンを搭載している。コンパクトモデルにしては液晶ディスプレイが大きく、角度調整も可能であるため見やすい。メモリカードからのダイレクト印刷時に、写真を選ぶのに使用するため大きい方が使いやすい。残るPIXUS iP110は液晶ディスプレイや操作パネルは備えていない。

 インタフェースは4機種ともUSB2.0に対応している他、無線LANにも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。屋外でもモバイルルータを使用している場合もあるだろう。そういった場合に複数のパソコンからでもワイヤレスでプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(PIXUS iP110はアクセスポイントモード)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。ただし、PX-S05とPF-81、PF-70は内蔵の液晶ディスプレイでWi-Fiダイレクトの設定を行うが、PIXUS iP110は液晶ディスプレイを内蔵していない。本体の「Wi-Fiボタン」を「エラーランプ」が3回点滅するまで押し続けることでアクセスポイントモードに入れるし、「リセットボタン」を「電源ランプ」が6回点滅するまで押し続けることで、A4用紙にネットワークの設定が印刷されるので、それで確認はできるが、パスワードなどの変更は、パソコンと一端ネットワーク接続を行った上で、「Canon IJ Network Tool」から設定を行う必要がある。アクセスポイントモードを搭載していないよりはマシだが、液晶ディスプレイを内蔵している場合と比べると不便である。

 本体サイズとバッテリ駆動についてみてみよう。まずは、似たコンセプトのPX-S05とPIXUS iP110である。PX-S05は309×154×61mmとかなりコンパクトで、重量も1.6kgと携帯できる重量になっている。その上、この重量でバッテリを内蔵しているため、電源の無いところでもモノクロなら100枚、カラーでも50枚の印刷が可能となる。その上、1.5A以上の出力ができるモバイルバッテリがあれば、電源供給をして動作させることができるし、パソコンのUSBポート(0.5A出力)でも充電が可能となっており、様々な方法でAC電源がとれない場所での印刷方法が提供されているのがモバイルプリンタらしい。一方のPIXUS iP110は322×185×62mmと横幅と奥行きは一回り大きく、重量も2.0kgとPX-S05と比べると400g重い。また、バッテリが別売りとなっており、取り付けた場合は322×200.7×62mmで2.26kgとさらに大きく、重くなる。価格も8,000円(メーカーWeb)と、それなりにコストもかかる。バッテリ駆動時間はWi-FI接続時で240枚、USB接続時で290枚とPX-S05と比べるとかなり多く、その割に充電時間がPX-S05の2時間半に対して3時間と変わらないのもメリットだ。またバッテリが別売りである代わりに、複数用意して取り替える事も可能だ。AC電源の無いところでの印刷枚数が多い場合に便利だ。一方充電はAC電源からのみで、USBからは充電や給電は行えない。残る2機種はバッテリ駆動は非対応だ。PF-81は液晶を完全に倒した状態では187×278×100と縦長の箱状である。一方使用時は液晶ディスプレイを起こすため、高さは338mmまで大きくなる。大型の液晶ディスプレイでしかも縦長であるため高さがあるが、設置面積はそれほどで大きくない。ちなみに、この機種のみ右から給紙し左に排紙する形状であるため、印刷時には左右にスペースが必要になる。PF-70は249×176×85mmと、高さはあるが横幅はPX-S05よりも小さく重量も1.9kgと軽い。バッテリ駆動をしないなら、持ち運びも可能だ。

 このように、モバイルプリンタと言っても、そのサイズやコンセプトはそれぞれ異なる。A4サイズまでのプリントが必要だったり、バッテリ駆動が必要ならPX-S05かPIXUS iP110から選ぶことになる。どちらもコンパクトではあるが、よりコンパクトなPX-S05がおすすめだ。バッテリ駆動を考えなくてもPX-S05の方が軽量コンパクトで、液晶ディスプレイも内蔵している。バッテリ駆動を行うなら、さらに重量とサイズの差は大きくなるほか、金額的にもPX-S05の方が安くなる。USBからの充電や給電も行える事を考えると、携帯に便利だ。ただしインクが顔料インクというのをどう考えるかである。もちろん普通紙への文書印刷ならば顔料インクのPX-S05の方が良い。しかし写真用紙などへの印刷も考えているなら染料インクを採用したPIXUS iP110の方がおすすめだ。また印刷枚数が多い場合もセット可能枚数の多いPIXUS iP110が便利だろう。携帯性を第一に考えるか、自宅に置いてコンパクトなプリンタとしても使うことを想定する性能を求めるかによって決まるだろう。残るPF-81とPF-70だが、自宅に置いて使うが写真印刷や年賀状印刷を行うだけなので、コンパクトなプリンタがほしいという人向けだ。年賀状をプリンタだけで作成したいならPF-81が、そうでないならPF-70がおすすめだ。
  

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-S05B
PX-S05W
PF-81
PF-70
PIXUS iP110