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新旧プリンター比較 2018年末発売のプリンターを旧機種と比較する （2018年9月15日公開）
TR9530  はキヤノンから初めて登場するA3対応インクジェット複合機だ。スキャナはA4まで、前面給紙カセットもA4までで、背面給紙のみA3に対応する点で、エプソンのEP-979A3やEP-10VAに近い。型番上は、PIXUS TR8530の上位モデル扱いであるため、こちらと比較しA3対応以外の違いを見てみよう。また近いプリント性能を持つA4複合機PIXUS TS6230も参考機種2として掲載している。なお、PIXUS TR8530は「PIXUS」ブランドだが、TR9530は「PIXUS」が付かない。
TR9530 の価格は34,880円で、PIXUS TR8530の発売時の価格25,880円より9千円高い価格設定だ。上位モデルということで価格が上がるのは当然だが、A3対応の割には価格差は小さいとも言える。それではプリントの画質・速度・コストを見てみよう。TR9530 のインク構成や使用するインクカートリッジ、印刷解像度などはPIXUS TR8530と同等だ。一方印刷速度は、L版縁なし写真が31秒から18秒と、大幅に早くなり、FAXなし家庭向け複合機のPIXUS TS8230と同等となった。A4普通紙の印刷速度はカラー、モノクロともに変化ない。もともと、PIXUS TR8530はA4普通紙印刷速度はFAXなし家庭向け複合機と同等であるにも関わらず、L判縁なし写真だけが遅かった。TR9530ではA4普通紙、L判縁なし写真共にFAXなし家庭向け複合機と同等になったわけだ。ちなみに同インク構成のPIXUS TS6230も旧モデルPIXUS TS6130から同様の変化となっており、ある意味TR9530もそれに倣ったと言える。インクカートリッジに関しては説明が必要だ。一昨年発売の家庭向けの機種では大容量インク（371XL/370XL）と標準容量インク（371/370）が利用できた。当然大容量インクの方が印刷コストは低かった。去年発売の機種より381/380番インクカートリッジとなったが、標準容量インク（381/380）と小容量インク（381s/380s）の2種類となり、大容量インクは顔料ブラックのみ用意された。標準容量と小容量では標準容量の方が印刷コストは低いが、全体的に印刷コストは上がってしまった。同時期に発売し、家庭向けの機種をベースにしたPIXUS TR8530も、同じく381/380番インクカートリッジを使用している。今年は新たに、染料4色にも大容量タイプが用意されることとなった。つまり全色で大容量、標準容量、小容量が選べるようになったのだ。ただし、371/370番の時とは異なり、大容量インクと標準容量インクでは印刷コストに差はない。つまり、交換の手間が少なくなるというだけだ。印刷コストがそのまま大容量になったので、カートリッジ価格は高めで、従来よりあった顔料ブラックは1,630円、染料4色は各1,740円となり、全色そろえると8,590円とかなり高額になってしまう。なお、PIXUS TR8530でも今回発売の大容量インクを利用できるため、単にインクカートリッジのバリエーションが増えたという形となる。 ちなみに、L判写真の印刷コストなどは、前述のように大容量インクを使用した場合でも標準容量インクを使用した場合でも同じだ。一方、PIXUS TR8530と比較すると、若干ながら上がっているように見える。これは使用するインクカートリッジの組み合わせによるものだろう。PIXUS TR8530が発売された時点では大容量インクは顔料ブラックしか存在しておらず、大容量の顔料ブラックと、標準容量の染料4色を利用した印刷コストだったのだ。TR9530 は、全色で大容量、または標準容量にそろえて印刷した場合の印刷コストなのだが、そうすると少し高くなってしまうようだ。逆に言うと、PIXUS TR8530でも大容量または標準容量にそろえた場合、同じく少し高くなると予想される。
とPIXUS TR8530の給紙、排紙機能を比較してみよう。基本的な給紙、排紙機構は同等だ。前面に1段カセットを搭載し、こちらは普通紙を100枚までセットできる。一方背面給紙も備えており、こちらは普通紙だけでなく写真用紙やはがきなどの用紙もセットできる。A4普通紙で100枚までセット可能だ。ここまでは同様だが、TR9530は背面給紙が拡大されており、A3用紙をセットすることが可能となっている。A3用紙の場合は50枚までだが、連続給紙が可能だ。それ以外に、SNSなどでよく見かける「ましかく写真」をそのまま印刷できるよう、新たに89×89mmの用紙に対応した。PIXUS TR8530も127×127mmの用紙には対応していたが、より小さなサイズにも対応した形だ。また、オリジナルマグネットシートにも対応したが、これはPIXUS TR8530でも使用できるため、単なる純正用紙のバリエーションの追加に過ぎない。
続いて、TR9530 とPIXUS TR8530のその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷や自動電源オン／オフなどの機能はどちらも搭載しているが、自動両面印刷はPIXUS TR8530が普通紙のみだったのに対して、TR9530でははがきにも対応している。宛名面と通信面をセットし直さずに印刷できるのは便利だ。ただし、両面印刷が可能なのはPIXUS TR8530と同じくA4用紙までだ。また、CD/DVD/BDレーベル印刷にも対応した。また、家庭向けの最新機種と同じく、CD/DVD/BDレーベルのトレイ差し込み口を利用した「オリジナルネイルプリントシール」に対応している。
とPIXUS TR8530のスキャン機能を比較してみよう。いずれもA4までの対応で、解像度は1200dpi、20枚までセットできるADFを搭載している点でも同じだ。ただし、PIXUS TR8530に搭載された。スキャンしてメモリカードに直接保存する機能はTR9530には搭載されていない。
TR9530 とPIXUS TR8530のダイレクト印刷機能を比較してみよう。いずれもSDカードから印刷できるという点は変わらない。ただしPIXUS TR8530が搭載していなかった手書き合成にTR9530は対応している。ディスクレーベル印刷機能を搭載しているので、レーベル面の手書き合成も可能だ。各種デザイン用紙をプリンタ単体で印刷できる機能も、14種類の定型フォームは同等だが、TR9530では写真を利用した「カレンダー印刷」と「組み込みパターンペーパー」に対応した。「組み込みパターンペーパー」はカラフルなパターン模様を全面に印刷でき、スクラップブックの台紙やブックカバーなどに利用できるという機能だ。「カレンダー印刷」はディスクレーベル印刷やはがきの両面印刷同様、FAXなし家庭向け複合機の上位機種の機能が搭載された形だが、「組み込みパターンペーパー」は家庭向けの新機種が搭載しており、TR9530は新機種であるためにPIXUS TR8530と機能差ができたと言えるだろう。
続いて、TR9530 とPIXUS TR8530のスマホ、クラウド対応を比較しよう。まず、対応端末に関してはAndroidのバージョンが4.1ら4.4、iOSのバージョンが9.0から10.0になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは両機種ともAndroid 4.4／iOS 10.0以上となる。また、新たにスマートスピーカーに対応、音声操作でナンプレや塗り絵、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などを印刷できる。ただし、これはPIXUS TR8530も対応したため、TR9530の進化点ではない。同じく、「PIXUSトークプリント」というアプリも追加されたが、こちらもPIXUS TR8530でも利用できる。ちなみにこの機能は、LINEを利用した写真印刷方法だで、プリンター本体に表示されるQRコードから、TR9530をLINEの友達に追加する。あとは写真をトーク画面から送信するとプリントされる仕組みだ。
TR9530 とPIXUS TR8530のコピー機能を見てみよう。等倍コピーや拡大縮小コピー機能、写真の焼き増し風コピーや2面、4面割り付けの機能は同じだ。TR9530はCD/DVD/BDレーベル印刷が可能なので、それらのコピーにも対応している。コピー機能はA3プリントに対応したことでPIXUS TR8530よりも機能が追加されている。ADF手動両面コピー、ページ順コピー、枠消しコピー、IDコピーは同様だ。TR9530 ではA3原稿を2回に分けてスキャンすることで、自動で合成して継ぎ目のないA3サイズでコピーできる「大判原稿コピー」と、A4のバラ原稿を自動で割り付けし、A3見開き冊子の形でコピーができる「冊子レイアウトコピー」機能が新たに搭載されている。
TR9530 とPIXUS TR8530のFAX機能を比較といきたいところだが、TR9530にはFAX機能は搭載されていない。TRシリーズの4機種で唯一FAX機能を搭載しておらず、TRシリーズ＝FAX搭載ではないようだ。特にADFが搭載されているため、FAX機能が搭載されていそうな外見をしており注意が必要だ。
とPIXUS TR8530の操作パネルやインタフェース、本体サイズなどを見てみよう。本体は、A3プリントに対応したため、PIXUS TR8530よりも平べったくなった印象だ。実際には高さは3mm、奥行きは15mmしか大きくなっていないが、横幅も30mmしか大きくなっていないのは驚きだ。A4用紙の横幅は210mm、A3用紙の横幅は297mmなので、87mm幅の大きな用紙が入るようになったにもかかわらずである。とはいえ、同じプリント機能を持つ家庭用のPIXUS TS6230の横幅は372mmで、これと比べると96mm大きくなっている。つまり、PIXUS TR8530はプリント部はもう少し小さくできたもののADFのために横幅が大きくなっていたといえる。逆に言えば余っていたプリント部のスペースを使ってA3まで対応する事で、わずか3cmプラスでA3対応となったとも言える。また、PIXUS TR8530の前面給紙カセットはA4やB5用紙をセットする場合には伸ばさなくてはならず、本体から15mm飛び出る。これを考えると奥行きは366mmで、TR9530と全く同じになる。液晶パネルは4.3型でタッチパネル液晶となっている。電源ボタン以外の物理ボタンがない点もPIXUS TR8530と同じだ。インタフェースも同等で、有線LANにも対応している。対応OSも同等だ。本体カラーはブラックしかなかったPIXUS TR8530と違い、家庭向けを意識してかホワイトモデルも用意されている。 キャノン初のA3対応インクジェット複合機だが、PIXUS TR8530をベースにしているかと思いきや、一部にPIXUS TS8230などの機能を追加している。それがレーベル印刷機能であり、はがきの両面印刷対応でありカレンダー印刷機能である。一方でTRシリーズで唯一、FAX機能を搭載していない点は注意が必要だ。A3複合機としての完成度はかなり高い。プリントのインク色数こそ5色だが、SDカードからのダイレクト印刷も可能で、A3の写真にも文書にも使えるプリンターとなっている。A3用紙の連続給紙も可能だ。それでいて本体サイズはかなりコンパクトにまとまっている。FAX機能を搭載していないにもかかわらずADFを搭載しているのは、本体サイズとの兼ね合いを考えると賛否が分かれそうだが、それも比較的薄型だ。ライバルといえばエプソンのEP-979A3やEP-10VAあたりだろう。EP-979A3は479×356×148と高さ以外は近いサイズだが、A3用紙は1枚ずつの手差しだ。EP-10VAはA3用紙を10枚までセットできるが奥行きが395mmになる他、背面給紙部分だけ高さが168mmに飛び出す。A3用紙の給紙枚数と設置スペースではTR9530 の方が勝っている。もちろん様々な機能の差があるため一概には言えないが、A3対応のコンパクトな複合機に新たな選択肢ができたと言えるだろう。（H.Intel） 【今回の関連メーカーホームページ】 キャノンhttp://canon.jp/ 
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