プリンター徹底比較
2019年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2020年1月17日公開)
表中の赤文字は旧機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1からの変更点となります。 |
EP-M552T はEW-M571Tの純粋な後継製品というよりは、より手軽にエコタンクを購入できるようにしたモデルと言える。エコタンク搭載プリンターの中では最も低価格なモデルという点ではEW-M571Tと同じだが、EW-M571TがEW-M770TやEW-M630Tの下位モデルという位置づけだったのに対して、EP-M552T は同時期に発売されたEW-M752Tの下位モデルで、これまでとは異なる点も多い。どの点が変わったのか詳しく見ていこう。
プリント(画質・速度・コスト) |
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新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
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発売日 |
2019年10月24日 |
2017年9月14日 |
発売時の価格 |
29,980円 |
39,980円 |
インク |
色数 |
4色 |
4色 |
インク構成 |
フォトブラック シアン マゼンタ イエロー |
ブラック(顔料) シアン マゼンタ イエロー |
カートリッジ構成 |
エコタンク方式 (挿すだけ満タンインク方式・オンキャリッジ式) |
エコタンク方式 (挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
顔料/染料系 |
染料(つよインク) |
染料(カラー)/顔料(ブラック) (アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年) |
インク型番 |
タケトンボ (増量/使い切りサイズ) |
ヤドカリ(顔料) ハリネズミ(染料) |
ノズル数 |
720ノズル |
357ノズル |
各色180ノズル |
カラー:59ノズル ブラック:180ノズル |
最小インクドロップサイズ |
N/A(3pl?)(MSDT) |
3pl(MSDT) |
最大解像度 |
5760×1440dpi |
5760×1440dpi |
その他高画質化機能 |
− |
− |
印刷速度 |
L判縁なし写真(メーカー公称) |
33秒 |
76秒 |
A4普通紙カラー(ISO基準) |
6.0ipm |
5.0ipm |
A4普通紙モノクロ(ISO基準) |
6.0ipm |
10.5ipm |
印刷コスト |
L判縁なし写真 |
増量:8.4円 使い切りサイズ:8.7円 |
5.9円 |
A4カラー文書 |
増量:2.7円 使い切りサイズ:2.9円 |
0.9円 |
A4モノクロ文書 |
1.2円 |
0.4円 |
インクボトル1本での印刷枚数 |
ブラック |
増量:2,200ページ 使い切りサイズ:600ページ |
7,500ページ |
カラー |
増量:3,700ページ 使い切りサイズ:1,000ページ |
6,000ページ |
1回補充での印刷枚数 |
ブラック |
600ページ |
7,500ページ |
カラー |
1,000ページ |
6,000ページ |
まずは、EP-M552T の販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はEP-M552T は29,980円、EW-M571Tが39,980円と1万円の差がある。EW-M571Tは最終的に34,980円まで下げられているが、それでも新製品ながら5千円の安い価格設定である。
それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。インク色数は4色で、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローという組み合わせは同じだ。しかし、EW-M571Tは「EW」型番が示すとおり、ブラックは顔料インク、カラーは染料インクだった。一方EP-M552T は「EP」型番が示すとおり、ブラックも含め4色とも染料インクだ。実はEW-M571Tの更に前の機種はEP-M570Tで4色染料だったため、2世代前に戻ったとも言えるが、エコタンクの最下位モデルは、写真重視で行くか、文書重視で行くかが決まらないようだ。
とはいえ、インク構成の違いはそのまま画質に影響する。写真や年賀状の通信面に印刷する場合、EP-552Tは4色インクでそれなりに綺麗に印刷できる。最小インクドロップサイズは非公表ながら3plと予想され、上位機種よりは粒状感があるが、上位機種のEW-M752Tでも染料インクは4色で、使用するインクも同じである事から発色は変わらず、若干、粒状感の面で劣る以外は十分高画質に印刷できる。一方、EW-M571Tはブラックが顔料インクであったため、写真や年賀状の通信面印刷時にブラックインクが使えず、カラー3色で黒を表現していた。当然完全な黒にはならず、濃いグレーや濃い茶色になってしまうため、全体的なコントラストが悪くなっていた。その点では、EP-M552T では実用的なレベルになっていると言える。一方EW-M571Tは顔料ブラックのおかげで、普通紙への文書印刷時の黒色にメリハリがあったが、EP-M552T ではその点では劣ることになる。ただし、グレーなどはカラーインクを使用して表現するため、EW-M571Tの顔料ブラックは完全な黒色にしか使えず、また背景がカラーの場合なども使えないことから、使用できる状況は限られていた。最近では染料インクでも、文字や細線を綺麗に見せる機能が搭載されていたり、普通紙印刷時の写真の発色も改善されてきており、その点では、大きく劣るわけではないだろう。
EP-M552T のインクもう一つの改善点は写真の耐保存性だ。EP-M552T のインクは「つよインク」という名称が付けられている。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年という非常に耐保存性の高いインクだ。これはカートリッジ方式のカラリオシリーズが採用する「つよインク200」と同じである。「つよインク200」が登場した頃はアルバム保存200年で、アルバム保存100年の「つよインク」との区別のために付けられたが、その後アルバム保存300年となり数字と合わなくなっている上に、アルバム保存100年の「つよインク」採用製品が無くなってからずいぶん経つため、わかりやすく「つよインク」とされたと思われる。一方EW-M571Tはインクに名称はないが、アルバム保存300年、耐光性7年、耐オゾン性2年となっており、耐光性と耐オゾン性で大きく劣る。EP-M552T は飾っていても色あせが少なくなったと言えるだろう。
ノズル数は、ブラックは180ノズルで同等だが、カラーは各色59ノズルから各色180ノズルに大幅に増加した。そのため、L判写真の印刷速度は76秒から33秒に大幅に高速化した。76秒というのはあまりにも遅いが、33秒なら実用的なレベルと言えるだろう。文書印刷もカラーは5.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数。数字が大きいほど高速)から6.0ipmにやや高速化しているのも、カラーのノズル数の増加によるものだろう。写真印刷ほど劇的でないのは、インク構成からEW-M571Tが文書印刷向けの調整がなされていた所を、写真印刷にも向いた調整がなされたためと思われる。そのため同じノズル数のモノクロ文書は10.5ipmから6.0ipmへ大きく落ちている。A4カラー文書も同じノズル数なら、劣っていたところを、ノズル数の増加でなんとか「やや高速化」というレベルにとどまっているのだと考えられる。とはいえ、インク構成を考えると妥当な構成で、また6.0ipmならばそれほど遅くは無いため、写真も文書も実用的になったとも言える。
インクはエコタンク方式であるのは当然だが、「挿すだけ満タンインク方式」というのも同じだ。これはインクボトルを注入口に挿し込むと注入が始まり、満タンになると自動ストップするもので、さらに注入口の形が色によって異なるので間違った色を注入しないよう工夫されている非常に使いやすい物だ。ただし、EP-M552T は「オンキャリッジ式」、EW-M571Tは「オフキャリッジ式」という違いがある。「オンキャリッジ式」とは、プリントヘッドの上にインクタンクがあり、印刷時にヘッド共に左右に動く方式だ。一方「オフキャリッジ式」は、プリントヘッドとは別の所にインクタンクが固定されており、プリントヘッドとはチューブでつながれている方式である。「オンキャリッジ式」はインクタンクを置くスペースが不要であるため本体を小型化でき、またチューブでつながないためにインク詰まりの発生も少なく、初期設定時のインク充填に使うインク量も節約できる。一方で左右に動くパーツに乗せるためインクタンクが大型化できないというデメリットがある。「オフキャリッジ式」はその逆で、インクタンクを大型化できるが、長いチューブでつなぐために初期充填時のインク消費が多いことと、やや詰まりやすいのはデメリットだ。この特徴の違いが、印刷コストに影響することになる。
EW-M571Tのインクボトルは、各1本ずつでA4カラー文書を印刷すると、ブラックは7,500ページ、カラーは各6,000ページまで印刷することができる。そしてインクタンクには、このインクボトル1本分が全て注入できる様になっているため、1回の補充での印刷枚数も同等となる。一方、EP-M552T の場合、1回の補充でA4カラー文書を印刷すると、ブラックは600ページ、カラーは各1,000ページ印刷できる。EW-M571Tと比べるとかなり容量が小さくなっていることが分かる。これが前述のオンキャリッジ式のデメリットで、左右に動くパーツをあまり重く、大きくできないという事がある。インクボトルには2種類あり、インクタンクがちょうど満タンになる「使い切りサイズ」と、ブラックは2,200ページ、カラーは3,700ページ分のインクが入った「増量」がある。ここで、インクボトルの印刷可能枚数と価格、印刷コストを細かく見てみよう。
機種・インク |
印刷コスト |
イードル枚数(A4カラー文書) |
カートリッジ価格 |
L判写真 フチなし |
A4カラー 文書 |
ブラック |
カラー |
ブラック |
カラー |
EP-M552T |
使い切りサイズ |
8.7円 |
2.9円 |
600枚 |
各1,000枚 |
600円 |
各600円 |
増量サイズ |
8.4円 |
2.7円 |
2,200枚 |
各3,700枚 |
2,000円 |
各2,000円 |
EW-M571T |
5.9円 |
0.9円 |
7,500枚 |
各6,000枚 |
2,150円 |
各1,150円 |
印刷コストはA4カラー文書の場合、EP-M552T は増量サイズでも2.7円、使い切りサイズだと2.9円である。EW-M571Tの0.9円と比べると3倍となっている。写真はEP-M552T がそれぞれ8.4円と8.7円で、EW-M571Tの5.9円と差が小さいように見えるが、これは写真用紙代(1枚約4.3円)が含まれた価格なので、インク代だけとすると、EP-M552T はそれぞれ4.1円と4.4円、EW-M571Tが1.6円でやはり2.5倍以上になっている。印刷コスト面ではEP-M552T はやや高くなっている。ちなみに6色インクカートリッジ式のEP-882Aの場合、L判写真は20.6円(用紙代除くと16.3円)、A4カラー文書が12.0円、4色カートリッジ式のEW-452Aは写真25.7円(同21.4円)、カラー文書13.2円なので、これと比べるとEP-M552T でもかなり安価である。
一方インクボトルの価格を見てみると、EW-M571Tは染料4色が1,150円、顔料ブラックは2.150円で、4本買うと5,600円となる。一方EP-M552T は使い切りサイズであれば各600円で、4本買って2,400円となる。EW-M571Tは5,000〜7,500枚の印刷ができるとは言え、一度に購入する時の負担は大きい。その点で1本600円というのは、回数は多いとは言え、インク購入時1回の負担が小さいと言える。EP-M552T は増量サイズなら、使い切りサイズよりかなり多くなるが、価格は1本2,000円で、4本買うと8,000円となる。そのわりにEW-M571Tよりは印刷枚数は少ない。また、使い切りサイズと増量サイズの印刷コストの差が小さいことから、基本的には使い切りサイズを使う物と思われる。増量サイズが必要な人は、EW-M571Tは販売終了してるが、印刷コストが同じ上位機種EW-M630Tの方がお得になるだろう。
もう一点違いがあり、EW-M571Tは別売りのインクボトルと同じインクボトルが1セット同梱する。そのため、初期充填を終えた後でもA4カラー文書3,600枚以上の印刷が可能だという。一方、EP-M552T は「セットアップ用インクボトル」となっている。セットアップ用と言いつつ、インクタンクが満タンになる様なので、「使い切りサイズ」に近いと言えるが(むしろ「使い切りサイズ」は印刷が継続できないくらい残量が少ない状態から満タンにする量なので、少し残った状態から満タンとなるが、セットアップ用インクボトルは完全に空の状態から満タンになるので少し多い可能性もある)、インクタンク自体がEW-M571Tと比べ少量なので、初期充填完了後の印刷枚数は公表されておらず、それほど多くはないと思われる。EW-M571Tの3,600枚というのは、EP-M552T のカラーの増量インクに近く、ブラックの増量インクの1.5倍以上の量で、EP-M552T 換算で9,000円分インクが付属すると考えられる。しかも3,600枚「以上」であるから、実際にはもっと使える可能性も高い。
そこで、EP-M552T とEW-M571Tで、本体価格とインクの価格のトータルコストをグラフにしてみたい所だが、EW-M571Tはすでに手に入らない。そこでEW-M571Tと同じインクで同印刷コストのの上位機種であるEW-M630Tならまだ販売されているので、そちらとのトータルコストをグラフにしてみた。EP-M552T は本体価格29,800円で、一般的に使われる「使い切りサイズ」を使った場合としている。セットアップ用インクボトルでどの程度印刷できるか公表されていないため、100枚としている。一方、EW-M630Tは本体価格が現在36,980円となっている。同梱のインクボトルで3.600枚以上となっているが、おそらく印刷枚数が少ないカラーインクの方が3,600枚分残るという事だろう。つまり、60%のインクが残ると考えられる。印刷時に使用するインク料は色によって異なるので差が出ているが、初期充填で使用するインク量はほぼ同じと予想されるため、ブラックも60%残ると換算し4,500枚印刷が可能としてグラフにしている。
これを見ると、やはりEP-M552T の方がインクを頻繁に購入する事となり、EW-M630Tとの本体価格の差である7,180円しか無いこともあって、どんどんと詰まっていく事が分かる。2,100枚のあたりで速くも逆転している。その後EW-M630Tが1度目のカラーインク3本を購入する3,600枚と、1度目のブラックインクを購入する4,500枚で、ほぼ同じになるが、その後はEP-M552T の方が高くなっていく。1万枚印刷すると約12,000円の差が、2万枚印刷すると約32,500円の差が付くことになる。この事から、5千枚を大きく超えると分かっているのであればEW-M630Tの方がお得となる。ちなみにインクカートリッジ方式のEP-882Aでは本体価格は31,980円で、A4カラー1枚あたり12.0円なので、セットアップ用インクカートリッジで100枚は印刷できたとしても、1万枚印刷時点でこのように従来と同じ150,780円となるため、EP-M552T やEW-M630Tがいかに安いかが分かる。このようにEP-M552T は従来のエコタンク搭載プリンターと比べると印刷コストは高いが、インクカートリッジ方式と比べると圧倒的に安いという機種と分かるだろう。
プリント(給紙・排紙関連) |
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新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
 |
 |
対応用紙サイズ |
L判〜A4 |
カード・名刺〜A4 |
給紙方向 (A4普通紙セット可能枚数) |
背面 |
○(100枚・0.6mm厚まで) |
○(100枚) |
前面 |
− |
− |
その他 |
− |
− |
排紙トレイ自動開閉 |
− |
− |
用紙種類・サイズ登録 |
○(用紙セット連動) |
○(用紙セット連動) |
用紙幅チェック機能 |
○ |
○ |
続いて、EP-M552T とEW-M571Tの給紙、排紙機能を比較してみよう。給紙方法は背面給紙という点で同等だ。セット可能枚数も100枚で同等である。一方使用可能な用紙はEW-M571Tは名刺サイズが最小だったのに対して、EP-M552T はL判サイズとなっている。L判より小さいサイズに印刷したい場合はEP-M552T は非対応となる。一方、一般的なプリンターは0.3mm厚程度の用紙までの対応だが、EP-M552T は倍の0.6mm厚まで対応している。厚めの紙や堅めの紙に印刷したい場合や、写真を貼り合わせた年賀状に宛名印刷が可能であるのは便利だ。
プリント(付加機能) |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
 |
 |
自動両面印刷 |
− |
○ |
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 |
− |
− |
写真補正機能 |
○(オートフォトファイン!EX) |
○(オートフォトファイン!EX) |
特定インク切れ時印刷 |
− |
− |
自動電源オン/オフ |
○/○ |
−/○ |
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続 |
○/○ |
−/− |
続いてEP-M552T とEW-M571Tののその他のプリント機能を比較してみよう。EW-M571Tは自動両面印刷機能を搭載していたが、EP-M552T は非対応となった。このあたりは、文書印刷向けのEW-M571Tと、写真印刷向けのEP-M552T の違いだろう。レーベル印刷は両機種とも非対応だ。
一方、EP-M552T は自動電源オン機能に対応した。最近では無線LANで接続することも可能なので、パソコンとプリンターが離れた場所にある場合もあるし、スマートフォンからのプリントもある。その場合、EP-M552T はプリント又はスキャンを実行すると、自動的に電源がオンになるため、わざわざプリンターの前まで行き、電源を入れる必要が無いのは便利だ。ただし排紙トレイを引き出さないとプリントがスタートしないため、自動的にプリントまで進んでほしい場合は、排紙トレイを出したままにしておく必要がある。
ところで、インクジェットプリンターのインクの吸収材は2種類ある。1つは電源を切った際にインクカートリッジが戻る位置の下あたりからつながっている、廃インクタンクである。クリーニングなどを実行した際に出るインクを貯めておくタンクである。一方、用紙が通る部分のプラスチックが一部欠けておりその下にクッションのような吸収材が見えるが、これはフチなし吸収材だ。フチなし印刷を行う場合、用紙のフチギリギリに印刷するのは用紙の微妙なズレなどを考えると難しいため、少し大きめに印刷し用紙からはみ出す部分は吸収材で吸収させるという方式をとっている。これがフチなし吸収材だ。EW-M571Tではどちらかが一杯になると警告が表示されてプリンターが一切動かなくなり、修理するしか方法がなかった。一方EP-M552T では、廃インクタンクは、メンテナンスボックスという名前でユーザー自身での交換に対応している。980円と低価格で、前面のカバーのツメをつまんで手前に倒すと、メンテナンスボックスを取り出せるので、交換も非常に簡単だ。メンテナンスボックスの空き容量は本体液晶で確認できる。交換式メンテナンスボックスは、エコタンク搭載カラー複合機は上位モデルは全て対応しており、EW-M571Tだけ非対応だった。印刷枚数が多い気種だけに、EP-M552T で対応したのは、長く使っても安心と言える。一方の「フチなし吸収材」に関しては、簡単に交換できる構造にはできないため、EP-M552T でも修理対応なのは同じだが、この吸収材にインクが落ちることがない「フチあり」印刷に関しては印刷を継続できるようになった。フチなし印刷はできないとはいえ、フチなし印刷はとりあえず置いておいて、急を要するフチあり印刷を行い、余裕のあるときに修理に出すという事ができるわけだ。
スキャン |
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新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
 |
 |
読み取り解像度 |
600dpi(600×600dpi) |
1200dpi(1200×2400dpi) |
センサータイプ |
CIS(シートフィード型) 上質紙・普通紙・再生紙のみ/写真・ハガキ等不可 |
CIS |
原稿取り忘れアラーム |
− |
− |
スキャンデーターのメモリーカード保存 |
○(JPEG/PDF) |
○(JPEG/PDF) |
EP-M552T のスキャナー機能はEW-M571Tと比べてというよりは、一般的な複合機と比べても大きく異なる。解像度が600dpi(600×600dpi)で、EW-M571Tの1200dpi(1200×2400dpi)より劣るが、紙原稿しかスキャンしない事を考えると600dpiでも実用上問題なく、コピーなども綺麗に行える。ただし、EW-M571Tがガラス面に原稿を載せ、スキャナーセンサーが移動してスキャンする「フラットベッド型」なのに対して、EP-M552T は「シートフィード型」と呼ばれるスキャナーだ。背面給紙部のカバーを開けると、中に天板が浮いたようになっている箇所がある。ここに原稿を挿し込むと、原稿が後方に進みながらスキャンされるという方式だ。つまり、スキャナーセンサーでは無く原稿が移動する事でスキャンされるわけだ。モバイルスキャナーなどと同じ方式である。この隙間を通る原稿で無ければスキャンできないため、本などの分厚い原稿はスキャン不可能だ。それだけでなく、上質紙・普通紙・再生紙のみ対応となっており、写真やハガキは非対応という事なので、少し分厚い紙でも通せない事になる。またサイズもA4、B5、レター、リーガルとなっており、A5などB5より小さいサイズには対応できない。左右のガイドがB5サイズまでしか狭められないようになっている。そのため、かなり限られた原稿しかスキャン、コピーできない。ここは購入する上での注意点となる。
ダイレクト印刷 |
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新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
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 |
カードスロット |
対応メモリーカード |
メモリーカードリーダー接続 |
SD |
USBメモリー/外付けHDD/外付けCD/DVD対応 |
○/−/− |
−/−/ー |
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDD/外付けCD/DVDへバックアップ |
−/− |
−/− |
対応ファイル形式 |
JPEG |
JPEG |
色補正機能 |
トリミング フチなし/フチあり 赤目補正 明るさ調整(5段階) コントラスト調整(5段階) シャープネス調整(5段階) 鮮やかさ調整(5段階) フィルター(モノクロ/セピア) |
トリミング フチなし/フチあり 赤目補正 |
手書き合成 |
− |
− |
PictBridge対応 |
○(USB/Wi-Fi) |
− |
赤外線通信 |
− |
− |
各種デザイン用紙印刷 |
フォーム印刷(カレンダー・罫線・便箋・スケジュール帳・五線譜) 証明写真印刷 シール印刷 CDジャケット印刷 |
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜) |
EP-M552T とEW-M571Tのダイレクト印刷機能を比較してみよう。EW-M571TはSDカードに対応していた。一方、EP-M552T はUSBポートのみでSDカードスロットは存在しない。そのためUSBメモリーにのみ対応するように見えるが、実際にはパソコン用のメモリーカードリーダーを接続することで、各種メモリーカードにも対応できる。EW-M571TではSDカードだけの対応だったが、EP-M552T はUSBメモリーに標準対応しており、アダプターを付けると各種メモリーカードに対応できるという点で自由度は高い。メモリーカードリーダーは安い物なら1,000円以下でもあるため、問題ないだろう。
カードリーダーは必要だが、写真の印刷機能は簡易的ではない。EW-M571Tは写真の一部を拡大するトリミングと、フチなし、フチありの切り替え、赤目補正のみだった。EP-M552T はこれに加えて、明るさ、コントラスト、シャープネス、鮮やかさを5段階で調整できる他、モノクロやセピア調にもできる。自動写真補正機能も非常に高性能だが、好みの色合いに調整できるようになり、より便利だ。また、この機能は上位機種とほぼ同等で、下位モデルながら機能は豊富と言える。
またプリンター単体で印刷できるデザインも増えた。罫線、マス目といった印刷が可能な「フォーム印刷」機能では、新たにカレンダー印刷に対応した。さらに、証明写真印刷機能や、シール用紙に位置を合わせて印刷する機能や、「CDジャケット」の印刷も可能になっている。
スマートフォン/クラウド対応 |
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新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
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スマートフォン連携 |
対応端末 |
iOS 10.0以降 Android 5.0以降 (EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降) スマートスピーカー対応 |
iOS 10.0以降 Android 4.1以降 スマートスピーカー対応 |
NFC対応 |
− |
− |
写真プリント |
○ |
○ |
ドキュメントプリント |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
Webページプリント |
○ |
○ |
スキャン |
○(PDF/JPEG) |
○(PDF/JPEG) |
クラウド連携 |
スマートフォン経由/本体 |
○/− |
○/− |
オンラインストレージからの印刷 |
○ |
○ |
SNSからの印刷 |
○(コメント付き可) |
○(コメント付き可) |
写真共有サイトからの印刷 |
− |
− |
メールしてプリント |
○ |
○ |
LINEからプリント |
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
リモートプリント |
○ |
○ |
スキャンしてリモートプリント |
− |
○(受信のみ) |
EP-M552T のスマートフォン、クラウド関連機能にもEW-M571Tから変化は無い。対応端末に関してはiOSのバージョンが9.0から10.0、Androidのバージョンは4.1から5.0になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは両機種ともAndroid 5.0/iOS 10.0以上となる。ただし、従来のアプリ「EPSON iPrint」に加えて、「Epson Smart Panel」にも対応している。「Epson Smart Panel」は、これまでばらばらのアプリで対応していた機能を集約し、さらに電源オン・オフやノズルチェック、ヘッドクリーニング、ファームウェアのアップデートなど本体の操作が行える、プリンターのリモコンのようなアプリとなっている。ただし、こちらを利用する場合は、Androidは5.0以降で同じだが、iOSは11.0以降の対応となる。
LINEからプリントする機能は、LINE上でEP-M552T を友達登録しておき、トーク画面上でファイルを送信すると自動でプリントされる機能だ。去年の時点ではこういった機能は無かったためEP-M552T の新機能に見えるが、今年から新たに提供される新サービスであり、EW-M571Tをはじめ旧機種でも使える。
コピー機能 |
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新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
 |
 |
等倍コピー |
○ |
○ |
拡大縮小 |
倍率指定 |
○(25〜400%) |
○(25〜400%) |
オートフィット |
− |
○ |
定型変倍 |
○ |
− |
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー |
− |
− |
写真焼き増し風コピー |
− |
− |
割り付け(2面/4面) |
○/− |
○/− |
バラエティコピー |
− |
IDコピー |
EP-M552T とEW-M571Tのコピー機能を比較してみよう。スキャナーがシートフィード型であるため、本などの1枚にならない原稿や、写真、ハガキなどの分厚い紙はコピーできず、A4やB5など、大きめの用紙サイズしか対応できない。あくまで、A4やB5サイズの1枚の原稿をコピーするという事に限定される。ただし、拡大縮小コピーは可能だ。25〜400%(1/4から4倍)まで1%刻みで設定が可能だ。EW-M571Tは原稿サイズを自動認識して、用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能を搭載していたが、EP-M552T では原稿をスキャンしてみないと原稿サイズが分からないためか、この機能は搭載されない。逆に、B5からA4のように原稿サイズとプリントサイズの組み合わせを選ぶ「定型変倍」はEW-M571Tには非搭載だったが、EP-M552T では搭載された。その他、免許証などを通すことが不可能であるため、EW-M571Tに搭載されていた「IDコピー」機能は省かれている。
操作パネル/インターフェース/本体サイズ |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
EP-M552T |
EW-M571T |
製品画像 |
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液晶ディスプレイ |
1.44型 (90度角度調整可) |
1.44型 (角度調整可) |
操作パネル |
物理ボタン式 (90度角度調整可) |
物理ボタン式 (角度調整可) |
インターフェイス |
USB他 |
USB2.0×1 |
USB2.0×1 |
無線LAN |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
有線LAN |
− |
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対応OS |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
耐久枚数 |
3万枚 |
3万枚 |
外形寸法(横×奥×高) |
390×324×166mm |
375×347×187mm |
重量 |
4.5kg |
5.5kg |
本体カラー |
ホワイト |
ブラック/ホワイト |
最後にEP-M552T とEW-M571Tの操作パネルやインターフェース、本体サイズなどを見てみよう。EP-M552T は1.44インチの液晶と物理ボタンでの操作であり、これはEW-M571Tと同等だ。また角度調整ができるのも同じである(細かく見ると、EW-M571Tは水平までは持ち上げられなかったが、EP-M552T は水平まで角度調整できる)。ただし、EW-M571Tでは中央に液晶が搭載されており、左右のフレームを除いた中央部を角度調整する形だった。EP-M552T では液晶と操作パネルが左半分に寄っており、左半分が角度調整可能な独特のデザインとなっている。また、EW-M571Tの液晶内の表示デザインは、より大きな液晶を搭載する上位機種と同じものを縮小表示しているだけだったが、EP-M552T では1枚ずつカードをめくるようにメニューを選ぶデザインに一新された。オプション設定などもわかりやすく変更された。例えば写真印刷の場合、まず写真を選んでから、オプションメニューに入り、日付印刷や、画質調整やフチなし/フチありの設定項目を選んで設定するというのがこれまでだった。EP-M552T では、「写真の印刷」に入ると、「選んで印刷」「選んで印刷(日付付き)」「選んで印刷(フチ付き)」「選んで印刷(フチ/日付付き)」「応用」などから選ぶようになった。「応用」を選ぶと、従来のようにオプション設定が可能な画面に移行するが、簡単に印刷したい場合は「選んで印刷」の4つから選ぶと、あとは写真を選ぶだけで簡単だ。最初で、日付の有無とフチの有無を選ばせることで、オプション画面を不要にしたわけだ。小さい画面でも使いやすいように工夫されたため、使いやすくなったと言える。
本体サイズはEP-M552T は390×324×166mmで、EW-M571Tの375×347×189mmと比べると幅は15mm大きくなったが、高さと奥行きが小さくなったため、全体に薄い形となった。この、EP-M552T のサイズはインクカートリッジ方式の機種と比べても遜色ないコンパクトさとなっている。また、EW-M571Tは前面からインクタンクが見えて、いつでもインク残量が確認できた。EP-M552T ではあえてインクタンクを見えなくすることですっきりしたデザインにしている。インク残量は液晶内で確認できる他、スキャナー部を開けて、インク残量の確認を実行することで、目視でも確認が可能である。また、本体前面の右側にライン上のLEDランプが搭載されており、通常は点灯しているが、インク残量が無くなると点滅することで知らせる機能も搭載されている。インクタンクが見えなくなったことに加えて、排紙トレイの前面にカバーが付けられているためにデザイン的には非常にすっきりしている。なお、カラーバリエーションはホワイトのみで、EW-M571Tにあったブラックが無くなっている。
インターフェースはUSBと無線LANに対応しており有線LANには非対応なのは同等だ。対応OSも同じである。また本体の耐久性は3万枚とEW-M571Tと同等となっている。
EP-M552T はEW-M571Tの後継機種というには方向性が大きく異なる製品だ。EW-M571Tがとにかく印刷コストにこだわっていてカートリッジ方式の機種とは全く異なるのに対して、EP-M552T は印刷コストを重視する人がカートリッジ方式の代わりに購入するという印象だ。そのため本体価格は抑え、本体サイズもコンパクトにし、エコタンクを見えないようにしてカートリッジも方式と似たデザインにしている。それでいてカートリッジ方式よりも印刷コストは大きく下がるし、実際にインクを買うときの金額的負担も小さくなっているのもポイントだ。また、EW-M571Tが文書印刷特化の設計だったのに対して、EP-M552T は写真や年賀状も綺麗に印刷できるようになっており、家庭でも受け入れやすい設計だ。EP-M552T は、カートリッジ方式と同程度の価格で手に入るため、エコタンクに興味があるものの、従来は高すぎて躊躇していたという言うユーザーにとって、検討に値する製品と言えるだろう。
(H.Intel)
【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
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