プリンター徹底比較
2020年春・夏時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2020年9月18日公開)
表中の赤文字は旧機種・現行機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・現行機種1からの変更点となります。 |
新機種「SC-PX1VL」と旧機種「SC-PX3V」を徹底比較する |
SC-PX1VL はSC-PX3Vの正式な後継製品だ。従来はA3ノビ対応がSC-PX5VII、A2ノビ対応がSC-PX3Vとなっていたが、今回から両機種ともSC-PX1Vシリーズとなり、SC-PX1VがA3ノビ、SC-PX1VL がA2ノビ対応となる。果たしてどのような違いがあるのだろうか。細かく比較してみよう。
プリント(画質・速度・コスト) |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
SC-PX1VL |
SC-PX3V |
製品画像 |
 |
 |
発売日 |
2020年9月17日 |
2015年5月14日 |
発売時の価格(メーカーWeb/税込み) |
159,980円 |
159,800円 |
インク |
色数 |
10色(同時使用9色) |
9色(同時使用8色) |
インク構成 |
フォトブラック マットブラック グレー ライトグレー シアン ライトシアン ビビッドマゼンタ ビビッドライトマゼンダ イエロー ディープブルー(フォトブラックとマットブラックは用紙による打ち分け) |
フォトブラック マットブラック グレー ライトグレー シアン ライトシアン ビビッドマゼンタ ビビッドライトマゼンダ イエロー (フォトブラックとマットブラックは同時使用不可・同時セット可能) |
カートリッジ構成 |
各色独立 |
各色独立 |
顔料/染料系 |
顔料 (UltraChrome K3X) |
顔料 (UltraChrome K3) |
インク型番 |
96番 |
89番 |
ノズル数 |
1800ノズル |
1440ノズル |
全色:各180ノズル |
全色:各180ノズル |
最小インクドロップサイズ |
1.5pl(MSDT) |
2pl(MSDT) |
最大解像度 |
5760×1440dpi |
2880×1440dpi |
その他の高画質化機能 |
論理的色変換システム「LCCS」 ギザローラー改良 ブラック・エンハンス・オーバーコート |
論理的色変換システム「LCCS」 |
印刷速度 |
L判写真(フチなし・メーカー公称) |
44秒 |
63秒 |
A2写真(フチあり・メーカー公称) |
4分51秒 |
5分49秒 |
A4普通紙カラー(ISO基準) |
N/A |
N/A |
A4普通紙モノクロ(ISO基準) |
N/A |
N/A |
印刷コスト |
L判写真(フチなし) |
16.9円 |
16.9円 |
A2写真(フチあり) |
N/A |
N/A |
A4カラー文書 |
N/A |
N/A |
A4モノクロ文書 |
N/A |
N/A |
SC-PX1VL の価格は159.980円で、SC-PX3Vの発売当初の価格159,800円とほぼ同じだ。それでは、まず、プリントの基本である、画質、速度、印刷コストを見てみよう。使用するインクは、SC-PX3Vは「UltraChromeK3インク」と呼ばれる顔料インクを採用していたが、SC-PX1VL では「UltraChromeK3X」に進化し、光沢紙における黒濃度が向上している。また、インクの色数も9色搭載8色同時使用から、10色搭載9色同時使用となり、ディープブルーインクが追加されている。これによって青の色域が大幅に拡大され、暗い中での青の表現力が豊かになったほか、ブルーおよびバイオレットの色域において階調がより高まっている。また、1色増えた以上に重要な変更点がある。SC-PX1VL もSC-PX3Vもフォトブラックインクとマットブラックインクは用紙によって使い分けられる点は同じだ。具体的には光沢系の用紙にはフォトブラックインク、マット系用紙にはマットブラックを使用する事になる。ここで、ノズル数を見てもらいたい。SC-PX3Vは各色180ノズルで、計1440ノズルなので、8色分しかプリントヘッドが無い事になる。つまりフォトブラックとマットブラックではノズルを共用しており、使用するインクを切り替えると、プリントヘッド部分の残った交換前のインクを排出するために、交換後のインクを消費することになってしまう。頻繁に切り替えているとそれだけでインクを大量に消費してしまうと言う問題があった。SC-PX1VL では各色180ノズルで、計1800ノズルなので、10色分のプリントヘッドが用意されている。同時に使用できないのは同じだが、用紙によってどちらか一方のインクを使用するだけであって、切り替える必要がない。エプソンやキャノンで顔料ブラックと染料ブラックを搭載し、用紙によって使い分けるのと同じ方式になったわけである。切り替えが無いので、無駄にインクを消費することも無くなった。また、切り替え時の待ち時間も無くなり利便性も向上している。これは大きな変更点と言えるだろう。
画質面で言うと、最小インクドロップサイズが2plから1.5plになり、よりドットが小さくなったため、階調表現が滑らかになり、粒状感も減っている。また、印刷解像度も、SC-PX3Vでは、A3ノビ版のSC-PX5VIIより低く2880×1440dpiとなっていたが、SC-PX1VL ではA3ノビ版のSC-PX1Vと同じ5760×1440dpiとなった。ディープブルーインクだけでは、ブルー系統の画質しか向上しないが、こちらは全体にわたって画質が向上する。大判印刷では遠くから見る場合は多少ドットが大きくても問題ないが、L判や2L判などのスナップ写真印刷の場合は最小インクドロップサイズは重要だ。1.5plはエプソンのプリンターでも最小サイズになるため、作品印刷にも、スナップ写真の印刷にもどちらにも使える画質となっているわけである。また、階調性・色再現域・粒状性・光源依存性がそれぞれ最適になるように使用するインクの種類と量を論理的に算出する「LCCS」は同じく搭載している。さらに、SC-PX1VL では暗部領域でライトグレーインクによるオーバーコートを行うことで、黒の濃度を増すことができる「ブラック・エンハンス・オーバーコート」機能も搭載した。印刷速度は低下するが、プリンタードライバーで「ブラック・エンハンス・オーバーコート」欄のチェックを付けるだけで、より引き締まった黒の表現ができる。また、ギザローラーの設計を見直したことで、SX-PX3Vよりもローラー痕が大幅に低減されているのもうれしいところだ。
ちなみに、インクはSC-PX3Vの89番から、SC-PX1VL では96番に変更された。写真の耐保存性は、SC-PX1VL でアルバム保存で200年、耐光性は60年、耐オゾン性は60年と非常に高く、これはSC-PX3Vから変化は無い。印刷速度はL判写真フチなしで、SC-PX3Vの63秒から、SC-PX1VL では44秒に43%高速化した。さらにA2フチありだと、5分49秒から4分51秒に20%高速化しており、大判になるほど差は縮まるが、いずれもSC-PX1VL の方が高速になった。ただし、この印刷速度は、ドライバーの設定で、SC-PX3Vは「きれい」を、SC-PX1VL は「標準」を選んだ場合であるため、同じ設定にした場合は、逆転する可能性がある。
SC-PX1VL の印刷コストは、L版写真フチなしで16.9円で、SC-PX3Vと全く同じだ。それでは、インク1セットでL判写真を印刷した場合の印刷可能枚数を見てみよう。
印刷可能枚数 |
型番 |
SC-PX1VL |
SC-PX3V |
ブラック |
6,570枚 |
6,838枚 |
シアン |
12.874枚 |
7,148枚 |
ビビッドマゼンダ |
5,331枚 |
8,957枚 |
イエロー |
4,679枚 |
4,821枚 |
ライトシアン |
3,439枚 |
2,236枚 |
ビビッドライトマゼンダ |
4,336枚 |
1,501枚 |
ダークブルー |
8,556枚 |
− |
グレー |
1,454枚 |
1.798枚 |
ライトグレー |
786枚 |
1,955枚 |
ブラックインクはSC-PX3Vの6,838枚からSC-PX1VL では6,570枚に微減している。カラーインクはSC-PX3Vでは1,501枚〜8,957枚の間で色によって差があり、SC-PX1VL は786枚〜12,874枚と差があるが、平均するとSC-PX3Vは4,059枚、SC-PX1VL は5,182枚で多くなっている。インクカートリッジの価格は、SC-PX1VL は各色3,800円で、10色そろえると38,000円、SC-PX3Vは各色4,505円で、9色そろえると40,545円である。1色当りの価格はSC-PX1VL の方がやや安くなったが、1色増えた分全色そろえた場合の価格は大きくは変わらない。そのため印刷コストも同等となったのだろう。
プリント(給紙・排紙関連) |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
SC-PX1VL |
SC-PX3V |
製品画像 |
 |
 |
対応用紙サイズ |
L判〜A2ノビ |
L判〜A2ノビ |
フチなし用紙対応用紙 |
A2/A3ノビ/A3/A4/四切/六切/2L判/KG/L判/ハイビジョン/ハガキ |
A2/A3ノビ/A3/A4/四切/六切/2L判/KG/L判/ハイビジョン/ハガキ |
給紙方向 |
背面連続給紙 |
○(A2ノビ対応) (0.5mm厚紙対応) |
○(A2ノビ対応) |
セット可能枚数 |
普通紙(A4) |
120枚 |
120枚 |
普通紙(A2) |
50枚 |
50枚 |
写真用紙(L判) |
30枚(クリスピア20枚) |
30枚(クリスピア20枚) |
写真用紙(2L判) |
30枚(クリスピア20枚) |
30枚(クリスピア20枚) |
写真用紙(A4/六切) |
30枚(クリスピア20枚) |
30枚(クリスピア20枚) |
写真用紙(A3/四切) |
10枚 |
10枚 |
写真用紙(A2/半切) |
1枚 |
1枚 |
ハガキ |
50枚 |
50枚 |
前面連続給紙 |
− |
− |
その他 |
前面手差し(A2ノビ/1.5mm厚紙対応) ロール紙(A4〜A2ノビ幅・オプション・置くだけセット・カバー付き) |
前面手差し(A2ノビ/1.5mm厚紙対応) ロール紙(A3ノビ〜A2ノビ幅・オプション) |
排紙トレイ自動開閉 |
− |
− |
用紙種類・サイズ登録 |
○(用紙セット時) |
○(用紙セット時) |
用紙幅チェック機能 |
○(印刷時・斜行エラー検出機能搭載) |
○(印刷時) |
続いて、SC-PX1VL の給紙機能を比較してみよう。対応用紙はL版からA2ノビで変更は無く、フチなし印刷対応用紙サイズも同じだ。給紙は背面からの連続給紙、前面からの手差し給紙、ロール紙の3種類に対応している。背面給紙に関しては、給紙枚数は同等である。ただし、SC-PX1VL では背面給紙からも0.5mm厚の用紙に対応しており、これによってよく使うと思われるファインアート紙を手差しでは無く背面給紙から利用可能になった。ただしセットできる枚数は1枚となる。前面手差し給紙は、対応用紙厚なども同じだ。ロール紙に関しては、SC-PX3VではA3ノビ〜A2ノビ幅(329〜431.8mm)の対応だったが、SC-PX1VL ではA4〜A3ノビ幅(210〜431.8mm)に対応している。現状、純正用紙には329mm幅の写真用紙(光沢と絹目調)と、406mm幅のプロエッショナルフォトペーパー厚手(光沢・半光沢・絹目・微光沢)、432mm幅のPX/MC プレミアムマット紙ロール、プレミアムサテンキャンパス、プレミアムマットキャンパス用紙が用意される。
また、ロール紙ユニットに関しても大幅に使い勝手が改善している。SC-PX3Vではロールペーパーユニットは、ロール紙を挿し込む棒と、それを支える腕のような形状となっていた。プリンター背面に引っかける様に取り付け、左右のネジで固定する。使用時は、まずこのロールペーパーユニットからアタッチメント(スピンドル(ロール紙を挿す棒)と左右のフランジ(幅の固定パーツ)からなるもの)を取り外す。そして、片側のフランジをスピンドルから抜き取り、ロール紙をスピンドルに挿入し、抜き取ったフランジを再度挿し込む。スピンドルに付けたロール紙をロールペーパーユニットにセットし、先端をプリンターのロール紙給紙口に挿し込む事になる。A2ノビ幅とA3ノビ幅の切り替えは、フランジにアタッチメントを取り付ける事で対応している。一方、SC-PX1VL のロールペーパーユニットは箱状のもので、プリンター後部に挿し込むだけで取り付けられる。使用時は、ロールペーパーユニット上部のカバーを開け、ロール紙をセット位置に乗せ、用紙幅に合わせて左右のガイドを調整、あとは先端をロール紙給紙口に挿し込むだけだ。用紙幅に合わせるのは、アタッチメントをフランジから取り外したり取り付けたりする必要が無く、左右のガイドをスライドさせるだけだし、ロール紙も棒に差し込む必要も無く、上から置くだけだ。手間が大幅に軽減されている。
その他、用紙セット時の用紙種類とサイズの登録機能と、印刷時の用紙幅検出機能はSC-PX3V同様搭載するが、さらにSC-PX1VL では、印刷時に用紙が斜めに給紙された際の検出機能も搭載され、様々なミスに対して、インクが無駄にならない様に工夫されている。
プリント(付加機能) |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
SC-PX1VL |
SC-PX3V |
製品画像 |
 |
 |
自動両面印刷 |
− |
− |
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 |
○ |
− |
写真補正機能 |
○(オートフォトファイン!EX/デフォルトはオフ) |
○(オートフォトファイン!EX/デフォルトはオフ) |
特定インク切れ時印刷 |
− |
− |
自動電源オン/オフ |
−/○ |
−/○ |
PictBridge対応 |
○(Wi-Fi) |
− |
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続 |
○/−(交換用メンテナンスボックス予備1個同梱) |
○/− |
その他の便利機能 |
機内照明 印刷写真表示 |
− |
続いてSC-PX1VL のその他のプリント機能を比較してみよう。まず、SC-PX3Vでは非対応だったCD/DVD/BDレーベル印刷機能にSC-PX1VL は対応した。ほぼ同機能のA3ノビ対応版SC-PX5VIIは対応していたが、SC-PX3Vは非対応だった。今回は無事、A3ノビ対応版のSC-PX1Vと同様に、ディスクレーベル印刷が行える様になった。SC-PX1VL ではPictBridgeに対応したが、PictBridgeはUSB方式とWi-Fi方式がある内、Wi-Fi方式のみ対応している。Wi-Fi方式は対応するデジタルカメラが限られるため、大きな違いでは無いだろう。廃インクタンクも、SC-PX3Vのメンテナンスカートリッジから、SC-PX1VL はメンテナンスボックスに名称が変更となったが、引き続きユーザーによる交換が可能で便利になっている(価格も引き続き1,800円)。ただし、SC-PX1VL は発売当初は本体にセットされたメンテナンスボックスのみだったが、初期充填後にメンテナンスボックス空き容量が大幅に減少したというユーザーの声を反映して、予備が1個同梱するように改められている(予備無しで購入したユーザーには、後日予備を送付する)。
その他の便利機能が2つある。1つは機内照明だ。SC-PX1VL の天板の後方部分が大きなのぞき窓になっているのだが、その部分に照明が内蔵されているため、プリンターカバーを閉めたままでも印刷状態を確認できるのである。もう一つは、液晶パネルに印刷写真を表示する機能だ。印刷中に、現在印刷している写真のサムネイルが表示されるので、複数枚の連続印刷時に写真の選択ミスなどに気づきやすい。また、印刷中の表示は「印刷ステータス表示」と「印刷設定表示」に切り替える事も可能だ。「印刷ステータス表示」では、インク残量や用紙種類、用紙サイズの他、印刷中の写真のファイル名や、残り印刷時間なども表示される。「印刷設定表示」では、背景に印刷中の写真が表示され、前面にファイル名、用紙種類とサイズ、カラー・モノクロ、印刷品質、オーバーコートのオン・オフなどドライバーで設定した情報が表示される。機内照明と合わせて、印刷中に様々な確認が行いやすい様に工夫されている。
スマートフォン/クラウド対応 |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
SC-PX1VL |
SC-PX3V |
製品画像 |
 |
 |
スマートフォン連携 |
アプリ |
メーカー専用 |
EPSON iPrint Epson Smart Panel Epson Print Layout |
EPSON iPrint |
AirPrint |
○ |
○ |
対応端末 |
iOS 10.0以降 Android 5.0以降 (Epson Smart PanelはiOS 11.0移行・Android 5.0移行/Epson Print LayoutはiOS 13.0移行) |
iOS 10.0以降 Android 5.0以降 |
スマートスピーカー対応 |
N/A |
− |
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 |
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android)) |
− |
写真プリント |
○ |
○ |
ドキュメントプリント |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) |
Webページプリント |
○ |
○ |
クラウド連携 |
プリント |
アプリ経由/本体 |
○/− |
○/− |
オンラインストレージ |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) |
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) |
SNS |
○(Instagram/Facebook・コメント付き可) |
○(Instagram/Facebook・コメント付き可) |
写真共有サイト |
− |
− |
メールしてプリント |
○ |
− |
LINEからプリント |
○ |
− |
リモートプリント |
○ |
− |
スキャンしてリモートプリント |
− |
− |
SC-PX1VL のスマートフォン、クラウド関連機能を見ていこう。専用のアプリは従来のEPSON iPrintに加えて、他の最新機種にならって、EPSON Smart Panelにも対応した。さらに、プロセレクションのプリンターとして、「Epson Print Layout」というアプリも用意された。SC-PX3Vでもパソコン向けには提供されていたが、今回からスマートフォン・タブレット用にも提供される。「Photoshop」アプリで設定した写真・画像のレイアウトをそのまま引用できるほか、用紙方向の変更や、画像の配置やサイズ変更、トリミングの設定が行える。さらに、カラー設定では用紙プロファイルを使用した印刷が可能なほか、グレースケールやモノクロ写真印刷も行えるなど、より高度な写真印刷が行えるアプリとなっている。ただし、それぞれのアプリで対応端末が異なる。EPSON iPrintはiOS 10.0以降、Android 5.0以降だが、EPSON Smart PanelはiOSは11.0以降になる(Androidは同じ)。EPSON Print LayoutはiOS 13.0以降で、Androidには対応しない。使用している端末に注意が必要だ。
その他、SC-PX1VL ではWi-Fiダイレクト接続時の接続支援機能が搭載された。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定は簡単になっている。基本的なプリント機能やクラウドからのプリント機能は同等だが、新たに、印刷したい写真や文書をSC-PX1VL にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でSC-PX1VL を友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のSC-PX1VL で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能に新たに対応した。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言える。
操作パネル/インターフェース/本体サイズ |
|
新機種 |
旧機種 |
型番 |
SC-PX1VL |
SC-PX3V |
製品画像 |
 |
 |
液晶ディスプレイ |
4.3型(角度調整可) |
2.7型(角度調整可) |
操作パネル |
タッチパネル液晶 |
タッチパネル液晶+物理ボタン |
インターフェイス |
USB他 |
USB3.0×1 |
USB2.0×1 |
無線LAN |
IEEE802.11ac/n/a/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) 5GHz帯対応 |
IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
有線LAN |
100BASE-TX |
100BASE-TX |
対応OS |
Windows 10/8.1/8/7 MacOS 10.9〜 |
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1 MacOS 10.6.8〜 |
外形寸法(横×奥×高) |
615×368×199mm |
684×376×250mm |
重量 |
14.8kg |
19.5kg |
本体カラー |
ブラック |
ブラック |
最後にSC-PX1VL の操作パネルやインターフェースなどを見てみよう。液晶パネルはSC-PX3Vの2.7型から、SC-PX1VL では4.3型に大型化された。また、SC-PX3Vでは、「電源」「戻る」「ホーム」の各ボタンは物理ボタンだったほか、上下カーソルは液晶右側に別途タッチセンサー式ボタンで用意されていたが、SC-PX1VL では電源ボタン以外はタッチパネル液晶内に集約されて使いやすくなった。また、SC-PX3Vでは本体前面右側に取り付けられ、持ち上げて角度調整が可能だったが、SC-PX1VL では天面の右手前に取り付けられ、起こして角度調整できる形に変更されている。
SC-PX1VL のインターフェースは、USBと無線LAN(Wi-Fi)、有線LANという点はSC-PX3Vと変わらないが、細かい点では機能が強化されている。まずUSBに関しては、USB2.0からUSB3.0(USB3.2 Gen1又はUSB3.1 Gen1とも言う)へと強化された。最高転送速度が480Mbpsから5Gbpsに高速化するが、プリンターでUSB3.0対応は非常に珍しい。そこまでの高速転送が必要かは不明だが、大判プリントで、非常に高解像度の写真を印刷する場合などに、印刷開始までの時間に差が出るかもしれない。無線LANについてはSC-PX3VはIEEE802.11n/g/bのみ対応だが、SC-PX1VL ではIEEE80.211ac/aにも対応し、5GHz帯にも対応する。IEEE802.11acはIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。IEEE802.11n/g/bの2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。速度と安定性の両面で非常に使いやすくなったと言えるだろう。有線LANは変化が無い。
SC-PX1VL の対応OSはWindowsではWindows 10/8.1/8/7となり、SC-PX3Vの対応するWindows Vista/XPには対応しなくなった。MacOSも、SC-PX1VL はMacOS 10.9以降となった。実は、これまでのエプソンはWindows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3とMacOS 10.6.8以降というのが一般的で、SC-PX1VL より後に発表された機種でも同じ対応OSである。SC-PX1VL では古いOSが対応から外されたが、大判写真を印刷する様な用途では、性能の低いWindows Vista/XP、MacOS 10.9以前の世代の機種は使わないという判断なのか、ドライバーやアプリケーションソフトの関係で、古いOSでは性能が発揮できないという事なのかは不明だ。エプソン製品としては特殊なので注意したい。
本体サイズは、SC-PX1VL のウリの一つだ。SC-PX3Vの684×376×250mmに対して、SC-PX1VL は615×368×199mmとなる。横幅は約7cm、高さも約5cm小型化した形だ。確かに最近のエプソン製品は小型化が重要視されてはいるが、画質や使い勝手が優先されるプロセレクションの製品にまで小型化の波が来るという点で驚くと共に、同じA2ノビ対応で体積比約70%まで小型化出来たことにも驚きだ。また、今回はA3ノビ対応のSC-PX1Vと共に小型化したのだが、そのA3ノビ対応の旧モデルSC-PX5VIIのサイズが616×369×228mmで、SC-PX1VL はこれと横幅と奥行きはほぼ同じで高さは小さい。つまり、SC-PX1VL が発売される直前まで販売されていたA3ノビ対応プリンターと同じ設置面積でA2ノビ対応プリンターが手に入る様になったのである。これまでサイズが問題で、A2ノビ対応製品の購入をためらっていた人には朗報だろう。
SC-PX1VL は、5年半ぶりの新製品と言う事もあって、現段階で思いつく限りの様々な点での機能強化と改良を施した、意欲的な製品と言えるだろう。インクが1色増えただけで無く、フォトブラックとマットブラックのヘッドが共有で無くなっただけでも、大きな価値があるだろう。そこに加えて、「ブラック・エンハンス・オーバーコート」などの画質強化や、背面給紙とロール紙の使い勝手の改善もしっかり行われている。さらに機内照明と液晶パネルの印刷写真表示といった、独自の機能も搭載し、印刷中の確認が非常に便利になった。インターフェースや操作パネルもしっかり強化している。また、近年、スマートフォンのカメラ画質の向上や、スマートフォン・タブレットの性能向上によって、これらで写真の編集を行い印刷というユーザーも増えてきたことを受けて、しっかりEpson Print Layoutというアプリも用意している。ここまでで十分魅力的なSC-PX1VL だが、さらに体積比70%まで小型化まで実現してしまっている。
写真作品を印刷する、またはスナップ写真をできるだけ綺麗に印刷したいというユーザーには、SC-PX3V以上にオススメできる製品になったし、これまでこのクラスを使ってきた人の買い換え用としても、魅力的な点が数多くあると言える。さらにA3ノビプリンターの旧モデルと同じ設置面積になったため、本体サイズの問題などでA2ノビプリンターをあきらめていた新たなユーザー層にもオススメできる製品に進化したと言えるだろう。
(H.Intel)
【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/
|