小ネタ集
新旧プリンター比較
2019年春発売のプリンターを旧機種と比較する
(2019年8月16日公開)

表中の赤文字は旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります。

G6030とG3310を徹底比較する

 G6030はキャノンのインクタンク方式のプリンターとしては2世代目の製品に当たる。今回より「特大容量タンク」を「ギガタンク(GIGA TANK)」と名称を改め、使い勝手も向上させている。G6030はG3310の後継機種だが、G3310も継続販売されるため上位機種の追加という扱いになる。G3310はエントリーモデル、G6030はスタンダードモデルに位置づけられている。型番上も、日本向け製品は下2桁が30という法則に則った型番となり、わかりやすくなった。機能面ではどういった違いがあるか細かく見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
発売日
2019年4月25日
2018年2月22日
発売時の価格
39,880円
34,880円
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
ギガタンク
(挿して注入・満タン自動ストップ)
特大容量タンク方式
→ギガタンク
顔料/染料系
染料(カラー)/顔料(黒)
新顔料ブラック
染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番
30番
390番
ノズル数
1792ノズル
1472ノズル
カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
カラー:各384ノズル
黒:320ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A(2pl?)
N/A(2pl?)
最大解像度
4800×1200dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
37秒
51秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
6.8ipm
5.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
13.0ipm
8.8ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
N/A
A4カラー文書
0.9円
0.8円
A4モノクロ文書
0.4円
0.3円

 G6030はG3310の上位機種という位置づけのため、価格は発売当初の時点で5,000円高い39,880円、現時点ではG3310は29,880円まで下がっているので、1万円高い事になる。
 同じインクタンク方式ながら、今回はギガタンク(GIGA TANK)という名称が付けられ、G3310の特大容量タンクより、ブランド感が増している。なおG3310もギガタンクに名称変更されている。G3310では大きめの注入口にインクボトルの先端を挿し込み、ボトルを握って注入し、タンクを目視で確認して上限まで入れるという方式だった。G6030では、インクボトルを注入口に挿し込むと注入が始まり、満タンになると自動で注入がストップする方式となり、インク補充がより簡単になっている。エプソンの「挿すだけ満タン」方式のエコタンクに近くなった。ただしエコタンクでは、色によって挿し込み口の形状が変えられており、間違った色のタンクに補充することが無いようになっているが、G6030ではそういったことは無い。この点では注入時に注意が必要だ。G6030のタンクはブラックが左、カラー3色が右に割り振られ、本体から横に飛び出すことが無く、前面からインク残量が確認できる点はG3310と同じだ。
 インク構成は顔料ブラックと染料のカラー3色というのは同じだが、G6030では「新顔料ブラック」となり、用紙上でより定着しやすくなったことから、黒がよりくっきりした印刷が可能になった。補充方式とインク自体も変化したことにより、インクはG3310の390番から、G6030では30番へと変更となった。なお390番インクは、ブラックが1,720円、カラーが各1,120円だが、30番インクはブラックが2,100円、カラーが各1,400円と少し高くなっている。そのため、印刷コストも、A4カラー文書0.8円、A4モノクロ文書0.3円から、それぞれ0.9円、0.4円へと高くなっている。とはいえ、非常に低価格であることは変わりが無い。ノズル数はブラックがG3310の320ノズルからG6030では640ノズルへと倍増、カラーは変化が無い。しかし、カラーインクしか使わない写真印刷速度も向上しており、G3310の51秒から、G6030では37秒へ高速化している。ノズル数の増加以外に改良が施されたようだ。文書印刷速度も向上しており、カラーは5.0から6.8ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数。数字が大きいほど高速)、モノクロはノズル数増加もあって8.8ipmから13.0ipmと大幅に高速化している。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
対応用紙サイズ
名刺〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(100枚)
前面
カセット(250枚/普通紙のみ)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、G6030とG3310の給紙、排紙機能を比較してみよう。G3310では背面給紙のみだったが、G6030では前面給紙カセット+背面給紙という構成になった。前面給紙は普通紙専用だが250枚までセットできるため、大量印刷にも使える。またカセット式であるため、セットしたままでもホコリが積もる事が無いため、常時用紙をセットしておき気軽に印刷できる。背面給紙はハガキや写真用紙、ファイン紙など様々な用紙に対応、G3310と同じ100枚までセットできる。
 G6030では用紙種類とサイズの登録機能を新たに搭載した。前面給紙カセットを挿し込む、または背面給紙は手前の用紙カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだで、用紙のセットミスによる無駄を減らせるようになっている。用紙の設定は、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(自動写真補正)
N/A
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
−/−
−/−

 続いて、G6030とG3310のその他のプリント機能を比較してみよう。G6030では自動両面印刷機能が新たに搭載された。普通紙のみでハガキには非対応だが、両面印刷して冊子にしたり、用紙を節約できるようになった。自動写真補正に関してもG6030では搭載されている事が公表されているが、G3310では不明なので変更点かどうかは分からない。

スキャン
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
(1200×2400dpi)
600dpi
(600×1200dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存

 続いてスキャン機能を比較してみよう。G6030は1200dpiとなり、G3310の600dpiより高解像度でのスキャンに対応した。コピーや文書は200〜300dpiで十分だし、写真でも600dpiでも十分綺麗だが、1200dpiに対応していれば、いざというときにより詳細なスキャンが行える。
 その他、G6030は原稿取り忘れアラームを搭載した。コピーの原稿を取り忘れていた時に、エラー音が鳴る仕組みで、取り忘れを防げるため以外と便利だ。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
−/−/−
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
−/−/−
−/−/−
対応ファイル形式
色補正機能
手書き合成
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷

 G6030もG3310と同じくSDカードスロットなどは無くダイレクト印刷機能は搭載していない。ただし、G6030ではPictBridgeのWi-Fi方式に対応した点が異なる。とはいえ。PictBridgeはUSB方式とWi-Fi方式があるが、Wi-Fi方式は対応機種も少ないため、それほど意味のある機能追加とは言えない。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 続いて、G6030とG3310のスマホ、クラウド対応を比較しよう。G3310でもスマホやクラウド関連の機能はしっかり搭載していたため、G6030でも違いは無い。iOSとAndroidに対応、スマートスピーカーからの印刷も行える。写真やドキュメント、Webページからの印刷に対応する他、オンラインストレージ上のファイルの印刷だけで無くSNSの写真をコメント付きで印刷することもできる。なおカートリッジ方式の複合機の一部が搭載する「PIXUSトークプリント」はLINEを利用した写真印刷方法だが、G6030は非対応となる。

コピー機能
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
等倍コピー
○(対応用紙はA4/レターの普通紙のみ)
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
−/−
バラエティコピー
枠消しコピー
IDコピー

 G6030とG3310のコピー機能は同等を比較してみよう。G6030では本格的な液晶が搭載された事で(後述)、コピー機能は大幅に強化されている。G3310ではA4、レターサイズの普通紙のみ印刷で拡大縮小はできず、唯一コピー枚数だけ指定できた。G6030では、様々なサイズの様々な用紙へのコピーが可能である。拡大縮小機能も、原稿サイズを自動認識して印刷用紙のサイズに合わせる「オートフィット」、原稿サイズと印刷用紙のサイズの組み合わせを選ぶ「定型変倍」、そして手動で倍率を指定する場合は25〜400%の間で1%刻みで設定できる。また、2面又は4面の割り付けも可能だ。さらに、厚手の原稿の場合の原稿の周囲や、本のとじ目の部分など黒くなる部分を白くできる「枠消しコピー」と、免許証などをコピーする場合に、裏と表の2回スキャンすることで、上下に並べて印刷できる「IDコピー」機能も搭載するなど、G6030はかなり機能が豊富になっている。


操作パネル/インタフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番
G6030
G3310
製品画像
液晶ディスプレイ
2行モノクロ
(90度角度調整可)
1.2型モノクロ
(セグメント表示)
操作パネル
ボタン式
(90度角度調整可)
ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
Windows 10/8.1/7 SP1
外形寸法(横×奥×高)
403×369×195mm
445×330×163mm
重量
8.1kg
6.3kg
本体カラー
ブラック
ブラック

 最後にG6030とG3310の操作パネルやインタフェース、本体サイズなどを見てみよう。液晶はG3310の1.2型モノクロセグメント表示から、G6030では2行モノクロ表示になった。同じモノクロ液晶だが、表示できる内容には大きな違いがある。G3310は、電卓のような「日」の形の数字2桁(10の位は1だけ)と、Wi-Fiのアイコンや、セットアップアイコンなどの固定内容の、表示・非表示の切り替えだけであった。一方G6030は2行で自由な文字が表示できるようになり、漢字表示も可能だ。そのため、設定項目やエラー内容などを文字で表示できるようになり、設定できる内容が格段に増えた他、わかりやすくもなった。ただしバックライトは同じく搭載していない。操作パネルも同じくボタン式だったが、G3310では天面の右側に縦に並んでいたが、G6030では本体前面に取り付けられ、90度まで起こして角度調整が可能となった。設置する高さに関係なく、操作しやすくなった。
 インタフェースはUSB2.0とネットワーク接続に対応するのは同じだが、G3310は無線LANのみだったが、G6030は有線LANにも対応した。無線LANでは接続が不安定な場合や、ルーターとの距離が近い場合、壁の中にLAN配線のある自宅など、有線LANの方が便利な場面も多いため、G6030はより便利になっている。
 対応OSはWindowsは変化が無くWindows 10/8.1/7 SP1のみ対応だ。Windows 8にも対応しない点には注意が必要だ。一方G3310ではMacOSには完全非対応だったが、G6030ではMac OS 10.10.5以上に対応した。専用ドライバは用意されずAirPrintを利用しての印刷だが、Macユーザーには朗報だろう。
 本体サイズは403×369×195mmで、G3310の445×330×163mmより横幅は小さく、奥行きと高さは大きくなった。G6030では前面給紙カセットが採用されたこともあり、奥行きが伸びるのは仕方が無いだろう。高さに関しては、ギガタンクがG3310より縦長になったためと言えるが、これは前面に液晶と操作パネルを配置したためある程度の高さが必要になり、それならばタンクを縦長にして、その分横幅を小さくしたと考えられる。



 G6030はG3310の上位モデルというだけあり、様々な点で改良がなされている。エプソンのエコタンクに対して使いづらかったインクの補充方式は改善された。また前機種で問題だった印刷速度の遅さと、簡易的な液晶、それにともなうコピー機能の貧弱さも、それぞれ実用的なレベルまで改善された。両面印刷にも対応したほか、有線LANにも対応するなど、細かな点も改良している。印刷コストが安いという事で印刷枚数も多いことが予想されるため、大型の前面給紙カセットも搭載することで給紙枚数も増やした。G3310の不満点をことごとく改善してきた感のあるG6030は、とりあえず他社対抗で出したG3310とは完成度が異なる。これで価格は1万円しかないのだから、非常に魅力的な製品になったといえるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


G6030