2021年春時点のプリンターを徹底検証 新機種と旧機種を徹底比較 (2021年7月11日公開)
EP-M553Tはエコタンク搭載複合機の中でローエンドにあたる製品で、EP-M552Tの後継モデルとなる。EP-M552Tで不評だった、シートフィード方式のスキャナを、一般的なフラットベッド方式に変更しただけの製品にも見えるが、それ以外の違いはあるのだろうか。徹底的に検証してみた。 |
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シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
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(挿すだけ満タンインク方式・オンキャリッジ式) |
(挿すだけ満タンインク方式・オンキャリッジ式) |
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(つよインク) |
(つよインク) |
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(増量/使い切りサイズ) |
(増量/使い切りサイズ) |
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(MSDT) |
(MSDT) |
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(税込) |
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2,200ページ(増量) |
2,200ページ(増量) |
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3,700ページ(増量) |
3,700ページ(増量) |
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(税込) |
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まずは、EP-M553Tの販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はEP-M553Tが33,500円で、EP-M552Tが32,978円(29,980円+税)だったので、522円の値上げと言えるが、ほぼ同価格を維持しているといえる。EP-M552Tの際は、税抜で「3万円を切る」という価格設定だったが、税込価格表示への変更に伴いどうしても3万円を超える事から、切りの良い数字としたと思われる。 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。インク構成や使用インク、印刷速度や印刷コストは全て同じだ。プリントの基本機能には手は加えられていない。 |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
(100枚/30枚/20枚) (0.6mm厚紙対応) |
(100枚/30枚/20枚) (0.6mm厚紙対応) |
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続いて、EP-M553Tの給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙や対応枚数、長尺用紙への対応などは全く同じだ。ただし、印刷時に用紙幅をチェックする機能が、EP-M553Tでは省略されている。印刷時に印刷設定より用紙幅が小さい用紙の場合に、用紙外にインクを打ってしまい、プリンター内部が汚れるのを防ぐ機能だが、そもそも用紙サイズと種類の登録機能があり、これが正しく設定していれば、印刷設定と異なる時点でエラーが表示される。この方法である程度は防げるので、コストダウンを図ったとも言えるだろう。 |
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印刷速度 |
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続いてEP-M553Tのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能やディスクのレーベル印刷に非対応である点や、自動電源オン/オフに対応している点、交換式メンテナンスボックスやフチなし吸収材エラー時にフチあり印刷が継続できる機能など、全てが同じだ。 |
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(216×297mm) |
(216×297mm) (坪量64〜95g/m2まで) 上質紙・普通紙・再生紙のみ/写真・ハガキ等不可 |
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(1200×2400dpi) |
(600×600dpi) |
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EP-M553Tで最も変化したのがスキャナー機能だ。EP-M552Tのスキャナは、他の複合機ではあまり見ない方式だった。「シートフィード方式」といって、スキャン原稿の挿入用のすき間が天板の奥側にあり、そこに原稿を挿し込むと、原稿が徐々に送られながら、スキャンされている方式だ。つまり読み取りセンサーは固定されており原稿の方が移動する方式だ。モバイルスキャナがくっついていると考えればわかりやすい人もいるだろう。この方式だと、そのすき間を通る原稿しかスキャンできないため、本や冊子などの立体物をスキャンする事は不可能だった。それどころかEP-M552Tは、普通紙やそれに近い用紙しか対応せず、写真用紙やハガキは通せなかった上に、対応サイズもB5〜A4と、小さな用紙にも対応しなかった。挿し込むだけでスキャン又はコピーという方式は分かりやすいと言えば分かりやすいが、対応できる原稿が少なすぎた。EP-M553Tではここが改善され、一般的なの「カバーを開けるとガラス面があり、そこに原稿を載せると、読み取りセンサーが移動しながらスキャンする」方式である「フラットベッド方式」となっている。写真やハガキ、本などもスキャンできるし、大きな本などを片側ずつスキャンする事も可能となり利便性が大きく上がった。読み取り解像度も600dpi(600×600dpi)から、1200dpi(1200×2400dpi)へアップしている。スキャンできるのは紙などの反射原稿だけであるため、文書なら200〜300dpiが一般的で、せいぜい600dpiまでだ。写真も300〜600dpiが一般的で、どうしても綺麗にスキャンしたい場合に1200dpiにする程度だ。そのため実用上大きな差があるかと言われると、そこまでではないが、いざという時に高解像度でスキャンできるのは安心だ。 |
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プリント |
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フチなし/フチあり 赤目補正 明るさ調整(5段階) コントラスト調整(5段階) シャープネス調整(5段階) 鮮やかさ調整(5段階) フィルター(モノクロ/セピア) |
フチなし/フチあり 赤目補正 明るさ調整(5段階) コントラスト調整(5段階) シャープネス調整(5段階) 鮮やかさ調整(5段階) フィルター(モノクロ/セピア) |
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デザインペーパー 証明写真印刷 シール印刷 |
デザインペーパー 証明写真印刷 シール印刷 |
EP-M553Tのダイレクト印刷機能を見てみよう。EP-M553TはEP-M552Tから機能を引き継いでおり、同等だ。SDカードリーダーなどは搭載しないが、USBポートにパソコン用メモリカードリーダーを接続すれば、SDカードをはじめ各種メモリカードに対応できる点や、高性能な色補正機能を搭載している点、フォーム印刷が可能な点など、全く同じだ。 |
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EPSON Smart Panel |
EPSON Smart Panel |
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Android 5.0以降 (EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降) |
Android 5.0以降 (EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降) |
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EP-M553Tのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリや機能、クラウド関連機能や、各種リモートプリント機能は同等だ。唯一、EP-M552Tより後の機種から一斉に搭載された、Bluetooth LEを利用した初回セットアップの簡略化機能が搭載されている。スマートフォン用アプリ「Epson Smart Panel」起動し「新規セットアップ」を選択する。そして、初期設定を行っていないEP-M553Tの電源をオンにすると、EP-M553Tが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してEP-M553Tに自動接続される。そして、設置からインクの補充方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にEP-M553Tをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続して終了となる。インクの補充は、4本同時には行えず、1本あたりもある程度時間がかかるため、その間にWi-Fiのセットアップは行われるなど、効率よく初期設定が行えるよう工夫がされている。自動接続されるため非常に簡単なほか、インクの補充方法なども表示されて非常に分かりやすい上に、ネットワーク接続設定まで行ってくれるので、初期セットアップのハードルが大きく下がっている。 |
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IDコピー |
EP-M553Tのコピー機能を見てみよう。ここでも、スキャナーがシートフィード方式からフラットベッド方式に変更されたことが、影響している。等倍コピーおよび拡大縮小コピーが可能なのは同じだが、EP-M552Tの拡大縮小は、倍率を25〜400%の間で1%刻みで手動設定するか、B5→A4のように、原稿サイズと印刷用紙サイズを指定して拡大縮小する「定型変倍」のみだった。EP-M553Tでは、あらたに「オートフィット」に対応した。オートフィットは原稿サイズを自動認識して、拡大縮小する機能だ。通常は自動的に高速な仮スキャンが行われサイズを認識して拡大率が決定され、本スキャンを行いながらプリントしていく形となる。ところがシートフィード方式では原稿が1回通って終わりであるため、仮スキャンを行う事が出来ない。かといって本スキャンでサイズを認識するとなると、スキャンが終了するまでプリントを開始できないという問題が発生する。結果、オートフィットが搭載できなかったが、EP-M553Tでは晴れて搭載となった。また定型変倍も、EP-M552TではB5〜A4サイズしかスキャンできなかったため、「A4→ハガキ」「A4→B5」「B5→A4」「A4→A5」しか選択肢がなかったが、EP-M553Tではこれらに加えて、「2L判→ハガキ」「L判→ハガキ」「L判→2L判」「2L判→A4」「ハガキ→A4」「L判→A4」「A5→A4」が追加されている。 また、「見開きコピー」機能と「IDコピー」機能に対応した。「見開きコピー」は本の左右ページをそれぞれスキャンして1枚の左右に割り付け又は両面印刷が出来る機能だ。本の場合、原稿カバーが邪魔になり、右ページと左ページで、上下逆にスキャンすることになるので、普通に2面割付又は両面コピーだと上下が逆になってしまうが、180度回転させて向きを合わせてくれる機能だ。「IDコピー」は、免許証などを2回スキャンすると、1枚の用紙に並べてプリントされる機能だ。どちらもEP-M552Tでは本のスキャンや、免許証などの厚い原稿のスキャンが出来なかったことから、今回フラットベッドスキャナーの搭載により実現した機能と言える。 |
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(90度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
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(90度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
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MacOS 10.6.8〜 |
MacOS 10.6.8〜 |
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最後にEP-M553Tの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。基本的なデザインは引き継いでいるため、液晶サイズだけでなく、操作パネルの位置やボタン配置は同じだ。また、前面右側にあるインク残量を示すLEDバーも同じだ。本体前面に配置され、持ち上げて90度(水平)まで角度調整が可能な点も同じだ。ただ、EP-M552Tは操作パネルのあたりだけ、中央より左側だけ角度調整する形となっていたが、、EP-M553Tでは左右端まで全体を角度調整する形となった。大きな違いは無いが、インク残量のLEDバーも共に角度調整されるようになったと言える。インタフェースは同等、対応OSや耐久枚数も同じだ。EP-M553Tの本体サイズは390×331×166mmで、EP-M552Tの390×324×166mmから奥行きが7mmだけ伸びた。本体の上部にフラットベッドスキャナーが乗る分、高さが増えそうなものだが、実際にはEP-M552Tは後方に、シートフィードスキャナーのカバーと背面給紙トレイを兼ねた、大きなカバーあり、これ本体から飛び出た状態になっていたため、その部分は166mmあった。EP-M553Tでは、前方から後方まで全てが166mmになったことになるが、フラットベッドスキャナーを載せながら、高さを抑えた点は評価できる。ただ、フラットベッドスキャナーはA4(正確には216×297mm)以上のガラス面を必要とするためか、奥行きが少しだけ伸びでいる。とはいえ、見た目にはほぼ変わらない。デザイン面では、印象が変わった。EP-M552Tでは液晶と操作ボタンを一体にブラックフェイスとなっており、またインク残量のLEDバーの周囲、さらに、上面後方のカバーの飛び出た部分の側面がブラックになっており、全体がホワイトの中でのアクセントとなっていた。EP-M553Tでは操作パネルがホワイトとなっただけでなく、LEDバーの周囲もホワイトとなり、かわりに白く光っていたLEDバーは水色に光るようになった。EP-M552Tと比べて、爽やかなデザインに生まれ変わっている。 EP-M552Tは価格の割に機能が豊富で、特に写真や年賀状向けに印刷コストの安い機種を必要としている人には良い選択肢に見えたのだが、シートフィードスキャナーという点が大きなマイナスとなっており、普通の複合機を想像している人には、唯一でありながら絶対的に勧めにい要因となっていた。EP-M553Tは、その部分が改善され、不満点が解消されたのは大きい。また、EP-M552Tがシートフィードスキャナーを搭載したのは、コスト面で安いのかと思っていたが、フラットベッドスキャナーになったEP-M553Tでも価格を据え置いたのもうれしいところだ。これならば、上位機種ほどの性能はいらないが、写真や年賀状が綺麗に出来て、印刷コストが安いプリンターが欲しいという人には、最もお勧めできる機種になったと言えるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/
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