2016年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2016年12月14日公開)
A3ノビのプリントとA3のスキャンに対応したFAX機能付き複合機である。キャノンに該当する機種がないため、エプソンの3機種「PX-M5041F」と「PX-M5040F」の比較となる。ほぼ同等の2機種では比較にならないため、A3プリントに対応した家庭用プリンタのEP-979A3を参考に比較した。EP-979A3に比べて本体がかなり大型で「ビジネスプリンタ」に分類されるPX-M504FとPX-M5040Fはどういった違いがあるのだろうか。 |
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シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンタ |
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(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
(つよインク200) |
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黒:800ノズル |
黒:800ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(250枚・普通紙B5以上) |
○(2L・ハイビジョン以下) |
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印刷部 |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・写真付きスケジュール帳・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
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プリンタ部を見てみよう。家庭用をうたうEP-979A3は6色インクで、最小インクドロップサイズも1.5plと小さく、かなり高画質だ。写真印刷を行ってもほぼ粒状感が無い印刷が行える。また染料インクを採用するため、写真用紙本来の光沢感がそのまま出て、また発色も良い。一方で染料インクは普通紙印刷時には用紙にしみこむためにやや滲んだようになり、メリハリが無くなる。PX-M5041F/PX-M5040Fはビジネス向けのプリンタと言うことから、この逆となる。4色インク構成で全色顔料インクを採用している。最小インクドロップサイズも2.8plとなる。写真印刷を行うと、最小インクドロップサイズが大きいので粒状感がある上、ライトシアンやライトマゼンダが無いため、薄い色の箇所での粒状感も強くなる。とはいえ、2.8plというのはそこまで大きいわけでは無く、また写真専用コンパクトプリンタPF-71が4色で2plなので、大きく劣るわけではない。問題は顔料インクを採用していることで、写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。写真印刷ができないわけではないが、画質や発色、光沢感の面で写真印刷向けとは言いがたい。一方で、普通紙への印刷時は状況が異なる。顔料インクのPX-M5041FとPX-M5040Fはにじみの少ないくっきりとした印刷が行えるメリットがある。細かな線や小さな文字、中抜き文字もつぶれず綺麗に印刷できる。さらに、PX-M5041FとPX-5040Fは新ノズル「PrecisionCore」の採用により、普通紙への印刷解像度が600dpiと高くなっている他、より色鮮やかな発色で印刷できるようになっており、普通紙への印刷時に特有の沈んだ色ではなくなっている。普通紙への印刷画質はPX-M5041F/PX-M5040FがEP-979A3を上回る。また、顔料インクは耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点も便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。この様に写真向けのEP-979A3に比べて、PX-M5041F/PX-M5040Fは文書印刷に特化したインク構成となっている。 ちなみにPX-M5041F/PX-M5040Fが採用するインクは「つよインク200X」となっており、写真を印刷した場合アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となる。EP-979A3の採用する「つよインク200」はアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となっており、耐保存性の面では染料インクの機種に引けを取らない。。 印刷速度を見てみよう。PX-M5041F/PX-5040Fではカラーが各256ノズル、黒に至っては800ノズルとノズル数が非常に多くなっている。しかしL判写真印刷速度は45秒とEP-979A3の13秒と比べるとかなり遅めだ。3つのサイズのインクを打ち分ける事で画質と速度を両立させる技術「MSDT」を搭載するものの、EP-979A3は5つのサイズのインクを打ち分ける「Advanced-MSDT」なので、この点で劣るのもあるが、EP-979A3は各色180ノズルとPX-M5041F/PX-5040Fより少ないにもかかわらず圧倒的に高速だ。原因は分からないが、同じ染料6色でノズル数が同じ機種でも昔は42秒かかっていた事から考えると、ただノズル数を増やすだけではなく、何らかの調整が必要だと思われる。その点でPX-M5041F/PX-5040Fが普通紙印刷向けに調整されており、写真印刷向けではなくなっているのでは無いかと思われる。また顔料インクを採用していることも何か影響があるかもしれない。一方、普通紙への印刷速度は、M5041F/PX-M5040FはA4普通紙カラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、ノズル数の多いモノクロ印刷に至っては18ipmとなっており、いずれもインクジェットプリンタとしては非常に高速な部類となる。EP-979A3では普通紙印刷速度が公表されていないが、ここまで高速では無いと言われており、やはりPX-M5041F/PX-M5040Fは普通紙印刷に特化した設計と言える。文書の印刷だけでなくコピーや受信したFAXの印刷がストレスのない速度で印刷ができる。 給紙に関してはEP-979A3もPX-M5041F/PX-M5040Fも前面給紙カセットとなる。特にEP-979A3は2段カセット、PX-M5041Fも2段カセットで同じかと思われるが、実際には全く異なる。EP-979A3は2段のカセットに大小があり、上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。また、EP-979A3はA3プリント対応だが、前面給紙カセットはA4までとなる。カセットは完全に本体に収納可能だ。セット可能枚数は下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までとなる。また、下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、ハガキなら40枚セット可能となるため、上下段ともにハガキを入れれば合計で60枚までセットできる。もちろん連続で使用が可能となる。ではA3用紙はどこから入れるかというと、「背面手差し」からとなる。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。印刷を実行して、セットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込む方式であるため、本当に1枚ずつとなる。 A3用紙は1枚ずつであるため、大量印刷には向かない。またA3よりやや大きいA3ノビには対応しない ちなみにこの背面手差し給紙の場合背面給紙・前面排紙と比較的直線となるため、前面給紙だと内部で大きく曲げられてしまうのが心配な厚紙やラベル用紙、封筒などの二重になっている用紙もこちらからなら安心して利用できる(前面給紙からでも使用できることにはなっている)。実際、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができるようになっている。ではPX-M5041F/PX-M5040Fはどうなっているかというと、前面給紙カセットにA3ノビの用紙までセットできる。つまりA3/A3ノビの連続印刷に対応する事になる。しかもこのカセット1段で250枚までセットできるため、EP-979A3より大量印刷が行える。A3より大きなA3ノビにも対応する。ちなみに、この前面給紙カセットA4用紙以下のサイズの場合は本体に完全収納できるが、B4やA3、A3ノビの場合は給紙カセットを伸ばす必要があり、本体から前に飛び出す形になる。排紙トレイよりは飛び出ていないので、使用時は気にならないだろうが、排紙トレイを収納した際には飛び出しが気になる場合もあるだろう。PX-M5040Fはこのカセットが1段だが、PX-M5041Fはカセットが2段となる。つまりEP-979A3の様に大小2段では無く、上下段共にA3ノビまでセットが可能な2段カセットとなる。上下共に同じサイズの用紙をセットして500枚の給紙に対応することもできるし、A3とA4の様に別のサイズをセットすることも可能だ。ただし、下段はB5サイズ以上で普通紙のみとなる。ちなみに、PX-M5041F/PX-M5040Fにも背面手差し給紙がある。A3ノビまで対応しているが、EP-979A3と違い前面給紙カセットでもA3/A3ノビに対応で、またEP-979A3と異なり0.3mm厚までの対応となるため、前面給紙ではうまくいかない穴あき用紙や滑りやすい用紙、はがれやすいシール用紙などに使う事になる。また左右のガイドを合わせれば印刷できるため、サイズが特殊な封筒などの印刷も簡単だ。また前面にA3とA4用紙をセットしていて、1枚だけB5用紙に印刷したい場合などに、入れ替えの手間無く印刷できる様になっている。 なお、写真印刷には向かないPX-M5041F/PX-M5040FもEP-979A3と同等の写真自動補正機能「オートフォトファイン!EX」に対応している。写真印刷時の自動補正機能は搭載している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。 3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。これに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたため、電源や排紙トレイの自動化が進んでいるが、この機能はEP-979A3のみ搭載している。PX-M5041F/PX-M5040Fはビジネス用と言うことに加えて、FAX機能も搭載しているため電源を入れていないと受信できないこともあり、常時電源は入れている可能性が高いためと思われる。排紙トレイの自動開閉も、堅牢性を考えると家庭向けだからこそ搭載できるのだといえる。ただし、指定した時間が経てば自動的に電源はオフになる「自動電源オフ」はPX-M5041F/PX-M5040Fも搭載している。 その他、自動両面印刷機能は3機種とも搭載しているが、EP-979A3はA3用紙が背面手差しのみ対応なので、自動両面印刷は前面給紙カセットから使えるA4までなのに対して、PX-M5041F/PX-M5040FはA3ノビまで対応している。このあたりはA3をメインで使う人には便利だろう。3機種とも普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能は家庭向けのEP-979A3のみ対応している。 最後に印刷コストだが、PX-M5041F/PX-M5040Fはビジネス用と言うことで、かなり大容量のインクカートリッジが用意されている。そのため印刷コストはかなり低めだ。L判写真で言うと、PX-M5041F/PX-M5040Fが19.2円、EP-979A3が20.6円で差は小さい様に見えるが、顔料インクの機種は写真印刷時の印刷コストが高くなる傾向にある事を考えると、それでも染料インクのEP-979A3を下回るのはたいした物だ。またA4カラー文書は7.6円、A4モノクロ文書は2.5円だが、これはインクジェットプリンターの中でもかなり安い方だ。EP-979A3は文書の印刷コストが公表されていないため比較はできないが、かなりの差になっている物と思われる。印刷コストは、大容量インクの使えるPX-M5041F/PX-M5040Fが有利だ。 続いて、スキャナ部を見てみよう。PX-M5041F/PX-M5040Fは1200dpiなのに対して、EP-979A3は4800dpiと大きな差がある。とはいえ、紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当、4800dpiで取り込むと16,800×24,000ドットで4億画素相当となる事から、逆に扱いにくい。またスキャナ解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる。なお、3機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。 それよりも大きく異なるのは、スキャナサイズだろう。EP-979A3はプリントはA3まで対応だが、スキャンはA4までとなる。それに対してPX-M5041F/PX-M5040FはA3までスキャン可能だ。A3やB4の原稿を使いたい場合はPX-M5041F/PX-M5040Fは重宝する。また、PX-M5041F/PX-M5040FにはADFが付いているのもビジネス向けならではだ。35枚までの原稿を重ねてセットすれば順に給紙してスキャンしてくれるため、複数の原稿のスキャンやコピー、FAX時に重宝する。このADFは両面スキャンにも対応している。片面をスキャンした後もう一度給紙し、裏面をスキャンするという方式でるため、倍の時間がかかるが、両面原稿でも安心だ。もちろんADFもA3に対応している。スキャンした原稿をパソコンを使わずメモリカードに保存する機能は3機種とも搭載する。JPEGとPDFに加えて、PX-M5041F/PX-M5040FではTIFF形式の保存にも対応する。 ダイレクト印刷は、PX-M5041F/PX-M5040FはSDカード/メモリースティック Duoに対応しており、EP-979A3は加えてコンパクトフラッシュにも対応する。最近では一部の一眼レフを除いて、デジタルカメラやスマートフォンはSDカード、もしくはその小型版のmicroSDになっているので、SDカードに対応していれば問題ない。さらに一昔前のSONYのデジタルカメラ用のメモリースティックDuoにも対応しているのでさらに問題ない。EP-979A3はコンパクトフラッシュにも対応するので一眼レフまで安心だ、ただしRawデータのダイレクト印刷には対応しない。インク的には写真印刷に向いていないPX-M5041F/PX-M5040Fだが、EP-979A3と同じくダイレクト印刷に対応する。しかし、EP-979A3が搭載している、本体で色補正を行い、それを別名で保存する機能や、フレームを付ける機能などは搭載していない。とはいえ、ちょっとした写真印刷にも使えるし、前述のスキャンしてメモリカードに保存する機能にも使える。また、そうやってスキャンした文書の画像データを印刷するのにも使える。ただし、対応するのはJPEG形式のみで、PDFファイルなどは印刷できない。 これら3機種はメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、USBメモリ以外に外付けハードディスクにも対応している。なお、EP-979A3との違いは、CD/DVDドライブには非対応と言うことくらいだ。また、複合機をネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も3機種とも備えている。つまり複合機に接続したUSBメモリーや外付けHDDに同じネットワーク内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できるという機能だ。そのほか、赤外線通信やPictBridge、手書き合成シートに関してはEP-979A3のみ搭載している。その他、EP-979A3は塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できるフォーム印刷機能を搭載しており、このあたりの楽しめる機能は家庭向けプリンターならではだ。 スマートフォンとの連携機能も3機種とも搭載している。いずれもiPhone/iPod touch/iPad/Androidに対応しており、専用アプリ「EPSON iPrint」を用意する。ビジネス向けのPX-M5041F/PX-M5040Fも家庭向けのEP-979A3もアプリは同じ物を使用する。撮影した写真をスマートフォンからの操作で手軽に印刷でき、その際、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、パソコンから印刷するのと変わらないレベルで印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応しており、Webページの印刷もできるまたスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。カメラで掲示物や時刻表、ホワイトボードの内容などを撮影した物を、台形補正して印刷するような機能も搭載されており便利だ。またクラウドとの連携機能にも対応しており、「EPSON iPrint」上でクラウドにアクセスし、そのファイルを印刷できる。PX-M5041F/PX-M5040FはSNSからの印刷機能が利用できないが、大きな問題ではないだろう。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のこれらの機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行える「自動変倍」機能に加え、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える高性能な物だ。また、2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップ、さらにPX-M5041F/PX-M5040Fは4枚の原稿を1枚に縮小コピーする4アップにも対応する。基本的な機能に大きな違いは無い。コピー時にも両面印刷は可能なので、両面原稿から両面プリントも可能だ。ただしEP-979A3ではADFが無いため、片面をスキャンし、原稿を裏返してもう一度スキャンという手間を枚数分する必要があるのに対して、両面スキャン対応のADFを搭載するPX-M5041F/PX-M5040Fでは、束ねてADFに挿せば、両面から両面のコピーが行える。この点では手間が軽減される。 家庭向けのEP-979A3は家庭向けの機能が満載だ。例えば原稿面に写真を複数枚置けば、1枚ずつ焼き増し風のコピーを行うことも出来る「写真焼き増し風コピー」機能を搭載する。この際「退色復元」機能を使えば、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーも行える。またコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。また、元々A3スキャナを搭載するPX-M5041F/PX-M5040Fには及ばないが、左右2回スキャンすることでA3コピーを可能とする「A3原稿二つ折りコピー」機能を備えている。一方のPX-M5041F/PX-M5040Fにはこういった機能は搭載されない代わりにビジネス向けの機能を搭載する。免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能や、原稿サイズが出力サイズより小さい際に出来る余白の影を消す「影消しコピー」、パンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能も備えている。またA3スキャンに対応しているこれらの機種ならではの機能として、本などを見開きで原稿台に置いた原稿を、1ページごと用紙にコピーする「ブック分割コピー」機能を搭載している。それぞれ機能に特徴がある。 FAX機能はPX-M5041F/PX-M5040Fのみが搭載する。両機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろん両面スキャンしFAXできるため便利だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8pels/mm×3.85line/mm、8pels/mm×7.7line/mmと、さらに高画質な8pels/mm×15.4line/mm、16pels/mm×15.4line/mmが設定できる。カラーは200×200dpiだ。このあたりは一般的な性能と言える。ダイヤル機能でもPX-M5041F/PX-M5040Fが200件の短縮ダイヤルと10件のワンタッチダイヤルボタンも備える。受信したファクスの最大保存ページ数は550枚で、電源オフだけでなく、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのは安心である。グループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。送信(パソコン上のデータを画像として送信)だけでなく、受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。なお、FAX機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。 操作パネルを見てみよう。PX-M5041F/PX-M5040FもEP-979A3もワイドの4.3型液晶を搭載する点では同等だ。タッチパネルに対応しているのも同じである。しかしそれ以外の違いは大きい。EP-979A3は操作パネルと液晶が本体前面に配置され、持ち上げて90度まで角度調整が可能だ。見やすい角度に調整ができるため、操作性が良い。一方のPX-M5041F/PX-M5040Fは本体前面に斜めに飛び出した状態で固定されている。斜めになっているのでどの角度からでもある程度使いやすいが、角度調整できないのは堅牢性を重視したためと思われる。 EP-979A3は全てを液晶内で行う形となっている。物理的なボタンは電源ボタンだけだ。「ホーム」や「戻る」だけで無く「スタート」なども液晶内に表示される。液晶内だけ見ていれば全ての操作が可能で、まや液晶に表示されるため暗い場所でも操作しやすい。一方PX-M5041F/PX-M5040Fもタッチパネル液晶であるため、ホーム画面での機能選択や、各種設定画面はタッチパネル内で行う。しかし、よく使う「ホーム」「戻る」「スタート」などは物理ボタンとして別に配置される。スタートボタンもカラーとモノクロに分かれている。また、FAXの電話番号入力などに使うテンキーは液晶内より、押した感触のある物理ボタンの方が使いやすいため、これも物理ボタンを用意する。それ以外に前述のワンタッチダイヤルボタン、「ジョブ履歴」「取り込み」「リセット」「ストップ」といった、比較的使用頻度の高い、または緊急性の高いボタンは物理ボタンとなっている。液晶内に全てを表示することで見た目もすっきりしたEP-979A3と、タッチパネル液晶でボタン数を減らしてわかりやすくしながら、物理ボタンの方が使いやすい物に関しては残すことで、使いやすさを両立されたPX-M5041F/PX-M5040Fといったイメージだ。ちなみにPX-M5041F/PX-M5040Fは耐久枚数8万枚をうたっており、1万〜1万5000枚程度と言われている家庭向けのEP-979A3とは耐久性に大きな違いがある。 インタフェースは3機種ともUSB2.0と有線/無線LANの接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANは、IEEE802.11n接続に対応しており、無線LANで接続した場合でもプリントやスキャンで待たされることが無いようになっている。また無線LANの電波が届きにくい場合や、壁にLANのコネクタがある家などにも対応できるよう有線LANも搭載しているのも便利だ。ちなみに、アクセスポイントがない状態で、直接スマートフォンやタブレットとプリンタを接続できる「Wi-Fiダイレクト」機能も対応している。 本体サイズはEP-979A3が479×356×148mmなのに対して、カセットが1段のPX-M5040Fでも567×486×340mmとかなり大きい。横幅と奥行きが大きいのはA3スキャンに対応しているためA3サイズのスキャナ面がが必要となるためと考えられる。また横幅が大きいのはA3より大きいA3ノビに対応している事もあるだろう。何にしても設置面積はEP-979A3より64%も大きいので、置き場所には注意が必要だ。高さに関してもかなりの差があるが、まずPX-M5040FはADFの存在がある。ADFを搭載する分スキャナ部のフタが分厚くなる上に、原稿台が斜めに取り付けられているため、その部分が特に高くなる。また前面給紙カセットが1段とは言え、250枚までセットできるためかなり厚みがある。ただ、それを差し引いても高さがかなりある。一方EP-979A3の場合、家庭向けであるためサイズが重視された結果、弊害もある。例えば、排紙トレイが出ていると前面給紙カセットを取り出しにくかったり、液晶(操作パネル)をある程度持ち上げないと、排紙トレイが出てこないといった点だ。また、インクカートリッジもかなり高さが抑えられた物を使用している。目に見えないところでも、小型のパーツを使うなどの工夫もあるだろう。その点では、PX-M5040Fは使いやすさや堅牢性を重視して余裕のある設計になっているともいえる。ちなみに前面給紙カセットが2段のPX-M5041Fは567×486×418mmと高さが純粋に78mm大きくなり圧迫感もさらに高まっている。 同じA3プリント対応と言ってもビジネス向けのPX-M5041F/PX-M5040Fと家庭向けのEP-979A3では違う点も多い。A3プリントはたまにしかせずスキャナはA4までで問題が無い、写真印刷がメイン、本体はコンパクトな方が良いというならEP-979A3、A3スキャナが必要だったり、A3やB4プリントが多い、FAXやADFが必要、文書印刷がメインというなら、本体の大きさには目をつぶってPX-M5041F/PX-M5040Fとなるだろう。PX-M5041FかPX-M5040F かは、純粋に2種類の用紙を同時にセットしたいかどうかである。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() |