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2016年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2016年11月7日公開)
25,000円から31,000円というこのクラスは、売れ筋の価格言え、エプソン、キヤノン共に価格のわりに機能が豊富な製品を投入している。エプソンのEP-879AとキヤノンのPIXUS TS8030がそれぞれ30,980円と30,880円とほぼ同価格となっており直接のライバル製品と言える。一方キヤノンのPIXUS TS6030はこれより1ランク下がる製品で価格も25,880円となるが、エプソンに同価格の製品が無いため、同時に比較する事になる。EP-879AとPIXUS TS8030の同価格での比較、そして5,000円安価なPIXUS TS6030はどの部分で劣るのか、そして5,000円の価格差と天秤にかけてどうなのかを見ていこう。 |
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シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンタ |
染料ブラック グレー シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) |
(ChromaLife100) |
(ChromaLife100) |
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Y/GY/染料BK/顔料BK:各1024ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L・ハイビジョン以下) |
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背面:カバー連動) |
背面:カバー連動) |
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印刷部 |
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デザインペーパー・カレンダー・名刺・カード印刷 フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
定型フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
(ダイレクト接続対応) |
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プリンタ部からそれぞれ特徴があるので見ていこう。EP-879Aは6色インクで最小インクドロップサイズは1.5plであり、非常に高画質な印刷が可能だ。上位機種のようなレッドやグレーインクを搭載したものではなく、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダを搭載している。いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。一方、PIXUS TS9030も同じ6色インクだが、構成が異なる。基本4色に加えてグレーインクを搭載しており、ベースにグレーインクを使う事で色の濃い部分での粒状感が抑えられる。また、モノクロに近い原稿での階調表現が優れており、中間色が赤や青っぽいグレーになりにくいという特徴がある。最小インクドロップサイズも1plと非常に小さく、こちらも非常に高画質に印刷が可能だ。さらに、これら染料5色に加えて顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られる。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。PIXUS TS6030は5色構成で、PIXUS TS8030からグレーインクを省いたような構成だ。基本4色の染料インク+顔料ブラックインクとなる。グレーインクが無い上に、最小インクドロップサイズも2plの大きくなるため、写真画質はやや劣る。一方PIXUS TS8030と同じく顔料ブラックのメリットは受けられる。このインク構成を見ると、写真に関してはEP-879Aが6色、PIXUS TS8030が5色、PIXYS TS6030が4色での印刷となる。粒状感に関してはEP-879AとPIXUS TS8030は同等レベルだが、EP-879Aではカラーのライトインクを使用するところを、PIXUS TS8030はグレーインクをベースにする分、色の鮮やかさではEP-879Aの方が上と言える。従来から肌などの色味や立体感で優れていたが、EP-879Aでは新インクに移行して緑の表現力もアップしているため、色鮮やかな印刷が可能だ。ただPIXUS TS8030も比べなければ分からないレベルで十分に高画質だ。PIXUS TS6030も一見すると問題ないが、PIXUS TS8030よりさらに色の表現力で劣るほか、目をこらしてみると粒状感も感じるため、やや劣ると言える。とはいえこちらも単体で見れば十分高画質と言える。比べて比較すれば、EP-879A、PIXUS TS8030、PIXUS TS6030の順となるだろう。一方コピーや文書印刷と言った部分では、顔料インクを搭載するPIXUS TS8030やPIXUS TS6030に軍配が上がると言える。この2機種では最小インクドロップサイズの小さいPIXUS TS8030がより高画質と言える。しかし黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーやカラーインクを使用するし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。一方EP-879Aも、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、ドライバレベルで文書印刷画質を高めている。あくまで、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS TS8030/PIXUS TS6030との差はある程度縮まっている。 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-879AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、PIXUS TS8030はノズル数を非常に多くすることで、最小インクドロップサイズは小さくても高速化を実現している。結果、L判縁なし写真印刷で、EP-879Aが13秒、PIXUS TS8030が18秒と非常に高速になっており、枚数の多い印刷でもストレスのない速度となっている。一方、PIXUS TS6030はノズル数が少なくなっていることもあっては33秒と遅くなっている。写真や年賀状を素早く印刷したい場合はこの差は気になるだろう。 一方、普通紙への印刷速度はEP-879Aでは公表されていないため比較することはできないが、PIXUS TS8030はカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっている。一方写真印刷速度では遅かったPIXUS TS6030もカラーが10ipm、モノクロが15ipmとPIXUS TS8030と同速度となっている。文書印刷をメインに考えるなら印刷速度の差は気にならない。また、1分間にカラー原稿が10枚というのは非常に高速だと言えるだろう。 使用するインクはEP-879Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS TS8030とPIXUS TS6030は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、エプソンの3機種の方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、3機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。 印刷する上で、印刷コストも気になるはずだ。EP-879AはL判写真1枚20.6円、PIXUS TS8030が15.9円、PIXUS TS6030は15.1円となる。EP-879Aは平均的な印刷コストではあるが、PIXUS TS8030とPIXUS TS6030はかなり安いと言える。大量印刷する場合はキヤノンの2機種の方が安くつく。とはいえ、例えばEP-879AとPIXUS TS8030の差は4.7円で、100枚印刷しても470円とそれほど大きいわけではないため、これだけで機種が決定するほどではないといえる。文書の印刷コストに関してもEP-879Aは未公表だが、PIXUS TS8030が8.9円(A4カラー)でPIXUS TS6030が8.3円である。これは印刷コストを気にするビジネス向けプリンタに近い印刷コストで、かなり安いと言える。 給紙に関しては、エプソンとキヤノンで方針が異なる。EP-879Aは前面給紙を基本としており、大小2段のカセットとなっている。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がないのはメリットだ。下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までセット可能だ。また、下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、ハガキなら40枚セット可能となるため、上下段ともにハガキを入れれば合計で60枚までセットできる。もちろん連続で使用が可能となる。下段の用紙を入れ替える手間をかければより大量給紙ができる。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など二重になっている用紙への印刷も不安なほか、定型サイズでない場合前面給紙カセットのガイドをあわせにくい。そこで、簡易的ながら背面給紙も行える。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、手差し給紙給紙カバーを開けるだけで、引き出して用紙を支えるような形にはなっていない。印刷を実行して、セットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込む方式であるため、本当に1枚ずつとなる。その分コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。また、最小用紙サイズは前面給紙カセットからはL判となるが、この背面手差しを使えば名刺やカードなどのより小さな用紙にも印刷可能だ。今まで印刷できなかった厚紙や用紙サイズにも印刷できる点も便利だろう。 一方のPIXUS TS8030/PIXUS TS6030は前面給紙カセット+背面給紙となっている。EP-879Aと似ているようだが、こちらは前面が1段で、代わりに背面は手差しでは無く一般的な背面給紙となっている。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけばEP-879Aと同じような使い方となる。注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。サイズもA5〜A4サイズとなる。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。また、前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているようだが、この状態ではB5以下の用紙しかセットできない。A4用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、そうすると本体に収納した際にカセット部が数センチ前に飛び出る事となる。排紙トレイよりは前に飛び出ないため、利用時は気にならないが、一番利用されると思われるA4サイズで綺麗に収納できないのは残念と言える。一方で背面給紙は普通紙もセット可能で100枚まで、前面給紙カセットも100枚なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。ハガキは背面給紙のみで40枚となる。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい一方でデメリットもある。用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。また、用紙紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまうため、ホコリをかぶった用紙が給紙されると故障の原因になる場合がある。普通紙以外の用紙も常にセットしておくという使い方の場合、前面カセットの方が便利だと言えるだろう。なお、背面給紙からの給紙の場合でも用紙厚は0.3mmまでで、EP-879Aのような厚紙には対応しない。ちなみにPIXUS TS8030/PIXUS TS6030もL判より小さい名刺サイズに対応するため便利だ。 3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPIXUS TS8030/PIXUS TS6030の背面給紙は手前の用紙カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なおEP-879Aはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたため、電源や排紙トレイの自動化が進んでいる。EP-879AとPIXUS TS8030は印刷が実行されると自動的に電源がオンになり、排紙トレイが自動的に出てくる。また、排紙トレイに引っかかる操作パネルは自動的に少し角度が上がる。両機種とも用紙はあらかじめカセットにセットしておけることから、プリンタの前に行くことなく印刷が実行できる。その後指定した時間が経てば自動的に電源はオフになる。その際、排紙トレイは自動的に収納される。なお操作パネルは収納されない(EP-879Aもエプソンの上位機種とは異なる)。が、それでもかなりの自動化が行われているため手間がかからない。ちなみにPIXUS TS6030は自動電源オン・オフ機能は搭載している物の、排紙トレイは手動であるため、電源が自動でオンになっても排紙トレイを引き出さないと印刷はスタートしない。 その他、自動両面印刷機能は3機種とも搭載している。さらにEP-879AとPIXUS TS8030は普通紙だけでなくハガキなどにも対応しているのは、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。PIXUS TS6030は普通紙のみの対応となる。また、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能もEP-879AとPIXUS TS8030が備えている。レーベル印刷のトレイを使わない時は、EP-879Aは前面給紙カセットの裏に、PIXUS TS8030は排紙トレイの下に収納できる。写真の自動補正機能としては、EP-879Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS8030/PIXUS TS6030は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。その他、面白い点として、EP-879Aの交換式メンテナンスボックスがある。廃インクを貯めておくメンテナンスボックスが満タンになると修理交換が必要であったが、これがユーザー自身で交換できるようになったのである。ビジネス向けのプリンターでは採用例が多いこの機能だが、家庭向けでは非常に珍しい。機械的には故障していないのに修理に出さなければならないという事態を減らせる点で好感が持てる。ただし、フチなし印刷時にはみ出したインクを吸収させる吸収剤については修理交換が必要である。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はPIXUS TS8030が2400dpi(2400×4800dpi)、EP-879Aが1200dpi(1200×4800dpi)、PIXUS TS6030が1200dpi(1200×2400dpi)である。解像度に大きな差があるように見えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際写真サイズを2400dpiで取り込むと約8,400×12,000ドットとなり1億画素相当となる事から、オーバースペックとも言える。、実際に使う上での差はあまりないと言えるだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-879Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。また3機種とも原稿を取り忘れた際の警告機能が付いているのは便利だ。 ダイレクト印刷は、EP-879AとPIXUS TS8030が対応する。対応メモリカードはSDカードのみとシンプルだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンは一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、問題はないだろう。EP-879Aは加えてメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、これら3機種はネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。そのほか、赤外線通信による印刷に対応しているため従来型携帯電話からの写真印刷も簡単だ。PictBridgeは3機種とも対応しているが、EP-879AはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、USBポートを省略したPIXUS TS8030/PIXUS TS6030ではWi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。機能の豊富さではエプソンの3機種に軍配が上がると言える。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートもEP-879AとPIXUS TS8030が対応している。またPIXUS TS8030は写真やハガキだけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他、EP-879Aでは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できるフォーム印刷機能、さらにデザインペーパーやカレンダー、名刺、カード印刷を行う機能も搭載している。一方のPIXUS TS8030とPIXUS TS6030は原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能を備えている。またダイレクト印刷機能を搭載するPIXUS TS8030はカレンダー印刷機能も搭載するなど、3機種とも単体でも機能は豊富であるといえる。 スマートフォンとの連携機能も3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、3機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS8030/PIXUS TS6030は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、EP-879Aはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、PIXUS TS8030/PIXUS TS6030はスマートフォン上だけでなく、プリンタ単体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではPIXUS TS8030/PIXUS TS6030が便利だ。ちなみにNFCにも対応しているのはPIXUS TS8030のみである。Android限定にはなるが、アクセスポイントを経由せずダイレクトに接続する場合にタッチするだけで接続設定ができ、便利である。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-879Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-879Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のキヤノンの2機種はこれらの機能は搭載しない。リモートプリント機能はEP-879Aの圧勝だ。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能を搭載するEP-879AとPIXUS TS8030はレーベルコピーにも対応である。また3機種とも原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-879Aは「退色復元」、PIXUS TS8030/PIXUS TS6030では「色あせ補正」と名称は異なるが、3機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。3機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS TS8030/PIXUS TS6030では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-879Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。またコピー時には文字と写真領域を判定してそれぞれを見やすいように補正する「領域判定コピー」を行っている。一方PIXUS TS8030/PIXUS TS6030は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と「IDコピー」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 操作パネルは3機種ともタッチパネル液晶を基本とする点では同じである。いずれも、液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。液晶ディスプレイはEP-879Aが2.7型、PIXUS TS8030が4.3型、PIXUS TS6030が3.5型とサイズには大きな差がある。ただ、とりあえず2.7型あれば、ボタンの視認性はそれほど悪くはない。より大きい液晶はダイレクト印刷時の写真を大きく表示して確認できたり、写真を一覧表示した際に確認しやすい点で便利だ。前述のようにいずれもタッチパネルだが、それ以外のボタンの有無は少し異なる。EP-879Aは基本的には液晶内に表示されるが、ホームボタンとヘルプボタンは液晶の左右にタッチ式ボタンとして用意されている。その他電源ボタンは物理的なボタンとして、液晶から離れたところに配置されている。PIXUS TS8030は液晶が大きいこともあってスタートボタンなど全てのボタンが液晶内に表示される。液晶内の動きだけで操作が完了する点ではわかりやすいといえる。ただし電源ボタンだけは液晶の左側に物理ボタンが用意される。PIXUS TS6030の液晶はタッチパネルだが、PIXUS TS8030と比べると液晶が小さいと言うことで物理ボタンと併用である。液晶の左側に電源とホームと戻るボタンを、右側にカラースタート、モノクロスタート、ストップボタンを用意する。液晶内に全て表示される方がわかりやすく、暗いところでも操作しやすいため、操作性はやや落ちるが、それでも従来の最上位モデルPIXUS MG7730の操作方法と同じとも言えるため、十分使いやすい。操作性の面ではPIXUS TS8030に軍配が上がり、続いてEP-879A、PIXUS TS6030となるが、いずれもタッチパネルで角度調整可能であるため、そこまで大きな差は無いとみて良いだろう。 インタフェースは3機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンははダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も3機種共通の便利な点だ。ただし、無線LAN接続は3機種とも可能だが、有線LAN接続が可能なのはEP-879Aのみとなる。電波が届きにくいとか壁にモジュラーがあるなどの理由で有線LAN接続を使用する場合は注意が必要だ。 本体サイズを見てみよう。ほぼ同価格のEP-879AとPIXUS TS8030で比べてみると、EP-879Aが349×340×142mm、PIXUS TS8030が372×324×139mmとなる。幅はEP-879Aが、奥行きはPIXUS TS8030が、高さは同等に見える。しかし、前述のようにPIXUS TS8030はA4用紙を前面給紙カセットに入れる場合はカセットが前に飛び出るため奥行きは同等とも言える。また背面給紙を使用する場合、EP-879Aでは手差しであるため給紙するまで手支えてやれば、壁ギリギリでも使えるが、PIXUS TS8030は背面給紙が斜めに開く分、後方にスペースが必要だ。その点で見ればEP-879Aの方が実際の設置スペースは小さくて済むだろう。残るPIXUS TS6030や372×315×139mmとPIXUS TS8030の奥行きをやや小さくしたようなサイズだが、やはり前面給紙カセットが飛び出る点や、背面給紙使用する場合の後方スペースが必要なのは同じで、思いの外スペースを大きく取る事になる。サイズ面ではEP-879Aが優秀と言える。 これら3機種の中で、ほぼ同価格帯のEP-879AとPIXUS TS8030のどちらがおすすめかを考えてみよう。印刷速度や自動両面印刷、レーベル印刷といったプリンタ機能、ダイレクト印刷機能、コピー機能、スマホからの印刷機能などはかなり似ていると言える。大きな違いで言うと、インク構成があるだろう。写真がとにかく綺麗なEP-879Aと写真の画質はやや落ちる代わりに黒文字が綺麗なPIXUS TS8030だ。その他の部分でも、その方向性が垣間見える、例えばEP-879Aは前面2段給紙で2段ともL判写真用紙をセットすれば写真の大量印刷に便利な一方、PIXUS TS8030は前面+背面給紙で、共にA4普通紙をセットした場合A4文書の大量印刷に便利だ。またEP-879AはSDカードだけで無くUSBメモリや赤外線通信による写真印刷に対応するなど写真印刷機能が豊富、PIXUS TS8030は本体でクラウド上のファイルにアクセス可能など、文書印刷に便利な機能が搭載されている。もちろん両機種とも上位機種なので機能が豊富で、どちらを買っても高いレベルで満足がいくがいくはずだが、強いているなら写真印刷を重視するならEP-879A、文書印刷を重視するならPIXUS TS8030となる。またコンパクトさ重視なら前面給紙カセットが完全収納でき、後方のスペースも不要なEP-879A、本体での操作性重視なら背面給紙で用紙のセットがしやすく、液晶サイズも大きいPIXUS TS8030という選択の仕方もありだ。残るPIXUS TS6030は5,000円安いが、削減される機能と比べてその価格がどうなのかが鍵となる。PIXUS TS8030と比べると、大きく違うのは、画質、写真印刷速度、メモリカードのダイレクト印刷機能の有無、操作性となる。その他、排紙トレイの自動開閉機能の省略や、自動両面印刷機能がハガキ非対応という点も違いだ。一方、普通紙印刷速度は同等、コピーやネットワーク関連機能は同じで、給紙も同等だ。顔料ブラックも搭載し、普通紙なら自動両面印刷が可能だ。つまり、PIXUS TS8030から、写真向け機能を省き、より文書向けに特化した機種と言える。写真は印刷しないので文書印刷やコピーが主な用途だが、その用途ではレベルの高い機種が欲しいという人には、5,000円安いPIXUS TS6030がおすすめと言える。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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