2020年末時点のプリンター新機種を徹底検証 新機種と旧機種を徹底比較 同系統・同価格帯のエプソン・キャノン・ブラザー製品を徹底比較 (2020年12月17日公開・2021年5月28日最終更新) 毎年、9〜10月の年賀状シーズンには家庭向けの複合機が一斉に新製品に入れ替わり、年賀状商戦に向けて準備を整える時期だ。しかし今年は少し様子が違っている。まず、キャノンは家庭用複合機の内、上位3モデルのみ新モデルとなり、下位3モデルは継続販売となった。例年のように一斉に入れ替わる感じでは無い。発売も8月と例年より少し早めだ。一方のエプソンも、家庭向け複合機はA4の6モデル中、最上位を除く上位3モデルが新製品となり、下位2モデルは継続販売、最上位モデルは販売終了となるなど、こちらも一部のみ新製品に移行した。一方で、エコタンク搭載機種が3機種、ビジネス向けの機種が4機種登場するなど、エコタンクとビジネスに力が入っている。また両メーカーとも、FAX付き複合機のラインナップが整理され、一部機種が販売終了となる一方で、新機種が登場している。これは、新型コロナウィルスによるテレワークで、家庭でもFAX機能付き複合機の需要が高まったためといえるだろう。またエコタンクの機種が増えているのも、テレワークやオンライン授業によって家庭内での印刷枚数の増加を見越してのことと思われる。例年とは異なる新製品とラインナップになっている。一方、ブラザーは明らかに家庭向け複合機への比重が下がっている。一時はA4プリント4モデルとA3プリントの計5モデルだったが、去年はDCP-J982NとDCP-J582Nの2モデルのみになり、今年はついに下位モデルが無くなりDCP-J982Nの後継のDCP-J987Nのみとなった。カラーバリエーションもブラックが無くなりホワイトのみとなった。一方でビジネス向けの機種やギガタンク搭載機種に新製品は無く、動きの少ない年末となっている。 それでは、最新のラインナップがどう変わったのかメーカー別に見ていこう。さらに、その下では、 ●新機種が旧機種とどう変わったのか1機種ずつ徹底比較 ●同系統・同価格帯のエプソン・キャノン・ブレザーの製品で、どの機種がオススメかを徹底比較 のページを用意しているので、そちらも合わせて見て頂きたい。
エプソンのラインナップの内、新モデルが登場したのはカートリッジ方式では複合機(A4)の3機種と、ファクス機能付き複合機(A3)に2機種、同(A4)に2機種、さらに年賀状作成機能を持ったプリンターが1機種だ。一方エコタンク方式では、複合機の内、家庭向けに位置する上位モデル2機種が新モデルになったほか、新たに単機能プリンター(A3)が登場するなど、エコタンク搭載機とビジネス向けの機種に力が入っている。一方でファクス機能付き複合機はラインナップが整理されている。 まず、カートリッジ方式の機種から見ていこう。カラリオシリーズと同じ6色インクながら、通常のカラリオシリーズよりも高画質に印刷ができ、印刷コストも安い「カラリオ Vエディション」にラインナップされていた、A3プリントA4スキャンの複合機EP-10VA、A4複合機EP-30VA、A3単機能プリンターEP-50Vのうち、EP-10VAとEP-30VAは生産完了となり、後継製品も登場していない。そのため、カラリオ VエディションはEP-50Vのみとなっている。ただし、エコタンクの新モデルであるEW-M973A3TとEW-M873Tは直接の後継製品ではないものの、EP-10VA/EP-30VAの一部機能が継承され、カタログ上も、EP-10VA/EP-30VAが掲載されていた「写真高画質プリンターカタログ」に引き続き掲載されており、後継製品と考えることもできる。 A3プリントA4スキャンの複合機のもう1機種、EP-982A3は継続販売だ。A4複合機では、前述の通りEP-30VAは販売終了、5機種の内、6色インクを採用するEP-882A、EP-812A、EP-712Aは、それぞれ新モデルのEP-883A、EP-813A、EP-713Aが登場した。とはいえ、デザインや機能面での変更はほとんど無く、共通の変更点は、127×127mmのスクエア用紙への対応と、Bluetooth LEを利用した初期設定機能の追加だ。前者に関してはSNSなどで真四角の写真を見かける機会が増え、キャノンも数年前より対応していることから、エプソンも新機種で対応した形だ。後者はスマートフォンを利用した初期設定の話だ。従来より、スマートフォンとプリンターの接続設定を簡単に行えるように工夫されており、iOSは本体液晶に表示されるQRコードを読み取るだけ、Androidはアプリ上から接続するプリンターを選び、本体液晶で許可を選択するだけで接続出来た。今回はこれを更に進め、プリンターの初期設定も簡略化した。スマートフォン用アプリ「Epson Smart Panel」起動し「新規セットアップ」を選択する。そして、初期設定を行っていないプリンターの電源をオンにすると、設定するプリンターが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してプリンターに自動接続される。そして、設置からインクの取り付け方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にプリンターをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続までしてくれるというものだ。初期セットアップが不安というユーザーにも安心と言える。EP-813AとEP-713Aはこの2点の変更点しかないと言える。一方、EP-883Aは赤外線通信による写真のダイレクトプリントと、有線LAN機能が省略されている。残る4色インクのEW-452AとEW-052Aは継続販売となる。 ファクス機能付き複合機では、A3対応のPX-M5081FとPX-M5080Fに、それぞれ新モデルPX-M6011FとPX-M6010Fが登場した。なお、これまでは新モデルが登場すると、旧モデルの前面給紙カセット2段タイプが下位モデルとして残るのがパターンとなっていたが、今回はPX-M5081Fは生産完了となる。PX-M6011Fは、春に登場したエコタンク搭載のPX-M6711FTをインクカートリッジ版というような製品で、デザインもエコタンクが無い以外は同一になっている。ただし、PX-M6712FTと比べて、ノズル自己診断システムを搭載していない他、耐久枚数も20万枚から15万枚に低下している。ただし、旧モデルPX-M5081Fと比べると、印刷速度の向上、背面給紙を手差しから通常トレイ式に変更、排紙トレイの自動伸縮機能搭載、自動両面印刷の高速化、ADFの高速化と原稿枚数の増加、無線LANのIEEE802.11ac/a対応と5GHz帯の対応と多岐にわたる。スマートフォン用アプリも、最新のEpson Smart Panelに対応した。本体サイズも567×452×418mmから515×450×350mmに小型化された。インクも新しくなり、文書のキャビネット保存400年をうたっているが、印刷コストに関してはカラーが7.6円から8.5円、モノクロが2.5円から2.6円へ高くなっている。PX-M6010FはPX-M6011Fの前面給紙カセットが1段のタイプであり、旧モデルPX-M5080Fとは同じ変更点となっている。 A4対応の機種はかなり整理された印象だ。最上位のPX-M885Fは継続販売となる。一方、その下位モデルで前面給紙カセット2段のPX-M781Fは販売終了、1段のPX-M780Fは、更に下位モデルのPX-M680Fと統合され、新たにPX-M730Fとなった。PX-M781FはPX-M885Fと細かい点では機能差があるとは言え、印刷速度はほぼ同等で、印刷コストも多少の差しか無く、両面対応ADFや4.3型タッチパネル液晶も同等(テンキーの有無はあるが)、前面給紙カセット1段(250枚)と背面(80枚)のPX-M885Fに対して、PX-M781Fは前面給紙カセット2段(250枚×2)となっているなど、差別化が難しい状況にあったため、PX-M885Fに一本化されたと思われる。また、PX-M781Fのエコタンク版とし、機能を強化したPX-M791FTが春に登場しているため、そちらに譲ったとも言える。一方PX-M730Fは、型番上、PX-M780FとPX-M680Fの間となっている通り、中間の性能となっている。ただし、価格は18,000円と、PX-M680Fの販売終了直前の価格と同等となっている。機能的には、PX-M680Fと同じ印刷枚数のカートリッジを使用するものの、印刷コストはカラーは両機種の中間、モノクロはPX-M680Fと同等になっている。印刷速度もPX-M680Fより微妙に高速化しただけで、PX-M780Fよりカラーの印刷速度は低下している。交換式メンテナンスボックス対応とADFの速度はPX-M780F譲りだ。コピー機能の色補正機能の強化や、無線LANのIEEE802.11ac/a対応と5GHz帯の対応は、PX-M730Fでの新たな強化点だ。最新のスマートフォンアプリEpson Smart Panelにも対応した。本体デザインはPX-M780FやPX-M680Fと変わっておらず、耐久枚数は8万枚でPX-M680Fと同等だ。 PX-M680Fの更に下位モデルのPX-M650Fも販売終了となる。2014年にPX-535FとPX-M740Fの間のミッドレンジモデルとして登場、その後PX-535Fが販売終了となり最下位モデルとなり、さらに、後継機種と言えるPX-M680Fが登場しても、継続販売されていたが、今回ついに終了となった。新たに下位モデルとしてEW-M530Fが登場しているが、これはPX-M680Fの後継と言うよりは、更に下位モデルという印象だ。エコタンク搭載のEW-M670FTのカートリッジモデルともいう製品で、見た目はエコタンクを外しただけの様に見える。実際には、モノクロ文書の印刷速度が15ipmから14.5ipmに低下、給紙枚数も250枚から150枚に減らされている。PX-M680Fと比べると、全色顔料では無く顔料ブラック+染料カラーの組み合わせになっているのが大きな違いだ。印刷コストはカラーは同等、モノクロは少し高くなっている。交換式メンテナンスボックス対応や、ADFの高速化、コピー機能の強化などがなされている。操作パネルはEW-M670FTと同じ2.4型タッチパネル液晶(テンキー無し)で、2.7型タッチパネル液晶でテンキーもボタンで用意するPX-M650Fより操作性では劣るが、角度調整は出来るようになった。本体サイズも425×360×230mmから375×347×230mmに小型化した。なお、ビジネス向けの製品だが、カラーが染料インクである点など、カラリオシリーズに近い部分もあり、カラリオシリーズの4色モデルEW-452Aのファクス付き上位モデル扱いでカタログに掲載されている。 単機能プリンターはA2対応、A3対応、A4対応の全機種が継続販売だ。モバイルプリンターとコンパクトプリンターも継続販売で、年賀状が単体で作れるPF-81-2020は、PF-81-2021となった。ディズニーデザインが収録されなくなるなど、収録されるテンプレートやイラストに違いはあるが、基本的な機能は変わっていない。 続いてエコタンクモデルを見てみよう。ファクス付きのモデルは春に新製品が出たこともあって、2020年末はA3対応、A3プリントA4スキャン対応、A4対応の5機種は、いずれも継続販売だ。一方、ファクス無しの複合機の内、染料ブラックを搭載し写真印刷向けの画質を持つ家庭向けの機種が新機種となった。A3プリントA4スキャン対応のEW-M970A3TとA4対応のEW-M770TがそれぞれEW-M973A3TとEW-M873Tとなった。旧モデルは2017年発売で、第2世代のエコタンク「挿すだけ満タンインク方式」の機種の最初の製品だけに、エコタンク搭載カラー複合機の中では最も古い機種だったため、今回新機種へと移行した。なお、前述のEP-10VAやEP-30VAの後継製品としても位置づけられ、機能も一部継承している。両機種はプリントサイズの違いだけで基本は同等なのは、旧モデルと同じだ。今回、エコタンク搭載プリンターとして初めて6色インク構成となった。ただ染料6色では無く、顔料ブラック+染料5色で、新たにグレーインクが追加されるなど、キャノンのプリンターのような構成となった。ただし、顔料ブラックはアート紙などへの印刷時に顔料ブラックを使用する事で、黒の表現力を増しているという。名称も「ClearChrome K2 Plus」となり、EP-10VAやEP-30VAの「Epson ClearChrome K2」インクの後継を印象づける。印刷速度はL判写真が24秒から19秒、カラー文書が10ipmから12ipm、モノクロ文書が13ipmから16ipmに高速化した。一方印刷コストはL判写真が6.0円から6.9円、カラー文書が1.3円から1.6円、モノクロ文書が0.5円から0.7円へやや高くなった。給紙は前面2段給紙カセットはそのままに、背面給紙を強化し50枚までの給紙に対応した。こちらは従来通り0.6mm厚紙まで対応するとともに、さらに背面に「手差しストレート給紙」を搭載した。1枚ずつの手差しだが、給紙から排紙までがストレートなので、1.3mm厚まで対応している。また、排紙トレイの自動伸縮機能も搭載された。その他フチなし吸収材エラー時フチあり印刷が継続できる機能など、最新モデルにならった機能も搭載されている。SDカードやUSBメモリーからの印刷はそのまま、EP-10VA/EP-30VAの搭載していた、作品印刷機能によって細かな色補正が可能なほか、編集後の写真を別名で保存できる機能を搭載した。また余黒・余白の設定もEP-10VA/EP-30VA譲りだが、こちらは余黒・余白の大きさを4段階からの選択だったところを、EW-M973A3T/EW-M873Tでは3〜39mmで自由に設定できるようになった。また、色一覧印刷機能も、EP-10VA/EP-30VAでは1枚のシートで6つの項目バリエーションを印刷していたが、明るさ×コントラスト、コントラスト×鮮やかさ、鮮やかさ×明るさ、色調(RGB)に分けて確認できるように、使い勝手が向上している。スマートフォン向けアプリでは従来のEPSON iPrintに加えて最新のEpson Smart Panelに対応しただけで無く、プロ向けのプリンターに提供されてきたEpson Print Layoutにも対応した。パソコン向けEpspn Print Layoutも利用可能で、PhotoshopやLightroom、ViewNX-i、SILKYPIXのプラグインとして、余白の大きさの調整や、フレームを写真で包み込んで立体的に仕上げるギャラリーラップ印刷にも対応する。Wi-Fi接続時も、最新のQRコード読み込み(iOS)や、プリンターを選択して許可(Android)だけでなく、EP-883Aなどが対応する、Bluetooth LEで接続することで簡単に初期セットアップができる機能にも対応している。インク充填に5〜7分時間がかかるため、その間にWi-Fiのセットアップが行われるなど、効率も良くなっている。操作パネルは2.7型でボタン操作から、4.3型タッチパネルとなった。また、デザインも一新され、本体正面の右端に液晶が搭載され、その下にインク残量が見えるようになった。排紙される部分にダウンライトLEDを搭載し、プリントされる写真を光で演出するなど凝った作りも見られる。Wi-FiはIEEE802.11ac/aと5GHz帯に対応している。価格はEW-M973A3Tが85,000円、EW-M873Tが60,000円と販売終了直前のEW-M970A3TやEW-M770Tと同価格を維持している。EW-M973A3Tだけの変更点として、EW-M970A3TではA3までの対応だったが、EW-M973A3TではA3ノビに対応したことと、スキャナがA4サイズ(210×297mm)より長いリーガルサイズ(216×356mm)対応となっている点が上げられる。スキャナは、本体の横幅が大きく、長さには余裕があったことに加え、リーガルサイズなら、読み取りセンサーの幅をほとんど変えず、移動距離だけを大きくすれば良いのでコスト増を抑えられる面もあったのだろう。EW-M752TとEW-M630Tに関しては継続販売となるが、EP-M552Tに関しては販売終了となり、後継製品は登場していない(追記:翌年春に後継製品EP-M553Tが登場しているが、年末時点では後継製品無しの販売終了になっている)。 エコタンク方式では初の単機能プリンターも登場した。A3対応で、春に登場したPX-M6712FTのプリンターだけのバージョンだ。印刷速度やプリント機能などはそのままで、インタフェースの仕様や耐久性なども同等だが、本体操作が少ないことから液晶は4.3型のタッチパネルから、2.4型になり、ボタン操作となっている。 その他、モノクロ複合機、モノクロプリンターは全機種が継続販売となっている。 新モデル「EP-813A」と旧モデル「EP-812A」を比較 新モデル「EP-713A」と旧モデル「EP-712A」を比較 新モデル「PX-M6011F」と旧モデル「PX-M5081F」、参考機種「PX-M6711FT」を比較 新モデル「PX-M6010F」と旧モデル「PX-M5080F」を比較 新モデル「PX-M730F」と旧モデル「PX-M780F」「PX-M680F」を比較 新モデル「EW-M530F」と参考モデル「EW-M670FT」、旧モデル「PX-M650F」を比較 新モデル「EW-M973A3T」と旧モデル「EW-M970A3T」「EP-10VA」を比較 新モデル「EW-M873T」と旧モデル「EW-M770T」「EP-30VA」を比較 新モデル「PX-S6710T」と参考モデル「PX-S5080」「PX-M6712FT」を比較
キャノンの新モデルは少なめだ。まずはカートリッジ方式から見ていこう。A3プリントA4スキャン複合機のTR9530は継続販売だ。A4複合機は7機種中3機種のみが新モデルとなった。最上位のPIXUS XK70は継続販売だ。2017年末に発売して以来、XKシリーズの下位モデルは毎年新モデルになるのを横目にずっと継続販売されている。無線LANの規格や用紙幅センサーなど、最新モデルに搭載される機能が搭載されず、下位モデルと逆転現象も起こっているが、それでも5インチ液晶とクリエイティブフィルター、有線LANはA4複合機では唯一である。一方、XKシリーズの下位モデルPIXUS XK60はPIXUS XK90となった。PIXUS XK70発売と同時に登場したPIXUS XK50は、2018年にPIXUS XK80となり型番と上位下位モデルが逆転した。2019年にPIXUS XK60となり逆転現象は解消されたが、これ以上、間の番号も無い事から、PIXUS XK90となり、再度逆転現象になっている。機能面での変更は2点だけで、1点は写真の印刷速度が14秒から10秒に高速化した事だ。エプソンの最速が13秒なので、最速の座を奪ったことになる。とはいえ、元々PIXUS 8000番台では18秒だったが、XKシリーズになり14秒となり、今回10秒となる間に、ノズル数などに変化は無く、また文書の印刷速度も変わっていない。写真の印刷速度だけ高速化しているのは不思議だとも言える。もう1点はスマートフォンとのWi-Fiダイレクト接続設定だ。PIXUS XK90の液晶に表示されるQRコードを、スマートフォンの標準カメラアプリで読み取るだけで接続が完了する「QRコードダイレクト接続」機能が搭載された。SSIDやパスワードを入力する必要が無く非常に簡単になった。ただし、iOSとiPadOSのみ対応で、Androidには対応しない。同様の機能は、エプソンが昨年から搭載しているが、同じくiOSのみの対応だ。一方エプソンでは、Android用に別の簡単接続の方法を提供しているが、PIXUS XK90に関しては従来通りの方法となってしまう。もう一点、「PIXUSでリモートプリント」という機能が新たに搭載されたが、これは旧モデルPIXUS XK60でも利用できるので、新モデルへの追加機能と言うより、ネットワークを利用した新サービスの提供という方が正しいかもしれない。専用サイトからプリントしたいファイルをアップロードすると、離れた場所にあるPIXUS XK90でプリントが出来るという機能だ。ただし、対応フォーマットはPDFとWord、Excel、PowerPointで、ファイルサイズ20MB、99ページ以内という制限がある。2in1や両面印刷設定も可能だが、対応用紙はA4又はB5普通紙のみだ。またWindows 10のみ対応で、対応ブラウザもInternet Explorerと、EdgeやChromeは非対応だ。似たような機能としてエプソンがずいぶん前より「リモートプリントドライバー」を提供しているが、こちらは通常のプリントドライバーのリモートプリント版であるため、各ソフトから普通にプリント操作をする方法のまま、リモートプリントが可能だ。プリント時にプリンターの選択項目でリモートプリントを選ぶだなので、プリントの出来るソフトであれば形式を問わないし、ソフト上で印刷範囲選択や拡大縮小を行って印刷する事も可能だ。A4やB5だけでなく、A5やL判やハガキサイズも選べ、対応用紙も普通紙と写真用紙、さらには印刷品質やフチなし設定、拡大縮小、2in1、4in1、逆順印刷などかなり細かな設定が可能だ。なにより通常のプリント操作と変わらず実行できるのと比べると、「PIXUSでリモートプリント」は機能は少なく手間がかかると言える。対応OSはWindowsは従来通りだが、MacOSが、10.11.6以降から10.12.6以降へと変更された。本体デザインは変わっていないが、本体色はPIXUS XK60のメタリックシルバーから、ダークメタリックシルバーへと変化し、やや落ち着いた印象となった。 PIXUS TS8330はPIXUS TS8430、PIXUS TS7330はPIXUS TS7430となった。しかしPIXUS XK90のような印刷速度の高速化は無く、前述の「QRコードダイレクト接続」機能の搭載と、MacOSが10.12.6以降となった点のみが変更点だ。「PIXUSでリモートプリント」にも対応するが、旧モデルでも対応しているため、PIXUS TS8430/PIXUS TS7430の新機能では無い。本体のカラーバリエーションも同じだ。下位モデルPIXUS TS6330、PIXUS TS5330、PIXUS TS3330に関しては継続販売となる。 ファクス機能付き複合機では、MAXIFYシリーズは4機種が継続販売だ。一方、家庭・ビジネス両用のPIXUS TR8530、PIXUS TR7540、TR4530に関しては、PIXUS TR7530とTR4530が販売終了、PIXUS TR8530のみ、新モデルTR8630となった。なお、PIXUS TR8530/PIXUS TR7530が発売して以降、TRシリーズはPIXUSシリーズから外れているが、今回もTR8630からPIXUSを冠しなくなった。これでTR/PIXUS TRシリーズはすべて TRシリーズに統一された。TR8630の変更点としては「QRコードダイレクト接続」機能の搭載と、MacOSが10.12.6以降となった点が主である。加えて、PIXUS TR8530ではプリンター単体で、各種定型フォーム印刷が行えたが、加えて組み込みパターンペーパーの印刷にも対応したのは変更点だ。また「PIXUSでリモートプリント」にも対応しているが、旧モデルPIXUS TR8530はサービス対象機種に入っていないので、実質新機能と言える。一方、ベースとなるPIXUS TS6000シリーズは、2年前に写真印刷速度が31秒から18秒に高速化しているが、TR8630では31秒に据え置かれた。使用するインクカートリッジなどは同じだが、印刷コストの内、L判写真のみ17.2円から17.6円へ微増している。 A2プリンターは継続販売だ。一方A3プリンターの内、プロラインのPIXUS PRO-10SとPIXUS PRO-100Sが、それぞれimagePROGRAF PRO-G1とPIXUS PRO-S1という新モデルへと移行した。4年9ヶ月ぶりの新モデルであると共に、エプソンも今年春、同クラスの新モデルが久々に登場しており、ライバル製品がほぼ同時に新モデルになった形だ。imagePROGRAF PRO-G1は顔料インク、PIXUS PRO-S1は染料インクで、従来のモデルを踏襲する。ちなみに、型番の「G1」「S1」のアルファベットは、それぞれ「顔料(Ganryo)」のGと「染料(Senryo)」のSという事で、分かりやすくなった。また顔料のモデルが、PIXUSシリーズからA2モデルと同じimagePROGRAFシリーズへと移行している。両機種とも、デザインはimagePROGRAF PRO-1000に似たデザインへと変更された。imagePROGRAF PRO-G1は、同じ10色ながらLUCUAインクから、imagePROGRAF PRO-1000と同じLUCUA-PROインクへと移行した。着弾のズレによる色ズレをセンサーが検知して補正する「動的色間補正」、斜めに入った用紙をまっすぐに補正する「斜行補正機構」、給紙後にサイドガイドを広げすき間を確保することで用紙側面の抵抗を緩和する「サイドガイド・スライド機構」、目詰まりを検知して他のノズルで補完する「ノズルリカバリーシステム」といった数々の高画質の機能が追加された。印刷速度はL判では大きな差は無いが、A3ノビの場合、写真用紙・光沢 ゴールドで3分35秒から2分50秒に、写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]で5分20秒から4分15秒に高速化している。クロマオプティマイザーによる装飾効果機能も追加された。一方印刷コストは、写真用紙・光沢 ゴールドで22.7円から25.7円、写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]で32.1円から38.2円と高くなっている。スマホ・クラウド関係では、Wi-Fiダイレクト(ダイレクト接続)にも対応したほか、クラウドからのプリントが、スマートフォンのアプリ上からのみだったのが、本体だけでアクセス・プリントが可能になった。LINEからプリントする「PIXUSトークプリント」も追加された。「PIXUSでリモートプリント」にも対応しているが、旧モデルPIXUS PRO-10Sはサービス対象機種に入っていないので、実質新機能と言える。新たに3.0型液晶が搭載された。また無線LANはIEEE802.11aに対応すると共に、5GHz帯が利用できるようになり、通信の安定性が増している。対応OSはWIndows 10/8.1/7 SP1となり、Windows 8/Vista/XPが外された。MacOSも10.7.5以降から10.11.6以降と変更された。ただし、他のキャノンの新機種では、MacOS向けのドライバーが提供されず、AirPrintを使う形となっているが、画質重視の機種だけに、専用ドライバーが提供される。本体サイズは639×379×200mmで、幅が50mm、奥行きが6mm、高さが15mm小型化している。一方で給紙枚数は普通紙で150枚から100枚、ハガキで40枚から20枚に減少している。 PIXUS PRO-S1は同じ8色インクながら、新インクとなり色域が拡大している。またimagePROGRAF PRO-G1と同じく「動的色間補正」「斜行補正機構」「サイドガイド・スライド機構」を搭載している。印刷速度は多少の違いはあるが、大きくは変化していない。一方印刷コストは、写真用紙・光沢 ゴールドで19.7円から22.3円、写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]で31.1円から32.7円と高くなっている。クラウドへの本体へのアクセス機能や、「PIXUSトークプリント」、「PIXUSでリモートプリント」にも対応した。、3.0型液晶や、IEEE802.11aと5GHz帯対応、対応OSの変更、本体サイズの小型化などもimagePROGRAF PRO-G1と同じだ。 その他、A3プリンターの下位モデル2機種、A4プリンター3機種、モバイルプリンターは継続販売だ。 ギガタンク方式の機種としては、7機種のうち6機種が継続販売だが、G3310のみ、新モデルG3360へと移行した。G3310は第1世代のギガタンク搭載プリンターで、その後継機種として第2世代のG6030が登場したが、G3310も下位モデルとして継続販売されてきた。しかし、インク補充の手間の違いや印刷速度の遅さが顕著だった事から、下位モデルとして新モデルを発売することになった。G3310では、大きな穴にボトルの先を挿し込み、インクを握って注入、満タンを目視で判断して注入をストップする必要があった。エプソンでは既に「挿すだけ満タンインク方式」となっていた事から、G6030では、挿し込むまでインクがこぼれにくく、挿し込むと注入がスタート、満タンで自動ストップするようになった。しかし「挿すだけ満タンインク方式」では、注入口とボトル先端の形状を色によって変えることで、誤ったタンクに注入することを防ぐようになっていたが、G6030ではその機能は無かった。G3360では、先端形状を変更し誤注入防止機能が取り入れられ、エプソンと同等となった。印刷コストは0.1円ずつ上がり、カラー文書が0.9円、モノクロ文書が0.4円だが、これはG6030と同じだ。印刷スピードはL判写真で51秒から37秒、カラー文書は5.0ipmから6.0ipm、モノクロ文書が8.8ipmから10.8ipmに高速化したが、ノズル数がG6030と同等に増やされているが、G6030の6.8ipmと13.0ipmよりは遅くなっている。給紙は背面給紙のみなのは同じだが、新たに1,200mmの長尺印刷に対応した。また、メンテナンスカートリッジの交換に対応した。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めるタンクで、エプソンでは交換式メンテナンスボックスとして満タンになった際にユーザー自身で交換が可能な機種が増えてきているが、キャノンではA2対応のimagePROGRAF PRO-1000を除いて修理対応だった。G3360は一般向けで初めて交換に対応した。さらに、フチなし印刷時に用紙からはみ出した部分のインクを吸収させる「フチなし吸収材」も同時に交換できるようになった。エプソンではフチなし吸収材が満タンになってもフチあり印刷は継続できるようになっているが、交換は修理対応だった。フチなし吸収材まで交換できるのは、卓上タイプでは初の事だ。本体での定型フォーム印刷機能が追加されたほか、A4普通紙への等倍コピーしかできなかったG3310に対して、様々な種類・サイズの用紙に、拡大縮小コピーが可能になったほか、2in1、4in1、枠消しコピー、IDコピーなども利用できるようになった。これは、液晶が強化されたことによるものだ。G3310では、数字と数個のアイコンのみの表示だったが、G3360ではG6030と同じ2行モノクロ液晶が搭載された。モノクロの文字表示でバックライトも無いが、使い勝手は向上した。またMacOSにも対応した。本体サイズはほぼ変化していない。 新モデル「PIXUS XK60」と旧モデル「PIXUS XK90」を比較 新モデル「PIXUS TS8430」と旧モデル「PIXUS TS8330」を比較 新モデル「PIXUS TS7430」と旧モデル「PIXUS TS7330」を比較 新モデル「TR8630」と旧モデル「PIXUS TR8530」を比較 新モデル「imagePROGRAF PRO-G1」と旧モデル「PIXUS PRO-10S」を比較 新モデル「PIXUS PRO-S1」と旧モデル「PIXUS PRO-100S」を比較 新モデル「G3360」と旧モデル「G3310」、参考モデル「G6030」を比較
ブラザーの新モデルは唯一DCP-J987Nだけだ。これは家庭用のA4複合機DCP-J982Nの後継モデルだ。これまで通り型番が+5になっている。一方DCP-J582Nの後継モデルは発表されず、DCP-J582N自体も販売終了のため、ついにファクス機能を搭載しない家庭用複合機は1機種になった(ファーストタンクのモデルを除く)。かつてはA3対応の4000番台とA4は900番台、700番台、500番台、100番台と5機種のラインナップが存在した時期もあったが、徐々に減らしていき、結局900番台だけが残った。しかも、これまで本体カラーはブラックとホワイトの2色展開だったが、ホワイトだけとなった。そのDCP-J987Nだが、プリントやスキャン、その他の機能や本体デザインには違いは無い。唯一、「メール添付印刷」機能が「Eメールプリント」機能へと変更された。これは、スマートフォンやパソコンから、DCP-J987Nにメールを送信すると、本文と添付ファイルを印刷してくれるという機能だ。従来の「メール添付印刷」では、送信すると専用のクラウド上に保存されるため、24時間以内にプリンター本体からの操作でクラウドにアクセスし、送信元のメールアドレスを選択してプリントという手順が必要だった。「Eメールプリント」では、本体の操作が必要なく、メールを送信すると、自動的にプリントされるようになった。また、「メール添付印刷」ではWord、Excel、PowerPoint、PDF、TXT、BMP、GIF、JPG、PNG、TIFF形式に対応しているが、添付ファイルのみの印刷でメール本文は印刷されなかった。「Eメールプリント」では対応ファイル形式は同じながら、メール本文を印刷するか選べるようになった。これらの設定は、ブラウザ上から行え、ドキュメントと画像でそれぞれ画質と用紙サイズ、さらにドキュメントは両面印刷をするかどうかも設定できるようになった。ソフトウェア的な変更のみだが、同機能の使い勝手は大きく向上している。 その他カートリッジ方式はファクス機能付きの4機種はすべて継続販売だ。またファーストタンク方式も全5機種継続販売となる。 新モデル「DCP-J987N」と旧モデル「DCP-J982N」を比較
新旧の比較とは別に、新製品を含む同系統の製品、同価格帯の製品での比較をしてみよう。 |
A3プリントA4スキャン複合機 (FAX無し/有り) |
EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5630CDW |
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A4複合機 (4〜6万円) |
EW-M873T EW-M752T PIXUS XK70 PIXUS XK90 |
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A4複合機 (カートリッジ方式・3万円台前半) |
EP-883A PIXUS TS8430 |
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A4複合機 (カートリッジ方式・2万円前後) |
EP-813A PIXUS TS7430 DCP-J987N |
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A4複合機 (カートリッジ方式・1万円台後半) |
EP-713A PIXUS TS6430 |
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A4複合機 (カートリッジ方式・1万円台前半) |
EW-452A PIXUS TS5330 |
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A4複合機 (カートリッジ方式・1万円以下) |
EW-052A PIXUS TS3330 |
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A4Sカラー複合機 (タンク・大容量カートリッジ方式) |
EW-M873T EW-M752T EW-M630T G6030 G3360 DCP-J988N |
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ファクス付きA3カラー複合機 (カートリッジ方式) |
PX-M6011F PX-M6010F MFC-J6983CDW MFC-J6583CDW |
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ファクス付きA3カラー複合機 (タンク・大容量カートリッジ方式) |
PX-M6712FT PX-M6711FT MFC-J6999CDW MFC-J6997CDW |
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ファクス付きA4カラー複合機 (カートリッジ方式・2万円後半以上) |
PX-M885F MAXIFY MB5430 MAXIFY MB5130 TR8630 MFC-J903N |
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ファクス付きA4カラー複合機 (カートリッジ方式・2万円以下) |
PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130 |
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ファクス付きA4カラー複合機 (タンク方式・大容量カートリッジ方式) |
PX-M791FT EW-M670FT G7030 MFC-J1500N |
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A4モノクロ複合機 |
PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030 |
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A2カラー単機能プリンター |
SC-PX1VL imagePROGRAF PRO-1000 |
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A3カラー単機能プリンター (カートリッジ方式・6万円以上) |
SC-PX1V SC-PX7VII imagePROGRAF PRO-G1 PIXUS PRO-S1 |
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A3カラー単機能プリンター (カートリッジ方式・5万円以下) |
EP-50V PX-S5080 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830 |
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A3カラー単機能プリンター (タンク・大容量カートリッジ方式) |
PX-S6710T HL-J6000CDW |
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A4カラー単機能プリンター (カートリッジ方式・1万円以上) |
EP-306 PX-S855 PX-S740 TR703 MAXIFY iB4130 |
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A4カラー単機能プリンター (カートリッジ方式・1万円以下) |
PX-105 TS203 |
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A4カラー単機能プリンター (タンク方式) |
G5030 G1310 |
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A4モノクロ単機能プリンター |
PX-S380 PX-S270T PX-S170T PX-S160T PX-K150 GM2030 |
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モバイル・コンパクトプリンター |
PX-S06 PF-71 TR153 |
(H.Intel)
今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ ブラザーホームページ https://www.brother.co.jp/ |