プリンター徹底比較
2019年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2020年3月6日公開)

表中の赤文字は旧機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1からの変更点となります。

PIXUS TS7330とPIXUS TS6230を徹底比較する

 キャノンのPIXUS TS7330は、今年から新たに追加された7000番台のモデルだ。とはいえ、価格的には従来のPIXUS TS6230と同じ価格帯の製品である。PIXUS TS6230とほぼ同機能のPIXUS TS6330は1つ下のグレードに落とされ、代わりに新しいコンセプトの製品としてPIXUS TS7330がラインナップに追加された形だ。とはいえ、PIXUS TS6230をベースにしているため、PIXUS TS6230の後継製品がPIXUS TS7330とPIXUS TS6330に分かれたとも言える。そこで、PIXUS TS6230とどこが変わったのか、詳しく比較していくことにしよう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
発売日
2019年9月5日
2018年9月6日
製品画像



発売時の価格
23,980円
24,880円
インク
色数
5色
5色
インク構成
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番
381XL/380XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
381XL/380XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
ノズル数
4096ノズル
4096ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A
N/A
最大解像度
4800×1200dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
18秒
18秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
10.0ipm
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
15.0ipm
15.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
17.3円
17.3円
A4カラー文書
9.6円
9.6円
A4モノクロ文書
N/A
N/A

 PIXUS TS7330は型番上はPIXUS TS6230より上位モデルだが、実質的には後継製品という位置づけで、販売開始時の価格もむしろ900円安い23,980円となっている。
 それでは、プリントの基本機能である、画質と速度、印刷コストを比較してみよう インク構成や印刷解像度に違いは無く、使用するインクも同じ物である事から、画質面では同等と言える。また、ノズル数も同等であるため、印刷速度にも違いは無い。もちろんインクカートリッジが同じなので、印刷コストも同じである。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
対応用紙サイズ
名刺〜A4
(89×89mm用紙対応)
名刺〜A4
(89×89mm用紙対応)
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(100枚)
前面
カセット(100枚/普通紙のみ)
カセット(100枚/普通紙のみ)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カバー(背面)連動)
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能
○(セット時・用紙サイズ表示)

 続いて、PIXUS TS7330とPIXUS TS6230の給紙、排紙機能を比較してみよう。基本的な給紙、排紙機構は同等で、前面給紙カセット+背面給紙となる。給紙可能枚数も同等で、前面給紙カセットは普通紙のみという制限も変わらない。使用できる用紙サイズも名刺サイズからA4サイズまでで、127×127mmに加えて89×89mmのスクエア用紙にも対応というのも同等だ。ただし、排紙トレイに関しては自動で開閉(伸縮)する様になっている。PIXUS TS7330もPIXUS TS6230もどちらも自動電源オン機能を搭載しているため、電源を切っていても印刷を実行すると自動的に電源が入る。その際、PIXUS TS6230では排紙トレイを手動で引き出さないと印刷が始まらなかったため、結局はプリンターの前まで来る必要があるか、排紙トレイを出したままにしておく必要があった。PIXUS TS7330は印刷が実行されると自動で排紙トレイが伸張されるので、その手間が無くなった。逆に電源オフ時も自動で収納される。
 さらに、今年の新機種より一部の機種が搭載している「自動紙幅検知」機能がPIXUS TS7330にも搭載されている。これはエプソンの紙幅チェック機能のように印刷時に用紙幅をチェックし、用紙外にインクを打ってしまうのを防ぐ機能とは異なる。最近のプリンターでは、用紙をセットした際に用紙のサイズと種類を登録しておく機能があり、印刷時の設定がこれと異なる場合、警告メッセージを表示してくれる機能が搭載されている。この際にPIXUS TS7330では用紙幅をチェックし、用紙サイズを予測するようになった。それに伴って、前面給紙カセットでは、カセット収納時に登録画面が表示されなくたった(設定画面から変更はできる)。というのも、前面給紙カセットは普通紙しかセットできず、サイズもA4、A5、B5、レターサイズだけで、ユーザー定義サイズなどは対応していないため、用紙幅から用紙サイズが確実に分かり、用紙は普通紙に決まっているからである。背面給紙の方は、用紙の種類を登録する必要もあり、サイズも定型サイズ以外の可能性もあるため、登録画面が表示されるが、用紙幅から予測した用紙サイズが表示される。このように用紙セット時の手間が軽減される機能となっている。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(自動写真補正)
○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー発生時の継続使用
−/−
−/−

 続いて、PIXUS TS7330とPIXUS TS6230のその他のプリント機能を比較してみよう。この部分に変更は無く、自動両面印刷は普通紙のみでハガキに非対応である。自動電源オン/オフを備えているのも同等だ。

スキャン
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリーカード保存

 PIXUS TS7330のスキャン機能もPIXUS TS6230から違いは無い。解像度なども同等だ。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
カードスロット
対応メモリーカード
USBメモリー/外付けHDD/外付けDVD対応
−/−/−
−/−/−
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDD
−/−
−/−
対応ファイル形式
色補正機能
手書き合成
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
組み込みパターンペーパー

 PIXUS TS7330とPIXUS TS6230は共にメモリーカードからのダイレクト印刷機能を搭載していない点で同じだ。唯一、PictBridgeに対応しているがUSBポートが無いので、Wi-Fi接続に限られる。違いとしてはPIXUS TS6230に搭載されていた「定型フォーム印刷機能」機能と「組み込みパターンペーパー」印刷機能はPIXUS TS7330には非搭載となった。

スマートフォン/クラウド対応
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iOS 11.0以降
Android 4.4以降
(Bluetooth対応)
スマートスピーカー対応
iOS 10.0以降
Android 4.4以降
(Bluetooth対応)
スマートスピーカー対応
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
LINEからプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG)
→(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 続いて、PIXUS TS7330とPIXUS TS6230のスマートフォン、クラウド対応を比較しよう。まず、対応端末に関してはiOSのバージョンが10.0から11.0になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは両機種ともAndroid 4.4/iOS 11.0以上となる。同じくLINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面でファイルを送ると印刷される「PIXUSトークプリント」機能だが、去年まではJPEGファイルのみの対応だったが、PDFや各種オフィス文書にも対応した。ただこれは「PIXUSトークプリント」サービスの機能強化によるもので、PIXUS TS6230をはじめとする旧機種も利用できる。
 違いとしては、クラウドへのアクセス方法で、PIXUS TS6230はスマートフォンのアプリ上だけで無く、本体だけでアクセスしてプリントが可能であった。PIXUS TS7330ではスマートフォンのアプリ上からのみで、本体にクラウドへのアクセス機能は無くなった。

コピー機能
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
自動変倍
オートフィット
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面)
○/−
○/○
バラエティコピー
枠消しコピー
IDコピー

 PIXUS TS7330とPIXUS TS6230のコピー機能を比較してみよう。基本的な等倍、拡大縮小コピーに関しては同等だ。ただし、それ以外の機能に感じては大幅に削られている。まず、PIXUS TS6230では2枚の原稿を1枚の用紙に割り付ける「2面割り付け」と、4枚の原稿を1枚の用紙に割り付ける「4面割り付け」が行えたが、PIXUS TS7330では「2面割り付け」のみとなった。また、写真をスキャナー面に複数枚置くと、1枚ずつを個別に認識してスキャンし、色あせした写真も補正して、焼き増し風コピーをする機能も、PIXUS TS7330では省かれている。分厚い原稿のフチやとじ目部分の暗くなった部分を白くする「フチ消しコピー」や、免許証などの裏表を上下に並べてコピーできる「IDコピー」機能も搭載しない。コピー機能は、基本以外の機能は全て非搭載となっており、この点は注意が必要だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番
PIXUS TS7330
PIXUS TS6230
製品画像
液晶ディスプレイ
1.44型
モノクロ有機EL
3.0型
(90度角度調整可)
操作パネル
物理ボタン
タッチパネル液晶+物理ボタン
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.11.6〜(AirPrint利用)
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高)
376×359×141mm
372×315×139mm
(前面給紙カセット伸張時372×360×139mm)
重量
6.3kg
6.2kg
本体カラー
ブラック/ホワイト/ネイビー
ブラック/ホワイト

 最後にPIXUS TS7330とPIXUS TS6230の操作パネルやインターフェース、本体サイズなどを見てみよう。本体デザインが大幅に変更され、PIXUS TS6230は角が全体に丸められたデザインだったが、PIXUS TS7330では角張ったデザインとなった。それと共に、PIXUS TS6230では、前面給紙カセットにA4/B5用紙をセットした場合、カセットを伸ばさねばならず、本体から飛び出していたがPIXUS TS7330ではそれをデザインに納めた。前面を上部から下部に欠けて斜めにすることで、上部は従来機種の奥行き、下部は前面給紙カセットを伸ばしたときの奥行きとすることで、すっきりしたデザインとなった。また、排紙される部分は奥にへこんでいるが、その部分を左端まで広げることで、前面パネルはコの字型となり、液晶を中央では無く右端に、ボタンをその下に配置する独特のデザインとなっている。
 一方、液晶に関しては1.44型有機EL液晶となり、モノクロ表示となった。PIXUS TS6230では3.0型のカラー液晶だった事を考えると、視認性はかなり悪くなった。それに加えて、PIXUS TS6230では本体前面に取り付けられ、90度まで持ち上げて見やすい角度に調整できたが、PIXUS TS7330は固定式となった。前面は斜めになっているので、正面からでも上の方からでも見えなくは無いが、やはりこの点でも視認性は劣る。操作も、PIXUS TS6230ではタッチパネル液晶を基本に、スタートやストップ、ホームボタンだけを物理ボタン式としていたが、PIXUS TS7330ではタッチパネル液晶では無くなり、物理ボタン操作のみとなった。また、デザイン性を重視したためか、4方向のカーソルキーは無く、上下カーソルのみとなるなどボタン数が非常に少なくなっている。液晶が小さいこともあって、各種メニューの階層が深くなっており、この点でも操作性は悪くなっている。しかし、これには理由があり、PIXUS TS7330はスマートフォンでの操作を主体と考えており、コピー操作などもアプリ上で行うことで、液晶が小さくても代用ができるとしている。また「QR」ボタンを用意しており、押すことでWebマニュアルへのQRコードが表示されるようになっている。また、状態が一目で分かるよう、前面パネルの下の角、排紙トレイ部分のへこみの角の部分にライン状の「LEDのステータスバー」を搭載している。これによりスマートフォンからの操作する場合など、プリンターの目の前にいなくても、遠目で給紙中やエラー、プリント完了などが分かるようになっている。
 対応OSに関してはWindowsには変化がないが、MacOSに関しては10.10.5以降から、10.11.6以降に変更された点は注意が必要だ。本体サイズは376×359×141mmで、PIXUS TS6230の372×315×139mmより奥行きがかなり大きくなったように感じる。しかし前述のように、前面給紙カセットにA4/B5用紙をセットした状態を基本にデザインされているため、奥行き359mmというのは本体下部の一番出ている部分だ。一方PIXUS TS6230でもこれらの用紙を入れると前面給紙カセットを伸ばす必要があり、奥行きは360mmとなる。実質的には本体サイズは同等と言え、前面給紙カセットだけが飛び出したりせず、デザイン的にはすっきりしていると言える。本体カラーはPIXUS TS6230のブラックとホワイトに加えて、ネイビーが追加されている。



 PIXUS TS7330はのPIXUS TS6230の基本機能を踏襲しつつ、スマートフォンからの操作を基本とすることで、デザインをスタイリッシュに進化させた製品だ。確かにそのコンセプトは今の時代に合っていると言えるし、前面給紙カセットにA4/B5用紙をセットする事を前提にしたデザインは、余計な凹凸がなく、美しく見える。しかし、「スマートフォンからの操作」と「本体デザインのスタイリッシュさ」を追求しすぎた様に感じ、それが様々な点で問題となっている。一番の問題は液晶で、3.0型のタッチパネル・カラー液晶から、1.44型のモノクロ液晶では操作性が大きく劣る。スマートフォンからの操作を主体にと言っても、コピーやインク残量確認などは本体操作ですることが多いと思われ、この操作性をここまで落としたのは、思い切り過ぎると言える。本体のデザインを重視したとしても、せめて2.5型程度のカラー表示は可能だったのではないだろうか。これが低価格モデルなら、コストとの兼ね合いで諦められるが、上位モデルでここまで操作性を落としたのはいかがだろうか。また液晶も小型のモノクロにした結果、コピー機能が基本機能だけになったり、定型フォーム印刷機能が無くなったり、本体でのクラウドアクセスができなくなったりと言ったことにつながっている。特にコピー機能に関しては、便利な機能も省略されており、困るユーザーもいるかもしれない。液晶が小型であるため、設定項目が多すぎると煩雑になりすぎるために省略したのだろうが、やはり上位機種としては物足らない。排紙トレイの自動開閉や「自動紙幅検知」機能は新機能だが、それだけでは、PIXUS TS6230と比べて機能ダウンしたという印象が強い。また、PIXUS TS6230と同じ機能の新機種PIXUS TS6330が更に安い価格で販売されている事を考えると、PIXUS TS7330の位置づけが微妙になる。未来を先取りしたと言えるのかもしれないが、残念ながら今の段階では欠点が目立つ製品だとは言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


PIXUS TS7330BK
(ブラック)
PIXUS TS7330WH
(ホワイト)
PIXUS TS7330NV
(ネイビー)