小ネタ集
新旧プリンター比較
2018年末発売のプリンターを旧機種と比較する
(2018年11月3日公開)

表中の赤文字は旧機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1からの変更点となります。

PX-S5010とPX-1004/EP-50Vを徹底比較する

 PX-S5010はビジネス向けの顔料4色のA3ノビプリンターの最下位モデルという点でPX-1004の後継製品だ。とはいえ、PX-1004は2011年9月15日発売なので、じつに7年ぶりの後継機種となる。そのため、進化点は多く、異なる点は多岐にわたる。一方、PX-1004の時は、写真用A3ノビプリンターであるPX-4004とほぼ同じ本体を使用し、見た目は本体色が黒から白に変わっただけのようであった。去年PX-4004はEP-50Vという後継製品に移行したが、今回のPX-S5010はこのEP-50Vの本体色を黒から白にしたような見た目だ。どうやら、このクラスの製品は、同じ本体を使って写真向けと文書向けの2機種を、ブラックとホワイトそれぞれで発売すると決めているようだ。そこで、今回は旧モデルのPX-1004と共に、兄弟機とも言えるEP-50Vとも比較している。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
参考機種
型番
PX-S5010
PX-1004
EP-50V
製品画像
発売時の価格
25,980円
29,980円
49,980円
インク
色数
4色(5本)
4色(5本)
6色
インク構成
ブラック×2
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック×2
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
グレー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
顔料
(つよインク200X)
染料
(つよインク200)
インク型番
IB06(めがね)
59番
ソリ
ノズル数
900ノズル
537ノズル
1080ノズル
カラー:各180ノズル
ブラック:180ノズル×2
カラー:各59ノズル
ブラック:180ノズル×2
各色180ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A
3pl(MSDT)
1.5pl(AdvancedMSDT)
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
5760×1440dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
70秒
34秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
11.0ipm
5.5ipm
N/A
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
18.0ipm
15.0ipm
N/A
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
17.9円
12.7円
A4カラー文書
8.6円
6.6円
6.0円
A4モノクロ文書
2.7円
2.6円
N/A

 PX-S5010の価格は25,980円である。PX-1004の発売当初の価格は29,980円だったので、より安価な価格設定がなされている事になる。
 それでは、プリントの基本機能である、画質と速度、印刷コストを見てみよう。インクの色数や印刷解像度は同じである。ブラックを2本セットするのも同じである。ちなみにこれはキャノンの機種の様に染料と顔料といった異なるブラックではなく、全く同じブラックインクカートリッジである。これは、元々6色プリンターをベースとしており、6本分のインクをセットするスペースがあるため、ブラックを2本セットすることでブラックインクが大容量となる他、倍のノズル数で印刷速度を上げることができるという効果がある。このあたりもPX-1004から変わっていない。なお最小インクドロップサイズに関しては今回から非公表となった。PX-1004が3plと比較的大きかったため、今回も同等レベルになると思われる。PrecissionCoreのプリントヘッドではないため、上位機種よりは普通紙への画質は若干劣る。インクに関しては59番インクからIB06番のインクへと変更になった。パッケージの「メガネ」が目印になっているが、家庭用の機種とは異なり「メガネ」が型番にはなっていない(例えばEP-50Vは「ソリ」というインクで、インクの型番も「ソリ」を意味するSOR-BKとかSOR-Yという風になっている)。PX-S5010もPX-1004同様、顔料インクとなっている。「つよインク200X」などの表記がなくなっているため耐保存性は不明となってしまったが、今回は写真の印刷コストや印刷速度も出さず、写真印刷に関する情報が一切なくなったことを考えると、インクの耐保存性が落ちたとは考えにくい。PX-S5010のインクはカラーが1本1,610円、ブラックが1本1,210円で、5本パックが7,030円となる。PX-1004は全色1,050円で5本パックが5,090円であり、価格は少し上がっている。印刷コストも、A4カラー文書が8.6円、A4モノクロ文書が2.7円で、PX-1004の6.6円と2.6円と比べるとカラーが2円も上がってしまっている。とはいえ、PX-1004が安すぎたともいえ、上位モデルPX-S5080でも7.6円と2.5円なので、大きく劣るわけではない。また、比較のEP-50Vに関しては大判の写真を多く印刷するユーザー向けに本体価格が高い一方で印刷コストを半分にした機種であるためA4カラー文書が6.0円と最も安いが、家庭用のインクジェットプリンターでは12.0円〜15.0円なので、それと比べれば圧倒的に安いといえる。
 一方印刷速度に関しては、大きく改善している。PX-S5010のA4カラー文書は11.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロ文書は18.0ipmである。PX-1004がそれぞれ5.5ipmと15.0ipmである事を感あげると、特にカラープリントに関しては倍になっている。PX-1004はカラープリントが遅いというイメージが強かったが、払拭された。これは、やはりノズル数が大きく関係しているだろう。ブラックインクのノズル数は180ノズル×2でPX-S5010とPX-1004で同じだが、カラーは59ノズルから180ノズルに大きく増加したためだろう。ちなみに、上位モデルのPX-S5080はそれぞれ10.0ipmと18.0ipmなので、上位モデルより高速という事になる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-S5010
PX-1004
EP-50V
製品画像
対応用紙サイズ
カード・名刺〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
カード・名刺〜A3ノビ
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(50枚・0.6mm厚対応)
○(100枚)
○(50枚・0.6mm厚対応)
前面
カセット(200枚・A4まで)
カセット(200枚・A4まで)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動)
○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、PX-S05010の給紙、排紙機能を比較してみよう。PX-1004では背面給紙のみだったが、PX-S5010では前面給紙カセットと背面給紙の2方向給紙となった。前面給紙カセットはA4用紙のみだが、カセット形状で用紙を入れたままにしておけ、200枚までセットできる。PX-1004では100枚だったので、印刷枚数が多い場合でも用紙切れの心配が少ない。また、EP-1004では背面給紙のみだったため、用紙をセットしたままだとほこりが積もってしまい、それがプリンタ内部に入ると機械にも良くないことから、毎回取り除く必要があった。PX-S5010では入れたままにしておける。後述の自動電源オンと排紙トレイの自動伸張と併せて非常に便利だ。一方背面給紙はA3ノビまで対応だ。こちらは50枚までセットができるため、背面給紙だけ見るとPX-1004よりは少ないが、前面給紙カセットにA4用紙をセットしたまま、A3やB4用紙をセットすることや、両方にA4用紙をセットして250枚連続給紙することもできるなど利便性は高い。また、この背面給紙は名刺サイズの用紙にも対応している。PX-1004の最小サイズはL判だったが、PX-S5010はさらに小さい用紙に印刷が可能だ。A4サイズに名刺を複数枚印刷して切り取ることもできるが、名刺サイズに直接印刷できれば、印刷後に切り取る必要が無いほか、フチなしデザインも作りやすい。さらに、背面給紙は0.6mmまでの厚紙に対応している。一般的なプリンターは0.3mmなので、倍の厚みに対応している。厚めの紙に印刷したい場合や、写真店で作った年賀状(写真貼り合わせの年賀状)の宛名面印刷にも使える。ちなみにはがきの給紙枚数は、EP-1004が50枚だったのに対して、PX-S5010は前面給紙カセットに65枚、背面給紙に20枚セットできる。
 その他、排紙トレイが自動開閉する。印刷が始まると排紙トレイが伸び、電源切ると収納される。また、用紙の種類とサイズを登録する機能も搭載された。前面給紙カセットの場合はカセットを収納すると、背面給紙の場合は用紙をセットすると、自動で登録画面が表示される(表示されないようにもできる)。ここで、セットした用紙の情報を登録しておき、印刷時の用紙設定がこれと異なる場合、警告メッセージが表示されて印刷が始まらない。用紙の間違いによる用紙とインクの無駄を減らすことができる。また用紙幅をセンサーでチェックする機能も搭載されている。用紙サイズの設定を間違った場合でも、用紙外に印刷されてプリンター内部を汚さないようになっている。PX-1004と比べると、PX-S5010の進化点はかなり多い。ちなみにこれらの機能はEP-50Vと全く同じだ。

プリント(付加機能)
型番
PX-S5010
PX-1004
EP-50V
製品画像
自動両面印刷
○(A4まで・ファイン紙対応)
○(A4まで・ファイン紙対応)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX・高彩モード対応)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
○/○
−/−
○/○
PictBridge対応
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/−
−/−
○/−

 続いて、その他のプリント機能を比較してみよう。EP-1004には搭載していなかった機能として、自動両面印刷に対応した。用紙サイズはA4までだが、原稿の両面印刷に便利なほか、はがきにも対応しているため、年賀状の通信面と宛名面をセットし直すことなく印刷できる。また、「両面ファイン紙」にも対応する。少し前の機種は普通紙とハガキのみで、市販の用紙にはせっかく両面印刷をうたったファイン紙が数多くあるのに、自動両面印刷が出来なかった。実際には「スーパーファイン紙」設定にすると両面印刷設定ができなくなるので、用紙を「普通紙」設定にすれば印刷は可能だったが、色が正確に出なくなってしまっていた。PX-S5010ではこれが可能となっている。
 また、自動電源オン/オフ機能も搭載された。前述の排紙トレイの自動開閉機能と合わせて、電源が切れた状態でも、パソコンやスマホからプリントを実行すると自動的に電源が入り排紙トレイが出きて、印刷が実行される。離れたところにPX-S5010があっても、わざわざ電源を入れに行く必要が無いのだ。また、指定した時間が経つと自動的に排紙トレイが収納され、電源が切れるのも安心だ。長く使う上で安心な機能がPX-S5010に搭載された。それが廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換がユーザー自身で行えるというものだ。廃インクタンクとは、クリーニング時などに排出されるインクをためておくタンクで、従来はいっぱいになると修理に出して交換するまで印刷が止まってしまっていた。これがねじ1本外すだけでユーザー自身での交換が可能になった。いざというときに突然印刷がストップするという危険性が減ったことになる。ちなみにメンテナンスボックスの残量もインク残量と共に確認できる。ただし、フチなし印刷時に用紙からはみ出して印刷した部分を吸収する「フチなし吸収材」が一杯という場合は、従来通り修理対応となる。ちなみにこのあたりの機能もEP-50Vと全く同じだ。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-S5010
PX-1004
EP-50V
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
−/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマホ/クラウド対応機能を比較してみよう。というか、PX-1004はスマホはクラウドには一切対応していなかったため、PX-S5010は最新機種らしく対応したといえる。iOS 9.0以上かAndroid 4.1以上のスマホ、タブレットに対応し、写真や文書、ホームページの印刷が可能なほか、クラウドにアクセスして印刷したり、SNSの写真をコメント付きで印刷したりできる。また、PX-S5010にメールすると添付ファイルを印刷する「メールプリント」機能や、パソコンから普通のプリント操作と同じ方法で、外出先などからネットワーク経由でPX-S5010に印刷できる「リモートプリント」機能にも対応している。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-S5010
PX-1004
EP-50V
製品画像
液晶ディスプレイ
2.4型
(90度角度調整可)
2.4型
(90度角度調整可)
操作パネル
物理ボタン式
(90度角度調整可)
物理ボタン式
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11ac/n/a/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
耐久枚数
5万枚
1.8万枚
N/A
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.4.11〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
外形寸法(横×奥×高)
476×369×159mm
616×322×214mm
476×369×159mm
重量
8.6kg
12.2kg
8.5kg
本体カラー
ホワイト
ホワイト
ブラック

 最後に操作パネルやインタフェースなどを比較してみよう。PX-1004は液晶などは搭載せず、紙の給紙や、インク交換ボタンなどがあるだけだった。PX-S5010は2.4型の液晶が搭載された。やや小さめでタッチパネル液晶でも無く物理ボタン操作だが、メモリカードからダイレクト印刷機能は搭載されていないため写真などを確認をするわけでも無く、ネットワークや自動電源オン/オフの設定、セットした用紙の登録、インク残量の確認や交換といった操作にしか使わないので、十分なサイズだ。本体で様々な操作が可能なほか、エラー内容も一目で確認ができる。また、本体前面に搭載される液晶と操作パネルは90度まで起こして角度調整が出来るので、視認性は良好だ。
 インタフェースとしては、PX-1004はUSB2.0接続のみだったが、無線LANと有線LANにも対応した。そのためネットワーク経由で複数台のパソコンやスマホなどからのプリントが可能になったほか、パソコンと離れた場所に設置することも可能となった。安定性や接続の簡単さなら有線LAN、ケーブルの煩わしさから解放されたい場合は無線LANと選べるようになっている。無線LANは、一般向けの製品としては初めてIEEE802.11acとaに対応した。実はこの点は数少ないEP-50Vとの違いだ。従来より高速に通信できるだけでなく、2.4GHz帯に加えて5GHz帯にも対応している点は大きい。家庭内の電子レンジや電話の子機など様々な物に影響を受けやすい2.4GHz帯に比べて安定した接続ができる5GHz帯対応は便利になったと言えるだろう。
 本体の耐久枚数は5万枚と、PX-1004と1万8千枚と比べて大きく向上した。ビジネス向けで印刷枚数も多いと思われるため、この強化はうれしいところだ。対応OSはWinowsは10からXPまで幅広く対応している点は同等だが、PX-1004ではWindows XPはSP1以上だったが、PX-S5010ではSP3以上になっている。またMacOSも10.4.11以上から10.6.8以上に変更されている。
 一方、本体サイズは大幅に小さくなり、同じ用紙サイズに印刷ができるのが信じられないほどである。横幅は616mmから476mmに14cmも小型化、奥行きは322mmから369mmに4.7cm大きくなったが、高さも214mmから159mmに5.5cmも小さくなっている。ちなみにこのサイズはEP-50Vと同等だ。



 PX-S5010はPX-1004の後継というには、時間が経ちすぎている。EP-50Vをベースにビジネス向けにインク構成を変更した機種と考えるべきだろう。PX-1004から比べると、印刷速度向上、用紙のセット方法やセット可能枚数の改善、自動両面印刷や自動電源オン/オフと排紙トレイの自動開閉の搭載、廃インクタンク交換対応、スマホ・クラウド対応、無線LAN、有線LANの搭載、液晶ディスプレイの搭載による操作性の向上など、あまりにも多い。その割にサイズは大幅に小さくなった。唯一劣っている点では印刷コストだが、PX-S5010も十分低印刷コストだ。PX-S5010は数え切れない程の高性能化を果たした一方、大幅な小型化に成功し、一気に魅力的な製品に生まれ変わったと言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/


PX-S5010