新旧プリンター比較 2018年春発売のプリンターを旧機種と比較する (2017年9月13日公開)
A3プリンターの新機種EP-50Vは、カラリオのA3の写真向けプリンターとしては久々の新機種となる。A3プリンターとしては、上位に写真作品印刷向けのプロセレクションシリーズSC-PX5VIIやSC-PX7VIIがあり、下位モデルには文書向けPX-1004がある。写真作品というほどではないが、綺麗に写真印刷が出来るA3プリンターとしてEP-4004はラインナップされていたが、A4複合機にA3手差し給紙機能を備えたEP-97xシリーズが登場してからは存在感が薄くなっていた。何しろ、EP-97xシリーズは、A3ノビよりやや小さいA3までで、1枚ずつの手差し給紙とは言え、複合機でありながら本体サイズはEP-4004より小さく、画質は同等、印刷速度は上で、メモリカードからのダイレクト印刷も出来るにも関わらず価格が安かった。さらにEP-97xシリーズの派生として、A3の写真用紙が5枚、普通紙は10枚までの連続給紙に対応し、EP-4004より画質が上で印刷コストが安いEP-10VAが登場して、いよいよ居場所が無くなってきていた。これまで約6年間新機種も登場しておらず、後継機種は無くラインナップから消えるのではとも思われていた。しかし、今回新製品として復活したのだ。今回はEP-10VAをベースにしている一方で、背面給紙の枚数やA3ノビ対応などEP-4004の流れも組んでいる。そこで、直接の旧機種EP-4004と、ベースとなっているEP-10VAと比較してみよう。なお、EP-10VAは複合機で、メモリカードからのダイレクト印刷も可能だが、今回はEP-50Vに合わせた、プリント機能とスマホ・クラウド対応の点のみ比較している。
まずは、EP-50VとEP-4004/EP-10VAの画質や速度などを比較してみよう。ちなみに本体価格はEP-4004から10,000円アップだが、EP-10VAよりは10,000円安い価格(いずれも発売時の価格)となっている。 インクの色数は6色で、EP-4004やEP-10VAと同等だ。最小インクドロップサイズも1.5plで、5つのサイズのドットを打ち分けるAdvanced-MSDTに対応しているのも同等、印刷解像度も同等だ。しかし、インク構成は大きく異なる。EP-4004はブラック、シアン、マゼンダ、イエローに、ライトシアンとライトマゼンダを加えた一般的な6色構成だ。それに対して、EP-50Vは基本4色にレッドとグレーインクを搭載する。赤色はどうしてもくすみがちになるのでレッドインクを搭載、モノクロの階調表現ではカラーインクでグレーを表現すると青白くなるため、グレーインクを搭載している。ライトシアンやライトマゼンダがない分、薄い赤や青色部分では粒状感が増しそうだが、そこは論理的色変換システムLCCSが力を発揮する。これは上位のプロセレクションの製品が搭載しているもので、階調性・色再現域・粒状性・光源依存性がそれぞれ最適になるようにインク配分を論理的に算出する技術である。これにより基本4色でも従来の6色並みの画質が実現できるため、そこにレッドとグレーインクで色域表現を高めているのである。その点でいうと画質は1ランク上になったと言える。ちなみにこれはEP-10VAと同等である。 もちろんインクカートリッジも変更されている。EP-4004ではかなり前の「50番」インクを使用していたが、EP-50Vは「ソリ」インクを使用する。ちなみにEP-10VAもインク構成などは同じだが、こちらは「ヨット」インクであり、EP-50Vはこれとも異なる。というのも、EP-10VAはEP-97xシリーズをベースにしているため、「80番」インクと同じ形状のインクで、インクカートリッジは横並びだ。それに対して、EP-50Vは、もう少し短く太い形のインクカートリッジで、横向きにセットして縦に6色が並ぶ。これはより小型化を狙ったA4複合機EP-879AやEP-880Aで採用された方式で、EP-10VAと同じインクながら、より小型化を狙ったインクカートリッジに変更されている。ちなみに、EP-50VのL版写真印刷コストはEP-10VAと同じ12.7円で、EP-4004の21.1円と比べるとかなり安くなっている。写真用紙代(500枚で2,143円、1枚4.286円)が込みなので、これを除くとEP-50Vは8.414円、EP-4004は16.814円なので、半額になっている事が分かる。 EP-50Vの印刷速度はL判写真フチ無し印刷で34秒。EP-4004の37秒から比べるとノズル数が倍増している割にはあまり高速化していないが、これはLCCSによるインク配分の高度化と紙送り精度の向上によるものと思われる。
給紙に関しては、EP-4004が背面給紙だけだったのに対して、EP-50Vは前面給紙カセットと背面給紙の両方に対応する。ただし、背面給紙は普通紙のセット可能枚数が50枚までで、EP-4004の100枚より少ない。A4サイズを超える用紙(A3ノビやA3、B4など)は背面給紙のみなので、A4を超える用紙のセット可能枚数では劣る事になる。ただし、EP-50Vには前面給紙カセットがある。A4までだが、200枚セット可能な上、本体にセットしたままでもスペースを取らずホコリが被らないので、用紙をセットしたままに出来る。写真用紙なら前面に50枚、背面に20枚までセット可能だ。EP-4004からかなり変わった点だが、ベースとなるEP-10VAとも異なる。EP-10VAは背面給紙からは普通紙10枚、写真用紙は5枚までの簡易的な物なので、EP-50VはよりA3プリントにも使いやすくなっている。EP-10VAの前面カセットは2段で、上段はL判やハガキ、2L判などの小さな用紙、下段はA4までセット可能だが、代わりに下段は普通紙100枚までとなる。写真用紙は下段に40枚、上段に20枚セットできるので2L判までなら60枚セットできるが、それ以上のサイズの写真用紙や普通紙は、EP-50Vの方が大量にセットできる。ちなみにEP-50Vの背面給紙はEP-10VAと同じく0.6mm厚までの用紙に対応している。EP-4004をはじめとする一般的なプリンターは0.3mm厚程度までなので、倍の厚みの用紙に印刷が可能だ。厚めの写真用紙や写真貼り合わせの年賀状への印刷が出来る。 排紙トレイは自動で伸縮するので後述の自動電源オン・オフと組み合わせて非常に便利だ。また、セットした用紙サイズと種類のの登録機能もある。前面給紙カセットを収納、または背面トレイに用紙をセットすると、液晶に自動的に登録画面が表示される。ここで登録しておくと、印刷時に指定した用紙とセットされている用紙が異なる場合に、印刷実行時に警告が出るため、間違った用紙に印刷するミスが減る。また印刷速度に影響はあるが、用紙幅チェック機能もあるため、印刷時に用紙幅をチェックし、セットされている用紙が小さい場合でも、それからはみ出してインクを打たないためプリンター内部を汚さない。こういった便利な機能はEP-4004には無かった機能だ。 続いて、EP-50VとEP-4004/EP-10VAのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能はA4までだが対応しているのは、EP-4004との違いだ。またEP-10VAからの進化点として、両面印刷時に「両面ファイン紙」を選択できるようになった。これまでは普通紙とハガキのみで、市販の用紙にはせっかく両面印刷をうたったファイン紙が数多くあるのに、自動両面印刷が出来なかった。実際には「スーパーファイン紙」設定にすると両面印刷設定ができなくなるので、用紙を「普通紙」設定にすれば印刷は可能だったが、色が正確に出なくなってしまっていた。EP-50Vはこれが可能となった。また、エプソン純正用紙に「両面スーパーファイン紙」が追加されている。また、自動電源オン/オフ機能も搭載された。前述の排紙トレイの自動開閉機能と合わせて、電源が切れた状態でも、パソコンやスマホからプリントを実行すると自動的に電源が入り排紙トレイが出きて、印刷が実行される。離れたところにEP-50Vがあっても、わざわざ電源を入れに行く必要が無いのだ。また、指定した時間が経つと自動的に排紙トレイが収納され、電源が切れるのも安心だ。ただしEP-10VAと異なり、操作パネルは自動では開閉しない。自動的に写真のシーンや顔部分を認識して、色や明るさ、コントラストを自動補正してくれる「オートフォトファイン!EX」はEP-4004から搭載していたが、EP-50Vではより高精度な物となった。また、レッドインクを搭載していることから、「高彩モード」も選択でき、赤をより色鮮やかに表現した補正も行える。また便利な機能として、カラーインクが切れてもモノクロ印刷を継続できる機能も搭載された。ヘッドなどへの負荷も考えて5日間のみだが、急なインク切れでも安心と言える。もう一つ、廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換がユーザー自身で行える。これはEP-4004だけでなくEP-10VAにも無い機能だ。従来は廃インクタンクがいっぱいになると修理に出して交換するまで印刷が止まってしまうが、こういったことが無くなる。逆にPictBridgeには非対応となったが、対応のデジタルカメラとUSB接続してデジカメの操作でプリントするという事の需要が減ってきていると思われるため、問題ないだろう。 P-50VとEP-4004/EP-10VAのスマホ/クラウド対応機能を比較してみよう。まず、対応端末に関して、iOSのバージョンが7.0から9.0、Androidのバージョンが4.0から4.1になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは3機種ともiOS 9.0/Android 4.1以上となる。写真やドキュメント、Webページの印刷が可能だ。比較項目には無いがEP-10VAは複合機なのでスキャンも出来る。またEP-10VAはNFCによる簡単接続設定が可能だが、EP-50Vには搭載されていない。とはいえ、NFCはスマホとプリンターをダイレクトに接続する時に簡単に設定できる様にする機能で、より便利に使用できる無線LAN(Wi-Fi)ルーターを経由する方法では使用しないし、NFCを使わなくても設定は比較的簡単なので、大きな問題では無いだろう。クラウド対応はスマートフォンからの印刷という点でEP-50VとEP-4004は同等だが、SNSの写真をコメント付きで印刷できるようになった。また、本機にメールすると添付ファイルを印刷する「メールプリント」機能はEP-4004でも搭載されているが、新たに、パソコンから普通のプリント操作と同じ方法で、外出先などからネットワーク経由でEP-50Vに印刷できる「リモートプリント」機能に対応している。
インタフェースとしては、EP-4004に搭載されていたUSBと無線LANに加えて、EP-50Vでは有線LANも搭載された。簡単にネットワーク接続したい場合や、ルーターとの距離が離れていて無線LANが安定しない場合に有線LAN接続は便利だ。また無線LANもWi-Fiダイレクトに対応しているため、無線LANルータの無い環境でもスマートフォンからプリントが出来る。この設定には液晶画面が必要なので、液晶の搭載がWi-Fiダイレクト対応に繋がったと言える。 対応OSはEP-4004と比べるとWindowsではXPがSP1からSP3に、MacOSは10.4.11以上から10.6.8以上になっている。新製品は対応OSが新しい物だけに限定されるのは仕方の無いところだが、逆に言うとサポートに切れたXPやVistaに対応しているのはうれしいところだ。また、Windows XPのSP1からSP3やMacOSの10.4.11から10.6.8以上には無償バージョンアップが可能なので、特に問題は無いだろう。 EP-50Vの本体サイズは476×369×159mmで、EP-4004の616×322×215mmからだと、横幅が14cm、高さが6.4cmも小さくなっている。前面給紙カセット対応になり、奥行きは4.7cm大きくなったが、全体で見れば大幅な小型化が行われている。また、EP-10VAとの比較でも、スキャナ部が無いため高さが抑えられるのは当たり前としても、横幅が0.3cm、奥行きも2.6cm小さくなっている。横幅はEP-10VAよりも大きな用紙に対応しているのにもかかわらずこのサイズなのは、インクカートリッジを縦に並べた方法が功を奏しているといえる。また奥行きに関しても同じ前面給紙カセット対応で、背面給紙はより大量給紙に対応したにもかかわらずである。かなりコンパクトと言えるだろう。 EP-50VはEP-4004の後継というには、時間が経ちすぎている。EP-10VAをベースに1から作られた機種だと言える。とはいえ、ただEP-10VAをプリント単機能機にしたのではなく、A3ノビ対応や、給紙方法などはEP-4004の良いところも取り入れつつといった感じだ。さらに名刺サイズの対応やファイン紙の自動両面印刷対応、廃インクタンク交換対応など、最新の機能も取り入れている。EP-4004から見ると、数え切れない程の高性能化を果たした一方、大幅な小型化に成功し、一気に魅力的な製品に生まれ変わったと言えるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ |