2020年末時点のプリンターを徹底検証 新機種と旧機種を徹底比較 (2021年3月5日公開)
EW-M873Tはエコタンク搭載プリンターの写真印刷向けの機種である。EW-M770Tの後継機種ではあるが、3年半ぶりの新モデルで、しかも型番上も100の位が7から8に上がるなど、機能面での進化を伺わせる。また、EW-M873Tの発売と同時にEW-M770Tは製造終了となっているが、同じく製造終了となっているのはEP-30Vである。こちらは、カートリッジ方式だが、一般的なカラリオシリーズの6色プリンターよりもさらに高画質で、写真印刷時の機能も強化しつつ印刷コストを抑えた製品だった。実はEW-M873Tは、このEP-30VAの機能も一部引き継いでおり、カタログも、EP-30VAが掲載されていた「写真高画質プリンターカタログ」にEW-M873Tが掲載されるなど、こちらの後継モデルの意味合いもある製品だ。つまりEW-M770TとEP-30VAの両方の後継モデルとも言える。そこで、今回は同じエコタンク搭載モデルのEW-M770Tとの機能面での進化を徹底比較しつつ、EW-30VAとも比較していきたいと思う。 |
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フォトブラック シアン マゼンタ イエロー グレー |
フォトブラック シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー レッド グレー |
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(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
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(つよインク) ClearChrome K2 Plus |
(アルバム保存300年/耐光性50年/耐オゾン性10年) (つよインク200) Epson ClearChrome K2 |
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ハーモニカ(染料) |
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顔料:360ノズル |
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(AdvancedMSDT) |
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(税別) |
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(税別) |
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まずは、EW-M873Tの販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はEW-M873Tが60,000円で、EW-M770Tが69,980円だったので、1万円近く下がった形となる。ただし、EW-M770Tは、販売終了直前には59,980円まで下がっていたので、最終の価格をそのまま引き継いだとも言える。機能的に大きく進化が予想されるだけに価格が上がってもおかしくは無く、少なくとも新製品では元の約7万円まで戻ることもありえただけに、お得感が高いと言える。ちなみにEP-30VAは49,980円だったので、約1万円のアップとなる。 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。インクはEW-M770Tの5色からEW-M873Tでは6色へと進化している。増えた1色はグレーインクで、従来通り、顔料ブラック(マットブラック)と染料ブラック(フォトブラック)を搭載しており、それにシアン、マゼンダ、イエローと、新搭載のグレーとなる。インク構成はキャノンの6色機と同じである。ちなみに、EW-M770Tでは顔料ブラックは「ブラック」、染料ブラックは「フォトブラック」と分けていたが、EW-M873Tではそれぞれ「マットブラック」「フォトブラック」という名称となり、分かりやすくなった。 グレーインクが搭載されたため、画質が向上している。まず、カラープリントの場合は粒状感の低減効果がある。また、モノクロ写真やカラー写真でもグレーの部分で、カラーインクを使用して表現するとどうしても青白くなるなど色転びが起こるが、グレーインクを使用することで綺麗なグレーの階調表現が出来る。ここまでは染料インクを使った画質の話だが、EW-M873Tでは通常、普通紙に使用する顔料ブラックを、Velvet Fine Art Paperなどのアート紙に使用できるようになった。作品印刷などに用いられるアート紙での表現が格段に向上したという。家庭でのスナップ写真印刷から、写真作品印刷まで使用できるインク構成になった。ちなみにEP-30VAは同じ6色インク構成ながら、顔料ブラックを搭載せず、6色すべて染料インクである。EW-M873Tに、さらにレッドインクを追加した構成で、くすみがちな赤系の表現力が増していた。さらに、プロセレクションの製品が搭載している論理的色変換システムLCCSを搭載しており、より高度なインク配分を行って滑らかな階調表現と高い色の表現を実現していたが、EW-M873TではLCCSは搭載されていない。その点ではEP-30VAは、通常の6色構成よりワンランク上の画質となっていたが、EW-M873Tでは前述のアート紙を除いて、EP-30Vほど高画質ではないと思われる。とはいえ、EW-M770Tよりは画質が向上しているのは確かだ。ちなみに画質に関係のある最小インクドロップサイズは、EW-M873Tでは非公開となった。ただ、これまでの流れからすると、EW-M770TやEP-30Vと同じく1.5plである可能性が高く、その点での粒状感の差は無いと思われる。 ちなみに普通紙の印刷画質は顔料のマットブラックを搭載するため、黒色部分はメリハリのある印刷が行え、全体としての印象は良いと思われるが、EW-M770Tも顔料のブラックを搭載していたため、この点は同等だ。グレーインクのおかげで多少画質が向上しているとも言えるが、写真ほど明確な差にはならないだろう。一方EP-30VAは全色染料インクであったため、EW-M873Tのほうが高画質に印刷できるだろう。 EW-M873Tは、エコタンク方式でEW-M770Tと同じだ。ボトルを注入口に挿すと注入が始まり満タンで自動ストップ、さらに注入口の形を色ごとに変えることで誤注入を防止する「挿すだけ満タンインク方式」である点も同様だ。EP-30VAはインクカートリッジ方式だったので、この点は異なる。EW-M873Tのインクは「つよインク」となっており、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と、高い耐保存性も持っている。EW-M770Tのインクは名称こそ無かったが同等の耐保存性で、EP-30VAは「つよインク200」という名称だが、やはり同等の耐保存性であるため、保存性の面では変化はないとも言える。ちなみにEW-M873Tのインクは「ClearChrome K2 Plus」という名称が付けられている。EP-30VAが「Epson ClearChrome K2」という名称だったので、あきらかにコレを意識して、さらに進化したという事で「Plus」を付けたようだ(ClearChromeの前の「Epson」の表記は無くなっている)。とはいえ、前述のように必ずしも画質面で上回っているという訳ではない。 ノズル数はEW-M770Tの計1080ノズルから変化が無いが、6色構成となったため、全色180ノズルとなっている。EW-M770Tでは6色機とプリントヘッドを共通化するするためか、顔料のブラックだけ倍の360ノズルとなっていた。顔料のブラックのノズル数が半分になっているため、特に文書の印刷速度に影響がありそうだが、L判写真がEW-M770Tの24秒からEW-M873Tでは19秒に、カラー文書は10.0ipm(image per minute: 1分あたりの印刷枚数:数字が大きいほど高速)から12.0ipmに、モノクロ文書は13.0ipmから16.0ipmにそれぞれ高速化している。モノクロ印刷も23%高速化しており、ノズル数の変化はあまり気にしなくても良さそうだ。EP-30VAは、写真の印刷速度しか公表しておらず、33秒だったので、EW-M873Tではずいぶん高速化した事になる。 印刷コストに関しても変化がある。EW-M873Tは、L判写真が6.9円で、EW-M770Tの6.0円より高くなっている。これには写真用紙代の約4.3円が含まれているので、これを引いたインクだけの価格では2.6円と1.7円になり、約53%アップとなる。カラー文書はEW-M873Tは1.6円で、EW-M770Tの1.3円より23%アップ、モノクロは0.7円よ0.5円で40%アップで、写真印刷ほどでは無いが印刷コストは上がっている。これは、インクの色数が増えたことも多少の影響があるだろうが、インクボトル自体の価格が上がっている事が大きい。EW-M770Tでは、ノズル数と同じく顔料のブラックのタンクだけ倍の大きさとなっており、ボトル1本140mlで2,400円、カラーは70mlで1,200円だった。EW-M873Tでは、すべて同じサイズとなり、70mlで各1,860円である。カラーインクは55%の値上げで、マットブラックインクは安くなっているが、量が半分なのでこちらも実質値上げと言える。もともと印刷コストが安い機種だけに、これでも十分安いと言えるが、上がってしまったのは残念だ。インク自体が、より良い物に変わりコストがアップしたとも考えられるが、詳細は不明だ。ちなみにEP-30VAはカートリッジ方式としては印刷コストが安い事を売りにしていたが、それでもL判写真は12.7円(用紙を除くと8.4円)、カラー文書は6.0円で、EW-M873Tは3分の1以下になっている。また、インク1本は810円と安価ながら、EW-M873Tではインクボトル1本で6,200〜7,300ページ印刷できるのに対して、EP-30VAは810枚ほど(インクの価格と印刷コストから算出した予測値)なので、圧倒的に印刷枚数が違う。特に大判印刷をする場合は、EP-30VAではすぐにインク交換が必要になってしまうが、EW-M873Tはかなりの枚数が印刷でいるため、手間も軽減される。 ちなみに、同梱のインクボトルは、EW-M873Tは別売りの物と同じ物となっているため、インクタンクを満タンに出来る。初期充填でかなり使ってしまうが、それでもかなりの印刷枚数が残るだろう。この点はEW-M770Tと同等だが、こちらは初期充填後の印刷可能枚数を3,600ページ以上と公表していたが、EW-M873Tでは非公表となっている。EP-30VAは同梱の物はセットアップ用インクカートリッジで、初期充填を行うと印刷できる枚数はかなり少なくなる。この点ではEW-M873Tはお得と言える。 |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
(50枚/20枚/20枚) (0.6mm厚紙対応) |
(1枚/1枚/1枚) (0.6mm厚紙対応) |
(1枚/1枚/1枚) (0.6mm厚紙対応) |
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(100枚/40枚/20枚) 【カセット上段】 2L/B6以下 (20枚/20枚/20枚) |
(100枚/40枚/20枚) 【カセット上段】 2L/A6以下 (20枚/20枚/20枚) |
(100枚/40枚/20枚) 【カセット上段】 2L/A6以下 (20枚/20枚/20枚) |
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手差しストレート給紙 (1枚/1枚/1枚) (1.3mm厚紙対応) |
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続いて、EW-M873Tの給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙は最大はA4で同じだが、最小サイズはEW-M770TやEP-30VはL判なのに対して、EW-M873Tより小さな名刺サイズに対応している。また長尺印刷の場合、EW-M770Tは1.2mまでだったが、EW-M873Tでは2mまで対応し、パノラマ写真などに便利になっている。給紙機能に関しても大幅に強化された。EW-M770TとEP-30Vでは前面給紙カセットが2段になっており、上段にL判やハガキ、2L判といった小さいサイズを、下段にはA4用紙など大きな用紙をセットできる。上段は普通紙、ハガキ、写真用紙はいずれも20枚までセット可能で、下段は普通紙を100枚セットできる。下段にもL判やハガキサイズをセットする事も可能で、その場合ハガキは40枚、写真用紙は20枚までセット可能で、上下とも連続して使用する事もできるため、一度にハガキ60枚、写真用紙40枚までの印刷が可能である。EW-M873Tもその前面給紙カセットの部分は変化がない。細かくは、上段にセットできるサイズは、写真用紙なら2L判以下で同じだが、普通紙はA6以下からB6以下に、やや大きな用紙に対応しているという違いはある。大きく進化したのは背面給紙だ。EW-M770TとEP-30VAは、手差し給紙となっており、1枚ずつの給紙となるが、通常の倍の厚みの0.6mm厚まで対応している。EW-M873Tはここが強化され、背面給紙は手差しでは無く通常のトレイ式となった。そのため普通紙50枚、ハガキ20枚、写真用紙20枚までセットが可能で、利便性は大きく向上している。もちろん0.6mm厚まで対応しているため、写真作品印刷に使われるファインアート紙なども給紙可能だ(エプソンのVelvet Fine Art Paperなら0.46mm)。ただしファインアート紙は1枚ずつのセットが推奨されている。さらに、EW-M873Tでは「手差しストレート給紙」を新たに搭載している。背面給紙のように斜め後ろでは無く、完全に背面から、排紙部分までをまっすぐに用紙を通せるため、1.3mm厚までの用紙に対応できる。本体背面にある「背面ユニット」(紙詰まりの際など取り外す部分)を取り外し、背面ユニットに取り付けられている「手差しユニット」を取り外して本体に取り付けると使用できる。「手差しユニット」は背面ユニットを取り外した後、内部に水平に給紙出来るように段差を無くすとともに、簡易的な左右のガイドがあるため、左右の位置も合わせられるようになっている。手間はかかるが、今まではプロ向けの製品を除いて対応できなかった厚みまで対応できる。1.3mmというと、CD/DVD/BDレーベル印刷のトレイの厚みである。この「手差しストレート給紙」はレーベル印刷の仕組みを利用しているため、ディスクの厚み1.2mm+トレイの厚みで1.3mmとなっているわけである。ディスクレーベルのトレイように前面から給紙出来ればより便利だっただろうが、少しの手間だけで他のプリンターには無いメリットがあるわけである。「手差しユニット」も内部に収納できるので無くす心配がないのも、よく考えられている。 EW-M873Tでは排紙トレイの自動伸縮機能が追加された。EP-30VAには搭載されていたが、EW-M770Tでは非搭載の機能で、印刷が開始する前に自動で排紙トレイが伸張し、電源を切ると自動で収納されるというものだ。後述の自動電源オンと併せて、印刷を実行すると自動で電源が入り、自動で排紙トレイが伸張し、印刷が実行されるため、わざわざプリンターのまでに行く必要が無く印刷が行える。EW-M770Tでも自動で電源は入ったが、排紙トレイを引き出すまで印刷は実行されないため、引き出しに行くか、常時引き出したままにしておく必要があった。プリンターがパソコンの近くにない場合や、スマホで遠くから印刷を実行する場合などに非常に便利になった。 一方、印刷時に用紙幅をチェックし、用紙外にインクを打つのを防止する機能はEW-M873Tでは省かれている。 |
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印刷速度 |
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続いてEW-M873Tのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能はEW-M770TやEP-30VAでも対応していたが、普通紙とハガキのみであった。EW-M873Tではさらにファイン紙の自動両面印刷にも対応した。ファイン紙は普通紙よりも綺麗に印刷できるだけでなく、裏写りの少ない両面印刷用紙が多数販売されており、綺麗に両面に印刷したい場合は両面印刷ファイン紙を使う場面も多いが、従来では片面ずつの印刷を行うしか無く手間だった。EW-M873Tでは便利になったと言える。 また、EW-M770Tでも廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換には対応しており、これはEW-M873Tでも同様だ。一方EP-30VAは非対応だったので便利になったと言える。廃インクタンクは、クリーニング時などに排出されるインクを貯めておくもので、満タンになるとプリントが一切止まってしまう。EP-30VAなど交換式になっていない大半の機種は、修理対応となるため、プリンターが手元に無い期間も発生し、修理費も高くなる。EW-M873Tではインクボトルなどと共に交換用のメンテナンスボックスが販売されており(2,380円)、交換すればすぐに印刷を再開できる。EW-M770Tでは本体背面のネジを1本外してメンテナンスボックスを交換していたが、EW-M873Tはインク補充と同じ、スキャナユニットを持ち上げて開くと、ネジ無しで取り外して交換できるようになっており、細かな改良がなされている。さらに、プリンターにはもう一つ吸収材があり、それが「フチなし吸収材」である。フチなし印刷の場合、用紙の微妙なズレを考え、用紙サイズより少し大きめに印刷し、はみ出したインクはフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになった場合、EW-M770TやEP-30VAではプリントが完全に止まってしまい、修理に出して交換する前プリントは一切出来なかった(スキャンなどは行えた)。EW-M873Tでも修理対応となる点はEW-M770TやEP-30VAと変わらない。ただし、EW-M873Tでは完全に止まってしまうのでは無く、フチなし吸収材と関係の無い「フチあり」印刷に関しては印刷が継続できるようになった。急ぎのフチありの印刷だけは済ませておいて、時間に余裕のある時に修理に出すことが可能となった。 |
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(216×297mm) |
(216×297mm) |
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EW-M873Tのスキャナー機能を見てみよう。CISセンサーである事や、本体だけでスキャンしてメモリカードに保存する機能なのは同等だ。ただ、スキャナの最大解像度に関しては違いがある。EW-M770Tでは1200×2400dpiで、EP-30VAでは2400×4800dpiなのに対して、EW-M873Tは1200×4800dpiとなっている。スペック上は両機種の中間ぐらいに思える。しかし、EW-M873Tの1200dpiの方は「主走査」と呼ばれ、スキャナの短い方、つまりCISセンサー方向の解像度である。つまりCISセンサーの実質の解像度となる。一方4800dpiは「副走査」と呼ばれ、スキャナの長い方の辺、つまりCISセンサーの移動方向の解像度である。つまり、1200dpiのセンサーを4800dpiの細かさで動かしながらスキャンできる事になる。その点で言うとEW-M873TはEW-M770TとCISセンサーの解像度は1200dpiで変わっておらず、より細かく移動できるようになっただけと言える。その点ではEP-30VAはCISセンサーが2400dpiなので、コレと比べると劣ることになる。では実用上に大きな差があるかと言われると、ほぼないと言える。スキャンできるのは紙などの反射原稿だけである。文書なら200〜300dpiが一般的で、せいぜい600dpiまでだ。写真も300〜600dpiが一般的で、どうしても綺麗にスキャンしたい場合に1200dpiにする程度だ。2400dpiともなると、画像ファイルが大きくなりすぎて扱いづらくなってしまう。その点では1200dpiのEW-M873Tでも問題ない性能と言える。 |
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プリント |
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(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応) |
(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応) |
(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応) |
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フチなし/フチあり(フチ4種類・フチ太さ3〜39mm) 赤目補正 明るさ調整(+4〜-4) コントラスト調整(+4〜-4) シャープネス調整(3段階) 鮮やかさ調整(+4〜-4) 色調補正(RGB独立・+4〜-4) フィルター(モノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセス) 色補正一覧印刷 編集した写真の別名保存 |
フチなし/フチあり(フチ4種類・フチ太さ4段階) 赤目補正 明るさ調整(5段階) コントラスト調整(3段階) シャープネス調整(5段階) 鮮やかさ調整(5段階) フィルター(モノクロ/セピア) |
フチなし/フチあり(フチ4種類・フチ太さ4段階) カラーフレーム 赤目補正 明るさ調整(+4〜-4) コントラスト調整(+4〜-4) シャープネス調整(3段階) 鮮やかさ調整(+4〜-4) 色調補正(RGB独立・+4〜-4) フィルター(モノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセス) 色補正一覧印刷 編集した写真の別名保存 |
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フォーム印刷(カレンダー・罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード) デザインペーパー 証明写真印刷 シール印刷 フォトブック印刷 写真コラージュ ディスクレーベル印刷 CDジャケット印刷 |
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) ディスクレーベル印刷 フォトブック印刷 |
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) フォトブック印刷 ディスクレーベル印刷 |
EW-M873Tのダイレクト印刷機能を見てみよう。EW-M873Tが対応しているのはSDカードとUSBメモリーで、その点はEW-M770Tと同等だ。USBポートは外付けHDDや外付けDVDドライブにも対応しており、これらからも印刷が可能だ。またSDカードからUSBメモリーや外付けHDDへのバックアップ機能を搭載しているのも同等だ。ちなみにEP-30VAではこれらに加えてメモリースティックDuoとコンパクトフラッシュ、赤外線通信にも対応しているが、現在となっては大きな差では無いだろう。 EW-M873Tのダイレクト印刷時の印刷機能は、EW-M770Tと比べて大きく進化しており、EP-30VAに近い物になっている。通常は「写真印刷」を選べば簡単に写真印刷が可能だが、「作品印刷」を選ぶ事でより高度な色補正が可能となる。トリミングやフチなし・フチあり赤目補正などは同等だ。フチあり印刷の場合、フチの種類は「白フチ」「黒フチ」の他、フチと写真の間に逆の色の境界線を入れた「黒枠付き白フチ」「白枠付き黒フチ」が選べるのも同等だ。ただ、EW-M770TやEP-30VAでは、フチの太さは4段階から選べたが、EW-M873Tでは3〜39mmの間で1mm単位で自由に設定できるようになった。ただしEP-30VAが搭載していたカラーフレームは非搭載となっている。 EW-M873Tでは明るさ、コントラスト、鮮やかさに関しては+4から-4の9段階、シャープネス調整は3段階で調整が可能で、EP-30VAと同等、EW-M770Tでは明るさ、シャープネス、鮮やかさが5段階、コントラストが3段階なので、より細かく調整できるようになっている。ただしシャープネスに関しては5段階から3段階に減っている事になる。これに加えて、色調をRGB独立で9段階から調整できるため、かなり高度な色調整が可能である。EW-M770Tはこの機能は非搭載で、EP-30VAと同等となっている。フィルターもモノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセスに対応しておりEP-30VAと同等、モノクロとセピアしか選べないEW-M770Tより機能強化された。編集した写真を別名で保存できるのもEP-30VAゆずりで、細かく調整して気に入った写真を保存しておけば、再度印刷時に調整が不要になる。EW-M873Tでは、「色補正一覧」も印刷可能だ。色補正の各項目を調整した場合の写真をサムネイルで印刷が可能で、気に入った調整結果を実際に見て選ぶ事が出来る機能だ。この機能はEP-30VAにも搭載されていたが、1枚のシートで6つの項目を一度に並べており分かりづらかったところ、EW-M873Tでは明るさ×コントラスト、コントラスト×鮮やかさ、鮮やかさ×明るさ、色調(RGB)に分けて結果を確認できるようになった他、一覧のレイアウトも3種類から選択できるようになり、より利便性が増している。 このようにEW-M873TはEW-M770Tの後継モデルながら、EP-30VAの後継モデルの性格も併せ持っているのは、このダイレクト印刷の機能に大きく表れていると言える。しかも、EP-30VAの機能を基本的に引き継ぎつつ、フチあり太さがより細かく調整できたり、色補正一覧が使いやすくなったりと、より改良された機能を持っている。 なお、各種デザイン用紙印刷機能も強化されている。塗り絵印刷やフォーム印刷、ディスクレーベル印刷やフォトブック印刷は同等だが、ここでもフォーム印刷に「カレンダー」が追加されるなど変更点がある。さらに、ラッピングやブックカバーなどに使える「デザインペーパー」印刷、「証明写真印刷」「シール印刷」や複数の写真と背景柄などを組み合わせられる「写真コラージュ」、さらにCDジャケット印刷機能も搭載されている。 |
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Epson Smart Panel Epson Print Layout |
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Android 5.0以降 (Epson Smart Panel使用時のiOSは11.0以降/Epson Print Layout使用時はiOS 13.0以降・Android非対応) |
Android 4.0以降 |
Android 4.0以降 |
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(OneDriveはアプリからのみ) |
(OneDriveはアプリからのみ) |
(OneDriveはアプリからのみ) |
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EW-M873Tのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。アプリはEW-M770TやEP-30VAは、EPSON iPrintに対応していたが、EW-M873Tでは最新のEpson Smart Panelに対応している。対応端末はiOS 8.0以降から10.0以降に、Andoridは4.0以降から5.0以降に変更されたように見えるが、これは製品発売時のアプリの対応端末であり、現在のEPSON iPrintはiOS 10.0以降、Android 5.0以降となり、EW-M770TやEP-30VAでも変わらない。ただしEpson Smart PanelはiOSに関しては11.0以降(Androidは5.0以降で同じ)となる。さらにEW-M873TはEpson Print Layout
というアプリにも対応した。これは、写真作品印刷向けのプリンター「プロセレクション」シリーズの新製品SC-PX1VL/SC-PX1V用に新たに登場したアプリで、画像の配置やトリミングなどの細かなレイアウト設定が可能なほか、用紙のプロファイルを使用した印刷や、展示する環境光を考慮したプレビューが行えるなど、より高度な写真印刷が行えるアプリとなっている。 その後か、プリントやスキャン、さらにはクラウド関連の機能や、メールやLINEでプリントする機能、リモートプリントなどの機能は同等だ。ただし、Wi-Fi接続設定に新たな機能が追加されている。EW-M770Tではセキュリティーキーを入力しての接続しかできず、EP-30VAでもNFCには対応してるが、これはAndroidのみでiOS非対応、しかもNFC対応の端末のみの対応だった。EW-M873Tではより簡単になっており、iOSの場合は本体液晶に表示されるQRコードを、iOS標準のカメラアプリで読み取るだけで接続が出来、Androidの場合はアプリ上でプリンターを選択すると、本体液晶に許可を求めるメッセージが表示されるので、許可を選択するだけで接続が出来るようになった。従来のようにセキュリティーキーの入力などが不要で、非常に簡単である。さらに、Bluetooth LEを利用した初回セットアップの簡略化機能が搭載されている。スマートフォン用アプリ「Epson Smart Panel」起動し「新規セットアップ」を選択する。そして、初期設定を行っていないEW-M873Tの電源をオンにすると、EW-M873Tが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してEW-M873Tに自動接続される。そして、設置からインクの補充方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にEW-M873Tをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続して終了となる。インクの補充は、6本同時には行えず、1本あたりも時間がかかるため、その間にWi-Fiのセットアップは行われるなど、効率よく初期設定が行えるよう工夫がされている。自動接続されるため非常に簡単なほか、インクの補充方法なども表示されて非常に分かりやすい上に、ネットワーク接続設定まで行ってくれるので、初期セットアップのハードルが大きく下がっている。 |
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濃度調整 背景除去機能 鮮やかさ調整 色調調整(レッド・グリーン・ブルー個別) 色相調整 |
背景除去機能 |
濃度調整 背景除去機能 コントラスト調整 鮮やかさ調整 色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別) シャープネス調整 色相調整 |
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IDコピー ミラーコピー 塗り絵コピー リピートコピー |
BOOK両面コピー ミラーコピー 塗り絵コピー |
本を開いて両面コピー ミラーコピー 塗り絵コピー |
EW-M873Tのコピー機能を見てみよう。基本的な拡大縮小コピーやレーベルコピー、写真の焼き増し風コピー機能などは同等だ。その他、EW-M770Tには無く、EW-M873Tで新たに追加されたのが、プレビュー機能だ。コピー前に一度確認して、原稿にズレなどがないか確認出来るほか、プレビューを見て拡大縮小ができる。また、鮮やかさと色調(レッド・グリーン・ブルー個別)、色相の補正もできるようになった。コピー時の色補正はかなり細かく行えるようになったと言える。しかし、EP-30VAにあった、コントラスト調整とシャープネス調整機能は無くなっている。 バラエティーコピーとしては、EW-M770Tの「BOOK2アップコピー」とEP-30VAの「本を開いて割り付けコピー」が同等、「BOOK両面コピー」と「本を開いて両面コピー」が同等で、EW-M873Tでは「見開きコピー」へと名称変更されている。見開きコピーと同時に、2面割付又は両面印刷が出来るので、機能的には同等だ。本の左右ページをそれぞれスキャンして1枚の左右に割り付け又は両面印刷が出来る。本の場合右ページと左ページで、上下逆にスキャンすることになるので、普通に2面割付又は両面コピーだと上下が逆になってしまうが、180度回転させて向きを合わせてくれる機能だ。ミラーコピーと塗り絵コピーも引き続き搭載する。EW-M873Tで新たに搭載したのは、免許証などを2回スキャンすると、1枚の用紙に並べてプリントされる「IDコピー」と、同じ内容を複数枚並べてプリントされ、手書きメモや名前シールなどのコピーに便利な「リピートコピー」機能となっている。 |
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(70度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
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(70度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
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5GHz帯対応 (Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
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MacOS 10.6.8〜 |
MacOS 10.6.8〜 |
MacOS 10.6.8〜 |
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最後にEW-M873Tの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。EW-M770Tでは2.7型液晶で物理ボタンでの操作と、同世代の高価格機種にしては操作性は旧世代の物だった。EW-M873Tでは4.3型の液晶とタッチパネル操作で、最新機種と同等レベルとなっている。また、インタフェースはUSBと無線LANと有線LANに対応している点は変わりが無いが、EW-M873Tは無線LANについては機能強化されている。EW-M770TとEP-30VAではIEEE802.11n/g/bのみ対応だが、EW-M873TはIEEE80.211ac/aにも対応し、5GHz帯にも対応する。IEEE802.11acはIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。EW-M770TやEP-30VA、その他の多くの機種は2.4GHz帯のみ対応するが、これはBluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすい。一方、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。このように無線LANでの安定性が大幅に強化されている。 EW-M873Tの本体サイズは403×369×162mmで、奥行きがEW-M770Tより22mm小さくなったが、奥行きは10mm大きくなった。背面給紙もトレイ式となったため、後方にスペースが必要なほか、手差しストレート給紙を利用する場合は、背面に用紙の長さ分のスペースが必要となる。前面給紙からのみ使用する場合はやや小さくなったとも言えるが、使用する機能によってはスペースが必要になる点では注意が必要だ。ちなみにEP-30VAとの比較では、幅が13mm、奥行きが28mm、高さが21mmと全体に少しずつだが大型化した事になる。 EW-M873Tの本体カラーはブラックのみで、ブラックとホワイトが選べたEW-M770Tと比べると寂しく感じる。しかし、EP-30VAはブラックのみだし、EW-M770Tも発売当初はブラックのみだったため、いつも通りのパターンとも言える。 EW-M770Tの後継機種と言うと想像しやすいのは、インクを6色に増やし、液晶をタッチパネルにし、Wi-Fiを強化する程度だろう。ところがEW-M873Tはその想像を遙かに超える性能を実現している。印刷速度の向上はもちろん、ただグレーインクを足しただけで無く、アート紙でマットブラックを使用する事で、写真作品の画質も向上させた。さらに、給紙機構として、背面給紙を手差しからトレイ式に変更しただけで無く、手差しストレート給紙で1.3mmの厚紙にまで対応している。メモリーカードからのダイレクトプリントは、EP-30VAの機能を取り込み、さらに進化させており、EW-M873T単体でも、かなりこだわった写真印刷が可能だ。これだけの強化がなされているにも関わらず、本体価格は、値下げ後のEW-M770Tを据え置くなど、お買い得感は非常に高い。印刷コストはやや高くなったが、それでも非常に安価である事は変わりなく、カートリッジ方式としては安価だったEP-30VAをも大きく下回り、手軽に写真印刷が行える。これまで、エコタンク搭載プリンターと言えば、カートリッジ式プリンターに対して、何となく劣る事が多かったが、EW-M873Tはカートリッジ方式を上回る機能を手に入れている。価格以上にお買い得感の高い製品に進化したと言えるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/
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