小ネタ集
新旧プリンター比較
2017年末発売のプリンターを旧機種と比較する
(2017年9月13日公開)

表中の赤文字は旧機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1からの変更点となります。

G3310とPIXUS TS3130を徹底比較する

 昨年は新機種が発売されず、他の機種がPIXUS TSシリーズへ移行した中、唯一PIXUS MGシリーズとして残ったPIXUS TS3130だが、今年はG3310としてPIXUS TSシリーズの仲間入りを果たした。それと共にデザインや機能を一新している。果たしてどう変わったのか徹底比較してみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
参考機種
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像

発売時の価格
39,980円
9,880円
インク
色数
4色
4色
インク構成
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
特大容量タンク
黒独立、カラー3色一体
顔料/染料系
染料(カラー)/顔料(黒)
染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番
390番
340XL/341XL(大容量)
340/341(標準容量)
ノズル数
1472ノズル
1280ノズル
カラー:各384ノズル
黒:320ノズル
全色:各320ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A(2pl?)
N/A
最大解像度
4800×1200dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
51秒
52秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
5.0ipm
4.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
8.8ipm
7.7ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
21.7円
A4カラー文書
0.8円
14.1円
A4モノクロ文書
0.3円
N/A

 G3310の発売時の価格は、PIXUS TS3130の時とほぼ同じ9,880円となっている。それではプリント機能の画質、速度、印刷コスト面から見てみよう。G3310のインク構成は、顔料ブラックと染料のカラー3色の4色構成、インクカートリッジはブラックだけが独立しており、カラー3色は一体型の2カートリッジ構成であり、これはPIXUS TS3130と同じだ。解像度も同等で、最小インクドロップサイズは非公開となったが、解像度や過去の例から2plの可能性は高いため、画質面では同等と考えられる。インクカートリッジは新しくなっており、PIXUS TS3130の340/341番から345/346番となった。しかし、これによって「ChromaLife100」から外れることとなった。「ChromaLife100」とは、写真用紙に印刷した写真の耐保存性の高さをうたった物で、アルバム保存100年とされている。しかしこれに対応しなくなったと言う事で、耐保存性はPIXUS TS3130や上位機種より劣る可能性が高い。どの程度なのかは不明だが、写真印刷を考えている人には注意が必要だ。ノズル数も減っている。カラーに関してはPIXUS TS3130の384ノズルが、G3310では320ノズルと大きくは変わっていないが、ブラックは640ノズルから320ノズルと半減している。印刷速度には顕著に表れており、L判縁なし写真が37秒から52秒に、A4普通紙の印刷速度がカラーで5.7ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)から4.0ipmに、モノクロで9.9ipmから7.7ipmに遅くなっている。また、印刷コストの面でも劣っている。L判縁なし写真が21.7円、A4カラー文書が14.1円となる。PIXUS TS3130はL判フチ無し写真が18.6円、A4カラー文書が12.4円であった。2017年10月1日よりインクカートリッジの価格が上がるため、それぞれ19.5円と13.1円になるが、それでもG3310は高いと言える。ちなみに、インクカートリッジの価格はG3310が使用するインクの場合、カラー大容量(346XL)が2,320円、モノクロ大容量(345XL)が2,520円である。一方PIXUS TS3130の場合、カラー大容量(341XL)が2,720円、モノクロ大容量(340XL)が2,520円である(10月1日値上げ後の価格)。つまり、モノクロインクは据え置き、カラーインクは安くなったことになる。ちなみに標準容量の場合、G3310のカラー(346)が1,920円、ブラック(345)が1,720円で、PIXUS TS3130のカラー(341)が1,920円、ブラック(340)が1,720円と、モノクロ、カラー共に同価格である。また気になるのは、標準容量ではカラーインクカートリッジの方が高いのに、大容量では逆転していることだ。この事から、G3310の大容量インクは、ブラックに比べてカラーの方が大容量になる割合が少ないのでは無いかと予想される。同時に、G3310のインクカートリッジの価格は下がったのに、印刷コストが上がっているのも気になる。そこで、印刷可能な枚数を計算してみよう。写真の印刷コストには写真用紙代(400枚で1,705円、1枚4.2625円)が込みなので、インク代はG3310が17.4375円、PIXUS TS3130が15.2375円である。写真印刷では顔料ブラックインクは使用できないので、染料のカラーカートリッジの価格から計算してみよう。G3310の場合、2,320円なので、これを印刷コスト(用紙代除く)で割ると、約133枚。つまりかなり乱暴な計算だが、インクが均等に使用できた場合、大容量のカラーインクカートリッジ1つで約133枚印刷ができる。一方、PIXUS TS3130でも同じ計算をすると、カラーインクカートリッジ2,720円を印刷コストで割ると約179枚。つまり同じ大容量インクを購入しても、印刷できる枚数は4分の3ほどだと推測される。
 G3310はPIXUS TS3130と比べると写真の耐保存性は悪くなり、印刷速度は落ち、印刷コストは上がっており、かなり機能ダウンといわざるを得なくなっている。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
対応用紙サイズ
名刺〜A4
L判〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(60枚)
前面
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
用紙幅チェック機能

 続いて給紙・排紙関連の機能を見てみよう。PIXUS TS3130では前面トレイからの給紙だったが、G3310では背面トレイからの給紙となった。G3310の前面トレイは、カセット式では無いので、前面カバー兼給紙トレイを手前に引いて開き、その上に用紙を置くという形であった。用紙をセットしたままトレイを閉じることは出来ず、ホコリも積もるため、用紙を置いたままにするのは難しかった。横幅はガイドを合わせ、奥行きは位置合わせのラインに合わせて用紙を置くというアバウトなセット方法であった。その点で言うと、G3310の背面トレイは、ホコリが積もるという点では変わらないが、トレイのカバーを開けて横幅のガイドを調整して用紙を立てるという形だ。奥行きを気にせず立てるだけなので、セットしやすいと言える。また、前面給紙・前面排紙では、用紙が内部で180度曲げられるため、厚い用紙や封筒のような二重になった紙、古いシール用紙や、滑りやすい透明用紙などでは、給紙や紙送りに失敗する事があった(印刷は問題ないとされてはいたが、背面給紙と比べるとミスは多くなりがちだった)。背面給紙・前面排紙は、紙が内部で大きくは曲げられないので問題が発生しにくい。この点はメリットだ。一方、PIXUS TS3130の場合、背面は壁にくっつけても問題なかったが、G3310では、背面トレイが斜め後方に傾くため、そのスペースが必要だ。設置スペース面では不利にる。また給紙枚数が減らされている。PIXUS TS3130では普通紙で100枚、ハガキは40枚までセット可能だったが、G3310では普通紙が60枚、ハガキが20枚までとなった。文書の大量印刷や、年賀状などの印刷時は、用紙のセットの手間が増えることになる。

プリント(付加機能)
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
自動両面印刷
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
N/A
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
N/A/N/A
○/○
廃インクタンク交換

 続いてプリントのその他の機能を見てみよう。違いとしてはPIXUS TS3130にあった自動両面印刷機能が非搭載となっている点が挙げられる。文書の両面印刷などは不便となる。

スキャン
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
読み取り解像度
600dpi
600dpi
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存

 続いてスキャン機能を見てみよう。読み取りの最大解像度がPIXUS TS3130では1200dpiだったが、G3310では600dpiとなっている。ただ、機能面では大きく劣る様に見えるが、実用上はそれほど大きな差は無い。紙などの反射原稿しか読み取らないため、文書の場合は200dpi〜300dpi、写真でも300〜600dpiが一般的だ。1200dpiで読み取るとなると、よほど綺麗に保存したい場合などに限られる。特にスキャナ性能にこだわるので無ければ問題ないだろう。

ダイレクト印刷
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
−/−/−
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
−/−/−
−/−/−
対応ファイル形式
手書き合成
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷機能は、G3310もPIXUS TS3130も搭載しないという点で同等だ。唯一PictBridgeに対応するがUSBポートは無いため、Wi-Fi接続に限られ、対応するデジタルカメラは非常に少ない。

スマホ/クラウド対応
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマホ、クラウド対応について見てみよう。対応端末に関してはAndroidのバージョンが4.0から4.1、iOSのバージョンが7.0から9.0になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは両機種ともAndroid 4.1/iOS 9.0以上となる。機能上の違いは無い。

コピー機能
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
等倍コピー
○(A4/レター普通紙のみ)
○(A4、LTR、LGL、B5、A5普通紙のみ)
拡大縮小
倍率指定
固定変倍
オートフィット
○(L版/2L版/KG写真用紙とインクジェットハガキのみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
−/−
−/−
バラエティコピー

 コピー機能に関してはG3310で大幅に機能アップしている。PIXUS TS3130の場合、使用できる用紙サイズはA4(レター含む)普通紙とL版の写真用紙のみで、A4普通紙はフチありで等倍コピー、L判写真用紙はフチ無しでオートフィット(用紙サイズに合わせて自動でサイズを拡大縮小)であった。コピー枚数の設定は1〜21枚となる。一方G3310はA4、レター、リーガル、B5、A5サイズの普通紙はフチありで等倍コピー、L版、2L版、KGサイズの写真用紙と、インクジェットハガキはフチ無しでオートフィットとなる。コピー枚数の設定は1〜20枚である。フチあり、フチ無しの切り替えや、等倍とオートフィットの切り替えはできず、用紙によって固定なのは同じだが、使用できる用紙サイズや種類が大幅に増えている。利便性がアップしたと言える。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
G3310
PIXUS TS3130
製品画像
液晶ディスプレイ
1.2型モノクロセグメント
1.5型モノクロセグメント
操作パネル
物理ボタン
物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS
Windows 10/8.1/7 SP1
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高)
445×330×163mm
435×316×145mm
重量
6.3kg
3.9kg
本体カラー
ブラック
ブラック/ホワイト

 最後にG3310とPIXUS TS3130の操作パネル、インタフェース、本体サイズを比較してみよう。G3310の操作パネルは本体上面の左側に縦に並んでおり、これはPIXUS TS3130と同様だ。ただ、PIXUS TS3130には無かった1.5型の液晶パネルが搭載されている。とはいえ、液晶ディスプレイでは無く、モノクロで1桁の数字がセグメント表示できる部分の他は、表示内容が固定で、表示か非表示かを切り替えるだけだ。1桁の数字は、モードやセットアップ時の番号の表示の他、エラーコードの表示を行う。それ以外は無線の電波強度と、スマホマーク、セットアップモードマークが、状況により表示されるのと、コピー時の用紙の種類が並んでおり、用紙選択ボタンを押すと1つずつ順番に切り替わっていく。これだけだが、有るのと無いのでは大違いだ。設定は行いやすくなったと言える。
 インタフェースなどには違いは無い。対応OSは大きく変化し、Windows VistaやXPが対応から消えている。さらにWindows 8.1には対応するがWindows 8は非対応となった。また、MacOSのドライバは、PIXUS TS6030もドライバディスクには収録されずダウンロード対応だったが、今回からはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となった。対応バージョンもMacOS 10.8.5以上から、MacOS 10.10.5以上になっている。
 本体サイズはPIXUS TS3130が449×304×152mmであったのに対し、G3310は435×316×145mmと横幅と高さは微減、奥行きは微増だ。ただ、前述のように背面トレイが後方に傾くため、そのスペースが必要となる。見た目上はほぼ同じ大きさだ。また、PIXUS TS3130は上面は、スキャナの原稿押さえと操作パネル部分の2分割で、前面も給紙トレイを閉じるとすっきりしていた。それに対してG3310では、前面は排紙される部分は空いており、上面も背面給紙トレイが被さっているので、全体にすっきり感は無くなったと言える。




 大幅に機能が変更されたG3310だが、残念ながら悪くなった機能の方が多い。写真の耐保存性の低下、印刷速度の低下と、印刷コストの増加、用紙のセット可能枚数も減り、自動両面印刷機能も無くなった。唯一、表示内容は固定だが液晶表示が追加され、それにともなってコピー時に使用できる用紙が大幅に増えた。それでも拡大縮小などは指定できないため、シンプルな等倍コピーをメインに考えている人には使いやすくなったと言える。


(H.Intel)


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