プリンター徹底比較
2020年春・夏時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2020年9月18日公開)
表中の赤文字は旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります |
新機種「PX-M791FT」と旧機種「PX-M886FL」参考機種「EW-M670FT」を徹底比較する |
PX-M791FT はエコタンク搭載のビジネス向け複合機の新機種だ。ファクス機能を搭載しており、EW-M670FTの上位機種の扱いとも言えるが、一方で、エプソンのWebページ等では、エコタンク方式ではないPX-M886FLの後継製品として位置づけられている様だ。PX-M791FT はPX-M886FLと似た部分も多く、またPX-M791FT の発売と同時にPX-M886FLが生産終了となっている一方、PX-M886FLの兄弟モデル(印刷コストが高く本体価格が安い)のPX-M885Fは生産を継続しており、この点からもPX-M886FLの後継製品と、EW-M670FTの上位機種の両方の性質を持った製品と言える。そこで、PX-M886FLとどこが変わったのか詳しく比較する一方、EW-M670FTとも比較し、同じエコタンク方式ながら上位機種はどこが優れているのか確認してみよう。
プリント(画質・速度・コスト) |
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新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
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発売日 |
2020年7月9日 |
2018年7月19日 |
2017年9月14日 |
発売時の価格 |
89,980円 |
109,980円 |
54,980円 |
インク |
色数 |
4色 |
4色 |
4色 |
インク構成 |
ブラック シアン マゼンタ イエロー |
ブラック シアン マゼンタ イエロー |
ブラック(顔料) シアン マゼンタ イエロー |
カートリッジ構成 |
エコタンク方式 (挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
各色独立(インクパック方式) |
エコタンク方式 (挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
顔料/染料系 |
顔料 (DURABrite ET) |
顔料 |
染料(カラー)/顔料(黒) (アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年) |
インク型番 |
IT08番 |
IP05A |
ヤドカリ(顔料) ハリネズミ(染料) |
ノズル数 |
3200ノズル |
3200ノズル |
784ノズル |
全色:各800ノズル |
各色:各800ノズル |
カラー:各128ノズル 黒:400ノズル |
最小インクドロップサイズ |
N/A(3.8pl(MSDT)?) |
N/A(3.8pl?) |
3.3pl (MSDT) |
最大解像度 |
4800×1200dpi |
4800×1200dpi |
4800×1200dpi |
PrecisionCoreプリントヘッド |
○(600dpi) (ノズル自己診断システム搭載) |
○(600dpi) (ノズル自己診断システム搭載) |
○(600dpi) |
印刷速度 |
L判縁なし写真(メーカー公称) |
N/A |
N/A |
75秒 |
A4普通紙カラー(ISO基準) |
25.0ipm (最速32枚/分) |
24.0ipm (最速34枚/分) |
8.0ipm (最速20枚/分) |
A4普通紙モノクロ(ISO基準) |
25.0ipm (最速32枚/分) |
24.0ipm (最速34枚/分) |
15.0ipm (最速33枚/分) |
印刷コスト |
L判縁なし写真 |
N/A |
N/A |
5.9円 |
A4カラー文書 |
2.0円 |
2.0円 |
0.9円 |
A4モノクロ文書 |
0.8円 |
0.8円 |
0.4円 |
インクボトル1本での印刷枚数 |
ブラック |
7,500ページ |
10,000ページ |
7,500ページ |
カラー |
6,000ページ |
5,000ページ |
6,000ページ |
インクボトル1本での価格 |
ブラック |
5,200円 |
7,800円 |
2,150円 |
カラー |
2,600円 |
1,900円 |
1,150円 |
同梱インクボトル |
インクボトル各色1本 |
ブラックインク×2パック カラーインクパック×各3パック |
インクボトル各色1本 |
まずは、PX-M791FT の販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はPX-M791FT は89,980円で、PX-M886FLの109,980円と比較すると2万円安くなった。しかし、後述の同梱インクでの印刷枚数を考えると、必ずしも安くなったとは言えない。一方EW-M670FTと比べると3万5000円高くなっている。
それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。 PX-M791FT のインク構成は4色で、全色顔料インクとなっている。これはPX-M886FLと同じだ。ただし、PX-M791FT は新たに「DURABrite ET」インクという名称が付けられている。「DURABrite」インク自体は、エプソンの海外モデルでは以前から使われてきた名称で、「DURABrite」や「DURABrite Ultra」といった種類があるが、今回新たに「DURABrite ET」インクが採用された。「ET」はエコタンク(EcoTank)の頭文字だと思われるが、詳細は不明だ。ちなみにPX-M886FLはただの顔料インクとなっているが、海外の同機能のモデルでは「DURABrite Ultra」を採用しているため、PX-M886FLも名称が無いだけかもしれない。「Ultra」と「ET」の違いが分からないためなんとも言えないが、普通紙に印刷した文書の保存性などに差がある可能性がある。ただ、どちらも顔料インクなので、普通紙に高画質な印刷が出来るほか、耐水性が高いという特徴は変わらない。一方で、写真用紙に印刷すると発色が良く無いほか、写真用紙本来の光沢感が薄れて半光沢になる点も同じだ。最小インクドロップサイズはどちらも非公開ながら、海外の同機能のモデルから予測するとどちらも3.8plで同等だ。また、PrecisionCoreプリントヘッドを採用しており、普通紙に従来よりも高解像度の600dpiでプリントが可能で、より小さな文字や細かな図面も綺麗に印刷できる点も同等だ。プリントヘッドのドット抜けを印刷ジョブごとに自動的に検知し、画質を調整する「ノズル自己診断システム」も同じく搭載している。ちなみに、EW-M670FTとの比較では、EW-M670FTがブラックが顔料、カラーが染料インクを採用しているのに対して、PX-M791FT は全色顔料インクである点が異なる。EW-M670FTは写真用紙への印刷時は染料インクである分、発色が良く写真用紙本来の光沢感も失われないが、写真用紙への印刷時は顔料ブラックが使えず、カラー3色を重ねて黒に近い色を作り出すので、黒のコントラストは弱めになってしまう。一方普通紙への印刷時はカラーインクが染料インクなので、カラーの画質や耐水性ではPX-M791FT が有利だ。ファクス付きと言うことでビジネス用途や文書印刷用途に使われる機種と思われるだけに、全色顔料のPX-M791FT の方が用途に合っているといえる。また、EW-M670FTでは最小インクドロップサイズは3.3plでPX-M791FT より若干小さいが画質に影響するほどではない。また同じくPrecisionCoreプリントヘッドは採用しているが、ノズル自己診断システムは搭載しておらず、このあたりがPX-M791FT の上位機種らしいところと言えるだろう。
インクは、PX-M886FLのインクパック方式から、PX-M791FT ではエコタンク方式に変更された。PX-M886FLのインクパックは、インクの充填された柔らかな銀色の袋状のもので先端にプラスチックの持ち手と取り付け口が付いている形状である。本体前面の最下段がインクトレイになっており、トレイを抜いて、パックをセットして、トレイを挿し込む形となる。それに対してPX-M791FT では、本体前面の左側にインクタンクが搭載されており、ここにインクボトルからインクを充填して使用する形になる。従来通り「挿すだけ満タンインク方式」を採用しており、インクボトルを注入口に挿し込むと充填がスタートし、満タンになると自動ストップするため、手軽だ。また、注入口の形状が色ごとに変えてあるため、誤って、違う色のタンクに補充してしまう危険性も無い。また、従来のエコタンクはスキャナー部を持ち上げないと注入口を開けられなかったが、PX-M791FT では、エコタンクの飛び出た部分の上部を手前に開けるだけとより簡単になった。インク方式が変わったため、インクの型番も変更されており、IP05A番からIT08番インクとなった。カメやヤドカリ、イチョウと言った「もの」の名前を型番にしている家庭向けの機種とは異なり、純粋な型番となっている。ちなみに、印刷可能枚数にも差がある。PX-M886FLのインクパックは、1回の交換でカラー文書を印刷すると、ブラックインクは10,000ページ、カラーインクは5,000ページ印刷が出来た。PX-M791FT ではボトル1本でエコタンクが満タンになるが、ブラックインクは7,500ページ、カラーインクは6,000ページ印刷が出来る。PX-M791FT はこれまでのエコタンク搭載プリンターと同じ枚数になっているが、PX-M886FLと比べるとブラックは減り、カラーは増えた形となる。インクの価格も異なり、PX-M886FLではブラックが7,800円、カラーが各1,900円だったが、PX-M791FT ではブラックが5,200円、カラーが2,600円となる。印刷枚数が減ったブラックは価格も下がり、増えたカラーは価格も上がっている。結果、印刷コストはA4カラー文書で2.0円、A4モノクロ文書で0.8円と全く同じだ。卓上のレーザープリンターではA4モノクロ文書が3〜4円である事を考えると、かなり安くなっている。ちなみに、EW-M670FTも同じエコタンク方式で、挿すだけ満タンインク方式であるためインクの補充の手間は変わらない。印刷可能枚数もPX-M791FT と同じだが、インクボトルがブラックが2,150円、カラーが各1,150円と安価なので、印刷コストはA4カラー文書が0.9円、A4モノクロ文書が0.4円となっている。この点ではPX-M791FT はEW-M670FTの上位機種ながら、印刷コスト面ではほぼ倍となってしまっている点は残念だ。顔料インクを採用した事によるコスト増なのか、PX-M886FLに合わせただけなのかは不明だ。
PX-M791FT は全色800ノズルとPX-M886FLと同じノズル数となっているが、印刷速度はカラー、モノクロ共に25ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数。数字が大きいほど高速)と、PX-M886FLの24ipmより微妙に高速化している。一方で最速値は34枚/分から32枚/分に若干低下している。とはいえ十分高速だ。特にEW-M670FTがカラー8ipm、モノクロ15ipmなのと比べると、PX-M791FT はカラープリントは3倍以上、モノクロプリントも1.67倍と大幅な高速化を果たしている。
ちなみに同梱するインクだが、PX-M791FT は別売りのインクボトルと同じものが各色1本同梱する。つまり同梱インクでエコタンクを満タンにした状態で使い始めることができる。ただ初期充填でかなりの量を消費してしまうので、残りの分を使用できる形となる。同じくインクボトルが1本同梱するEW-M670FTでは3,600枚以上プリント可能となっている。一方PX-M886FLはブラックインクが2パック、カラーインクが各3パックも同梱する。つまり、初回に取り付けた分+ブラックは1回、カラーは各2回交換する事が可能だ。純粋に計算すると、ブラックインクは20,000ページ分、カラーインクは15,000ページ分が同梱する事になるが、同梱インクでの印刷可能枚数はブラックインクは16.000ページ、カラーインクは11,000ページとなっており、4,000ページ分が初期充填で使用されることになる。同梱インクで印刷できる枚数に大きな違いがあり、これが最初に説明した、PX-M791FT は本体価格が2万円安いが、同梱インクのことを考えると安くなったとも言えないという理由だ。PX-M791FT の初期充填後の印刷可能枚数は公表されていないが、EW-M670FTと同じ3,600ページとすると、ブラックインクは12,400ページ、カラーインクは7,400ページPX-M886FLの方が多く印刷できる。これはインクボトル換算でブラックは1.65本、カラーは1.23本分に相当し、金額にすると18,174円となる。本体価格はPX-M886FLより2万円安くなっても、PX-M886FLの同梱インクと同じページ数を印刷するためには18,174円分の出費が必要であり、結果的にはほぼ同じ価格となる。
プリント(給紙・排紙関連) |
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新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
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対応用紙サイズ |
定型用紙 |
L判〜A4 (用紙幅64mmまで対応) |
L判〜A4 (用紙幅64mmまで対応) (フチ無し印刷非対応) |
L判〜A4 |
長尺用紙 |
長さ6,000mmまで |
長さ6,000mmまで |
長さ1,200mmまで |
給紙方向 (セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙)) |
背面 |
○ (50枚・20枚・20枚) |
○ (80枚・30枚・20枚) |
− |
前面 |
【カセット上段】 (250枚/65枚/50枚) 【カセット下段】 普通紙のみ (250枚/−/−) (A4〜A5) |
【カセット】 (250枚/50枚/50枚) 【増設カセット】 オプション 普通紙のみ (550枚/−/−) |
【カセット】 普通紙のみ (250枚/30枚/20枚) |
その他 |
− |
− |
− |
排紙トレイ自動開閉 |
○ |
−(取り外し式) |
− |
用紙種類・サイズ登録 |
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動) 用紙サイズ自動検知機能搭載 |
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動) 用紙サイズ自動検知機能搭載 |
○(カセット収納連動) |
用紙幅チェック機能 |
○(印刷時) |
○(印刷時) |
○(印刷時) |
続いて、PX-M791FT の給紙、排紙機能を比較してみよう。PX-M791FT の対応用紙サイズはL判〜A4でPX-M886FLやEW-M670FTと同じだ。ただし、PX-M886FL同様、64mm幅の用紙に対応している。B6ハーフサイズのプライスカードなどの印刷に便利だ。また長尺用紙も、PX-M886FL同様6,000mmまで対応している。この2点はEW-M670FTに対して優れているといえる。一方、PX-M886FLではフチなし印刷には非対応だったが、PX-M791FT は対応している。画質的には写真印刷を行うことは少ないと思われるが、フチなしデザインのハガキや、背景色のあるチラシや書類作りに便利だ。
給紙方式は前面給紙カセット+背面給紙トレイという組み合わせはPX-M886FLと同じだ。PX-M791FT の背面給紙は普通紙50枚、ハガキ20枚までセットできるが、PX-M886FLの普通紙80枚、ハガキ30枚と比べるとやや少なくなった。一方、前面給紙カセットに関しては、PX-M886FLでは1段だったが、PX-M791FT では2段になった。普通紙を各250枚までセットできるので、PX-M886FLは250枚のみだが、PX-M791FT は500枚までセットできる。また、A4とB5のように2種類の用紙を250枚ずつセットしておき使い分けることも可能だ。PX-M791FT の下段カセットはA5〜A4サイズの普通紙のみという制限はあるが、PX-M886FLより便利になっている。ハガキや写真用紙、ファイン紙などは上段カセットにセットすることになるが、こちらもハガキが65枚と、PX-M886FLの50枚より増加している。ただ、PX-M886FLは、オプションの増設カセットを最下段に追加することが可能で、普通紙のみだが550枚までセットできる。価格は15,000円で高さも10cm大きくなるが、増設後の給紙枚数ではPX-M791FT より上回る。結果、普通紙の給紙枚数はPX-M791FT は550枚、PX-M886FLは330枚(カセット増設時は880枚)、ハガキはPX-M791FT が85枚、PX-M886FLが80枚となる。標準で大量給紙に対応している点では使い勝手は良くなったと言えるだろう。ちなみにEW-M670FTは前面給紙カセットのみで、普通紙250枚、ハガキ30枚なので、これと比べるとPX-M791FT はよりハードな使い方にも対応できると言える。
排紙トレイに関しては、PX-M886FLは縮めたり折りたたんだりして本体に収納する事ができなかった(正確にはA4より大きなサイズを使用する際に伸ばすことはできるが、A4サイズが乗るサイズより縮めることはできない)。取り外すことはできたが、利便性を考えると取り付けたままとなり、常に前に排紙トレイが飛び出た状態だった。PX-M791FT では縮めて収納することが可能となり、使用していないときに邪魔にならなくなった。また、排紙トレイは自動で伸縮するので、印刷時に伸ばし忘れて用紙が落ちてしまうと言うことも無い。利便性は向上している。さらに、用紙種類・サイズの登録機能と印刷設定と異なる場合にエラーが表示される機能は引き続き搭載されているが、PX-M791FT では用紙サイズの自動検知機能を搭載しているため、違う用紙をセットした際に、サイズを手動登録する手間が軽減されている。
プリント(付加機能) |
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新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
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自動両面印刷 |
○(普通紙のみ・1枚目反転と同時に2枚目印刷) |
○(普通紙のみ・湿温度センサー搭載) |
○ |
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 |
− |
− |
− |
写真補正機能 |
○(オートフォトファイン!EX) |
○(オートフォトファイン!EX) |
○(オートフォトファイン!EX) |
特定インク切れ時印刷 |
− |
○(黒だけでモード・5日間のみ) |
− |
自動電源オン/オフ |
−/○ |
−/○ |
−/○ |
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続 |
○/○ |
○/− |
○/− |
続いてPX-M791FT のその他のプリント機能を比較してみよう。PX-M791FT は自動両面印刷機能を搭載しており、この点ではPX-M886FLと同じだ。普通紙のみ対応でハガキには非対応なのも同じだ。ただし、PX-M886FLでは湿温度センサーを搭載しており、環境に応じて最適な両面印刷が行えるようになっていたが、これはPX-M791FT では省略された。一方、PX-M791FT は1枚目表の印刷時に2枚目を給紙しておき、1枚目を裏返している間に2枚目表を印刷、2枚目を裏返している間に1枚目裏を印刷するという、「両面高速紙送り機構」を採用している。自動両面印刷の場合、表面を印刷した後、そのままもう一度プリンター内に吸い込まれ、前面給紙の場合と同じくプリンター後方で180度方向転換することで、裏返しているわけだが、これに時間がかかってしまい、両面印刷時は印刷速度が極端に低下してしまう。PX-M791FT では、この裏返すのに時間がかかる間に次の表面を印刷することで、時間を無駄にしないという手法だ。また2枚目の印刷を待つため、その間に表面のインクがより乾くため安心だ。ある意味温湿度センサーで乾燥度合いを調整しなくても問題が無くなったため、温湿度センサーが省略されたとも考えられる。ここで、自動両面印刷の速度を見てみよう。
自動両面印刷速度 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
A4カラー文書 |
印刷速度 |
片面 |
25.0ipm |
24.0ipm |
8.0ipm |
両面 |
21.0ipm |
15.0ipm |
4.5ipm |
片面印刷との速度割合 |
84% |
62.5% |
56.25% |
A4モノクロ文書 |
印刷速度 |
片面 |
25.0ipm |
24.0ipm |
12.0ipm |
両面 |
21.0ipm |
15.0ipm |
6.5ipm |
片面印刷との速度割合 |
84% |
62.5% |
43.3% |
これを見ると、片面印刷速度はPX-M791FT では25ipm、PX-M886FLでは24ipmとほぼ同等だったが、自動両面印刷はそれぞれ21ipmと15ipmとなり、差が開いている。PX-M791FT では片面印刷の84%の速度で印刷ができ、両面印刷だからといって速度を気にする必要は無いほどだ。やはり「両面高速紙送り機構」が効いていると言える。PX-M886FLは片面印刷の62.5%の速度で、これでも平均からすると決して遅くは無いため、PX-M791FT の進化には驚かされる。ちなみにEW-M670FTは温湿度センサーも両面高速紙送り機構も搭載していないためか、カラーは4.5ipm、モノクロは6.5ipmで、それぞれ片面印刷の56.25%と43.3%しか出ていない。ただし、EW-M670FTはハガキの自動両面印刷にも対応しており、この点ではPX-M791FT は不便と感じる場合もあるかもしれない。
それでは自動両面印刷機能以外の部分も見ていこう。カラーインクが切れた際に5日間だけモノクロプリントが可能な「黒だけでモード」はPX-M791FT では省略された。エプソンはエコタンク搭載プリンターでは、同機能を搭載しないというパターンとなっているため、それに合わせた形だ。エコタンク自体が大容量で、インク切れになる頻度が減っている事に加えて、インクカートリッジやインクパック式と違って、途中で継ぎ足しが可能なので、減ってきたり大量印刷前には満タンまでいれておく事が可能であるためと思われる。
その他、廃インクタンク(メンテナンスボックス)のユーザーによる交換はPX-M791FT もPX-M886FL同様対応しているが、新たにフチなし印刷にも対応したため、「フチなし吸収材エラー」時に印刷が継続できる機能も新たに搭載された。フチなし印刷を行う場合、用紙のフチギリギリに印刷するのは用紙の微妙なズレなどを考えると難しいため、少し大きめに印刷し用紙からはみ出す部分は吸収材で吸収させるという方式をとっている。用紙が通る部分のプラスチックが一部欠けておりその下にクッションのような吸収材が見えるが、これがフチなし吸収材だ。このフチなし吸収材エラーが満タンになると、EW-M670FTを初めとする機種では、一切のプリントが止まってしまう。一方、PX-M791FT では、この吸収材にインクが落ちることがない「フチあり」印刷に関しては印刷を継続できるようになった。フチなし印刷はできないとはいえ、フチなし印刷はとりあえず置いておいて、急を要するフチあり印刷を行い、余裕のあるときに修理に出すという事ができるわけだ。
スキャン |
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新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
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読み取り解像度 |
1200dpi |
1200dpi |
1200dpi |
センサータイプ |
CIS |
CIS |
CIS |
原稿取り忘れアラーム |
− |
− |
− |
ADF |
原稿セット可能枚数 |
50枚 |
50枚 |
35枚 |
原稿サイズ |
A4/B5/A5/レター/リーガル |
A4/B5/A5/A6/レター/リーガル |
A4/レター/リーガル |
両面読み取り |
○ |
○ |
− |
読み取り速度 |
カラー |
9.0ipm |
24.0ipm |
5.0ipm |
モノクロ |
27.5ipm |
24.0ipm |
5.0ipm |
スキャンデーターのメモリーカード保存 |
○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ) |
○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ) |
− |
PX-M791FT のスキャナー機能を見てみよう。スキャン解像度やCISセンサーである点、ADFを搭載している点などは同じだ。ADFのセット可能枚数も同じだが、対応用紙サイズからA6が消え、最小サイズはA5となった。大きな違いでは無いが、A6サイズの用紙をADFでスキャンする場合は注意が必要だ。ADFは両面スキャンも可能だ。ADFのスキャン速度には大きな変化がある。PX-M886FLではカラースキャンは24ipmだったが、PX-M791FT では9ipmに遅くなった。一方モノクロスキャンはPX-M886FLでは24ipmだったが、PX-M791FT では27.5ipmに高速化している。モノクロ重視になったわけだが、それでもカラーが大幅に遅くなったため、カラースキャンを多用する場合は不便になっている。また、ADFを利用して複数枚の原稿をコピーする場合、PX-M886FLではカラーもモノクロも、スキャンもプリントも24ipmなので、理論上はスキャンとプリントどちらが足を引っ張ることは無かった。PX-M791FT ではモノクロコピーの場合は、スキャナーが27.5ipm、プリントが25ipmなので、こちらはプリントスピードを十分に発揮できる。しかしカラーコピーの場合、スキャナーが9.0ipm、プリントが25ipmで、明らかにスキャナーがボトルネックとなってしまう。この点は残念だと言える。
ダイレクト印刷 |
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新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
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ダイレクトプリント |
メモリーカード |
メモリーカードリーダー対応 |
− |
− |
USBメモリー |
○ (外付けHDD対応) |
○ |
− |
赤外線通信 |
− |
− |
− |
対応ファイル形式 |
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ) |
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ) |
− |
色補正機能 |
赤目補正 |
赤目補正 |
− |
手書き合成 |
− |
− |
− |
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ |
−/− |
−/− |
−/− |
PictBridge対応 |
− |
− |
− |
各種デザイン用紙印刷 |
− |
− |
− |
PX-M791FT のダイレクト印刷機能を見てみよう。PX-M886FL同様、PX-M791FT でもUSBポートが用意され、USBメモリー内のデーターを印刷できる様になっている。家庭用プリンターの様にSDカードといったメモリーカードリーダーは搭載されない。ただ、PX-M886FLでは純粋にUSBメモリーだけ対応だったが、PX-M791FT ではパソコン用のメモリーカードリーダーを接続することで、SDカードなど各種メモリーカードからのプリントが可能になっている。またUSBメモリーだけで無く、外付けHDDの接続にも対応している。画質やインク的には写真印刷が目的と言うよりは、スキャンしてUSBメモリーに保存したデーターの印刷が目的とも言える(対応ファイル形式もJPEGとTIFFに加えてこの方法で保存したPDFファイルにも対応している)ため、USBメモリーだけの対応でも問題は無いが、SDカードや外付けHDDなどに対応していれば便利な場合もあるかもしれない。また、PX-M791FT ではフチなし印刷には対応したため、画質にこだわらなければ写真印刷をする可能性もあるので、やはりメモリーカードリーダーで各種メモリーカードに対応できるのは便利と言える。
スマートフォン/クラウド対応 |
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新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
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スマートフォン連携 |
アプリ |
メーカー専用 |
EPSON iPrint EPSON Smart Panel |
EPSON iPrint |
EPSON iPrint |
AirPrint |
○ |
○ |
○ |
対応端末 |
iOS 10.0以降 Android 5.0以降 (EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降) |
iOS 10.0以降 Android 5.0以降 |
iOS 10.0以降 Android 5.0以降 |
スマートスピーカー対応 |
○(Alexa/Googleアシスタント) |
○(Alexa/Googleアシスタント) |
○(Alexa/Googleアシスタント) |
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 |
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android)) |
○(NFC) |
− |
写真プリント |
○ |
○ |
○ |
ドキュメントプリント |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
Webページプリント |
○ |
○ |
○ |
スキャン |
○(PDF/JPEG) |
○(PDF/JPEG) |
○(PDF/JPEG) |
クラウド連携 |
プリント |
アプリ経由/本体 |
○/− |
○/− |
○/− |
オンラインストレージ |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) |
SNS |
○(Instagram/Facebook・コメント付き可) |
− |
○(Instagram/Facebook・コメント付き可) |
写真共有サイト |
− |
− |
− |
スキャン |
アプリ経由/本体 |
○/○ |
○/○ |
○/○ |
スキャンしてオンラインストレージにアップロード |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) (OneDriveはアプリからのみ) |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) (OneDriveはアプリからのみ) |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) (OneDriveはアプリからのみ) |
メールしてプリント |
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) |
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) |
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) |
LINEからプリント |
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
リモートプリント |
○ |
○ |
○ |
スキャンしてリモートプリント |
○ |
○ |
○ |
PX-M791FT のスマートフォン、クラウド関連機能を見ていこう。専用のアプリは従来のEPSON iPrintに加えて、他の最新機種にならって、EPSON Smart Panelにも対応した。対応端末に変化は無いが、EPSON Smart Panelの場合は、iOSは11.0以降となる。その他、Wi-Fiダイレクト接続時の接続支援機能が変化した。PX-M886FLではNFCに対応していたが、Android限定で、端末がNFCに対応している必要があった。PX-M791FT では他の最新機種同様、QRコードを利用する方法に変更され、iOSにも対応した。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定は簡単になっている。その他の機能はほぼ同じで、アプリ経由によるクラウドからのプリント、さらにアプリ経由だけで無くPX-M791FT 本体だけでスキャンしてクラウドにアップロードできる。ただし、PX-M886FLが非対応だった、SNSの写真をコメント付きでプリントする機能はPX-M791FT では新たに対応した。
コピー機能 |
|
新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
 |
 |
 |
等倍コピー |
○ |
○ |
○ |
拡大縮小 |
倍率指定 |
○(25〜400%) |
○(25〜400%) |
○(25〜400%) |
オートフィット |
○ |
○ |
○ |
定型変倍 |
○ |
○ |
○ |
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー |
− |
− |
− |
写真焼き増し風コピー |
− |
− |
− |
割り付け(2面/4面) |
○/○ |
○/○ |
○/− |
その他のコピー機能 |
プレビュー 濃度調整 背景除去機能 コントラスト調整 鮮やかさ調整 色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別) シャープネス調整 色相調整 |
プレビュー 濃度調整 背景除去機能 コントラスト調整 鮮やかさ調整 色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別) シャープネス調整 色相調整 |
濃度調整 |
バラエティコピー |
IDコピー 影消しコピー パンチ穴消しコピー ソート(1部ごと)コピー |
IDコピー 影消しコピー パンチ穴消しコピー ソート(1部ごと)コピー |
IDコピー 影消しコピー パンチ穴消しコピー |
PX-M791FT のコピー機能見てみよう。この点はPX-M886FLと全く同等で、等倍や拡大縮小、2面・4面割り付け、さらにコピー前のプレビューや各種画質調整、IDコピーや影消しコピー、ソート(1部ごと)コピーなど全て同じだ。
なお、EW-M670FTとの比較では、4面割り付けに新たに対応した他、コピー前にプレビューが可能になった。また、背景除去機能や、コントラスト、鮮やかさ、色調、シャープネス、色相の調整が可能となっている。色調はレッド・グリーン・ブルーが個別に調整でき、かなり高度に色調整が可能だ。また、ソート(1部ごと)コピーに対応し、ADFを利用して複数枚の原稿を、複数部コピーする場合に、1部ずつまとめて印刷する事が可能となった。
ファクス機能 |
|
新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
 |
 |
 |
通信速度 |
33.6kbps |
33.6kbps |
33.6kbps |
画質設定 |
モノクロ |
8dot/mm×3.85本/mm(標準) 8dot/mm×7.7本/mm(精細) 8dot/mm×15.4本/mm(高精細) 16dot/mm×15.4本/mm(超高精細) |
8dot/mm×3.85本/mm(標準) 8dot/mm×7.7本/mm(精細) 8dot/mm×15.4本/mm(高精細) 16dot/mm×15.4本/mm(超高精細) 8dot/mm×7.7本/mm(写真) |
8dot/mm×3.85line/mm(標準) 8dot/mm×7.7line/mm(精細) 8dot/mm×7.7line/mm(写真) |
カラー |
200×200dpi |
200×200dpi |
200×200dpi |
送信原稿サイズ |
A4/B5/A5 |
A4/B5/A5 |
A4 |
記録紙サイズ |
A4/A5/リーガル/レター |
A4/A5/リーガル/レター |
A4/リーガル/レター |
受信ファクス最大保存ページ数 |
550枚/200件 |
550枚/200件 |
100枚/100件 |
データー保持(電源オフ/停電) |
○/○ |
○/○ |
○/○ |
ワンタッチ |
− |
− |
− |
アドレス帳 |
200件 |
200件 |
100件 |
グループダイヤル |
199宛先 |
199宛先 |
99宛先 |
順次同報送信 |
200宛先 |
200宛先 |
100宛先 |
自動リダイヤル |
○ |
○ |
○ |
発信元記録 |
○ |
○ |
○ |
ポーリング受信/送信/予約 |
○/○/− |
○/○/− |
○/−/− |
ファクス/電話自動切替 |
○ |
○ |
○ |
見てから送信 |
○ |
○ |
○ |
見てから印刷 |
○ |
○ |
○ |
受信ファクスを |
メール送信 |
○ |
○ |
− |
共有フォルダ保存 |
○ |
○ |
− |
外部メモリー保存 |
○(USBメモリー/メモリーカード(カードリーダー接続)) |
○(USBメモリー) |
− |
PCファクス |
送受信 |
送受信 |
送受信 |
PX-M791FT のファクス機能を見てみよう。原稿サイズや記録紙サイズ、受信ファクスの保存ページ数から、アドレス帳の件数、その他の機能まで完全に同じだ。唯一画質設定として、「写真」が無くなっている。読取走査線密度は「精細」と同じだが、写真を含む原稿に適した画質という事だが、今回は省略された。
なお、EW-M670FTとの比較では、画質面では「超高精細」が選べ、送信原稿サイズとしてB5、A5が、記録紙サイズとしてA5サイズに対応した。受信ファクスの保存ページ数やアドレス帳の件数も増え、ポーリング送信機能も搭載した。また、受信したファクスをメールで送信したり共有フォルダに保存したり、外部メモリーに保存する機能も搭載するなど、かなり機能面では強化されている。
操作パネル/インターフェース/本体サイズ |
|
新機種 |
旧機種 |
参考機種 |
型番 |
PX-M791FT |
PX-M886FL |
EW-M670FT |
製品画像 |
 |
 |
 |
液晶ディスプレイ |
4.3型 (角度調整可) |
4.3型 (75度角度調整可) |
2.4型 (角度調整可) |
操作パネル |
タッチパネル液晶 (角度調整可) |
タッチパネル液晶+物理ボタン (75度角度調整可) |
タッチパネル液晶 (角度調整可) |
インターフェイス |
USB他 |
USB2.0×1 |
USB2.0×1 |
USB2.0×1 |
無線LAN |
IEEE802.11ac/n/a/g/b 5GHz対応 (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11ac/a/n/g/b 5GHz対応 (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
有線LAN |
100BASE-TX |
1000BASE-T |
100BASE-TX |
対応OS |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
耐久枚数 |
20万枚 |
15万枚 |
5万枚 |
外形寸法(横×奥×高) |
425×500×350mm |
425×535×357mm |
375×347×231mm |
重量 |
18.3kg |
18.7kg |
6.8kg |
本体カラー |
ホワイト |
ブラック |
ブラック/ホワイト |
最後にPX-M791FT の操作パネルやインターフェースなどを見てみよう。液晶と操作パネルは前面に取り付けられ、持ち上げて角度調整が可能なのは同じだ。4.3型の液晶も同サイズで、タッチパネル操作なのも同等だ。ただ、PX-M886FLでは物理ボタンを併用していた点が異なる。PX-M886FLでは液晶の左に「ホーム」、右に「ヘルプ」と「ストップ」をタッチボタンで用意するほか、ファクス用のテンキーや「割り込み」「リセット」「用紙設定」「ジョブ/状態」といった、比較的良く使うボタンを物理ボタンとしていた。PX-M791FT では、液晶の左に「ホーム」と「排紙トレイ収納」、右に「ヘルプ」ボタンをタッチボタンで用意する以外は、全てタッチパネル液晶内で操作する。テンキーも液晶内に表示される。これはどちらが良いとは一概には言えない。ファクス送信を多用する場合、液晶内に表示されるより、押した感覚のある物理キーの方が使いやすいという意見もある。一方で、ボタン数が多くて見た目が煩雑になるともいえる。また液晶内に表示される方がバックライトがあるため暗いところでも使えるというメリットもある。また、テンキーが液晶内に表示されるのはEW-M670FTも同じだが、2.4型液晶に表示するEW-M670FTと比べると、液晶が大きく押し間違いしにくいため、それほど問題では無いだろう。また物理的な理由もあり、PX-M791FT では左側にエコタンクが飛び出ているためその分操作パネルの横幅が小さくなり、テンキーを設置するスペースが無いとも言えるだろう。
インターフェースはUSB2.0に加えて、無線LANと有線LANにも対応しネットワーク接続が可能だ。無線LANはEW-M670FTや下位モデルがIEEE802.11n/g/bのみ対応だが、PX-M791FT はPX-M886FLと同じく、IEEE80.211ac/aにも対応し、5GHz帯にも対応する。IEEE802.11acはIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。他機種の2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。この点では同じレベルを維持し安心だ。一方有線LANは、PX-M886FLが1Gbps対応の1000BASE-Tに対応していたが、PX-M791FT は100Mbpsの100BASE-TX対応になった。有線LANは速度が安定しており、100BASE-TXでもプリントやスキャン時に大きな差があるとは言えない。受信ファクスを共有フォルダに転送する際の速度などに違いはあるだろうが、無線LANと比べると100BASE-TXでもそこまで劣る事は無いだろう。
耐久枚数は20万枚となり、PX-M886FLの15万枚よりもさらに強化された。EW-M670FTは5万枚、家庭用プリンターは1万〜1万5000枚なので、印刷枚数が多くても耐えられる設計だ。本体サイズは425×500×350mmで、上位モデルだけあって本体サイズは大きめだ。とはいえ、PX-M886FLと比べると高さが7mm、奥行きが35mmだけ小さくなった。奥行きに関してはPX-M886FLは収納できない排紙トレイの分まで含んでおり、一方PX-M791FT もエコタンク部分だけ前方に飛び出ている分を含んでいるため、実質本体部分の奥行きには差は無いといえる。むしろ高さに関しては、前面給紙カセットが1段から2段に増えながら、ほぼ同じ高さに抑えてあり、実質コンパクトになったと言えるだろう。
本体カラーはブラックだったPX-M886FLから打って変わって、ホワイトとなった。ビジネスモデルはホワイトが多いため違和感は無いが、本体左側のエコタンクの飛び出た部分だけブラックになっており(側面を除く)、独特のデザインになっていると言える。
PX-M791FT はEW-M670FTの上位モデルと考えると、ありとあらゆる機能が強化されており、さすが上位モデルという印象だ。一方、メーカーではPX-M886FLの後継モデルと位置づけているが、こちらとの比較は非常に面白い。PX-M886FLが800番台なのに対して、PX-M791FT が700番台を付けているのは、やはり機能的に劣る部分が多いのかと思われたが、意外と善戦している。インクもエコタンク搭載プリンターとしては初めて全色顔料となりPX-M886FLに合わせ、印刷速度も微妙にだが向上、印刷コストも同等に抑えた。背面給紙も搭載し、64mm幅の用紙に対応したり、6,000mmの長尺用紙に対応するなど、できる限りPX-M886FLに似せているといえる。コピー機能やファクス機能にも同じ事が言える。一方でフチなし印刷に対応したり、メモリーカードリーダーを接続してSDカード等からのプリントにも対応するなど、より幅広いユーザーに合う様に機能が追加されている。また、最新機種だけに、最新アプリに対応したり、Wi-Fiダイレクト時の接続設定がより簡単になったりという進化も素直に喜びたい。これを考えると、PX-M791FT はPX-M886FLと同機能と言っても良さそうだ。大きく違うのは、2点だ。1点は自動両面印刷で、「両面高速紙送り機構」によって自動両面印刷が大幅に高速化している。両面印刷を多用する人にって利便性が大きく向上している。もう1点はADFの速度で、カラーのスキャン速度が大幅に遅くなった。モノクロは高速化しているので問題ないのだが、カラースキャンが多い場合だけで無く、カラーコピーをよく使うのなら、PX-M886FLよりかなり遅く感じるだろう。この点は非常に残念だ。また、せっかくエコタンク方式に変更されたにも関わらず、印刷コストが下がらなかったのも残念だ。十分に低価格と言え、卓上レーザープリンターよりもお得なのだが、他のエコタンク搭載機より印刷コストが2倍以上である。これなら、インクパック方式のままでも良かったのではと思ってしまうのも確かだ(もちろん予備の保管スペース削減や、途中での継ぎ足しの利便性はあるが)。
PX-M791FT はエコタンク搭載プリンターの一員と考えると、印刷コストの面で気になるところもあるが、PX-M886FLの後継モデルとしては非常に良くできていると言える。特に自動両面印刷の高速化に関しては目を見張るものがある。エコタンク搭載プリンターとしてだけではなく、ビジネス向けインクジェット複合機全体の上位モデルとしてオススメできる製品と言えるだろう。
(H.Intel)
【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
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