小ネタ集
新旧プリンター比較
2019年春発売のプリンターを旧機種と比較する
(2019年8月16日公開)
表中の赤文字は旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります。 |
PX-S270TとPX-S170T/PX-S160Tを徹底比較する |
最近ではエコタンク搭載機種が増えているが、特に機種の増加比率の高いのが、モノクロ専用機だ。最初にエコタンク搭載モデルが発売されたときは、モノクロ機は、複合機のPX-M160TとプリンターのPX-S170Tだけだった。2018年10月にプリンターのPX-S170TとPX-S170UTが追加されたと思ったら、2019年5月に上位機種として複合機のPX-M270FTとPX-M270T、プリンターのPX-S270T が追加された。ここでは、プリンターではPX-S270T が従来機のPX-S170T、PX-S160Tとどう変わったのかを見ていこう。
プリント(画質・速度・コスト) |
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新機種 |
参考機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-S270T |
PX-S170T |
PX-S160T |
製品画像 |
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発売日 |
2019年5月17日 |
2018年10月5日 |
2016年2月4日 |
発売時の価格 |
32,980円 |
24,980円 |
19,980円 |
インク |
カートリッジ構成 |
「挿すだけ満タン」エコタンク (オフキャリッジ) |
「挿すだけ満タン」エコタンク (オンキャリッジ) |
エコタンク (オフキャリッジ) |
顔料/染料系 |
顔料 |
顔料 |
顔料 |
インク型番 |
ヤドカリ |
ヤドカリ |
クツ |
ノズル数 |
800ノズル |
360ノズル |
360ノズル |
最小インクドロップサイズ |
N/A(2.8pl?) |
N/A(3pl?) |
3pl |
最大解像度 |
1200×2400dpi |
1440×720dpi |
1440×720dpi |
PrecisionCoreプリントヘッド |
○ |
− |
− |
印刷速度(A4モノクロ文書) |
20ipm (最速39枚/分) |
15ipm (最速32枚/分) |
15ipm (最速34枚/分) |
ファーストプリント(A4モノクロ文書) |
6.0秒 |
8.0秒 |
9.0秒 |
印刷コスト(A4モノクロ文書) |
0.4円 |
0.4円 |
0.3円 |
印刷可能枚数 |
インクボトル1本 |
6000ページ |
6000ページ |
6000ページ |
エコタンク1回補充 |
6000ページ |
2000ページ |
6000ページ |
まずは、PX-S270T とPX-S170T/PX-S160Tの画質や速度などを比較してみよう。ちなみにPX-S270T は後継機種では無く上位機種として登場したため、発売開始時の価格は32,980円と、PX-S170TやPX-S160Tより高くなっている。
エコタンク方式であるのは3機種とも同じだ。モノクロ機なのでブラックインク1色である。ただし、微妙に仕様が異なっている。PX-S270T はPX-S170Tと同じく「挿すだけ満タン」インク方式だ。これは、注入口にインクボトルを挿し込むと自動的に注入が始まり、満タンになると自動的に止まるという方式だ。それに対してPX-S160Tは旧方式のエコタンクで、大きな注入口にボトルの先端を挿し込んで注入するが、インクをこぼしたりする危険性があるほか、インク残量を目視で確認して注入をやめなければならない。その点でPX-S270T とPX-S170Tは便利だ。ではこの2機種は同じかと言えば、タンクの場所に違いがある。PX-S270T はオフキャリッジ方式で、左右に動くヘッドとは異なる場所にタンクが固定されており、ヘッドとはチューブでつながっている。一方PX-S170Tはオンキャリッジ方式で、ヘッドの真上にタンクがあり、印刷時にはヘッドと共に左右に動く。
インクはいずれも顔料インクだが、「挿すだけ満タン」インク方式のPX-S270T はヤドカリ、PX-S160Tはクツ型番のインクとなる。その点でPX-S270T はPX-S170Tとは変わらない。
PX-S270T の印刷速度はA4モノクロ文書が20ipmである。ipmはimage per minuteの略で1分間の印刷枚数を表し、数字の大きい方が高速だ。PX-S160T、PX-S170Tでは15ipmだった事を考えると、かなり高速化された。最速値でも39枚/分と高速化している。またファーストプリントも6.0秒と、PX-S170Tより2秒短縮している。これはPrecisionCoreという文書印刷に向いたヘッドを採用したことが大きい。また、印刷速度が向上しただけでなく、印刷解像度も1440dpi×720dpiから1200dpi×2400dpiへとアップしている。字のエッジ部分を小さなドットサイズで表現したり、画像処理技術の向上により、普通紙の文字だけで無く、斜め線のある図面などでもよりくっきり鮮明な印刷が可能となっている。最小インクドロップサイズは非公開ながら、海外の同機能のモデルが2.8plであった事からPX-S270T も2.8plだと考えられる。その点でもPX-S170TやPX-S160Tの3pl(PX-S170Tは同じく海外モデルからの推測)よりもやや小さなドットが打てるようになっている。
PX-S270T の印刷コストはA4モノクロ文書1枚で0.4円とPX-S170Tと変わらない。PX-S160Tよりは0.1円アップしているが、大きな差では無いだろう。インクボトル1本で6000枚印刷が可能なのは3機種とも変わらない。ただし、エコタンクへの1回の補充で印刷できる枚数は、PX-S160Tでは6000枚だったところ、PX-S170Tでは2000枚に減っていたが、PX-S270T では6000枚に戻っている。つまりPX-S270T とPX-S160Tは1回の補充でボトル1本分入れる事ができるが、PX-S170Tは1/3しか入れることができないわけだ。これが前述のオフキャリッジ方式かオンキャリッジ方式かが影響しており、左右に動くオンキャリッジ方式ではあまり重くできず、ボトル1本が入る大きなエコタンクにすることができなかったと言える。その点ではオフキャリッジ方式に戻ることで、インクの補充回数が減ったと言える。「挿すだけ満タン」インク方式の手軽さと、6000枚分のインクが入るエコタンクの両方に対応したのはPX-S270T が初となる。
プリント(給紙・排紙関連) |
型番 |
PX-S270T |
PX-S170T |
PX-S160T |
製品画像 |
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対応用紙サイズ |
名刺・ハガキ・A6〜A4 (最小サイズ54×86mm) |
ハガキ・A6〜A4 (最小サイズ89×127mm) |
ハガキ・A6〜A4 (最小サイズ89×127mm) |
フチなし印刷 |
− |
− |
− |
給紙方向 (A4普通紙セット可能枚数) |
背面 |
○(手差し/1枚) |
− |
○(100枚) |
前面 |
カセット(250枚・89×127mm以上) |
トレイ(150枚) |
− |
その他 |
− |
− |
− |
排紙方向 |
天面・前面 |
前面 |
前面 |
排紙トレイ自動開閉 |
− |
− |
− |
用紙種類・サイズ登録 |
− |
− |
− |
用紙幅チェック機能 |
○ |
○ |
○ |
続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙サイズはA6〜A4、ハガキ、洋形封筒1〜4号、長形封筒3号/4号に対応しているのは同じだが、PX-S270T は名刺サイズにも直接印刷ができる。名刺作成時に印刷後に切り取る手間が省ける他、少量の印刷でも便利だ。ただし、名刺サイズは背面手差し給紙(後述)のみ対応となる。一方、PX-S170TとPX-S160Tもユーザー定義サイズで指定すれば89×127mm、ちょうどL判写真のサイズまでは印刷が可能だ。
給紙方式はPX-S170TともPX-S160Tとも異なる。PX-S160Tは背面給紙、PX-S170Tは前面給紙トレイだったが、PX-S270T では前面給紙カセットとなった。PX-S170Tと同じように見えるが、こちらはトレイ式で、前面のカバーを倒したところに用紙を乗せてセットするようになっている。用紙をセットした状態ではカバーを閉じることはできないし、ただ乗せているだけなので、そのままで置いておくとホコリが積もってしまう。一方PX-S270T はカセット式なので、カセットを引き出し、用紙を入れて本体に収納する。カセットは本体に完全に収納できるので、用紙セット時に余分なスペースは必要ないし、内部に収納するのでホコリが積もる心配も無い。セットできる枚数もPX-S160Tが100枚、PX-S170Tが150枚だったのに対して、PX-S270T は250枚と多く、常時用紙をセットしておいてどんどん使うという用途に向いている。
一方、PX-S160Tの場合は背面給紙なので、背面から給紙された用紙がそのまま前面の排紙トレイに出てくる。一方前面給紙のPX-S270T やPX-S170Tは、給紙された後、後方で180度曲げて方向転換し、前方に向かって進みながら印刷が行われる。そのため、用紙が曲げられてしまう分、厚紙や封筒などの2重になった紙が詰まったりシワになったりすることがある。PX-S270T ではその対策として、背面給紙にも対応している。とはいえ、PX-S160Tのような大がかりな物では無く、手差し給紙という通り1枚ずつのセットとなる。その代わり、小さな給紙口カバーを開けるだけで使用でき、後方にスペースがほとんど必要ない。前述の厚紙や封筒などの他、小さすぎて方向転換しにくい名刺用紙の印刷に使うほか、前面給紙カセットにセットしていた用紙と違う用紙に1、2枚だけ印刷したいとき、わざわざカセットの用紙を入れ替える手間無く印刷ができる。ちなみに対応する坪量(1平方メートルあたりの紙の重さで、数字が大きいほど厚いか密度が高いので、紙の曲がりにくい)は、PX-S270T の前面給紙カセットやPX-S170Tでは90g/m2なのに対して、PX-S270Tの背面手差し給紙は、PX-S160Tと同じ256g/m2まで対応しており、厚紙や硬い紙にも対応できる事になる。
排紙方向も異なっている。これまでのインクジェットプリンターは背面給紙だろうと前面給紙だろうと、排紙は前面というのがほとんどであった。一方卓上のレーザープリンターでは天面排紙、つまりプリンタの上の面に印刷された紙が出てくる機種がほとんどである。前方に排紙トレイを伸ばす必要が無いので、印刷時でも収納時と変わらないスペースで印刷ができる。PX-S170Tの場合、排紙トレイを245mmも伸ばす必要があるし、PX-S160Tは排紙トレイを伸ばす上に、背面給紙トレイが後方に傾くので、やはり収納時より263mmも大きくなる。PX-S270T は棚などに収納していても印刷時だけ飛び出して邪魔になると言うことが無い点で便利だ。ただ、天面排紙の場合、印刷後に前方で180度曲げて方向転換し、天面の前方から出てくる形になる。前面給紙カセットから給紙した場合は後方で180度曲げ、前方に進みながら印刷し、その後、もう一度180度曲げて排紙する事になる。また厚紙など曲がりにくい用紙を背面手差しから給紙した場合でも、天面に排紙するとすると結局印刷後に180度曲げる必要がある。そこで、レバーによる切り替えで前面からも排紙できるようになっている。これならば、背面手差し給紙・前面排紙なら、用紙が大きく曲げられることが無いため、厚紙や封筒なども安心である。
このように、PX-S270T はこれまでのインクジェットプリンターでは珍しい排紙機構を持っており、よりレーザープリンターに近い機種となっている。
プリント(付加機能) |
型番 |
PX-S270T |
PX-S170T |
PX-S160T |
製品画像 |
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自動両面印刷 |
○(普通紙のみ) |
− |
− |
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 |
− |
− |
− |
写真補正機能 |
− |
− |
− |
自動電源オン/オフ |
−/○ |
−/○ |
−/○ |
PictBridge対応 |
− |
− |
− |
廃インクタンク交換 |
○ |
− |
− |
その他、プリントの付加機能を見てみよう。PX-S270T は自動両面印刷に対応している点がPX-S170T/PX-S160Tと異なる。両面文書の印刷に便利だ。また、廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換にも対応している。メンテナンスボックスは、ノズルクリーニング時に排出されるインクを貯めておくタンクで、一杯になると当然交換が必要になる。PX-S170TやPX-S160Tを含む大多数の機種は修理による交換になってしまうため、交換費用もある程度かかり、プリンターが手元に無い期間ができてしまう。PX-S270T は背面のねじを1本外すとメンテナンスボックスが取り出せるため、ユーザー自身で交換が可能だ。安上がりで、すぐにプリントに復帰できるため、1日でもプリンターが無いと困るというユーザーには必須の機能だ。
スマホ/クラウド対応 |
型番 |
PX-S270T |
PX-S170T |
PX-S160T |
製品画像 |
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スマートフォン連携 |
対応端末 |
iPhone iPod touch iPad (iOS 10.0以降) Android 4.4以降 スマートスピーカー対応 |
iPhone iPod touch iPad (iOS 10.0以降) Android 4.4以降 スマートスピーカー対応 |
iPhone iPod touch iPad (iOS 10.0以降) Android 4.4以降 スマートスピーカー対応 |
NFC対応 |
− |
− |
− |
写真プリント |
○ |
○ |
○ |
ドキュメントプリント |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
Webページプリント |
○ |
○ |
○ |
クラウド連携 |
スマートフォン経由/本体 |
○/− |
○/− |
○/− |
オンラインストレージからの印刷 |
○ |
○ |
○ |
SNSからの印刷 |
− |
− |
− |
写真共有サイトからの印刷 |
− |
− |
− |
メールしてプリント |
○ |
○ |
○ |
リモートプリント |
○ |
○ |
○ |
スキャンしてリモートプリント |
− |
− |
− |
続いて、スマホ・クラウド対応機能だが、PX-S270T はPX-S170T/PX-S160Tと同等の機能だ。iOSとAndroidに両対応し、写真や各種文書ファイル、Webページの印刷ができる。スマートスピーカーからのプリントにも対応するほか、クラウド上のファイルにアクセスして印刷したり、プリンターにメールをすることで添付ファイルを印刷したり、外出先からでも通常のプリント操作で自宅のPX-S270T に印刷できる機能も搭載する。
操作パネル/インタフェース/本体サイズ |
型番 |
PX-S270T |
PX-S170T |
PX-S160T |
製品画像 |
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液晶ディスプレイ |
− |
− |
− |
操作パネル |
− |
− |
− |
インターフェイス |
USB他 |
USB2.0×1 |
USB2.0×1 |
USB2.0×1 |
無線LAN |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
有線LAN |
100BASE-TX |
− |
100BASE-TX |
対応OS |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
耐久枚数 |
10万ページ |
10万ページ |
5万ページ |
外形寸法(横×奥×高) |
375×347×151mm |
375×267×161mm |
425×267×148mm |
重量 |
4.5kg |
3.7kg |
3.4kg |
本体カラー |
ホワイト |
ホワイト |
ブラック |
同梱インク |
インクボトル1本 |
インクボトル1本 |
インクボトル2本 |
最後に操作パネルやインタフェース、本体サイズなどを比較してみよう。PX-S270T は単機能プリンターであるため、液晶ディスプレイや操作パネルは搭載していない。インタフェースはUSB2.0と無線LAN、有線LANに対応している。PX-S170Tでは有線LAN非対応だったが、PX-S160Tと同じく有線LANまで対応となった。対応OSも同じだ。耐久枚数は10万枚とかなり強く作られており、PX-S170Tと同等、PX-S160Tの倍になっている。
本体サイズは、横幅はPX-S170Tと同じ375mmで、家庭用プリンターと比較してもかなりコンパクト、PX-S160Tより5cm小さいが、PX-S160Tはエコタンクが右側に飛び出ていることも影響している。高さは151mmで他機種と大きく変わらない。奥行きは347mmと、PX-S170TやPX-S160Tの267mmと比べると8cm大きいが、前述の天面排紙が功を奏し、印刷時はPX-S170Tは512mm、PX-S160Tは530mmまで大きくなるのに対して、PX-S270T は347mmのままで使用できる。その点では使用時は最もコンパクトと言えるだろう。
付属のインクはセットアップ用では無く、別売りの製品と同等のインクボトルが1本付属する。これはPX-S170Tと同じだ。PX-S160Tでは2本付属していたが、1本でもかなりの枚数が印刷できるため、本体価格は多少高くても元が取れるようになっている。
PX-S270T は、毎日のように何十枚も印刷するといった、よりハードな使い方にも対応できるよう、印刷速度を上げ、給紙方式を入れたままにしておけるカセット式にしつつ、枚数も増加、両面印刷に対応した。本体の耐久枚数もPX-S160Tより高く、エコタンクの容量もPX-S170Tより多いため、インク補充の手間が省ける。なにより天面排紙はスペース面でのメリットが大きく、モノクロプリント専用機を探している人だけで無く、モノクロレーザーを検討している人にとっても十分に魅力的な製品に進化したと言えるだろう。
(H.Intel)
【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
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