プリンター徹底比較
2020年春・夏時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2020年9月18日公開)

表中の赤文字は旧機種・現行機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・現行機種1からの変更点となります。

新機種「PX-6712FT」「PX-M6711FT」と旧機種「EW-M5071FT」を徹底比較する

 PX-M6712FTとPX-M6711FTは、エコタンク搭載でA3ノビプリントとA3スキャンに対応しファクス機能も搭載しているなど、EW-M5071FTの純粋な後継製品だ。その一方で、同時期のA4複合機と比べて劣るところが多く、とりあえず第1世代目の機種として登場したEW-M5071FTと比べると、様々な点で進化しており、ターゲットとするユーザーに合わせた製品となっている。どこが変わったのか見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
発売日
2020年7月9日
2020年7月9日
2017年11月2日
発売時の価格
139,980円
109,980円
109,980円
インク
色数
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
エコタンク方式
(「挿すだけ満タン」インク方式)
エコタンク方式
(「挿すだけ満タン」インク方式)
エコタンク方式
顔料/染料系
顔料
(DURABrite ET)
顔料
(DURABrite ET)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性半年〜1年)
インク型番
IT08番
IT08番
クツ(顔料)
ハサミ(染料)
ノズル数
3200ノズル
1568ノズル
1568ノズル
全色:各800ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A(3.8pl(MSDT)?)
N/A(3.8pl(MSDT)?)
2.8pl(MSDT)
最大解像度
4800×1200dpi
4800×2400dpi
4800×2400dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
○(600dpi)
(ノズル自己診断システム搭載)
○(600dpi)
(ノズル自己診断システム搭載)
○(600dpi)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
N/A
39秒(フチあり)
A4普通紙カラー(ISO基準)
25.0ipm
(最速32枚/分)
12.0ipm
(最速22枚/分)
10.0ipm
(最速20枚/分)
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
25.0ipm
(最速32枚/分)
25.0ipm
(最速32枚/分)
18.0ipm
(最速32枚/分)
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
N/A
5.2円(フチあり)
A4カラー文書
2.0円
2.0円
0.8円
A4モノクロ文書
0.8円
0.8円
0.4円
インクボトル1本での印刷枚数
ブラック
7,500ページ
7,500ページ
7,500ページ
カラー
6,000ページ
6,000ページ
6,000ページ
インクボトル1本での価格
ブラック
5,200円
5,200円
1,800円
カラー
2,600円
2,600円
900円
同梱インクボトル
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
セットアップ用インクボトル各色1本

 まずは販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はPX-M6712FTが139,980円、PX-M6711FTが109,980円で、EW-M5071FTは109,980円だったことを考えると、PX-M6711FTが完全な後継製品、PX-M6712FTは上位機種という位置づけと完上げられる。
 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。インクは4色インクというのは同じだが、型番が「EW」から「PX」になった事から分かる様に、EW-M5071FTの顔料ブラック+染料カラーの組み合わせから、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは全色顔料インクに変更されている。インクジェットプリンターのインクには染料インクと顔料インクがある。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字、細い線も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないのもメリットだ。PX-M6712FT/PX-M6711FTは製品の性質上、ビジネス用途での使用が主になると考えられ、写真印刷よりは普通紙への印刷がメインになると思われる。となると、顔料インクの方が適している事になる。EW-M5071FTもブラックだけは顔料インクだが、カラーインクは染料インクだ。カラープリントはもちろん、グレーに関してもカラーインクを重ねて表現する場合があり、また顔料インクと染料インクを重ねられない事から、背景色がある場合の黒文字も染料カラーインクを使って表現する場合があり、その場合は染料インクとなり画質と耐水性が落ちてしまう。確かに染料インクなので写真印刷をした際の光沢感や発色面では有利に思えるが、写真用紙印刷時は顔料ブラックが使用できず染料3色だけで印刷となり、黒色部分のメリハリが弱くなる。そのため写真印刷に向いているかと言われるとそうとも言えない。それならば、PX-M6712FT/PX-M6711FTの様に全色顔料インクの方が普通紙印刷がモノクロ、カラー問わず綺麗で高耐水になる。その点では分かりやすくなった。
 ちなみに、PX-M6712FT/PX-M6711FTのインクは「DURABrite ET」という名称が付けられている。「DURABrite」インク自体は、エプソンの海外モデルでは以前から使われてきた名称で、「DURABrite」や「DURABrite Ultra」といった種類があるが、今回新たに「DURABrite ET」インクが採用された。「ET」はエコタンク(EcoTank)の頭文字だと思われるが、詳細は不明だ。一方、EW-M5071FTでは、写真印刷時にアルバム保存300年、耐光性7年、耐オゾン性半年〜1年という耐保存性が公表されていたが、DURABrite ETインクは公表されていない。
 エコタンク自体も進化している。EW-M5071FTのエコタンクは第1世代とも言えるタイプだった。右側にエコタンク部分だけが後付けの様に飛び出ており、全体カバーを開けて、各色のキャップを外すと大きめの注入口が現れる。ここにインクボトルの先端を挿し込み、満タンになるまで補充する。側面にインク残量窓があるので、それを見ながら満タンになったら、インクボトルを抜く事になる。目視で補充するためあふれさせてしまう危険性があるほか、間違った色のタンクに注入する危険性があるものだった。また、インクボトル自体も逆さまにしたり倒すとインクが漏れやすく、インク補充時にプリンターや机の上を汚すトラブルも多かった。EW-M5071FTが発売される少し前に、A4複合機では第2世代の「挿すだけ満タンインク方式」に移行していたにも関わらず、EW-M5071FTは第1世代のエコタンクだった事も、「とりあえず出した」感が強い要因だった。PX-M6712FT/PX-M6711FTでは、無事に「挿すだけ満タンインク方式」となっている。エコタンクは本体左側にあり、若干前に飛び出ている以外は本体に収まっている。注入口は穴では無く、注入用の管が出ており、ここにインクボトルを挿し込むと、注入が始まる形となる。そして満タンになると自動ストップするので、ボトルを挿し込んだらストップするまで待つだけだ。挿し込まなければボトルの先端からインクが出にくい形状となっているため、ボトルからインクをこぼす心配も無い。また、色ごとにボトルの先端と差し込み口の形状が変えてあるため、間違った色のタンクに注入してしまう心配も無い。インク残量も前面から確認できる様になった。このように、インク補充時の手間と安心感は大幅に改善されている。
 ちなみに、全色顔料インクになり、補充方式も進化したため、インクボトルは別のものになっている。EW-M5071FTでは顔料ブラックがクツ型番、染料カラーがハサミ型番だったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTではIT08番となった。
 最小インクドロップサイズに関しては、PX-M6712FT/PX-M6711FTは非公表ながら、同性能の海外のモデルでは3.8plとなっており、おそらく3.8plとなる。EW-M5071FTでは2.8plだったので、ドットは若干大きくなったが、写真や年賀状印刷ならともかく、普通紙への印刷ではそれほど画質は変わらない。文章中のグラフや写真で若干ざらざら感が増している程度だろう。一方PrecisionCoreプリントヘッドは引き続き採用し、普通紙にも600dpiの高解像度で印刷が出来るので、細かい文字や図面なども綺麗に印刷できる。さらに、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは「ノズル自己診断システム」を搭載しており、ヘッドのドット抜けを印刷ジョブごとに自動検知して調整してくれる。何百枚も印刷したら、途中から筋が入ってやり直し……という無駄が軽減される。
 印刷速度はPX-M6712FTPX-M6711FTで異なる部分だ。印刷速度に影響するノズル数は、PX-M6711FTがカラー各256ノズル、ブラック800ノズルで、これはEW-M5071FTと同等だ。それでもEW-M5071FTではA4カラー文書が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数。数字が大きいほど高速)、A4モノクロ文書が18.0ipmだったが、PX-M6711FTではそれぞれ12.0ipmと25.0ipmへと高速化している。特にモノクロプリントの高速化が顕著だ。そして、PX-M6712FTではブラックだけで無くカラーも800ノズル搭載することにより、カラープリントも25.0ipmの高速印刷となっている。モノクロメインかカラーも多く使うかが機種を選ぶ決め手になりそうだ。
 インクボトルに関しては、1本でエコタンクが満タンになるが、インクボトル1本での印刷可能枚数はPX-M6712FT/PX-M6711FTはEW-M5071FTと全く同じだ。一方でインクボトル自体の価格は、EW-M5071FTはブラックが1,800円、カラーが各900円だったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTではそれぞれ5,200円と2,600円へと大幅に上がった。結果、印刷コストも、EW-M5071FTではA4カラー文書0.8円、A4モノクロ文書0.4円だったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは2.0円と0.8円へと、それぞれ2.5倍と2倍になっている。エコタンク搭載プリンター=印刷コストが激安というイメージが薄れてしまったのは残念だ。全色顔料インクという設計や、DURABrite ETインクそのものの製造コストが高いのか、直接のライバルとなるブラザーのファーストタンク搭載プリンターがカラー3.7円、モノクロ0.8円であるため、EW-M5071FTほどまで安くする必要が無いという判断なのかは分からない。ただ、実際にファーストタンク搭載プリンターと比べてカラーは安く、モノクロは同等だし、インクカートリッジ方式のPX-M5081F/PX-M5080Fではカラー7.6円、モノクロ2.5円と比べると圧倒的に安いのは確かだ。また、レーザープリンターからの移行も考えられているが、卓上タイプのA3レーザープリンターの場合、A4カラーが9円〜12円、A4モノクロが2.2〜3.0円程度なので、これらと比べても圧倒的に安いと言える。
 ちなみに、EW-M5071FTでは同梱のインクボトルは「セットアップ用インクボトル」各色1本で、PX-M6712FT/PX-M6711FTは「インクボトル」各色1本と違いがある。PX-M6712FT/PX-M6711FTは、別売りのインクと同等のものが1本ずつ付属するため、同梱インクでエコタンクが満タン状態にできる。ではEW-M5071FTでは少ししか入らないのかというと、結局満タン状態にできるという話もある(未確認)。単なる表現の違いとも言える。少なくとも初期充填でかなりの量のインクを消費するので、6,000枚のプリントというのはできないのは共通している。ハッキリと枚数は公表しないが、エコタンク搭載A4プリンターの場合は3,600枚という機種もあるので、半分程度は消費してしまうと思った方が良さそうだ。


プリント(給紙・排紙関連)
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
対応用紙サイズ
定型用紙
L判〜A3ノビ
(用紙幅64mmまで対応)
L判〜A3ノビ
(用紙幅64mmまで対応)
L判〜A3ノビ
(フチ無し印刷非対応)
長尺用紙
長さ6,000mmまで
長さ6,000mmまで
長さ1,200mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(50枚/20枚/20枚)

(50枚/20枚/20枚)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
前面
【カセット上段】
A3まで
(250枚/65枚/50枚)
【カセット下段】
普通紙A3〜A5
(250枚/−/−)
【カセット上段】
A3まで
(250枚/65枚/50枚)
【カセット下段】
普通紙A3〜A5
(250枚/−/−)
【カセット上段】
(250枚/50枚/10枚)
【カセット下段】
普通紙A3〜B5
(250枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動開閉
○(A4/A3伸張量自動調整)
○(A4/A3伸張量自動調整)
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
(用紙サイズ自動検知機能搭載)
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
(用紙サイズ自動検知機能搭載)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能
○(印刷時)
○(印刷時)
○(印刷時)

 続いて、PX-M6712FT/PX-M6711FTの給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙は最大はA3ノビ、最小はL判という点では共通だ。しかし、PX-M6712FT/PX-M6711FTは大きく進化している。まずEW-M5071FTではフチなし印刷が出来なかったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは対応した。写真印刷にはあまり使わないと思われるが、フチなしデザインのハガキや、背景色のあるチラシや書類なども作れる。また、用紙幅はL判の89mmより小さな64mmまで対応している。このサイズは、B6ハーフサイズのプライスカードに用いられ、小売店などで重宝されそうだ。一方長尺印刷に関しては、EW-M5071FTが1,200mm(1.2m)までだったのに対して、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは6,000mm(6m)まで対応し、垂れ幕や横断幕などの印刷にも使用できる。
 給紙に関しては、前面給紙カセット2段+背面給紙という点では同じだ。ただ、EW-M5071FTの背面給紙は1枚ずつの手差しだったのに対して、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは連続給紙が可能なトレイ式へと進化した。普通紙は50枚、ハガキや写真用紙は20枚までセットできる。もちろんA3ノビ対応だ。また、前面給紙カセットは250枚セットできるものが2段あり、下段は普通紙のみである点や、B4やA3サイズをセットする場合はカセットを伸ばす必要があり本体から飛び出す点は、EW-M5071FTと同じだ。ただ、上段カセットはEW-M5071FTではA3ノビまで対応していたが、らPX-M6712FT/PX-M6711FTではA3までとなり、A3ノビに非対応となった。つまりA3ノビは背面給紙のみとなる。一方の給紙枚数は、上段は普通紙は250枚で同じだが、ハガキはEW-M5071FTの50枚からPX-M6712FT/PX-M6711FTでは65枚に、写真用紙は10枚から50枚に増えた。また、下段はEW-M5071FTはA3〜B5サイズの普通紙対応だったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTではA3〜A5となり、B5より小さなA5サイズにも対応している。給紙枚数は、普通紙は501枚から550枚に、ハガキは51枚から85枚に、写真用紙は11枚から70枚に増え、交換の手間が軽減されたことになる。
 また、排紙トレイはEW-M5071FTでは手動で引き出す必要があったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは自動伸縮するようになった。引き出し忘れて印刷した用紙が床に落ちてしまったという心配が無くなった。また、A4とA3で伸張量が調整されるようになっており、A4サイズの印刷なのに最大まで伸びで邪魔になるという事がないように工夫されている。
 さらに、用紙種類・サイズの登録機能と印刷設定と異なる場合にエラーが表示される機能は引き続き搭載されているが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは用紙サイズの自動検知機能を搭載しているため、違う用紙をセットした際に、サイズを手動登録する手間が軽減されている。

プリント(付加機能)
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
自動両面印刷
○(1枚目反転と同時に2枚目印刷)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
−/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/○
○/○
○/−

 続いてPX-M6712FT/PX-M6711FTのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能はPX-M6712FT/PX-M6711FTはどちらも搭載しており、その点でEW-M5071FTと同じだ。普通紙だけで無くハガキに対応しているのも同じだ。ただ、PX-M6712FTは1枚目表の印刷時に2枚目を給紙しておき、1枚目を裏返している間に2枚目表を印刷、2枚目を裏返している間に1枚目裏を印刷するという、「両面高速紙送り機構」を採用している。自動両面印刷の場合、表面を印刷した後、そのままもう一度プリンター内に吸い込まれ、前面給紙の場合と同じくプリンター後方で180度方向転換することで、裏返しているわけだが、これに時間がかかってしまい、両面印刷時は印刷速度が極端に低下してしまう。PX-M6712FTでは、この裏返すのに時間がかかる間に次の表面を印刷することで、時間を無駄にしないという手法だ。また印刷する内容によっては乾燥時間も必要になるが、2枚目の印刷を待つため、その間に表面のインクがより乾くため安心だ。ここで、自動両面印刷の速度を見てみよう。

自動両面印刷速度
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
A4カラー文書
印刷速度
片面
25.0ipm
12.0ipm
10.0ipm
両面
21.0ipm
9.0ipm
6.0ipm
片面印刷との速度割合
84%
75%
60%
A4モノクロ文書
印刷速度
片面
25.0ipm
25.0ipm
18.0ipm
両面
21.0ipm
16.0ipm
8.7ipm
片面印刷との速度割合
84%
64%
48.3%

 これを見ると、PX-M6712FTPX-M6711FTで同じ印刷速度のモノクロ文書でも、PX-M6712FTは21.0ipm、PX-M6711FTは16.0ipmと速度差が付いている。片面印刷との比率で見ると、PX-M6712FTは84%の速度となっており、両面印刷でも速度はほとんど変わらない。これはインクジェットプリンターとしては非常に優秀だといえる。PX-M6711FTは64%とPX-M6712FTと比べると20%近く遅くなっていることが分かる。一方、EW-M5071FTは8.7ipmで、片面印刷がPX-M6712FT/PX-M6711FTの25.0ipmと比べると遅い18.0ipmである事を考えても遅い。実際片面印刷に対する比率は48.3%と、PX-M6711FTよりも15%以上遅くなっている。カラーインクに染料インクを採用しているため(モノクロ印刷でもカラーインクを使う場合がある)乾燥時間が余分にかかっているのか、EW-M5071FTの採用する顔料インクより、PX-M6712FT/PX-M6711FTの採用するDURABrite ETインクは乾燥が早いのか、印刷以外の紙の給紙や反転が高速化したのかと色々と想像はできるが真偽は不明だ。カラー文書の場合、PX-M6712FTはモノクロと同じ21.0ipm(片面印刷との比率84%)だが、PX-M6711FTは9.0ipm(同75%)となっており、片面印刷との比率はやや改善しているが、PX-M6712FTより元々の印刷速度が遅いところが更に差が開いてしまっている。カラー文書の両面印刷を考えている人には注目ポイントだ。カラーの方もPX-M6711FTでも、EW-M5071FTよりは改善している。
 それでは自動両面印刷機能以外の部分も見ていこう。廃インクタンク(メンテナンスボックス)のユーザーによる交換はPX-M6712FT/PX-M6711FTもEW-M5071FT同様対応しているが、新たにフチなし印刷にも対応したため、「フチなし吸収材エラー」時に印刷が継続できる機能も搭載された。フチなし印刷を行う場合、用紙のフチギリギリに印刷するのは用紙の微妙なズレなどを考えると難しいため、少し大きめに印刷し用紙からはみ出す部分は吸収材で吸収させるという方式をとっている。用紙が通る部分のプラスチックが一部欠けておりその下にクッションのような吸収材が見えるが、これがフチなし吸収材だ。このフチなし吸収材エラーが満タンになると、多くの機種では、一切のプリントが止まってしまう。一方、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは、この吸収材にインクが落ちることがない「フチあり」印刷に関しては印刷を継続できるようになった。フチなし印刷はできないとはいえ、フチなし印刷はとりあえず置いておいて、急を要するフチあり印刷を行い、余裕のあるときに修理に出すという事ができるわけだ。

スキャン
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
50枚
50枚
35枚
原稿サイズ
A3/B4/A4/B5/A5/レター/リーガル
A3/B4/A4/B5/A5/レター/リーガル
A3/B4/A4/B5/A5/レター/リーガル
両面読み取り
読み取り速度
カラー
9.0ipm
9.0ipm
4.8ipm
モノクロ
26.0ipm
26.0ipm
8.3ipm
スキャンデーターのメモリーカード保存
○(JPEG/PDF/PDA/A/TIFF)
○(JPEG/PDF/PDA/A/TIFF)
○(JPEG/PDF/TIFF)

 続いてPX-M6712FT/PX-M6711FTのスキャナー部を見てみよう。スキャナーの解像度やCISセンサーという点は同じで、ADFも搭載しているが、ADFにセットできる原稿の枚数が、EW-M5071FTの35枚から、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは50枚に強化されている。一度にスキャン・コピー・ファクスが連続で行えるため便利だ 。さらに、そのADFを利用した場合のスキャン速度も向上している。カラー原稿の場合、EW-M5071FTは4.8ipmだったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは9.0ipmと、ほぼ倍速になった。モノクロ原稿の場合は8.3ipmから26.0ipmとなり、こちらは3倍以上だ。これは利便性が非常に高まっており、特にコピー時には効果を発揮するだろう(詳しくは後述)。
 また、本体だけでスキャンしてメモリーカードやUSBメモリーに保存する機能は引き続き搭載するが、EW-M5071FではJPEG、PDF、TIFF形式で保存できたが、PX-M6712FT/PX-M6711FTではこれらに加えてPDA/A形式での保存も可能となった。

ダイレクト印刷
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
ダイレクトプリント
メモリーカード
メモリーカードリーダー対応
メモリーカードリーダー対応
SD/MS Duo
USBメモリー

(外付けHDD対応)

(外付けHDD対応)

(外付けHDD対応)
赤外線通信
対応ファイル形式
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ)
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ)
JPEG/TIFF
色補正機能
赤目補正
フチなし/フチあり
赤目補正
フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ
−/−
−/−
○/○
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 PX-M6712FT/PX-M6711FTとEW-M5071FTのダイレクト印刷機能を比較してみよう。3機種とも写真印刷向きのプリンターではないが、ダイレクト印刷機能もしっかり搭載している。ただ、機能面では若干違いがある。EW-M5071FTでは、SDカードとメモリースティックDuoスロットを搭載し、さらにUSBポートも搭載しておりここにUSBメモリーや外付けHDDを接続することができた。一方PX-M6712FT/PX-M6711FTはUSBポートしかない。ここにUSBメモリーや外付けHDDを接続できるのは同じだが、メモリーカードリーダーは搭載しない。しかし、パソコン用のメモリーカードリーダーに対応しており、それをUSBポートに挿し込むことで、SDカードをはじめとする各種メモリーカードに対応できる。アダプターは安い物なら1,000円以下で販売されているため、これさえあればPX-M6712FT/PX-M6711FTでもEW-M5071FTと同じように使える。ただしメモリーカードリーダーと、USBメモリーや外付けHDDを同時に接続できないため、メモリーカードからUSBメモリーや外付けHDDへバックアップする機能は非搭載となっている。
 画質は写真向けではないが、写真を選択して、日付を入れるなどして印刷ができるのは同じだ。自動写真補正機能である「オートフォトファイン!EX」も利用できる。EW-M5071FTと比べると、PX-M6712FT/PX-M6711FTはフチなし印刷ができるため、写真らしい印刷は可能だ。その印刷できる形式だが、EW-M5071FTではJPEGとTIFF形式のみだったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは、前述の「プリンター本体でスキャンして外部メモリーに保存する機能」で作成したPDFの印刷も可能となった。これのより、書類などをスキャンしてUSBメモリー等に入れておき、必要なときに再印刷と言ったことが可能となった。

スマートフォン/クラウド対応
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
スマートフォン連携
アプリ
メーカー専用
EPSON iPrint
EPSON Smart Panel
EPSON iPrint
EPSON Smart Panel
EPSON iPrint
AirPrint
対応端末
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
(EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降)
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
(EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降)
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
プリント
アプリ経由/本体
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージ
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
SNS
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
スキャン
アプリ経由/本体
○/○
○/○
○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
メールしてプリント
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 PX-M6712FT/PX-M6711FTのスマートフォン、クラウド関連機能を見ていこう。専用のアプリは従来のEPSON iPrintに加えて、他の最新機種にならって、EPSON Smart Panelにも対応した。対応端末に変化は無いが、EPSON Smart Panelの場合は、iOSは11.0以降となる。またAitPrintに対応し、iPhoneやiPadからはAirPrint経由でのプリントも可能となった。
 その他、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは、Wi-Fiダイレクト接続時の接続支援機能が追加されている。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定は簡単になっている。その他、クラウド関係の機能等は同等だ。

コピー機能
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
等倍コピー
○(対応用紙はA3/B4/A4/B5/A5のみ)
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
○/○
○/○
その他のコピー機能
プレビュー
濃度調整
背景除去機能
コントラスト調整
鮮やかさ調整
色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別)
シャープネス調整
色相調整
プレビュー
濃度調整
背景除去機能
コントラスト調整
鮮やかさ調整
色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別)
シャープネス調整
色相調整
プレビュー
濃度調整
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
見開き→2ページコピー
ソート(1部ごと)コピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
見開き→2ページコピー
ソート(1部ごと)コピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ブック分割コピー
部単位コピー

 PX-M6712FT/PX-M6711FTのコピー機能を見てみよう。基本的な等倍コピーや、拡大縮小や割り付け機能などに違いはない。ただし、コピー時に使用できるプリント用紙は、EW-M5071FTではA3/B4/A4/B5/A5しか選べなかったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTではこれらに加えて、A6/ハガキ/四切/六切/ハイビジョン/KG/2L判/L判/長形3号/4号/洋形1号/2号/3号/4号/角形2号/20号が選べるようになった。また、コピー時の機能として、EW-M5071FTはプレビューと濃度調整機能だけだったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは、背景除去機能の他、コントラスト、鮮やかさ、色調、シャープネス、色相を調整できる様になった。色調補正に関しては、レッド、グリーン、ブルーを個別に調整できる。かなり高度な色補正ができるため、できるだけ原本に近い色にしたり、好みの色に調整するという事が可能となった。なお、バラエティーコピー機能で一部機能名が異なっているが、EW-M5071FTの「ブック分割コピー」はPX-M6712FT/PX-M6711FTの「見開き→2ページコピー」、「部単位コピー」は「ソート(1部ごと)コピー」と同じ機能となる。
 また、スキャナー部で説明した様に、ADFの速度が向上したことにより、コピーでの利便性も向上している。同じ原稿の連続コピーなら良いのだが、ADFを利用して、複数の原稿をコピーする場合、スキャンとプリントの遅い方の制限を受けることになる。EW-M5071FTの場合、プリントはモノクロ18.0ipm、カラーが10.0ipmなのに対して、ADFはモノクロ8.3ipm、カラー4.8ipmなので、こちらがボトルネックとなり、それ以上の速度が出ない。それに対して、PX-M6712FT/PX-M6711FTのADFはカラーが9.0ipm、モノクロが26.0ipmである。モノクロのプリント速度は両機種とも25.0ipmなので、理論上はスキャンがボトルネックにならず、プリント速度がフルに発揮できる。カラーのプリント速度はPX-M6712FTが25.0ipm、PX-M6711FTが12.0ipmなので、ADFの方が遅いが、それでもEW-M5071FTと比べると倍近い速度でコピー出来ることになる。ADFを利用したコピーが多いなら、かなり使いやすくなったと言えるだろう。

ファクス機能
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A3〜A5
A3〜A5
A3〜A5
記録紙サイズ
A3ノビ/A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
A3ノビ/A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
受信ファクス最大保存ページ数
550枚/200件
550枚/200件
550枚/100件
データー保持(電源オフ/停電)
○/○
○/○
○/○
ワンタッチ
10件
アドレス帳
200件
200件
200件
グループダイヤル
199宛先
199宛先
199宛先
順次同報送信
200宛先
200宛先
200宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/○/○
○/○/○
○/○/○
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを
メール送信
共有フォルダ保存
外部メモリー保存
○(USBメモリー・各種メモリーカード(カードリーダー接続時))
○(USBメモリー・各種メモリーカード(カードリーダー接続時))
○(USBメモリー/SD/MS Duo/)
PCファクス
送受信
送受信
送受信

 続いて、PX-M6712FT/PX-M6711FTのファクス機能を見てみよう。基本的にはほぼ同じ機能だが、一部異なる点がある。まず画質設定から「写真」がなくなった。読取操作線密度は詳細モードと同じだが、写真を含む原稿に向いている設定であったが、大きな差ではないだろう。 記録紙のサイズには、新たにA3ノビが追加されたが、これも大きな違いでは無い。受信したファクスの保存ページ数が550枚で変わらないが、件数が100件から200件に増加した。数枚の原稿が次々に送られてくる使い方なら良い強化点と言えるだろう。アドレス帳は200件で変わらないが、EW-M5071FTでは加えて10件のワンタッチダイヤル(正確には5つのボタンとシフトの組み合わせにより10件)機能があったが、これは省略された。代わりに、アドレス帳の登録番号で発信先を指定できる「クイックダイヤル」機能が追加されている。その他、グループダイヤルや順次同報送信、自動リダイヤルやポーリング受信・送信、受信ファクスのメール送信や外部メモリー保存といった機能は同等だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
新機種
旧機種
型番
PX-M6712FT
PX-M6711FT
EW-M5071FT
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(角度調整可)
4.3型
(角度調整可)
4.3型
操作パネル
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数
20万枚
20万枚
8万枚
外形寸法(横×奥×高)
515×500×350mm
515×500×350mm
666×486×418mm
重量
21.5kg
21.5kg
23.5kg
本体カラー
ホワイト
ホワイト
ブラック

 最後にPX-M6712FT/PX-M6711FTの操作パネルやインターフェース、本体サイズなどを見てみよう。液晶は同じ4.3型でタッチパネル式となっている点は同じだ。ただし、本体から斜めに飛び出た形で固定されていたEW-M5071FTと比べ、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは本体前面に取り付けられ、ほぼ水平まで持ち上げて角度調整が可能だ。見やすい角度に調整できる分、使いやすくなった。また、EW-M5071FTは、カートリッジ方式の1世代前のPX-M5041Fをベースにしているため、液晶内のメニューレイアウトが古いものだったが、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは最新機種と同一のものとなり洗練された。操作パネルはテンキーや物理ボタンで用意するのは同じで、液晶内に表示されるのに比べてファクス番号などが押しやすい様になっている。ただ、細かな点で言うと、スタートボタンは物理キーから液晶内表示に変更された。また、EW-M5071FTでは液晶右に用意されていた「ホーム」と「戻る」ボタンはの内、「戻る」は液晶内表示に、「ホーム」は液晶左にタッチセンサー式ボタンとして搭載された。タッチセンサー式ボタンは、「ホーム」以外に、液晶左に「排紙トレイ収納」、液晶右に「ヘルプ」と「中止」ボタンが配置されている。一部をタッチセンサー式ボタンとすることで、見た目はややすっきりした。
 インターフェースはUSB2.0に加えて、無線LANと有線LANにも対応しネットワーク接続出来るのは同じだ。しかし無線LANに関しては機能強化されている。EW-M5071FTではIEEE802.11n/g/bのみ対応だが、PX-M6712FT/PX-M6711FTはIEEE80.211ac/aにも対応し、5GHz帯にも対応する。IEEE802.11acはIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。EW-M5071FTやその他の多くの機種は2.4GHz帯のみ対応するが、これはBluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすい。一方、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。このように無線LANでの安定性が大幅に強化されている。
 対応OSに変化はない。マイクロソフトのサポートの終わったWindows XPやVistaにも引き続き対応し、MacOSも10.6.8以降と比較的古いバージョンから対応する。
 本体サイズは、PX-M6712FT/PX-M6711FTは共通で515×500×350mmである。EW-M5071FTの666×486×418mmと比べるとかなり小型化している。EW-M5071FTはエコタンク部分だけが右側に飛び出ているが、それを除いても横幅は567mmで、PX-M6712FT/PX-M6711FTは幅が52mm、高さも68mm小さくなっており、かなりコンパクトな印象だ。奥行きに関しては14mm増えているが、ほぼ同等の様に思える。しかし、EW-M5071FTは操作パネル部だけが、PX-M6712FT/PX-M6711FTはエコタンク部だけが飛び出ている分も含めているが、操作パネルの飛び出し量の方が大きいので、一部の飛び出した分を除いた奥行きはPX-M6712FT/PX-M6711FTは14mm以上大きいかもしれない(正確な数値は分からない)。
 耐久枚数に関しては、8万枚から20万枚へ大幅に強化された。EW-M5071FTはベースとなったカートリッジ方式の機種がPX-M5041Fと1世代古く、現行モデルの15万枚より耐久枚数が低かったため、本来印刷枚数が多いはずのエコタンク搭載機の方が耐久性が弱いという問題を抱えていたが、今回解消された。
 本体カラーについては、EW-M5071FTのブラックからPX-M6712FT/PX-M6711FTではホワイトなった。ただし、エコタンク部(側面を除く)だけがブラックとなっており、エコタンクが強調された独特のデザインとなっている。



 PX-M6712FT/PX-M6711FTはEW-M5071FTと比べると大幅な機能強化がなされている事が分かる。EW-M5071FTは、PX-M5041Fをベースにエコタンクだけを後付けした様な形で作られ、インクも従来のものを使っているために全色顔料とならず、「とりあえずA3対応のエコタンク搭載複合機を出した」という印象だった。それに対して、PX-M6712FT/PX-M6711FTでは、インクも本体も専用のものとなり、無事に全色顔料となっただけでも十分に意味があるといえる。それに加えて、印刷速度が向上し、特にPX-M6712FTではカラーも非常に高速だ。対応用紙や、排紙トレイの自動伸縮、自動両面印刷の高速化(PX-M6712FTのみ)、ADFの高速化、コピー機能強化、無線LANの強化と操作性の向上など、多岐にわたって改良されており、それでいて大幅に小型化しているのも見逃せない。その割にPX-M6711FTなら、本体価格はEW-M5071FTと同等で、大幅に魅力が増したといえる。また、欠点が少なくなり、ビジネス用途にもオススメできる製品になった。ただ、残念なのが印刷コストが倍以上に上がってしまったことだ。とはいえ、EW-M5071FTと比較すると高く見えるが、カラー2.0円、モノクロ0.8円という印刷コストは十分に安く、カートリッジ方式やレーザープリンターと比べて圧倒的に有利である事に変わりはない。EW-M5071FTは生産終了で手に入らなくなるため、今後はA3プリントA3スキャンの機種では最も印刷コストが安い機種は(卓上の機種では)PX-M6712FT/PX-M6711FTとなるわけで、印刷枚数が多い人にはベストな選択肢になるだろう。
 なお、PX-M6712FTPX-M6711FTの価格差は3万円。違いはカラープリントが倍以上高速である事と、自動両面印刷の際に1枚目反転と同時に2枚目を印刷する事で高速化を図っているかどうかの2点だけだ。カラープリントが多いか、自動両面印刷が多いならPX-M6712FT、そこまで速度を求めないならPX-M6711FTという選択になるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/


PX-M6712FT
PX-M6711FT