小ネタ集
2016末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2016年12月14日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


エコタンク搭載プリンター
 
 エコタンク搭載プリンターを比較する。今のところエプソンからしか発売されておらず、今年春に発売されたEW-M660FTと、今年末に追加されたEP-M570Tの2機種のみだ。モノクロ印刷のみの複合機PX-M160TとプリンターPX-S160Tも発売されているが、ここではカラー対応の2機種のみを比較した。型番上はEW-M660FTが上位で、価格もEW-M660FTが59,980円、EP-M570Tが39,980円と、価格上もEW-M660FTが上位機種に見える。しかし、完全な上位機種では無く、EP-M570Tが搭載する機能で、EW-M660FTが搭載しない機能もある。どういった機能を搭載しているかを見ていくことで、使用用途によってどちらの機種が向いているかを検討していこう。

メーカ
エプソン
エプソン
品番
EW-M660FT
EP-M570T
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込み)
59,980円
39,980円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
(タンク式)
各色独立
(タンク式)
顔料/染料系
染料(カラー)/顔料(ブラック)
染料
ノズル数
784ノズル
357ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各59ノズル/ブラック:180ノズル
最小インクドロップサイズ
3.3pl
(MSDT)
3pl(MSDT)
最大解像度
4800×1200dpi
5760×1440dpi
給紙・排紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
(フチなし印刷不可)
L判〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
前面
○(150枚/L判〜A4)
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カバー連動)
排紙トレイ自動開閉
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
60秒(フチあり)
74秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
7.3ipm
5.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
13.7ipm
10.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
5.5円(フチあり)
5.6秒
A4カラー文書
0.8円
0.6円
A4モノクロ文書
0.4円
0.3円
スキャナ部
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
ADF
○(30枚)
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD
PCからドライブとして利用
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリへ保存
−/−/−
−/−/−
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリから印刷
−/−/−
−/−/−
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜)
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 8.0以降)
Android 4.0以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 8.0以降)
Android 4.0以降
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
コピー部
倍率指定/自動変倍/オートフィット
○(25〜400%)/○(A4/B5)/○
○(25〜400%)/○/○
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
2アップ/4アップ
○/−
−/−
バラエティコピー
IDコピー
FAX部
受信ファックス最大保存ページ数
100枚/100件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
−/−
ワンタッチ/短縮ダイヤル
−/60件
−/−
グループダイヤル/順次同報送信
59宛先/30宛先
−/−
自動リダイヤル
PCファクス
送受信
液晶ディスプレイ
2.2型モノクロ
1.44型(角度調整可)
操作パネル
ボタン式
ボタン式(角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
515×360×241mm
445×304×169mm
重量
7.3kg
5.0kg
 

 詳しく比較していく前にエコタンクについて説明しよう。エコタンクとは本体右側に搭載されたインクタンクのことだ。エコタンクにインクボトルからインクを補充して使用する形となる。つまり、インクカートリッジを購入して交換するのでは無く、インクだけを購入するというイメージだ。エコタンクは本体から飛び出しているためかなり大容量で、満タン状態からかなりの枚数を印刷可能だ。例えば、EW-M660FTの場合、黒インクだけで、モノクロ文書を6000ページ、4色使うとカラー文書が6500枚印刷可能だ。ほぼ同じ機能のインクカートリッジの機種PX-M650Fではモノクロ文書850枚、カラー文書450枚で、上位機種PX-M740Fで大容量インクカートリッジを使用した場合でも、それぞれ1500ページと730ページである事を見れば、大容量である事が分かるだろう。しかも、インクボトルは1本でエコタンク1回分と大容量ながら、価格が1本900円(倍容量のEP-M660FT用のブラックは1800円)で販売されており、印刷コストが極端に安いことが特徴だ。また本体価格は機能の割には高く設定されているが、インクボトルが各色2本ずつ付属している。動作確認用のインクカートリッジしか付属しない他機種と比べると、しばらくの間インクボトルを購入する必要が無く、他機種でその分のインクカートリッジを購入すると、価格差は簡単に逆転する。つまり大量印刷をする人向けの機種なのである。

 プリント機能を見てみよう。両機種ともブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成である。その構成は若干異なり、EP-M570Tは4色とも染料インクを採用する一方、EW-M660FTはカラーは染料インク、黒は顔料インクを採用する。どちらも染料インクを搭載しているため、顔料インク非対応の用紙への印刷が行えるほか、写真用紙への印刷した際も発色が良く、用紙本来の光沢感も出るだめ写真印刷に向いている。ただしEW-M660FTは黒の染料インクを搭載していないため、写真用紙や顔料インク非対応の用紙に印刷した際、黒インクを使用できずカラー3色を混ぜて黒を表現する。結果やや茶色が買った黒になるため、黒インクが使えるEP-M570Tと比べると色のメリハリが弱くなる傾向がある。
 一方普通紙への印刷の場合、染料インクでは若干滲んだ感じになるため、文字が太くなったり、小さな文字や中抜き文字がつぶれたりという事が起こる。その点でEW-M660FTは黒インクのみだが顔料インクを搭載しているため、黒文字はメリハリのある印刷が行える。また顔料インクは耐水性も高いため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。顔料インクは黒インクのみであるためカラーの部分は染料インクで印刷するし、黒と言ってもグレーの場合はカラーインクを混ぜて表現するため染料インク、また染料インクと顔料インクが混ざらないことからカラーの背景色が付いている上の黒文字も染料インクとなるなど、顔料の黒インクが必ずしも使えるわけではないが、黒だけでも顔料インクだと文書印刷やコピー時に見栄えが異なる。またEW-M660FTはFAXも搭載しているため、受信したFAXの印刷にも効果を発揮する。
 ちなみに、最小インクドロップサイズはEW-M660FTが3.3pl、EP-M570Tが3plでほぼ同等だ。インクカートリッジ方式の上位機種では6色で1.5plとなっている事を考えると画質はやや劣る。特に色の薄い部分でライトインクが使えないため、粒状感が強く出て、少しざらついた感じとなる。とは言え比較しなければ十分高画質で、写真も色の表現にそこまでこだわらなければ十分に印刷可能だ。EW-M660FTは最小インクドロップサイズが3.3plとやや劣るが、普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッド「PrecisionCore」を採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。まとめると、写真印刷が比較的綺麗なEP-M570Tと、写真印刷時にやや色のメリハリが弱くなる代わりに普通紙印刷画質が高めのEW-M660FTとなる。
 使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、EW-M660FTはフチなし印刷を行う事ができない点は注意が必要だ。給紙に関しては、EP-M660FTが前面給紙カセットを採用しており、A4普通紙で150枚までセット可能だ。一方EP-M570Tは背面給紙となっており、A4普通紙を100枚までセット可能だ。前面給紙カセットの方が用紙をセットしたままにしやすく、用紙セット時にも後方や上方にスペースが不要な点はメリットだが、用紙をセットする際に、ガイドを幅だけで無く奥行きも調整する必要があり、特殊なサイズの用紙をセットしにくく、また裏表や前後も慣れるまで間違えやすいというデメリットもある。また前面給紙前面排紙となるため、用紙が180度ターンする形となるため、一部用紙では給紙しにくい場合もある。その点では背面給紙は左右幅だけガイドを合わせるだけでわかりやすく、向きも裏表も簡単だ。その反面、用紙をセットする際には、上方にスペースが必要な他、用紙トレイが後方に傾くために、後方にもスペースが必要だ。また用紙をセットしたままだとホコリが積もり、それを給紙すると故障の原因となるため、いちいち用紙を取り除く手間が発生する。それぞれ一長一短だが、A4用紙など決まった用紙を常にセットしておくなら前面給紙カセットが、様々な用紙を使うなら背面給紙が便利だろう。ちなみに、両機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。EW-M660FTは前面給紙カセットを挿し込むと、EP-M570Tは背面給紙トレイのカバーを閉めると自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。
 自動両面印刷機能もEW-M660FTのみ搭載している。普通紙のみ対応なので、ハガキへの両面印刷は行えないが、文書印刷やコピー時に便利だ。
 印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度は、EW-M660FTが60秒、EP-M570Tが74秒で、EW-M660FTの方が速く見えるが、EW-M660FTはフチなし印刷ができないためフチありでの計測となっているためだ。EW-M660FTとほぼ同性能のPX-M650Fでのフチなし印刷では70秒である事から、ほぼ同じ速度と考えての良さそうだ。また、インクカートリッジ方式の上位機種では13秒という機種もあるため、それと比べると遅いと言える。続いて文書の印刷速度だが、EW-M660FTはからーが7.3ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが13.7ipmとなる。比較的高速な部類に入る。EP-M570Tはそれぞれ5.0ipmと10.0ipmで、EW-M660FTよりはやや遅くなる。これはノズル数が大きく影響しており、EW-M660FTはカラーインクが各128ノズル、黒インクが400ノズルなのに対して、EP-M570Tはそれぞれ59ノズルと180ノズルしかない。逆に言うとこれほどの差がある割には、EP-M570Tの印刷速度は健闘しているともいえる。
 ちなみに使用するインクはどちらも同じインクだ(黒を除く)。他機種の「つよインク」ような名称は無いが、耐保存性はアルバム保存は300年、耐光性は7年、耐オゾン性は半年以上1年未満をうたっている。インクカートリッジの上位機種が採用する「つよインク200」はアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となっているので、アルバム保存なら同等だが、飾っておく場合はやや弱いと言えるだろう。写真自動補正機能「オートフォトファイン!EX」を両機種とも搭載しており、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。画質や耐保存性では最高レベルとは言えないものの気楽に写真印刷が行えるようになっている。
 印刷コストを見てみよう。まずは写真印刷を見てみると、EW-M660FTが5.5円、EP-M570Tが5.6円だが、EW-M660FTはフチありでの計測である事を考えると、あまり比較にならない。このコストには写真用紙代(500枚で2,143円)も込みなので、これを除くとそれぞれ1.214円と1.314円になる。インクカートリッジ方式のEP-879Aの場合、20.6円なので、写真用紙代を除くと16.314円となる。実に12分の1となり印刷コストの低さが分かる。続いてA4普通紙への文書印刷速度を見てみよう。EW-M660FTがカラー0.8円、モノクロ0.4円、EP-M570Tがそれぞれ0.6円と0.3円だ。小数点以下1位までなので、実際の差はもう少し小さいことも考えられるが、ややEP-M570Tの方が安い事になる。カラーインクは同様の物を使用しており、ブラックインクもEW-M660FTが倍の容量で価格も倍なので、基本的に差が付かないはずだが、実際には差がある。ブラックインクが染料インクと顔料インクの差か、PrecisionCoreとそうで無いヘッドの違いなのかは不明だ。とはいえ、どちらの機種も印刷コストは他機種と比較にならないほど安いのは確かだ。
 ちなみに、インクボトルは各色2セットずつ付属している。EW-M660FTの方がブラックインクボトルが2倍の容量なので、付属のインクは少し多い事になる。EW-M660FTはブラックインクボトル1本でモノクロ文書が6000ページ、4色全てを使ってカラー文書が6500ページ印刷できるので、付属のインクだけでモノクロが11,300ページ、カラーが11,000ページ印刷できる(単純に2倍にならないのは初期充填に一部使用するため)。一方EP-M570Tはブラックインクボトル1本でモノクロ文書が4500ページ、4色全てを使ってカラー文書が7500ページ印刷できるので、付属のインクだけでモノクロが8,500ページ、カラーが14,000ページ印刷できる。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。両機種とも解像度は1200dpiとなる。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は同様だ。違いはEW-M660FTはFAX機能が付いていることから、スキャナ部にADFが搭載されている。30枚までの原稿を連続でスキャンできるため、FAX送信時やコピー時にも便利だ。

 逆に、メモリカードからのダイレクトプリント機能はEP-M570Tが搭載している。SDカードのみの対応でUSBメモリにも対応しないが、最近のデジタルカメラやスマートフォンはSDカードやその小型版のmicroSDなので問題ないだろう。用紙サイズやフチあり/フチなし、印刷品質と言った設定が行える。また、フォーム印刷機能を搭載しているので、ノート罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜などを印刷することも可能だ。フチなし印刷ができる機種だけに、ダイレクトプリント機能を搭載しているのは理にかなっているといえる

 スマートフォンとの連携機能は両機種が搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、EP-M570Tはフチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。またEP-M570TはSNSの写真をコメント付きで印刷する機能も搭載している。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、両機種とも印刷したい写真や文書をプリンタにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の対応プリンタで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えるが、ここの両者の違いは無い。

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも等倍コピーだけでなく、拡大縮小コピーが可能だ。原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能も備えるなど、高性能な物だ。ただし、EW-M660FTはコピー時に選択できる用紙サイズはA4とB5に限られる一方、EP-M570TはA4/B5/ハガキ/KG/2L判/L判に対応する。ハガキサイズなどへのコピーを行う場合は注意が必要だ。逆に、2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップ機能や、免許証やIDカードのような小さな原稿の裏と表を、1枚の紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能はEW-M660FTが搭載している。それぞれコピー機能にも若干の違いが見られる。

 FAX機能はEW-M660FTのみが搭載しており、大きな相違点の一つとなっている。機能的にはスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒、読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiと一般的だ。60件の短縮ダイヤルに対応しており、グループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。受信したファクスの最大保存ページ数は100枚又は100件となる。電源を切るだけでなく、停電時やコンセントを抜いた場合でもメモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。また、「PCファクス」機能も備えており、パソコン内で作成したデーターを、一度印刷する事無く、直接FAXとして送信できるたり、逆に受信したFAXをパソコン上に保存できる。

 操作パネルもそれぞれ特徴がある。EW-M660FTは2.2型の液晶を備えるが、モノクロ表示だ。とはいえバックライトも搭載しているため、視認性は悪くない。ボタンを使用して操作するが、FAX機能を搭載するため、テンキーを搭載している分ボタン数が多くなるのは仕方がないところだろう。液晶と操作パネルは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、残念ながら角度調整は出来ないため設置する場所によっては使いにくい場合もあるだろう。一方EP-M570FTは写真のダイレクト印刷を行うことからカラー液晶が内蔵される。サイズは1.44インチと小さいため、設定の文字などはEW-M660FTより小さいが、カラー表示の分だけ分わかりやすいとも言える。テンキーなどが不要なためボタンは少なめでわかりやすい。また、液晶と操作パネルは本体前面に垂直に設置されるが、持ち上げて角度調整が可能だ。堅牢性では劣るが使いやすさの面では有利だ。ちなみに本体の耐久枚数は、EW-M660FTが5万枚、EP-M570Tが3万枚と差があるが、ビジネスモデルをベースにしたEW-M660FTと、家庭向けモデルをベースにしたEP-M570Tの違いといえるだろう。とはいえ、家庭向けの機種の耐久枚数は1万2000枚から1万5000枚と言われており、大量印刷すると思われるエコタンク搭載プリンターだけあって、両機種とも家庭向けの機種よりは強くなっている。

 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。EW-M660FTは無線LANと有線LANの両方に、EP-M660FTは無線LANのみの対応となる。無線LANの届きにくいような遠いところの場合や、LANケーブルが壁の中を通してある家の場合、また設定の簡単さから有線LANを選びたい場合は注意が必要だ。なお、Wi-Fiダイレクトに対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっており、より便利である。

 本体サイズを見てみよう。両機種ともエコタンク搭載プリンターということで、右側にインクタンクを搭載する分どうしても大きくなる。EW-M660FTが515×360×241mm、EP-M570Tが445×304×169mmである。EP-M570の方が幅が70mm、奥行きは56mm、高さが72mm小さく、かなりコンパクトに感じる。ただし、EW-M660FTの高さに関してはADF部の原稿台を含んでいるいるため、数値ほどの高さはない。一方EP-M570Tは本体はコンパクトである物の、背面給紙であるため、背面給紙トレイを伸ばすと後方に倒れるため、後方にスペースが必要なほか、用紙を立てる高さも必要だ。EW-M660FTは前面給紙カセットなので、用紙をセットするためにスペースが余分に必要になることは無い。そのため使用時のサイズ(排紙トレイも全開状態)では、EW-M660TFが515×559×241mmと排紙トレイ分の奥行きが伸びただけなのに対して、EP-M570Tは445×518×303mmと奥行き、高さ共にかなり大きくなっている。一見EW-M660FTの方が大きく見えるが、使用する時を考えると大きな差は無いとも言える。



 両機種はエコタンク搭載プリンターと言う点では同等だが、細かく見るとそれぞれ特徴がある事が分かる。雑に言うならビジネス向けのEW-M660FTと家庭向けのEP-M570Tだ。ブラックインクが顔料インクでADFやFAX機能を搭載、一方フチなし印刷やメモリカードからのダイレクトプリントを省いているのはEW-M660FTがビジネス向けを意識したからだろう。コピーがA4とB5だけなのも、ブラックインクだけ倍容量になっているのもこの一環だろう。一方、EP-M570Tは全色染料で「PrecisionCore」でもなく、ADFもFAX機能も無く、堅牢性でも劣るが、フチなし印刷が可能で本体もコンパクト、操作パネルも使いやすくしメモリカードからのダイレクトプリントが可能な点で家庭向けと言える。以上から、フチなしの写真印刷やメモリカードからのダイレクトプリントなどを行いたいならEP-M570FT、文書印刷やコピー、FAXが主体でフチなし印刷を必要としないならEW-M660FTがおすすめと言える。

 

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EW-M660FT
EP-M570T