小ネタ集
新旧プリンター比較
2019年春発売のプリンターを旧機種と比較する
(2019年9月16日公開)
表中の赤文字は旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります。 |
PX-M270FT/PX-M270TとPX-M160Tを徹底比較する |
最近ではエコタンク搭載機種が増えているが、特に機種の増加比率の高いのが、モノクロ専用機だ。当初はモノクロ複合機のPX-M160TとモノクロププリンターのPX-S160Tの2機種だったが、現在では7機種になっている。その中で、モノクロプリンターにはPX-M160Tの後に、挿すだけ満タンインク方式のPX-S170T/PX-S170UTが発売されているが、モノクロ複合機は挿すだけ満タンインク方式の機種が登場せず、PX-M160Tだけだった。今回モノクロプリンターにPX-S270Tが追加されると共に、プリンター部は共通のモノクロ複合機2機種PX-M270FT とPX-M270T が登場した。これら2機種は従来のPX-M160Tとどう変わったのか詳しく比較していこう。なお、PX-M160Tも下位モデルとして継続販売される。またPX-M270FT とPX-M270T は、型番から分かるようにPX-M270FT はFAX機能搭載モデルだ。それ以外の機能は共通している部分が多いため、2機種まとめて比較していこう。
プリント(画質・速度・コスト) |
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新機種 |
新機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
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発売日 |
2019年5月17日 |
2019年5月17日 |
2016年2月4日 |
発売時の価格 |
44,980円 |
39,980円 |
29,980円 |
インク |
カートリッジ構成 |
「挿すだけ満タン」エコタンク |
「挿すだけ満タン」エコタンク |
エコタンク |
顔料/染料系 |
顔料 |
顔料 |
顔料 |
インク型番 |
ヤドカリ |
ヤドカリ |
クツ |
ノズル数 |
800ノズル |
800ノズル |
360ノズル |
最小インクドロップサイズ |
N/A(2.8pl?) |
N/A(2.8pl?) |
3pl |
最大解像度 |
1200×2400dpi |
1200×2400dpi |
1440×720dpi |
PrecisionCoreプリントヘッド |
○ |
○ |
− |
印刷速度(A4モノクロ文書) |
20ipm (最速39枚/分) |
20ipm (最速39枚/分) |
15ipm (最速34枚/分) |
ファーストプリント(A4モノクロ文書) |
6.0秒 |
6.0秒 |
9.0秒 |
印刷コスト(A4モノクロ文書) |
0.4円 |
0.4円 |
0.3円 |
印刷可能枚数 |
インクボトル1本 |
6000ページ |
6000ページ |
6000ページ |
エコタンク1回補充 |
6000ページ |
6000ページ |
6000ページ |
まずは、PX-M270FT /PX-M270T とPX-M160Tの画質や速度などを比較してみよう。ちなみにPX-M270FT /PX-M270T は後継機種では無く上位機種として登場したため、発売開始時の価格はそれぞれ44,980円と39,980円となっており、PX-M160Tより高くなっている。
エコタンク方式であるのは3機種とも同じだ。モノクロ機なのでブラックインク1色である。ただし、PX-M270FT /PX-M270T は「挿すだけ満タン」インク方式になった。これは、注入口にインクボトルを挿し込むと自動的に注入が始まり、満タンになると自動的に止まるという方式だ。それに対してPX-M160Tは旧方式のエコタンクで、大きな注入口にボトルの先端を挿し込んで注入するが、インクをこぼしたりする危険性があるほか、インク残量を目視で確認して注入をやめなければならない。その点でPX-M270FT /PX-M270T は便利だ。インクタンクも、右側に飛び出ており、右側面からしか確認できなかったPX-M160Tに対して、PX-M270FT /PX-M270T のインクタンクは本体に完全に内蔵され、前面からインク残量の確認が出来るよう改良されている。インクはいずれも顔料インクだが、「挿すだけ満タン」インク方式のPX-M270FT /PX-M270T はヤドカリ、PX-M160Tはクツ型番のインクとなる。
PX-M270FT /PX-M270T の印刷速度はA4モノクロ文書が20ipmである。ipmはimage per minuteの略で1分間の印刷枚数を表し、数字の大きい方が高速だ。PX-M160Tでは15ipmだった事を考えると、かなり高速化された。最速値でも39枚/分と高速化している。またファーストプリントも6.0秒と、PX-M160Tより3秒短縮している。これはPrecisionCoreという文書印刷に向いたヘッドを採用したことが大きい。また、印刷速度が向上しただけでなく、印刷解像度も1440dpi×720dpiから1200dpi×2400dpiへとアップしている。字のエッジ部分を小さなドットサイズで表現したり、画像処理技術の向上により、普通紙の文字だけで無く、斜め線のある図面などでもよりくっきり鮮明な印刷が可能となっている。最小インクドロップサイズは非公開ながら、海外の同機能のモデルが2.8plであった事からPX-M270FT /PX-M270T も2.8plだと考えられる。その点でもPX-M160Tの3plよりもやや小さなドットが打てるようになっている。
PX-M270FT /PX-M270T の印刷コストはA4モノクロ文書1枚で0.4円とPX-M160Tよりは0.1円アップしているが、大きな差では無いだろう。インクボトル1本で6000枚印刷が可能なのは3機種とも変わらない。エコタンクへの1回の補充でボトル1本分が入る、つまり満タンまで補充することで6,000枚まで印刷が出来るのは同じだ。
プリント(給紙・排紙関連) |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
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対応用紙サイズ |
名刺・ハガキ・A6〜A4 (最小サイズ54×86mm) |
名刺・ハガキ・A6〜A4 (最小サイズ54×86mm) |
ハガキ・A6〜A4 (最小サイズ89×127mm) |
フチなし印刷 |
− |
− |
− |
給紙方向 (A4普通紙セット可能枚数) |
背面 |
○(手差し/1枚) |
○(手差し/1枚) |
○(100枚) |
前面 |
カセット(250枚・89×127mm以上) |
カセット(250枚・89×127mm以上) |
− |
その他 |
− |
− |
− |
排紙方向 |
天面・前面 |
天面・前面 |
前面 |
排紙トレイ自動開閉 |
− |
− |
− |
用紙種類・サイズ登録 |
− |
− |
− |
用紙幅チェック機能 |
○ |
○ |
○ |
続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙サイズはA6〜A4、ハガキ、洋形封筒1〜4号、長形封筒3号/4号に対応しているのは同じだが、PX-M270FT /PX-M270T は名刺サイズにも直接印刷ができる。名刺作成時に印刷後に切り取る手間が省ける他、少量の印刷でも便利だ。ただし、名刺サイズは背面手差し給紙(後述)のみ対応となる。一方、PX-M160Tもユーザー定義サイズで指定すれば89×127mm、ちょうどL判写真のサイズまでは印刷が可能だ。
給紙方式もPX-M160Tと異なる。PX-M160Tは背面給紙だったが、PX-M270FT /PX-M270T では前面給紙カセットとなった。カセット式なので本体に完全に収納できるため、背面給紙のようめホコリが積もる心配が無い。また、PX-M160Tでは背面給紙トレイが後方に傾くため、本体の後方と上方にスペースが必要だったが、PX-M270FT /PX-M270T は用紙セット時に余分なスペースは必要ない。セットできる枚数もPX-M160Tが100枚だったのに対して、PX-M270FT /PX-M270T は250枚と多く、常時用紙をセットしておいてどんどん使うという用途に向いている。
一方、PX-M160Tの場合は背面給紙なので、背面から給紙された用紙がそのまま前面の排紙トレイに出てくる。一方前面給紙のPX-M270FT /PX-M270T は、給紙された後、後方で180度曲げて方向転換し、前方に向かって進みながら印刷が行われる。そのため、用紙が曲げられてしまう分、厚紙や封筒などの2重になった紙が詰まったりシワになったりすることがある。PX-M270FT /PX-M270T ではその対策として、背面給紙にも対応している。とはいえ、PX-M160Tのような大がかりな物では無く、手差し給紙という通り1枚ずつのセットとなる。その代わり、小さな給紙口カバーを開けるだけで使用でき、後方にスペースがほとんど必要ない。前述の厚紙や封筒などの他、小さすぎて方向転換しにくい名刺用紙の印刷に使うほか、前面給紙カセットにセットしていた用紙と違う用紙に1、2枚だけ印刷したいとき、わざわざカセットの用紙を入れ替える手間無く印刷ができる。ちなみに対応する坪量(1平方メートルあたりの紙の重さで、数字が大きいほど厚いか密度が高いので、紙の曲がりにくい)は、PX-M270FT /PX-M270T の前面給紙カセットは90g/m2なのに対して、背面手差し給紙は、PX-M160Tと同じ256g/m2まで対応しており、厚紙や硬い紙にも対応できる事になる。
排紙方向も異なっている。これまでのインクジェットプリンターは背面給紙だろうと前面給紙だろうと、排紙は前面というのがほとんどであった。一方卓上のレーザープリンターでは天面排紙、つまりプリンタの上の面に印刷された紙が出てくる機種がほとんどである。前方に排紙トレイを伸ばす必要が無いので、印刷時でも収納時と変わらないスペースで印刷ができる。PX-M160Tは排紙トレイを伸ばす上に、背面給紙トレイが後方に傾くので、収納時より163mmも大きくなる。PX-M270FT /PX-M270T は使用時でもサイズが変わらないので、棚などに収納していても印刷時だけ飛び出して邪魔になると言うことが無い点で便利だ。ただ、天面排紙の場合、印刷後に前方で180度曲げて方向転換し、天面の前方から出てくる形になる。前面給紙カセットから給紙した場合は後方で180度曲げ、前方に進みながら印刷し、その後、もう一度180度曲げて排紙する事になる。また厚紙など曲がりにくい用紙を背面手差しから給紙した場合でも、天面に排紙するとすると結局印刷後に180度曲げる必要がある。そこで、レバーによる切り替えで前面からも排紙できるようになっている。これならば、背面手差し給紙・前面排紙なら、用紙が大きく曲げられることが無いため、厚紙や封筒なども安心である。
このように、PX-M270FT /PX-M270T はこれまでのインクジェットプリンターでは珍しい排紙機構を持っており、よりレーザープリンターに近い機種となっている。
プリント(付加機能) |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
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 |
自動両面印刷 |
○(普通紙のみ) |
○(普通紙のみ) |
− |
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 |
− |
− |
− |
写真補正機能 |
− |
− |
− |
自動電源オン/オフ |
−/○ |
−/○ |
−/○ |
PictBridge対応 |
− |
− |
− |
廃インクタンク交換 |
○ |
○ |
− |
その他、プリントの付加機能を見てみよう。PX-M270FT /PX-M270T は自動両面印刷に対応している点がPX-M160Tと異なる。両面文書の印刷に便利だ。また、廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換にも対応している。メンテナンスボックスは、ノズルクリーニング時に排出されるインクを貯めておくタンクで、一杯になると当然交換が必要になる。PX-M160Tを含む大多数の機種は修理による交換になってしまうため、交換費用もある程度かかり、プリンターが手元に無い期間ができてしまう。PX-M270FT /PX-M270T は背面のねじを1本外すとメンテナンスボックスが取り出せるため、ユーザー自身で交換が可能だ。安上がりで、すぐにプリントに復帰できるため、1日でもプリンターが無いと困るというユーザーには必須の機能だ。
スキャン |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
 |
 |
 |
読み取り解像度 |
1200dpi |
1200dpi |
1200dpi |
センサータイプ |
CIS |
CIS |
CIS |
原稿取り忘れアラーム |
− |
− |
− |
ADF |
原稿セット可能枚数 |
35枚 |
− |
30枚 |
原稿サイズ |
A4/レター/リーガル |
− |
A4/レター/リーガル |
両面読み取り |
− |
− |
− |
読み取り速度 |
カラー |
7.0ipm |
− |
2.0ipm |
モノクロ |
7.0ipm |
− |
2.0ipm |
スキャンデーターのメモリカード保存 |
− |
− |
− |
続いて、スキャン機能だが、PX-M270FT /PX-M270T とPX-M160Tのスキャン解像度は同じだ。CIS方式というのも同じだ。ただ、ADFに付いては、PX-M270FT とPX-M270T で違いがある。PX-M270T はADFが非搭載だ。そのため、原稿は1枚ずつフラットベッドスキャナでのスキャンとなる。PX-M160TはADFを搭載していたので、PX-M270T はこの部分は機能ダウンとなる。一方PX-M270FT はPX-M160Tと同じくADFを搭載する。35枚までセット可能で、PX-M160Tよりやや多くなったが、それよりも大きな進化点は読み取り速度だ。PX-M160Tはカラー・モノクロ共に2.0ipmである。つまり1分間に2枚しかスキャンできない。これがPX-M270FT では7.0ipmへとかなり高速化した。例えばADFから原稿を連続で読み取ってコピーするという場合、PX-M160Tはせっかく15ipmで印刷できるのに、スキャンが2ipmであるためこれ以上の速度でコピーできなかった(同じ内容を複数枚の場合は問題ないが)。これが、PX-M270FT では理論上3.5倍の速度でコピーできるようになった。30枚の原稿のコピーやスキャンに、PX-M160Tは15分かかるが、PX-M270Tは4分強で終わる。これは便利だと言えるだろう。
ダイレクト印刷 |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
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 |
 |
カードスロット |
対応メモリカード |
− |
− |
− |
USBメモリー/外付けHDD/外付けDVD対応 |
−/−/− |
−/−/− |
−/−/− |
メモリカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ |
−/− |
−/− |
−/− |
対応ファイル形式 |
− |
− |
− |
色補正機能 |
− |
− |
− |
手書き合成 |
− |
− |
− |
PictBridge対応 |
− |
− |
− |
赤外線通信 |
− |
− |
− |
各種デザイン用紙印刷 |
− |
− |
− |
ダイレクト印刷機能はPX-M270FT 、PX-M270T ともにPX-M160T同様搭載していない。
スマホ/クラウド対応 |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
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スマートフォン連携 |
対応端末 |
iPhone iPod touch iPad (iOS 10.0以降) Android 4.4以降 スマートスピーカー対応 |
iPhone iPod touch iPad (iOS 10.0以降) Android 4.4以降 スマートスピーカー対応 |
iPhone iPod touch iPad (iOS 10.0以降) Android 4.4以降 スマートスピーカー対応 |
NFC対応 |
− |
− |
− |
写真プリント |
○ |
○ |
○ |
ドキュメントプリント |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
Webページプリント |
○ |
○ |
○ |
クラウド連携 |
スマートフォン経由/本体 |
○/− |
○/− |
○/− |
オンラインストレージからの印刷 |
○ |
○ |
○ |
SNSからの印刷 |
− |
− |
− |
写真共有サイトからの印刷 |
− |
− |
− |
メールしてプリント |
○ |
○ |
○ |
リモートプリント |
○ |
○ |
○ |
スキャンしてリモートプリント |
○ |
− |
− |
続いて、スマホ・クラウド対応機能だが、PX-M270FT /PX-M270T は基本的にはPX-M160Tと同等の機能だ。iOSとAndroidに両対応し、写真や各種文書ファイル、Webページの印刷ができる。スマートスピーカーからのプリントにも対応するほか、クラウド上のファイルにアクセスして印刷できる。プリンターにメールをすることで添付ファイルを印刷できる「メールプリント」、外出先からでも通常のプリント操作で自宅のPX-M270FT /PX-M270T に印刷できる「リモートプリントドライバー」にも対応するのも同じだ。ただ、PX-M270FT に限っては、「スキャンtoクラウド」機能を搭載しているので、スキャンして、別の場所にある対応プリンターに印刷する事ができるため、相手にFAXが無くても、簡易FAXのような使い方が可能だ。
コピー機能 |
型番 |
PX-M270FT |
PX-M270T |
PX-M160T |
製品画像 |
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等倍コピー |
○ |
○ |
○(A4/B5のみ) |
拡大縮小 |
倍率指定 |
○(25〜400%) |
○(25〜400%) |
○(25〜400%) |
オートフィット |
○ |
○ |
○ |
定型変倍 |
○ |
− |
− |
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー |
− |
− |
− |
写真焼き増し風コピー |
− |
− |
− |
割り付け(2面/4面) |
○/− |
○/− |
−/− |
バラエティコピー |
IDコピー 影消しコピー パンチ穴消しコピー |
IDコピー 影消しコピー パンチ穴消しコピー |
IDコピー |
続いてコピー機能を見てみよう。等倍と拡大縮小コピーが行える点ではPX-M160Tと同じだが、PX-M270FT /PX-M270T は細かなところで機能が強化されている。まずコピー時に使える用紙は、PX-M160TがA4とB5サイズのみだったが、PX-M270FT /PX-M270T は、A4/A5/A6/B5/B6/ハガキ/六切/ハイビジョン/KG/2L判/L判の他、長形3・4号、洋形1・2・3・4号の封筒にも対応している。また、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小設定ができる点と、自動で原稿サイズを認識して拡大縮小する「オートフィット」はPX-M160Tでも対応していたが、PX-M270FT に限って、原稿サイズと用紙サイズの組み合わせを選ぶ「定型変倍」にも対応している。またPX-M160Tは、免許証などのカードの裏面と表面を1枚の用紙に並べてコピーできる「IDコピー」に対応していたが、PX-M270FT /PX-M270T は2枚の原稿を1枚に割り付ける2アップコピーと、原稿の周囲の影を消せる「影消しコピー」と、「パンチ穴消しコピー」にも対応するなど、かなり便利になっている。
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