プリンター徹底比較
2020年春・夏時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2020年9月18日公開)

表中の赤文字は旧機種・現行機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・現行機種1からの変更点となります。

新機種「SC-PX1V」と旧機種「SC-PX5VII」を徹底比較する

 SC-PX1VはSC-PX5VIIの正式な後継製品だ。従来はA3ノビ対応がSC-PX5VII、A2ノビ対応がSC-PX3Vとなっていたが、今回から両機種ともSC-PX1Vシリーズとなり、SC-PX1VがA3ノビ、SC-PX1VLがA2ノビ対応となる。果たしてどのような違いがあるのだろうか。細かく比較してみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
メーカー
エプソン
エプソン
型番
SC-PX1V
SC-PX5VII
製品画像
発売日
2020年7月9日円
2014年11月6日
発売時点の価格(メーカーWeb/税込み)
89,980円
89,980円
インク
色数
10色(同時使用9色)
9色(同時使用8色)
インク構成
フォトブラック
マットブラック
グレー
ライトグレー
シアン
ライトシアン
ビビッドマゼンタ
ビビッドライトマゼンダ
イエロー
ディープブルー
(フォトブラックとマットブラックは用紙による打ち分け)
フォトブラック
マットブラック
グレー
ライトグレー
シアン
ライトシアン
ビビッドマゼンタ
ビビッドライトマゼンダ
イエロー
(フォトブラックとマットブラックは同時使用不可・同時セット可能)
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(UltraChrome K3X)
顔料
(UltraChrome K3)
インク型番
97番
79番
ノズル数
1800ノズル
1440ノズル
全色:各180ノズル
全色:各180ノズル
(フォトブラック・マットブラックは共用)
最小インクドロップサイズ
1.5pl(MSDT)
2pl(MSDT)
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
その他の高画質化機能
論理的色変換システム「LCCS」
ブラック・エンハンス・オーバーコート
論理的色変換システム「LCCS」
印刷速度
L判写真(フチなし・メーカー公称)
44秒
37秒
A3ノビ写真(フチあり・メーカー公称)
3分17秒
2分33秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
N/A
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
N/A
印刷コスト
L判写真(フチなし)
18.9円
18.9円
A3写真(フチあり)
N/A
N/A
A4カラー文書
N/A
N/A
A4モノクロ文書
N/A
N/A

 SC-PX1Vの価格は89.980円で、SC-PX5VIIの発売当初の価格と全く同じだ。それでは、まず、プリントの基本である、画質、速度、印刷コストを見てみよう。使用するインクは、SC-PX5VIIは「UltraChromeK3インク」と呼ばれる顔料インクを採用していたが、SC-PX1Vでは「UltraChromeK3X」に進化し、光沢紙における黒濃度が向上している。また、インクの色数も9色搭載8色同時使用から、10色搭載9色同時使用となり、ディープブルーインクが追加されている。これによって青の色域が大幅に拡大され、暗い中での青の表現力が豊かになったほか、ブルーおよびバイオレットの色域において階調がより高まっている。また、1色増えた以上に重要な変更点がある。SC-PX1VもSC-PX5VIIもフォトブラックインクとマットブラックインクは用紙によって使い分けられる点は同じだ。具体的には光沢系の用紙にはフォトブラックインク、マット系用紙にはマットブラックを使用する事になる。ここで、ノズル数を見てもらいたい。SC-PX5VIIは各色180ノズルで、計1440ノズルなので、8色分しかプリントヘッドが無い事になる。つまりフォトブラックとマットブラックではノズルを共用しており、使用するインクを切り替えると、プリントヘッド部分の残った交換前のインクを排出するために、交換後のインクを消費することになってしまう。頻繁に切り替えているとそれだけでインクを大量に消費してしまうと言う問題があった。SC-PX1Vでは各色180ノズルで、計1800ノズルなので、10色分のプリントヘッドが用意されている。同時に使用できないのは同じだが、用紙によってどちらか一方のインクを使用するだけであって、切り替える必要がない。エプソンやキャノンで顔料ブラックと染料ブラックを搭載し、用紙によって使い分けるのと同じ方式になったわけである。切り替えが無いので、無駄にインクを消費することも無くなった。また、切り替え時の待ち時間も無くなり利便性も向上している。これは大きな変更点と言えるだろう。
 画質面で言うと、最小インクドロップサイズが2plから1.5plになり、よりドットが小さくなったため、階調表現が滑らかになり、粒状感も減っている。ディープブルーインクだけでは、ブルー系統の画質しか向上しないが、こちらは全体にわたって画質が向上する。大判印刷では遠くから見る場合は多少ドットが大きくても問題ないが、L判や2L判などのスナップ写真印刷の場合は最小インクドロップサイズは重要だ。1.5plはエプソンのプリンターでも最小サイズになるため、作品印刷にも、スナップ写真の印刷にもどちらにも使える画質となっているわけである。また、階調性・色再現域・粒状性・光源依存性がそれぞれ最適になるように使用するインクの種類と量を論理的に算出する「LCCS」は同じく搭載している。さらに、SC-PX1Vでは暗部領域でライトグレーインクによるオーバーコートを行うことで、黒の濃度を増すことができる「ブラック・エンハンス・オーバーコート」機能も搭載した。印刷速度は低下するが、プリンタードライバーで「ブラック・エンハンス・オーバーコート」欄のチェックを付けるだけで、より引き締まった黒の表現ができる。
 ちなみに、インクはSC-PX5VIIの79番から、SC-PX1Vでは97番に変更された。写真の耐保存性は、SC-PX1Vでアルバム保存で200年、耐光性は60年、耐オゾン性は60年と非常に高く、これはSC-PX5VIIから変化は無い。印刷速度はL判写真フチなしで、SC-PX5VIIの37秒から、SC-PX1Vでは44秒と19%遅くなっている。さらにA3ノビフチありだと、2分33秒から3分17秒に29%遅くなっており、大判になるほど差は広がっている。また、この印刷速度は、ドライバーの設定で、SC-PX5VIIは「きれい」を、SC-PX1Vは「標準」を選んだ場合であるため、実際には更に速度差が大きい可能性もある。各色のノズル数は同じなので、1色増えたことによってLCCSの処理が複雑になったのか、それとも最小インクドロップサイズが小さくなったためなのかは不明だ。このクラスでは速度はそれほど重要視されないだろうが、やや気になるところだ。
 SC-PX1Vの印刷コストは、L版写真フチなしで18.9円で、SC-PX5VIIと全く同じだ。それでは、インク1セットでL判写真を印刷した場合の印刷可能枚数を見てみよう。

印刷可能枚数
型番
SC-PX1V
SC-PX5VII
ブラック
3,403枚
4,325枚
シアン
6.661枚
4,002枚
ビビッドマゼンダ
2,785枚
3.339枚
イエロー
2,420枚
1,842枚
ライトシアン
1,779枚
857枚
ビビッドライトマゼンダ
2,246枚
627枚
ダークブルー
4,414枚
グレー
750枚
857枚
ライトグレー
406枚
944枚

ブラックインクはSC-PX5VIIの4,325枚からSC-PX1Vでは3,403枚に減っている。カラーインクはSC-PX5VIIでは857枚〜4,002枚の間で色によって差があり、SC-PX1Vは406枚〜6,661枚と差があるが、平均するとSC-PX5VIIは1,781枚、SC-PX1Vは2,684枚で多くなっている。インクカートリッジの価格は、SC-PX1Vは各色2,280円で、10色セットは22,120円、SC-PX5VIIは各色2,315円で、9色セットで19,715円である。1色増えた分、セットで購入した時はやや価格が上がったが、1色当りの価格はほぼ同じといえる。

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プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番
SC-PX1V
SC-PX5VII
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
フチなし用紙対応用紙
A3ノビ/A3/A4/四切/六切/2L判/KG/L判/ハイビジョン/ハガキ
A3ノビ/A3/A4/四切/六切/2L判/KG/L判/ハイビジョン/ハガキ
給紙方向
背面連続給紙
○(A3ノビ対応)
(0.5mm厚紙対応)
○(A3ノビ対応)
セット可能枚数
普通紙(A4)
120枚
120枚
普通紙(A3)
50枚
50枚
写真用紙(L判)
30枚(クリスピア20枚)
30枚(クリスピア20枚)
写真用紙(2L判)
30枚(クリスピア20枚)
30枚(クリスピア20枚)
写真用紙(A4/六切)
30枚(クリスピア20枚)
30枚(クリスピア20枚)
写真用紙(A3/四切)
10枚
10枚
写真用紙(A3ノビ/半切)
10枚(A3のみ)
10枚(A3のみ)
ハガキ
50枚
50枚
前面連続給紙
その他
前面手差し(A3ノビ/1.5mm厚)
ロール紙(A4〜A3ノビ・置くだけセット・未使用時本体収納可)
前面手差し(A3ノビ/1.3mm厚)
ロール紙(A3ノビ)
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(用紙セット時)
○(用紙セット時)
用紙幅チェック機能
○(印刷時・斜行エラー検出機能搭載)
○(印刷時)

 続いて、SC-PX1Vの給紙機能を比較してみよう。対応用紙はL版からA3ノビで変更は無く、フチなし印刷対応用紙サイズも同じだ。給紙は背面からの連続給紙、前面からの手差し給紙、ロール紙の3種類に対応している。背面給紙に関しては、給紙枚数は同等である。ただし、SC-PX1Vでは背面給紙からも0.5mm厚の用紙に対応しており、これによってよく使うと思われるファインアート紙を手差しでは無く背面給紙から利用可能になった。ただしセットできる枚数は1枚となる。前面手差し給紙は、SC-PX5VIIでは1.3mm厚まで対応していたが、SC-PX1Vでは1.5mm厚まで対応し、少し使用できる用紙の幅が広がった。ロール紙に関しては、SC-PX5VIIではA3ノビ幅(329mm)のみ対応だったが、SC-PX1VではA4〜A3ノビ幅(210〜329mm)に対応している。現状、純正用紙には329mm幅しかラインナップが無いが、今後の展開や他社製品に期待したい所だ。また、ロール紙ユニットに関しても大幅に使い勝手が改善している。SC-PX5VIIではロール紙ホルダーをロール紙の左右から挿し込み、プリンター背面に引っかけ、先端をロール紙給紙口に挿し込む必要があった。SC-PX1Vでは背面のロールペーパーユニットの上にロール紙を置き、先端をロール紙給紙口に挿し込むだけでよくなった。また、このロールペーパーユニットは、未使用時には本体に収納できる様になった。ロール紙ホルダーをロール紙に挿し込む手間が無いだけでなく、未使用時にロール紙ホルダーの置き場所に困るという事も無くなった。
 その他、用紙セット時の用紙種類とサイズの登録機能と、印刷時の用紙幅検出機能はSC-PX5VII同様搭載するが、さらにSC-PX1Vでは、印刷時に用紙が斜めに給紙された際の検出機能も搭載され、様々なミスに対して、インクが無駄にならない様に工夫されている。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番
SC-PX1V
SC-PX5VII
製品画像
自動両面印刷
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX/デフォルトはオフ)
○(オートフォトファイン!EX/デフォルトはオフ)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/−
(交換用メンテナンスボックス予備1個同梱)
−/−
その他の便利機能
機内照明
印刷写真表示

 続いてSC-PX1Vのその他のプリント機能を比較してみよう。SC-PX1VではPictBridgeに対応したが、PictBridgeはUSB方式とWi-Fi方式がある内、Wi-Fi方式のみ対応している。Wi-Fi方式は対応するデジタルカメラが限られるため、大きな違いでは無いだろう。SC-PX1Vは廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換に対応した。これは、クリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、満タンになるとメッセージが表示され、交換するまで一切のプリントが止まってしまう。多くの機種は修理対応での交換で、修理費用が高くなるほか、プリンターが手元に無い期間が発生してしまう。SC-PX1Vではインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスボックスが売られており(1,800円)、ユーザー自身で簡単に交換できる様になっている。安くすむだけでなく、交換すればすぐに印刷を再開できるため便利だ。また、発売当初は本体にセットされたメンテナンスボックスのみだったが、初期充填後にメンテナンスボックス空き容量が大幅に減少したというユーザーの声を反映して、予備が1個同梱するように改められている(予備無しで購入したユーザーには、後日予備を送付する)。
 その他の便利機能が2つある。1つは機内照明だ。SC-PX1Vの天板の後方部分が大きなのぞき窓になっているのだが、その部分に照明が内蔵されているため、プリンターカバーを閉めたままでも印刷状態を確認できるのである。もう一つは、液晶パネルに印刷写真を表示する機能だ。印刷中に、現在印刷している写真のサムネイルが表示されるので、複数枚の連続印刷時に写真の選択ミスなどに気づきやすい。また、印刷中の表示は「印刷ステータス表示」と「印刷設定表示」に切り替える事も可能だ。「印刷ステータス表示」では、インク残量や用紙種類、用紙サイズの他、印刷中の写真のファイル名や、残り印刷時間なども表示される。「印刷設定表示」では、背景に印刷中の写真が表示され、前面にファイル名、用紙種類とサイズ、カラー・モノクロ、印刷品質、オーバーコートのオン・オフなどドライバーで設定した情報が表示される。機内照明と合わせて、印刷中に様々な確認が行いやすい様に工夫されている。

スマートフォン/クラウド対応
新機種
旧機種
型番
SC-PX1V
SC-PX5VII
製品画像
スマートフォン連携
アプリ
メーカー専用
EPSON iPrint
Epson Smart Panel
Epson Print Layout
EPSON iPrint
AirPrint
対応端末
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
(Epson Smart PanelはiOS 11.0移行・Android 5.0以降/Epson Print LayoutはiOS 13.0以降)
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応
N/A
Wi-Fiダイレクト接続支援機能
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携
プリント
アプリ経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージ
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
SNS
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
メールしてプリント
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
リモートプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
スキャンしてリモートプリント

 SC-PX1Vのスマートフォン、クラウド関連機能を見ていこう。専用のアプリは従来のEPSON iPrintに加えて、他の最新機種にならって、EPSON Smart Panelにも対応した。さらに、プロセレクションのプリンターとして、「Epson Print Layout」というアプリも用意された。SC-PX5VIIでもパソコン向けには提供されていたが、今回からスマートフォン・タブレット用にも提供される。「Photoshop」アプリで設定した写真・画像のレイアウトをそのまま引用できるほか、用紙方向の変更や、画像の配置やサイズ変更、トリミングの設定が行える。さらに、カラー設定では用紙プロファイルを使用した印刷が可能なほか、グレースケールやモノクロ写真印刷も行えるなど、より高度な写真印刷が行えるアプリとなっている。ただし、それぞれのアプリで対応端末が異なる。EPSON iPrintはiOS 10.0以降、Android 5.0以降だが、EPSON Smart PanelはiOSは11.0以降になる(Androidは同じ)。EPSON Print LayoutはiOS 13.0以降で、Androidには対応しない。使用している端末に注意が必要だ。
 その他、SC-PX1VではWi-Fiダイレクト接続時の接続支援機能が搭載された。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定は簡単になっている。基本的なプリント機能やクラウドからのプリント機能は同等だが、新たに、印刷したい写真や文書をSC-PX1Vにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でSC-PX1Vを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のSC-PX1Vで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能に新たに対応した。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言える。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番
SC-PX1V
SC-PX5VII
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型(角度調整可)
2.7型(角度調整可)
操作パネル
タッチパネル液晶
タッチパネル液晶+物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB3.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11ac/n/a/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
5GHz帯対応
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7
MacOS 10.9〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.6.8〜
外形寸法(横×奥×高)
515×368×185mm
616×369×228mm
重量
12.6kg
15.0kg
本体カラー
ブラック
ブラック

 最後にSC-PX1Vの操作パネルやインターフェースなどを見てみよう。液晶パネルはSC-PX5VIIの2.7型から、SC-PX1Vでは4.3型に大型化された。また、SC-PX5VIIでは、「電源」「戻る」「ホーム」の各ボタンは物理ボタンだったほか、上下カーソルは液晶右側に別途タッチセンサー式ボタンで用意されていたが、SC-PX1Vでは電源ボタン以外はタッチパネル液晶内に集約されて使いやすくなった。また、SC-PX5VIIでは本体前面右側に取り付けられ、持ち上げて角度調整が可能だったが、SC-PX1Vでは天面の右手前に取り付けられ、起こして角度調整できる形に変更されている。
 SC-PX1Vのインターフェースは、USBと無線LAN(Wi-Fi)、有線LANという点はSC-PX5VIIと変わらないが、細かい点では機能が強化されている。まずUSBに関しては、USB2.0からUSB3.0(USB3.2 Gen1又はUSB3.1 Gen1とも言う)へと強化された。最高転送速度が480Mbpsから5Gbpsに高速化するが、プリンターでUSB3.0対応は非常に珍しい。そこまでの高速転送が必要かは不明だが、大判プリントで、非常に高解像度の写真を印刷する場合などに、印刷開始までの時間に差が出るかもしれない。無線LANについてはSC-PX5VIIはIEEE802.11n/g/bのみ対応だが、SC-PX1VではIEEE80.211ac/aにも対応し、5GHz帯にも対応する。IEEE802.11acはIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。IEEE802.11n/g/bの2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。速度と安定性の両面で非常に使いやすくなったと言えるだろう。有線LANは変化が無い。
 SC-PX1Vの対応OSはWindowsではWindows 10/8.1/8/7となり、SC-PX5VIIの対応するWindows Vista/XPには対応しなくなった。MacOSも、SC-PX1VはMacOS 10.9以降となった。実は、これまでのエプソンはWindows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3とMacOS 10.6.8以降というのが一般的で、SC-PX1Vより後に発表された機種でも同じ対応OSである。SC-PX1Vでは古いOSが対応から外されたが、大判写真を印刷する様な用途では、性能の低いWindows Vista/XP、MacOS 10.9以前の世代の機種は使わないという判断なのか、ドライバーやアプリケーションソフトの関係で、古いOSでは性能が発揮できないという事なのかは不明だ。エプソン製品としては特殊なので注意したい。
 本体サイズは、SC-PX1Vのウリの一つだ。SC-PX5VIIの616×369×228mmに対して、SC-PX1Vは515×368×185mmとなる。横幅は約10cm、高さも4cm以上小型化した形だ。確かに最近のエプソン製品は小型化が重要視されてはいるが、画質や使い勝手が優先されるプロセレクションの製品にまで小型化の波が来るという点で驚くと共に、同じA3ノビ対応で幅を10cmも小型化出来たことにも驚きだ。A3ノビ対応ではEP-50Vが476×369×159mmではあるが、こちらは6色インクでインクカートリッジも小さく、前面手差しなども無い機種だ。これと比べても横幅は4cm弱しか大きくなく、高さも2.6cm大きいだけである。これまでサイズが問題で、このクラスの製品の購入をためらっていた人には朗報だろう。



 SC-PX1Vは、5年半ぶりの新製品と言う事もあって、現段階で思いつく限りの様々な点での機能強化と改良を施した、意欲的な製品と言えるだろう。インクが1色増えただけで無く、フォトブラックとマットブラックのヘッドが共有で無くなっただけでも、大きな価値があるだろう。そこに加えて、「ブラック・エンハンス・オーバーコート」などの画質強化や、背面給紙とロール紙の使い勝手の改善もしっかり行われている。さらに機内照明と液晶パネルの印刷写真表示といった、独自の機能も搭載し、印刷中の確認が非常に便利になった。インターフェースや操作パネルもしっかり強化している。また、近年、スマートフォンのカメラ画質の向上や、スマートフォン・タブレットの性能向上によって、これらで写真の編集を行い印刷というユーザーも増えてきたことを受けて、しっかりEpson Print Layoutというアプリも用意している。ここまでで十分魅力的なSC-PX1Vだが、さらに体積比68%まで小型化まで実現してしまっている。
 写真作品を印刷する、またはスナップ写真をできるだけ綺麗に印刷したいというユーザーには、SC-PX5VII以上にオススメできる製品になったし、これまでこのクラスを使ってきた人の買い換え用としても、魅力的な点が数多くあると言える。さらに本体サイズの問題などでこれまで買うのをためらっていた新たなユーザー層にもオススメできる製品に進化したと言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/


SC-PX1V