小ネタ集
新旧プリンター比較
2019年春発売のプリンターを旧機種と比較する
(2019年8月16日公開)

表中の赤文字は旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります。

PX-S06とPX-S05を徹底比較する

 PX-S05はバッテリーを内蔵しながら、重量1.6kgと軽量なモバイルプリンターであった。それ以外にもUSB充電対応や小さいながらも液晶モニタの内蔵、Wi-Fi機能も搭載するなど、隙の無い製品であった。今回、4年ぶりに新製品PX-S06となったが、一体どこが変化したのか詳しく見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番
PX-S06
PX-S05
製品画像


発売日
2019年5月17日
2015年5月17日
発売時の価格
27,980円
29,980円
インク
色数
4色
4色
インク構成
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンダ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンダ
イエロー
カートリッジ構成
黒独立、カラー3色一体
黒独立、カラー3色一体
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(つよインク200X)
インク型番
82番
82番
ノズル数
357ノズル
357ノズル
カラー:各59ノズル
ブラック:180ノズル
カラー:各59ノズル
ブラック:180ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A
3pl(MSDT)
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
63秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
4.0ipm(AC電源)
4.0ipm(外付けバッテリー)
2.0ipm(内蔵バッテリー)
4.0ipm(AC電源)
2.0ipm(内蔵バッテリー)
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
7.0ipm(AC電源)
7.0ipm(外付けバッテリー)
3.5ipm(内蔵バッテリー)
7.0ipm(AC電源)
3.5ipm(内蔵バッテリー)
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
26.1円
A4カラー文書
12.9円
12.9円
A4モノクロ文書
6.8円
6.8円

 まずは、PX-S06とPX-S05の画質や速度などを比較したいが、その前にPX-S06とPX-S05の大きな違いについて説明しておこう。詳細は後述するとして、PX-S06は内蔵バッテリーとAC電源、USB給電以外に、外付けのバッテリー(別売り)にも対応した。それよって各項目に外付けバッテリー時の数値が追加されている。ちなみに発売開始時の価格はPX-S05の29,980円から、PX-S06では27,980円へと安くなっているが、この間PX-S05の価格は27,980円程度に下がっていたので、新機種だからといって価格をいったん元に戻すのでは無く、あくまでPX-S05に機能が追加されただけというスタンスのようだ。
 インクの色数、インク構成、使用するインクカートリッジまで、PX-S06はPX-S05と同じだ。そのため、印刷コスト面でも違いは無い。最小インクドロップサイズは非公表となっているがプリントエンジンは同等であることから、おそらく3plでMSDT対応だろう。
 ノズル数も同じであるため、印刷速度も同等だが、PX-S05では、AC電源の時はA4カラー文書は4.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数。数字が大きいほど高速)、A4モノクロ文書は7.0ipmだが、内蔵バッテリー動作時は、それぞれ2.0ipmと3.5ipmと半分になっていた。ではPX-S06が新たに対応した外付けバッテリー動作時はというと、それぞれ4.0ipmと7.0ipm、つまりAC電源動作時と同じ速度になっている。バッテリー動作でも速度を落とさずに印刷できるのは便利だ。


プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-S06
PX-S05
製品画像
対応用紙サイズ
名刺〜A4
フチなし印刷はL判/KG/ハガキ/ハイビジョン/名刺のみ
名刺〜A4
フチなし印刷はL判/KG/ハガキ/ハイビジョン/名刺のみ
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(20枚・ハガキ5枚)
○(20枚・ハガキ5枚)
前面
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(用紙差し込み連動)
○(用紙差し込み連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。名刺〜A4用紙に対応するが、はがき・KGサイズより大きい用紙にはフチなし印刷ができない点や、給紙枚数は普通紙20枚、はがき5枚という点など全て同等だ。

プリント(付加機能)
型番
PX-S06
PX-S05
製品画像
自動両面印刷
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
PictBridge対応
廃インクタンク交換
−/○
−/○

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能やディスクレーベル印刷機能は搭載せず、自動電源オフ機能を搭載、廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換に対応する点も同じだ。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-S06
PX-S05
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
○(受信のみ)
○(受信のみ)

 続いて、スマホ・クラウド対応機能だが、この点も全く同等だ。写真、各種ドキュメント、Webページの印刷に対応し、メールプリントやリモートプリント等にも対応する。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-S06
PX-S05
製品画像
液晶ディスプレイ
1.44型
1.44型
操作パネル
物理ボタン式
物理ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11ac/a/n/g/b
(5GHz対応)
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
電源
AC電源
内蔵バッテリー
外付けバッテリー(別売)USB(1.5A未満は充電)
AC電源
内蔵バッテリー
USB(1.5A未満は充電)
バッテリー
バッテリー駆動
○(内蔵/外付け(別売:9,980円))
○(内蔵)
印刷可能枚数
【内蔵バッテリー】
100枚(モノクロ)
50枚(カラー)
【外付バッテリー】
740枚(モノクロ)
360枚(カラー)
100枚(モノクロ)
50枚(カラー)
充電時間
【内蔵バッテリー】
2.5時間(AC電源/USB 1.5A)
10時間(USB 0.5A)
【外付バッテリー】
2.5時間(AC電源)
2.5時間(AC電源/USB 1.5A)
10時間(USB 0.5A)
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数
1.5万枚
1.5万枚
外形寸法(横×奥×高)
309×156×61mm
(外付けバッテリー装着時:309×184×61mm)
309×154×61mm
重量
1.7kg
(外付けバッテリー装着時:2.0kg)
1.6kg
本体カラー
ブラック/ホワイト
ブラック/ホワイト

 最後に操作パネルやインタフェース、本体サイズなどを比較してみよう。PX-S06の操作パネル部はPX-S05と全く同じだ。1.44型液晶と各種ボタンで操作するという点だけで無く、液晶の左側に電源ボタン、右側に4方向のカーソルボタンと中央にOKボタン、その右にキャンセルボタンという並びも全く同じだ。
 インタフェースに関してはUSBと無線LANに対応しているのは同じだ。しかしPX-S06には3つの改良点がある。まずPX-S05はIEEE802.11n/g/bに対応していたが、PX-S06はIEEE802.11ac/n/a/g/bに対応している。転送速度で言うと、PX-S05とPX-S06のIEEE802.11n規格は共にHT20(20MHz)にしか対応しないという事なので、仮にMIMO非対応だとすると72.2Mbpsである事になる(最大通信速度は非公表なのであくまで予測)。一方PX-S06ではIEEE802.11acに対応している。こちらもMIMO非対応だとしても、433Mbpsとなり速度は一気に6倍となる。印刷速度がそれほど高速では無いのでIEEE802.11nでも問題ないとも思えるが、より高速な規格に対応したことにより速度不足が不安が大幅に減ることになる。もう一つ、PX-S05は2.4GHz帯の周波数しか利用できなかったが、PX-S06ではIEEE802.11ac/n/aは5GHz帯にも対応した。2.4GHz帯はBluetoothなどと帯域が同じだし、電子レンジの影響を受けやすい。一方5GHz帯は、基本的に無線LANでしか使用しないため、電波干渉が起こりにくく安定する。自宅に置く分にも電子レンジを使うと無線LANが切れるという事も無くなるし、持ち出して使用する場合も、近くでどんな電波干渉があるか分からないので、電波干渉の起こりにくい5GHz帯対応は、印刷中に突然無線LANが途切れて印刷が止まるという心配を軽減させることができるわけだ。通信速度の向上と、通信の安定の2つの改良がなされたわけである。さらに、過去に設定済みの無線LANのエリア内に入ると、スマートフォンのように自動で接続する機能が追加された。いちいち液晶を見て接続をする手間が省け便利だろう。
 電源は、PX-S05でも、付属のACアダプタ、内蔵バッテリーの他、USB充電器やモバイルバッテリーからの給電でも動作した。PX-S06ではこれらに加えて、別売りの外付けバッテリーでの動作にも対応した。外付けバッテリーは9,980円となっている。なお、USBからの給電には1.5A以上の出力が必要で、パソコンのUSBポートや1.5A未満の充電器からは動作させるほどの電力ではないため、電源オフ状態で内蔵バッテリーへの充電にしか対応していない。また、内蔵バッテリーはUSB充電が可能だが、外付けバッテリーはAC電源からの充電にしか対応しない。外付けバッテリーはPX-S06に接続した状態で、PX-S06にACアダプターを接続して充電するのが基本スタイルだが、外付けバッテリーを取り外した状態で、直接ACアダプターを接続して充電することも可能だ。外付けバッテリーにはACアダプターは付属しないので、PX-S06のACアダプターを利用することになる。つまり電源からは少し離れた場所で使用する場合、外付けバッテリーが切れた場合、一時的に内蔵バッテリーやモバイルバッテリー、又は予備のバッテリーなどで対応している間に、電源のとれるところで外付けバッテリーを充電させておくことが可能である。様々な充電・給電方法が提供され、PX-S06はより柔軟な使い方が可能になっている。
 バッテリーによる印刷可能枚数だが、内蔵バッテリーの場合A4モノクロ文書なら100枚、A4カラー文書なら50枚であり、これはPX-S06もPX-S05も変わらない。つまり内蔵バッテリーの容量は変わっていないことになる。一方PX-S06の外付けバッテリーの場合、A4モノクロ文書が740枚、A4カラー文書が360枚と、7倍以上の枚数を印刷できる事になる。バッテリーでの印刷枚数が多い場合には外付けバッテリーは非常に便利だ。ちなみに充電時間は内蔵バッテリーはAC電源や1.5A以上のUSB充電器で2時間半、パソコンのUSBポートのような0.5AのUSB充電では10時間となる。一方外付けバッテリーはAC電源からの充電しか対応しないが、充電時間は2時間半と、内蔵バッテリと同じ時間で充電ができる。
 対応OSや耐久枚数に違いは無い。PX-S06の外形寸法は横幅や高さはPX-S05と変わらず、奥行きだけが2mm大きくなった。重量も100gアップの1.7kgだが、違いを感じるほどの差では無いだろう。外付けバッテリー装着時は奥行きが28mm大きくなり、重量が2.0kgになるが、それでも十分軽量、コンパクトだ。



 PX-S05でも、他社のモバイルプリンターと比べてバッテリを内蔵し、給電方式も複数用意するなど、完成度の高い製品だった。しかし、バッテリでの動作が主体の場合、印刷速度が半分に落ち、モノクロで100枚、カラーは50枚というのは心許ない枚数であった。USB給電が可能とはいえ、やはりプリンター単体でより印刷枚数が多くできる方が便利だろう。一方でバッテリ容量を増やすと重量やサイズの増加につながり、今度はバッテリでの動作はそれほど多くない人には使いにくくなる。そこで、外付けバッテリーという形での対応は、ベストな選択肢だったと言える。これでモノクロ740枚、カラー360枚と7倍以上の印刷が可能になっただけで無く、AC電源時と同じ速度で印刷できるようになった。また「外付け」であるため、複数用意しておけば交換してさらに印刷が可能だ。しかも、使い終えたバッテリは本体に装着しなくても、PX-S06のACアダプターで充電ができるという隙の無い仕様だ。さらに無線LANも強化され、転送速度の向上と電波干渉を受けにくくなったのも、持ち出してどんな環境で使うか分からないモバイルプリンターではうれしい強化点だ。バッテリーでの動作を主体に考えている人にとって、非常に使いやすい改良がなされ、最強のモバイルプリンターといっても過言では無い製品に仕上がったと言えるだろう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/


PX-S06B
PX-S06W